2019年1月20日 (日)

レーダー照射事件から思うこと

年末の記事「2018年末、気ままに雑談放談」と年賀状バージョンの記事「2019年、しなやかに猪突猛進」、それぞれのコメント欄にKEYさんから「レーダー照射事件に関するOTSUさんの見解はお伺いしたいですね」という問いかけがありました。年末の記事のコメント欄でも取り急ぎ一言レスし、新年の記事でも次のようにお答えしていました。

韓国海軍のレーダー照射事件に関し、問題視すべき点があれば日本側が抗議することは当然です。韓国側に非があるのであれば率直に認め、謝罪すべきものと考えています。残念ながら事態は収束する見通しが立っていませんが、険悪な関係が早く修復されることを願っています。

なお、新規記事は職場課題について取り上げる予定です。言うまでもありませんが、レーダー照射事件に対して「沈黙を守る」意図など一切ありません。そのため、必要と判断すれば次回以降の記事本文を通して「何が問題なのか、どうすべきなのか」という自分なりの問題意識をまとめてみるつもりです。

前回の記事は職場課題を取り上げた「諸手当の見直し提案」というローカルな内容でした。厚労省の不適切統計の問題など注視すべき時事の話題は数多くありますが、今回の記事では韓国海軍のレーダー照射事件について取り上げてみます。どのような事件だったのか後ほど思い返すためにも、最初にMAG2NEWSに掲げられていた記事『韓国レーダー照射事件でわかった、日本を見くびる韓国の愚かさ』の中から事実経過の分かる箇所を転載させていただきます。

12月20日、日本の排他的経済水域内の公海上である石川県能登半島沖で、海上自衛隊のP-1哨戒機が韓国海軍の広開土王級駆逐艦によって火器管制レーダーを照射されるという事件が起こりました。いわば韓国海軍の駆逐艦によって、攻撃のためのロックオンされたということになります。

これは「攻撃動作」であり、どう考えても敵対行為で、反撃されても文句が言えないほどの行為です。実際、朝鮮日報は、「同じことを韓国軍が自衛隊からされたら、もっと深刻な対応を取るだろう」という韓国側の専門家の意見を載せていました。要するに、韓国軍なら同様のことをされたら即時攻撃するということです。

日本側は韓国の駆逐艦に意図を問い合わせましたが応答がなく、その後の日本政府の猛抗議に対して韓国側は、「レーダーを運用したが日本の哨戒機を追跡する目的で使用した事実はない」「遭難した北朝鮮の捜索のために火器管制レーダーを可動させたが、瞬間的に日本の哨戒機が入り込んできた」などと例によって言い訳をくるくると変えて弁明。韓国の軍関係者は海上自衛隊の哨戒機のほうが威嚇的だったとまで言う始末です。

上記の記事は台湾出身の評論家である黄文雄さんのメルマガからの抜粋です。黄さんは「日本の場合は専守防衛のため、ロックオンされただけでは攻撃できません。相手から撃たれてはじめて反撃できるのです。韓国軍も当然、そのことはわかっているはずです。だから日本側をナメてロックオンなどというふざけたことをしてくるのでしょう」と解説しています。その記事の最後には次のような問題意識が示されていました。

今後、日本の対韓国姿勢は大きく変更せざるをえないでしょう。日韓友好を叫びながら、日本批判や日本攻撃を繰り返す韓国は、何をやっても日本は怒らないと見くびっていることは明らかです。だから韓国では、日本は韓国の都合よく利用する対象であるという「用日論」が流行るわけです。このように韓国を増長させてしまったのは、日本側にも責任があります。

何度ゴールポストを動かされても、日本は忍耐強く韓国のワガママに付き合ってきました。そのことが、韓国を勘違いさせてしまったのです。すでに韓国の勘違いは、両国間の軍事的一触即発を招くほどまでエスカレートしてしまいました。ここで日本が断固たる姿勢を見せなければ、韓国の勘違いはいつまで経っても治らず、さらに最悪の事態を招くことになるでしょう。

今回の事件では身勝手な言い分を繰り出し、自らの非を認めず、日本への反発を強めている韓国に対して憤られている方々が多いのだろうと思っています。黄さんの問題意識と同様、これまでの日本の対応が甘すぎたとお考えの皆さんも多いはずです。さらに「韓国の愚かさ」「韓国の勘違い」という言葉に首肯し、徹底的に韓国を叩くことが不可欠だと考えている方も多いのかも知れません。

曖昧な決着を避け、客観的なデータを公表することで韓国側の非を明らかにすることで、これまでとは異なる未来志向の日韓関係につながるのであれば何よりなことです。したがって、今回の日本政府の対応は望ましい判断であり、下記報道にあるような事実関係であれば安倍首相ならではのリーダーシップを発揮した結果であることを肯定的にとらえられます。

韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題をめぐり日韓の主張がぶつかる中、防衛省が「証拠」として当時の映像の公開に踏み切った。同省は防衛当局間の関係を一層冷え込ませると慎重だったが、韓国にいら立ちを募らせる安倍晋三首相がトップダウンで押し切った。日本の正当性を世論に訴える狙いだが、泥沼化する恐れもある。

