ブレア英首相から身近な悩みまで…
前々回記事(「いざなぎ超え」と新自由主義)でサッチャリズムの修復に力を注いでいるイギリスのブレア政権について触れました。そのため、「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家路線でも、新自由主義的な「小さな政府」路線でもない、「第三の道」と呼ばれているブレア首相の政策路線に興味を深めていました。
もう少し調べてみようと思い、北海道大学の山口二郎教授の「ブレア時代のイギリス」(岩波新書)を購入しました。実は前回の投稿時までに読み終えていたため、その本の感想などを前回記事(危機的な自治労への逆風)にも書き込もうと考えていました。書き進めるうちに内容が盛りだくさんとなったため、結局、前回記事では一切触れませんでした。
特に紹介したかったのは、ブレア首相を党首とした労働党が18年に及ぶ野党暮らしから政権の座を射止めた背景でした。ブレア首相はサッチャリズムを批判するだけにとどめず、労働党が旧態依然とした社会主義的なイデオロギーや理念を軸にした政党ではなく、ニューレーバー(新しい労働党)に生まれ変わった印象を国民へ強くアピールしました。
ブレア首相がリーダーとして存在感を確立したのは、労働党の綱領改正問題が象徴的な出来事でした。労働党の魂とされる産業国有化条項(第4条)を綱領から削除する提起は、労働組合を中心に激しい抵抗が示されました。それに対し、ブレア首相は全国各地の地方組織に自ら出向き、党の現実的な経済運営能力を印象付けるためにも、綱領改正が必要であることを必死に説きました。
最終的に党内世論を改正賛成に転換させたことで、ブレア首相は難題を成し遂げるリーダーとしての地位を確立しました。長い野党時代、低迷していた労働党は内部亀裂をさらけ出すイメージが付きまとっていました。しかし、国民からの支持が高いリーダーであるブレア首相のもとで政権奪取が現実化し、労働党内の結束は強まったようです。
そのような背景のもとで行なわれた1997年5月の総選挙で、労働党は宿敵保守党を圧倒的大差で破り、18年ぶりに政権政党へ返り咲きました。現在まで続くブレア政治の功罪、その評価は今回記事の主眼ではありませんので省かせていただきます。私自身が印象に残り、この記事で強調したかった点は主に次の内容でした。
行き詰った局面を打開し、一回り大きく成長するためには、従来の価値観を見直す勇気が重要であることについてブレア首相の試みから感じ取りました。その上で、内側からの変革を実現するためには、きめ細かく徹底した議論による合意形成が欠かせないことを確信しました。
よくブレア首相は「政権を獲得するために労働組合との関係を断ち切った」と見られがちですが、決してそうではありません。あくまでも労働党の党首として労働組合など従来からの支持組織を押さえた上で、ホワイトカラーや自営業者など新たな支持基盤を広げていった見方が適切なようです。ちなみに労働党の選挙戦略は「ビッグテント」と呼ばれ、大きなテントの下に様々な種類の有権者を糾合する意味だそうです。
以上のようなブレア首相の手法が日本の民主党と労働組合の関係性において、どの程度教訓化すべき事例なのか分かりません。ただ自治労や日教組の存在はガンであるような発言を繰り返している自民党側と対峙していくためには、公務員組合側が従来通りの思考や対応では済まない危機感を抱いています。
前回記事へのコメントで、nikki さんから「そもそも論ですが、なぜ公務員に労働組合が必要なのですか?公務員という時点で、既に民間では有り得ない優遇を得ているのですが」との質問がありました。確かに労働組合の有無にかかわらず、賃金水準や公正な労働基準について、公務員は制度面から一定保障されているだろうと思います。
一方で、労働法制の遵守やその確立など、今まで自治労の存在や貢献が大きかったことも事実です。その結果、組合の有無に関係なく自治体間の均衡原則があるため、ほぼ一律の水準が確保できている構図も否めないはずです。また、私自身が組合役員を長く続けている中で、「組合があって良かった」との言葉を数多く聞いてきました。
奈良市職員の5年間で8日間勤務の問題は本当に異常で特殊な例であり、この事件をもって職員の病気休職の制度すべてが否定的に語られるとしたら残念なことです。このような不祥事が起こらないよう制度的な欠陥は改めなくてはなりませんが、その際も、やはり職員側の声を代弁する組合の役割は重要だと考えています。
ニン麻呂さんから「書き込みしたいことはたくさんあるけど、自治労傘下の下部組織の体質も千差万別だし、もちろん公務員の個体差はあるんで、ついつい書き込みが億劫になりますね」とコメントが寄せられました。いずれにしても私たちは他団体の不祥事を対岸の火事とせず、自らの足元を見直す機会にすべきだと考えています。
また、労働組合の必要性や重要性などを毅然と訴えていくためにも、市民から信頼される公務のあり方や責任を確立すべきだと改めて思い起こしています。今回の記事がイギリスのブレア首相の話から入ったため、唐突に感じられた方が多かったかも知れません。紹介した趣旨としては、大胆な発想転換と変革への勇気を参考にすべき局面だと考えたからでした。
最後も少し横道にそれた話で恐縮ですが、現在、私どもの組合の役員改選期を迎えています。組合活動の根幹を担う執行委員の定数が埋まるかどうか、昨年の記事「喜怒哀楽、組合役員の改選期」と同様な悩みを抱えながら悪戦苦闘しています。「ブログでブレア首相のことなど発信している場合ではない」と言われそうな深刻な定数割れのピンチですが、グローバルに考え、ローカルに悩み、ハッピーマンデーを願っている日曜の夜でした。
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