防衛省は当初、映像公開について「韓国がさらに反発するだけだ」(幹部)との見方が強く、岩屋毅防衛相も否定的だった。複数の政府関係者によると、方針転換は27日、首相の「鶴の一声」で急きょ決まった。韓国政府は11月、日韓合意に基づく元慰安婦支援財団の解散を決定。元徴用工訴訟をめぐり日本企業への賠償判決も相次ぎ、首相は「韓国に対し相当頭にきていた」(自民党関係者)という。そこに加わったのが危険な火器管制レーダーの照射。海自機への照射を否定する韓国の姿勢に、首相の不満が爆発したもようだ。

首相の強硬姿勢は、2010年9月に沖縄県・尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件で対応のまずさを露呈した旧民主党政権の教訓も背景にある。当時、海上保安庁が撮影した映像を菅内閣は公開せず、海上保安官がインターネット動画サイトに投稿して騒ぎが拡大。首相は13年12月の党首討論で「出すべきビデオを出さなかった」と批判した。政府関係者は今回の首相の胸の内を「後で映像が流出するのも嫌だから『出せ』と言っているのだろう」と解説した。【JIJI.COM 2018年12月28日

事件発覚後、日韓防衛当局間での実務協議を通し、再発防止策やトラブルの原因究明について何らかの結論が出る可能性も残されていたようです。それにも関わらず、安倍首相の指示で映像の公開に踏み切ったため、お互いの対立感情が煽られ、時事通信の記事の中で懸念されていた「泥沼化する恐れ」が現実化した模様です。

日本側が過剰に譲歩した「玉虫色の決着」は望ましくないため、「安倍首相の判断は誤りだった」と決め付けた批判は避けなければなりません。私自身の思いは前述したとおり「問題視すべき点があれば日本側が抗議することは当然です。韓国側に非があるのであれば率直に認め、謝罪すべきものと考えています」という当たり前なものであり、事実関係に対して謙虚な姿勢で向き合い、お互いが信頼関係を高めていく努力を尽くすべきものと考えています。

一方で「過剰に譲歩」とは次元の異なる話として、相手側の言い分や置かれた立場にも思いを巡らせながら最適な解決策を探るという姿勢も欠かせないものと考えています。そのためには相手側を「愚かでワガママだ」と見下すような認識は拭う必要があります。韓国との関係は絶っても構わないという極端な声も耳にしますが、良好な関係を築きたいという目的を重視するのであれば、このような姿勢が求められていくものと思っています。

今回のレーダー照射事件に際し、安倍首相の判断を強く支持される方々が多いことは前述したとおりです。安倍首相と同じような価値観をお持ちの方が多いからこそ、安倍政権の支持率は極端に低下せずに推移している一因であるはずです。このようなコアな支持者の思いを背にしているため、安倍首相ならではの政治的な判断を積み重ねていけるのだろうと見ています。

韓国に対しては強く出るべき、このようなコアな支持者の声があり、防衛省の意向とは異なる対応をはかったことになります。逆に前例にならい、穏便な決着をはかった場合、安倍首相はコアな支持者からの反発を招いていたのかも知れません。いずれにしても政治家が支持者の声を受けとめ、支持率を意識することは当たり前な話だと思っています。

5年前の記事「政治改革の熱狂と崩壊」の中で、「当時、7千万人の日本人が戦争に熱狂する中、冷静に日本の行く末を案じた人物」について記していました。このことは日本中が熱狂する中、政治家が対米戦争を回避する判断を下すことは難しい時代だったという話につながっていました。幸いにも現在、安倍首相や政府の判断を表立って批判できる社会であることも確かです。

世論が単色の意見に染まってしまい、政治的な判断を下す際の選択肢の幅が狭まるようでは国民にとって望ましいことではありません。このような関係性に思いを巡らした時、韓国側の選択肢は極めて狭まってしまっているようです。日本側がレーダー照射事件に関する事実関係を粛々と示していったとしても、韓国側が率直に非を認め、謝罪できるような環境から遠ざかっています。

韓国の世論調査で8割以上の国民が、この問題で日本に対する反発を強めているようです。韓国の国内では客観的な事実関係が適確に伝わっていないためなのかも知れませんが、反日感情が高まった非常に残念な現況だと言わざるを得ません。安全保障面や経済的な関係を考慮した際、韓国とは友好的な関係を維持したいものと考えています。そのことを最優先の目的とした場合、もう少し相手側の言い分や立場を尊重した対応もあり得たのかも知れません。

昨年9月の記事「自民党総裁選と改憲の動き」の中では「安倍首相がプーチン大統領の性格を気遣いながら低姿勢で接していることを責める気持ちは一切ありません。首脳同士の良好な関係が私たち国民にとって最良の結果を引き出していただけることを期待しながら、私自身は安倍首相の今回の沈黙も含めてロシアとの関係性を評価しています」と綴っていました。

北方領土交渉は大きな山場を迎えつつあります。ここ最近、本来であれば日本側が即座に批判や訂正を求めなければならないような発言がロシア側から発せられています。ロシア側は自国内の世論を踏まえた戦略的な発言であり、日本側の沈黙に近い対応は大きな目的を達成させるために欠かせない振る舞い方なのかも知れません。そうであれば納得できる対応であり、日刊ゲンダイの記事『前のめり安倍首相に露が食わす「条文作成」の毒まんじゅう』のような結果に至らないことを願っています。

このような事情を理解しながらも、ロシアとの関係に比べて韓国に対する安倍政権の接し方は極端に厳しい気がしています。この話を組合員と雑談した時、「韓国を叩いても反撃されることや損することはないから言いたいことを言えるんじゃないのですか」と答えが返ってきました。あまりに率直な答えが返り、「なるほど」と思わざるを得ませんでした。安倍首相がそのような発想で対応しているのかどうか分かりませんが、お互いが相手を見下し、見くび合っていては関係修復も険しい道のりだろうと思っています。

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2019年1月12日 (土)

諸手当の見直し提案

毎年、12月中旬に職員家族を対象にしたクリスマスパーティーを催しています。組合と職員共済会が共催し、年末の恒例行事として定着しています。主催者として挨拶した際、「私が市役所に入った頃はダンスパーティーでした」と昔話を披露させていただきました。

かなり前の記事「組合役員を続けている理由」の中で記していましたが、私自身が青年婦人部の幹事だった時、ダンスパーティーを小さなお子さんたちも楽しめる催しに切り替えていきました。社交ダンスを中心としたダンスパーティーの参加者は年々減っていました。事前にダンス講習会を開いても、新たに社交ダンスを覚えようとする人たちが少ない現状だったためです。

職員家族クリスマスパーティーという名称に改め、30年以上続いていることに感慨深いものがあることを主催者挨拶で一言添えさせていただきました。記事タイトルから離れた話題から入っていますが、記事タイトルの内容に関連したエピソードとして昨年末のクリスマスパーティーの時に交わした会話も紹介させていただきます。

職員共済会と共催しているため、団体交渉の相手側となる人事担当部署の部長と課長もクリスマスパーティーに出席しています。その日だけは労使の垣根を越え、ざっくばらんに歓談しています。すると部長も課長も、このブログをご覧になっていることを知りました。ひとしきり当ブログのことが話題になった訳ですが、私から次のような点を二人に強調する機会となっていました。

このブログの記事の中で、組合員の皆さんに伝えているニュースや機関誌の内容をそのまま掲げる時があります。組合ニュースそのものは組合員一人ひとりに配られ、配布後の取扱いは自由です。このようなオープンな配布の仕方ですので、組合ニュースが市議会議員や住民の皆さんの目に留まることも想定しています。

要するに誰に見られても困るような内容は掲げていません。ただ交渉結果の内容や組合の考え方に対しては人によって評価が分かれ、批判の対象になる場合があるのかも知れません。それでもコソコソ隠すような労使交渉や主張は行なっていないため、「内部資料」「取扱注意」のような但し書きは一切ありません。

仮に圧倒多数の方々から問題視されるような交渉結果や組合の主張だった場合、何か改める要素があることを察知する機会にすべきだろうとも考えています。そのような意味合いからも当ブログの記事の中で、組合ニュース等の内容をそのまま掲げる時があることを部長と課長に対して説明していました。

つまり団体交渉での組合の訴えは「住民の皆さんから理解を得られないような主張は一切ない」という認識であることを強調する機会につなげていました。労使の立場の違いから簡単に歩み寄れない課題が多かったとしても、お互い真摯な姿勢で議論を重ねていくことの大切さも改めて伝えていました。

言うまでもなく「ヤミ」と批判されるような労働条件は認められない時代であり、そのことを前提に組合は交渉に臨んでいます。喫緊の労使課題は諸手当の見直し提案です。すでに組合ニュースや職場委員会資料を通して組合員の皆さんに報告している内容を今回のブログ記事で紹介した後、直近の団体交渉の動きなどを踏まえ、組合としての考え方を補足してみるつもりです。

             ◇             ◇

11月13日夜の交渉で、下記のような諸手当の支給方法等の見直し提案が示されました。労使合意が得られれば来年度から改めたいという提案です。東京都に準拠した取扱いへの変更提案ですが、地域手当の支給率は都(20%)と当市(12%)で大きな開きがあります。このような大きな格差がある中、他の手当の取扱いを都並に引き下げる提案を容易に受け入れることはできません。

市町村ごとに細かく率を定めている地域手当は様々な点で不合理さが指摘されています。国家公務員の場合、私どもの市内に職場があると12%となり、区部で勤務すると20%となります。都の場合、人事異動によって支給率が大幅に変動する問題性を踏まえ、三多摩で働く都職員も20%に合わせています。したがって、地域手当に関して都は国の定めた基準に従わず自主的な判断を行なっています。

このような点を組合は訴え、手当全般を都並に揃えるのであれば地域手当の支給率の引き上げを同時に検討すべきではないかと申し入れています。人材確保や人材流出を防ぐ観点からも地域手当の支給率を12%にとどめておくことの問題性を組合は提起しています。13日の交渉では市当局としても地域手当の問題性を改めて受けとめ、どうすべきなのか検討していきたいという答えが示されています。

参考情報】 H市の地域手当は10%です。国基準では6%ですが、独自な判断で10%としています。しかしながら現在、H市当局は財政難を理由に引き下げ提案を組合に示しています。H市職は「近隣自治体との水準均衡に鑑みても認められない」と強く反発しています。機関紙『自治労東京』で報告されているとおり当市とは異なる事情の中でH市職は厳しい労使交渉に入っています。

この機会に地域手当の問題に焦点を当てましたが、提案自体は一つ一つを検証し、年度末まで交渉を重ねながら納得できる決着点をめざしていかなければなりません。今回、私どもの市の提案理由にH市のような「財政難」は上げられていません。そもそも管理職手当の定額制への見直しは人件費原資を引き上げることになります。あくまでも都に準拠した取扱いへの見直しが大きな目的であるという点も踏まえ、できる限り組合員の痛みを回避した決着をめざしていきます。

① 住居手当12,000円を都と同額の15,000円に引き上げる。年齢要件がないのは三多摩26市で当市のみであり、この機会に支給対象を35歳未満とする。

※ 2012年度、住居手当を都と同じ取扱いにする見直し提案が示され、持ち家を対象から外すことは経過措置を設けて合意しました。しかしながら35歳未満の賃借者に限るという不合理な点は労使交渉を重ねた結果、年齢制限を外すことができました。この不合理さは当時とまったく変わっていません。加えて、国家公務員の住居手当支給に年齢要件はありません。

② 上限のなかった通勤手当の1か月あたりの支給額に上限55,000円を設ける。交通用具利用者に対する距離別の支給額や区分等を都と同じ扱いに改める。交通用具と公共交通機関を併用している場合、交通用具を利用する距離が2キロ(現行1キロ)以上から支給する。交通用具を2回使用している場合、それぞれの区間の距離を合算し、その合計額に応じた額を支給する。

※ 2013年度から通勤手当の支給要件を条例の本則通り1キロ以上から2キロ以上に改めることを合意しました。その際、交通用具のみ利用している場合、2キロ以上が支給要件となっています。なお、現在月額55,000円を超えている職員はいません。

③ 一時金の勤勉手当の算定基礎から扶養手当を除く。

④ 管理職手当(現行の部長職20%平均額99,545円、課長職17%平均額73,651円)を定額制(部長職115,000円、課長職80,000円)に改める。

※ 上記④は直接的な労使協議事項ではなく、組合への情報提供であるという説明を受けています。それに対し、組合は総人件費の原資配分の問題にも関わるため、これまで管理職に関しても労使協議事項の一つであることを確認してきていた経緯について指摘しています。

             ◇             ◇

提案が示された以降、書記長と担当課長レベルでの事務折衝は頻繁に行なっています。副市長が市側の責任者として臨む団体交渉は12月26日と年明けの1月9日に開いています。条例規則や来年度予算案に絡む事項もあるため、1月9日の団体交渉では労使双方、その時点までに判断できることを整理しました。

組合員の皆さんに対し、交渉結果の詳細は次号の組合ニュースで報告する予定です。組合員の皆さん全員が当ブログを閲覧している訳ではなく、そもそも組合の公式なサイトでもありませんので、そのあたりの関係性をわきまえながら組合側の問題意識や考え方などを示させていただきます。

まず4年前の記事「地域手当を巡る問題点」に記しているとおり地域手当の支給率の不合理さは労使で共通認識しています。しかし、市側の判断は「国の定めたルールに従う」というものでした。今回の交渉を通し、前述したとおり組合は地域手当の不合理さを改めて訴えています。その結果、年末の交渉では予想した以上に前向きな考え方が市側から示されていました。

1月9日の交渉では住民の皆さんや市議会での理解を求めなければならないため、現時点で確約した回答は示せないという説明を受けています。そのような事情は充分理解できる難しい問題であり、9日の交渉では引き上げに向けた正式な回答を引き出せていません。それでも「国の見直しを待たず、近隣市の支給率を踏まえ、自主的に判断する必要がある」という前向きな姿勢を改めて確認しています。

このような基本的な方向性を確認した上、都準拠とする諸手当の見直し提案の取扱いを判断しました。さらに管理職手当の定額制への移行は人件費を膨らませる見直しでした。そのため、今回の見直し提案は財政難を理由としたものではないことを確認し、ことさら係長以下の組合員のみに痛みを強いるような意図がないことも確認していました。

このような前提のもと年末の交渉で、組合からは勤勉手当の算定基礎から扶養手当を除くのであれば、その原資を充てることで人事評価の拠出金制度の見直しをはかるべきではないのかと訴えていました。拠出金制度ではB評価(標準的な評価)でも勤勉手当が減らされるため、多くの職員が不満を抱いていました。

今回、諸手当の見直し提案を受け入れる中で拠出金制度を改めさせ、少しでも組合員の痛みを回避した決着をはかっています。そして、懸案課題である地域手当の問題に関しても一歩前に踏み出す考え方が示されていることを大きく評価しています。地域手当の引き上げが実現できれば全体的な給与改善につながるため、たいへん大きな成果を上げたことになります。

実は1月9日の交渉で継続協議の扱いを確認した提案事項があります。それは住居手当の見直しです。もちろん額の引き上げは歓迎すべき提案です。しかし、年齢要件の問題は容易に受け入れられないものでした。35歳という線引きは自宅を所有する比率が高まる傾向から判断したようですが、必ず35歳までに自宅を所有できるものではなく、一定の年齢をもって住居手当が支給されなくなる制度は不合理だと考えています。

そもそも国家公務員の制度に年齢要件はなく、民間企業の支給実態を調べてみても都の制度自体が特異なものとなっています。そのため、私どもの市以外の三多摩各市が都に準拠したという実情は意外なことでした。組合からは発想を変え、住居手当に年齢要件がないことを強みとし、そのことをアピールすることで新規採用時の人材確保面でのセールスポイントにすべきではないのかと訴えています。

住居手当について、都は制度導入当初より国とは別の主旨に基づく制度として設計してきた背景がある。平成24年に都が現行の年齢要件を入れた際の考えは、それまでの世帯主等を支給要件とした制度により、結果として高年齢層、上位職層ほど受給割合が高い実態を是正し、「住居費負担が給与水準に比して相対的に過重となっている職員に限定する」との考えのもと、自宅に居住する職員を対象外とし、若年層の賃貸者に限定して支給対象としたもの。35歳という年齢は、採用状況、昇任状況、支給される給与水準等を総合的に勘案した結果、設定されたもの。

上記は組合の訴えに対し、事務折衝の際、市側から説明された「メモ」の内容の一部です。当初から国と都が別の主旨での制度だったことは理解できます。しかし、住居費の負担が変わらない中、ある一定の年齢で支給が打ち切られることの説明としてはあまり納得できません。35歳になれば住居手当の支給額に見合った昇給があるのかと言えば必ずしもそうではありません。

そもそも都の労使交渉の中で、手当よりも基本給に原資配分を厚めにするため、35歳という年齢要件を設けたという話も耳にしています。つまり組合側も納得した上で、一般的には馴染みの薄い年齢要件を設けたものと見られています。それにも関わらず、三多摩各市も都と横並びの支給方法に改めていることに正直なところ違和感を覚えています。

ちなみに「住居手当 年齢要件」で検索した際、トップに掲げられたサイト「日本の人事部」で専門家が「年齢によって支給制限する方法ですが、不法とまでは言えないと思われますが、筆者の長年の経験の中でも、こうした仕組みをまだ見たことはないほど、稀な仕組みです」と解説しています。

条例規則や来年度予算案に絡む期限を踏まえ、1月9日に団体交渉を開き、住居手当の見直しは継続協議としています。したがって、来年度は現行制度のままとなる見通しです。ただ市側としては都準拠の方針を下ろしていないため、引き続き年齢要件の問題は労使間での協議事項となっていきます。

以上のような組合の問題意識が広く共感を得られるのか、独りよがりなものなのか、前者であれば自信を持って年齢要件の導入に引き続き反対していくことができます。地域手当の引き上げが実現し、住居手当の額だけ増額し、35歳という不合理な年齢要件を押し返せれば本当に望ましい決着だと言えます。いずれにしても組合員の皆さんから最も期待される組合活動の本務として今後も精一杯力を注いでいきます。

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2019年1月 1日 (火)

2019年、しなやかに猪突猛進

あけましておめでとうございます。Inosisi

今年もよろしくお願いします。 

毎年、元旦に年賀状バージョンの記事を投稿しています。いつも文字ばかりの地味なレイアウトであり、せめてお正月ぐらいはイラストなどを入れ、少しだけカラフルになるように努めています。2005年8月に「公務員のためいき」を開設してから791タイトル目となりますが、必ず毎週土曜又は日曜に更新し、昨年1年間で52点の記事を投稿していました。

2015年1月にココログのアクセス解析の管理機能が大きく変わり、累計数が分からなくなっています。一時期に比べ、1日あたりのアクセス数は減っています。それでも週に1回の更新にも関わらず、毎日500件ほどのアクセスがあります。これまで時々、いきなりアクセス数が急増する場合もありました。Yahoo!のトップページに掲げられた際のアクセス数23,278件、訪問者数18,393人が1日あたりの最高記録となっています。

ことさらアクセスアップにこだわっている訳ではありませんが、やはり多くの人たちにご訪問いただけることは正直嬉しいものです。特に当ブログは不特定多数の方々に公務員やその組合側の言い分を発信する必要性を意識し、個人の判断と責任でインターネット上に開設してきました。したがって、より多くの人たちに閲覧いただき、多くのコメントを頂戴できることを願っているため、毎日、たくさんの方々にご訪問いただき、ブログを続けていく大きな励みとなっています。

一方で、たいへん恐縮ながら2012年の春頃から私自身はコメント欄から距離を置くようになっています。身の丈に合ったペースとして、週に1回、土曜か日曜のみにブログに関わっている現状です。そのことだけが理由ではないようですが、以前に比べるとお寄せいただくコメントの数も減っています。それでも記事内容によっては、貴重なコメントが多数寄せられる時も少なくありません。いずれにしても当ブログをご注目くださっている皆さんにいつも感謝しています。本当にありがとうございます。

さて、今年は亥(イノシシ)年です。年賀状には【イノシシで真っ先に思い浮かぶ言葉は「猪突猛進」です。この言葉には「まっしぐらに突き進む」という前向きな面と合わせ、「後先のことも考えずに」というネガティブな意味が含まれています。もちろん2019年は前者の意味合いで過ごせればと考えています。】と書き添えていました。

12年前の年賀状バージョンの記事タイトルは「2007年、しなやかに猪突猛進」でした。今回、少し迷いましたが、結局のところ年号を「2019年」に変えただけのタイトルとしています。前回記事2018年末、気ままに雑談放談」に続き、安直な付け方となっていますが、年頭の抱負が12年前と大きく変わっていないのであれば迷う必要もないのだろうと判断したところです。

「しなやか」という言葉を辞書で調べると「柔軟で、弾力に富んでいるさま」と書かれています。猪突猛進の「後先のことも考えずに」というネガティブな意味を打ち消すため、12年前、新たな年に向けた私なりの思いを「しなやかに猪突猛進」というタイトルに込めていました。前向きな1年間を過ごしたい、そのような思いは変わらず、2019年を迎えています。

今年は4月に統一地方選挙、7月に参院選挙が行なわれます。統一地方選挙は4年に1回、参院選挙は3年に1回であり、12年に1回、同じ年に行なわれます。12年に1回のサイクルは十二支と同じであり、いつも亥年に重なってきたことになります。亥年は私自身にとって節目の年でしたが、あまり認識していなかった巡り合わせでした。

12年前は第1次安倍政権の時代で、自民党は参院選挙で歴史的敗北を喫していました。それ以降、「衆参ねじれ」国会と呼ばれ、政権与党の思惑だけで法案が通らなくなっていました。「決められない政治」と批判されることもありましたが、多面的なチェック機能を充分発揮できないまま「決めすぎる政治」もそれはそれで問題だろうと思っています。

年末のラジオ番組で、安倍首相は衆参同日選の可能性について「頭の片隅にもない」と否定していました。しかし、「その時は頭の片隅にもなかった」と釈明し、ダブル選挙に踏み切る可能性も充分あり得るはずです。ただ同日選に至らなかったとしても、2019年は今後の政治の行方を左右する重要な年になるのではないでしょうか。このまま安倍政権が衆参両院で安定多数を占めていくことを望む方々も多いのだろうと思っています。

その選択肢のほうが「日本のため、国民のため」につながるという判断であろうことも理解しています。一方で、このままで良いのかという国民の声があることも確かです。私自身の問題意識は前回記事に綴ったとおり左や右の立場に関わらず、異なる「答え」を持つ他者を全否定するのではなく、「何が問題なのか」という点を強調していく必要性を痛感しています。安倍政権を批判するのであれば、それこそ「何が問題なのか」という具体的な事例を上げながら論点を提起していくことが欠かせないものと考えています。

捕鯨を巡る長年の日本外交が挫折した。極めて残念な事態である。政府が、クジラの資源管理を行う国際捕鯨委員会(IWC)に対し、日本が脱退すると通告した。来年7月から、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)で、約30年ぶりに商業捕鯨を再開する。脱退により、日本が南極海と北西太平洋で行ってきた調査捕鯨はできなくなる。IWCは、クジラの保護と捕鯨産業の秩序ある発展を目的に設立された。だが、動物愛護を主張する反捕鯨国が過半数に達した。9月の総会では、日本が提起した商業捕鯨の再開案が否決された。

菅官房長官は「クジラ資源の保護のみを重視する国から歩み寄りが見られず、今回の決断に至った」と述べた。政府は、このままIWCに残っても商業捕鯨の再開は難しいと判断したのだろう。懸念されるのは、国際社会の反発が強まることである。日本は戦後、国際協調主義を掲げ、他国と主張が対立しても協議による合意を重んじてきた。その日本が、意見が通らないからと国際機関を脱退しては、日本外交全体にマイナスとなりかねない。脱退を検討した経緯も見えにくい。国会や審議会などでの踏み込んだ議論はなかった。多角的な検討を欠いたまま、政治決着を急いだと見られても仕方あるまい。

商業捕鯨は資源回復が確認された鯨種に限り、IWCの算定方式による捕獲枠を設定して行う。政府は今後もIWCにオブザーバーとして参加する考えだ。商業捕鯨を再開する狙いや食文化の違いに関し、各国に丁寧な説明を続けることが欠かせない。日本の調査捕鯨は、海洋資源の実態把握に貢献してきた。政府は今後、南極海などでクジラを捕らずに目視による調査を続けるという。だが、データの精度は大きく落ちる。貴重な知見の蓄積が途絶えることになる。

クジラの国内消費は低迷している。1960年代には年20万トン前後あったが、最近は5000トン程度で推移している。調査捕鯨の終了で、副産物として供給されてきた鯨肉は市場に出回らなくなる。商業捕鯨を始めた後、全体の需給バランスがどうなるか見通しは立っていない。商業捕鯨を再開する以上、補助金頼みの現状から脱却して、産業として自立することが大切だ。政府と民間が連携し、持続可能な捕鯨産業のあり方について真剣に考えていく必要がある。【読売新聞2018年12月28日

年末にIWC脱退という上記の報道に接した時、各論と総論、両面から現政権の問題性を表出させた事例だと思いました。各論の問題で言えば、読売新聞の記事が分かりやすくまとめています。特に「日本は戦後、国際協調主義を掲げ、他国と主張が対立しても協議による合意を重んじてきた。その日本が、意見が通らないからと国際機関を脱退しては、日本外交全体にマイナスとなりかねない」という見方に大きく首肯しています。

総論の問題で言えば、国会に対して事前の説明はなく、政権与党内でも多面的なチェック機能を働かせず、国家としての重要な決定が下されていることです。自民党の二階幹事長の地元が沿岸捕鯨で有名な和歌山県太地町であり、安倍首相も捕鯨船の拠点である山口県下関市を地盤としています。国際社会の反発を懸念し、政府内にはIWCを脱退することへの慎重論もあったようですが、二人の意思や判断には抗えない構図となっています。

IWC脱退という判断が正しかったのかどうかは各論の問題です。しかし、本当に正しい判断なのか多角的な検証を尽くせたのかどうかは総論の問題であり、残念ながらそうではなかったことは上記の報道が明らかにしています。安倍首相は自民党総裁に返り咲いた以降、全国規模の国政選挙では5連勝中です。前述したとおり6連勝を望む方々が多いことも理解した上で、幅広い考え方や情報を提供する場として、このブログでは引き続き政治的な話題も取り上げていくつもりです。

組合の執行委員長としては、ますます大事な1年になろうかと思います。組合役員の担い手不足が大きな課題となっています。「定期大会を終えて、2016年秋」に綴ったとおり持続可能な組合組織に向け、引き続き組合活動全般を見直しながら「ピンチをチャンス」に変えられるよう努力していかなければなりません。その一歩として協力委員制度を創設しています。今後も新たな発想で創意工夫した活動に心がけ、よりいっそう組合員の皆さんから信頼される組合活動に高める努力を尽くしたいものと考えています。

組合役員の担い手不足の理由として「組合方針に政治的な活動が含まれているから距離を置かれてしまう」という声があることも承知しています。このような声に対して「等身大の組合活動として」や「組合民主主義について」という記事を通して私自身の考え方をお伝えしています。職場課題と政治活動に対する力点の置き方を主客逆転させないことはもちろん、「なぜ、取り組むのか」という出発点からの周知の仕方にも、よりいっそう注意を払っていきます。

最後に、このブログは実生活に過度な負担をかけないよう留意しながら引き続き週に1回、土曜か日曜の更新を基本としていきます。いつもお正月のみ少し変則な日程となっています。次回は来週末に更新する予定です。きめ細かいコメント欄への対応がはかれずに恐縮ですが、一人でも多くの方にご覧いただければ誠に幸いなことだと思っています。それでは末筆ながら当ブログを訪れてくださった皆さんのご健康とご多幸をお祈り申し上げ、新年早々の記事の結びとさせていただきます。

     ☆新春特別付録☆ 「2018年ブログ記事回想記」 

年賀状バージョンの恒例となっていますが、今回も2018年に投稿した記事をインデックkadomatsuス(索引)代わりに12点ほど並べてみました。改めて皆さんに紹介したい内容を中心に選び、いわゆる「ベスト」ではありません。したがって、12点の並びも投稿日順となっています。それぞれ紹介した記事本文へのリンクをはってありますので、のんびりご覧いただければ幸いです。

  1. 2018年、犬も歩けば ⇒ 今回と同じ年賀状バージョンです。戌(犬)年の年頭に「犬も歩けば棒に当たる」という諺を紹介しながら為せば成る、為さねば成らぬ何事も」という言葉のような心構えの大切さを記していました。やはり特別付録として「2017年ブログ記事回想記」も掲げています。
  2. 多面的に見た時の明治維新 ⇒ 明治維新から150年、 明治維新という過ち~日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト~』という文庫本の内容を紹介しながら見る位置や角度を変えると物事に対する評価が大きく変動する象徴的な一例として取り上げていました。
  3. 平昌オリンピック、強まる政治色 ⇒ 韓国で開かれた冬季大会に北朝鮮が参加し、朝鮮半島を巡る政治色の強い大会となっていました。政治の動きとスポーツを100%切り離すことはできないのであれば、文字通りオリンピックが「平和の祭典だった」と称賛されるような場になって欲しいものと願いました。  
  4. 人事・給与制度見直しの労使協議 ⇒ 能力評価を中心にした査定昇給は生涯賃金に大きく影響するため、より慎重な労使協議を重ねてきました。一人ひとりのやる気を損ねず、組織そのものを活性化させていくため、どのような制度が必要なのか、その労使協議結果をまとめた内容を報告した記事でした。 
  5. 日本国憲法が大きな岐路に  ⇒ 定期的に訪問しているブログの一つが「澤藤統一郎の憲法日記」です。澤藤さんの講演に参加できる機会があり、弁護士の視点から憲法を切り口にした平和的生存権などに関する講演内容を紹介していました。最後のほうでは組合機関誌に寄稿した私自身の問題意識を綴った原稿も掲げています。
  6. 市議選が終わり、今、思うこと ⇒  私が勤めている自治体の市議会議員選挙が終わった後、いろいろ思うことを書き残していました。 もともと市議選は候補者と有権者との顔が見える中での関係性を深めているため、国政での風の影響はそれほど受けない傾向があります。それでも世論調査の一つとして市議選の結果をとらえながら国政のことにも触れていました。
  7. 平和の話、サマリー ⇒  直前の記事は「平和の話、インデックスⅢ」とし、原爆忌から終戦記念日に続く時期、「平和の話」を「Part2」にかけてまとめてみました。長い記事になることが見込まれたため、「誰もが戦争は避けたい、防ぎ方に対する認識の違い」「歴史を振り返る中で、広義の国防や安心供与について」などという小見出しを付けていました。
  8. 横田基地にオスプレイが正式配備 ⇒ 三多摩平和運動センターが呼びかけたオスプレイの正式配備に反対する駅頭での宣伝活動に参加しました。このような行動の際、私自身もマイクを持つ一人として指名されます。出番があるのであれば、最も訴えたいことを自分の言葉を尽くして訴えています。その時に訴えた内容を紹介した記事でした。
  9. 子どもの貧困と社会的養護の問題 ⇒ 連合三多摩の政策・制度討論集会の第1分科会「子どもが安心して暮らせる社会をめざして」の中で「公益財団法人あすのば」と「里親ひろば ほいっぷ」の方々から伺ったお話を紹介していました。特に当事者だった方から実際に経験してきたお話を伺うことができ、たいへん貴重な機会だったものと考えています。   
  10. 再び、組合役員の担い手問題 ⇒  組合役員の担い手問題」の続きとして「再び」を付けた記事でした。組合役員を長く続ける中で、組合は大事、つぶしてはいけない、そのような思いを強めています。だからこそ担い手の問題が重要であり、緊急的な対応として「協力委員」の創設を考えた経緯等を綴っていました。
  11. 原発の話、インデックスⅡ ⇒  最近の原発報道から思うこと」のコメント欄に引き続き、この記事のコメント欄でもqurさんとAlberichさんとの興味深い議論が交わされています。いろいろな考え方や情報に触れ合うことで「やはり原発はなくしたい」と思うのか、「それでも原発は必要」と思うのか、このブログが原発の将来のあり方について関心を高めていくための一つの材料になれれば幸いなことです。
  12. 働き方改革への労組の対応 ⇒  連合地区協議会として労働学習会『働き方改革への労組の対応』を催し、講師は連合東京の労働政策局長にお願いしました。働き方改革関連法は昨年6月に成立し、今年4月から順次施行されていきます。私たち労働組合の役員は法改正の内容を的確に把握し、働き方改革の流れを受けとめながら組合員の皆さんの待遇改善につなげていかなければなりません。

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2018年12月23日 (日)

2018年末、気ままに雑談放談

今年も残りわずかです。このブログは毎週1回、週末に更新しています。そのようなペースの中で年末年始だけは少し変則となり、元旦に年賀状バージョンの記事を投稿してきました。そのため、少し早いタイミングとなりますが、今回が2018年最後の記事となります。

その年の最後の記事は「年末の話、インデックスⅡ」があるとおり1年間を締め括るような内容を綴る時も少なくありません。昨年は「2017年末、気ままに雑談放談」というタイトルを付け、雑多な話題を気の向くまま書き進めてみました。今回も安直に「2018年末、気ままに雑談放談」というタイトルに決め、今、思うことを書き進めてみます。

「雑談放談」はブログのサブタイトルに掲げています。「雑談」は様々なことを気楽に話し合うこと、「放談」は言いたいことを自由に語ること、このように辞書には記されています。取り上げる話題によっては、気楽に語れないような難しい問題も含まれていくのかも知れません。ただ言いたいことを自由に語るという意味合いから私自身の問題意識を改めて示させていただく機会になろうかと考えています。

最近の記事「入管法改正案が衆院通過」のコメント欄で「ネトウヨ」や「パヨク」という言葉が話題になっていました。「このようなお話について、私自身の考え方も機会を見て記事本文で取り上げてみたいものです」という一言を添えていましたので、年を越える前に今回の記事を通して私自身のとらえ方や問題意識などを少し触れさせていただきます。

それぞれ培ってきた経験や吸収してきた知識をもとに個々人の基本的な考え方が形作られていくはずです。その基本的な考え方が異なる場合、同じ出来事に接していても適否の判断や評価が枝分かれしがちな傾向を数多く見聞きしています。このような枝分かれしがちな傾向は、いわゆる右か左か、立場性の違いとしても区分けされていきがちです。

インターネット、特にSNSが普及する前、立場性の違いを明らかにした面と向かった議論の機会は稀だったはずです。今でも相手と直接顔を合わせた議論の機会は多くないはずです。一方で、SNSは匿名性が担保されやすいため、自分自身の立場性を明らかにした上で本音の意見を披露しやすくなっています。

2年前に投稿した「SNSが普及した結果…」という記事の中で「SNSが普及した結果、人は自分と同じ意見や感性にしかアクセスしなくなった。異なる立場の人々の意見と接する機会がなくなり、人々は極端な意見をもつようになっている」という見方を紹介していました。私自身、インターネットの普及は幅広く詳しい情報を手軽に素早くコストをかけずに入手できるため、大多数の方が「異なる立場の人々の意見と接する機会が増えている」傾向にあるものと見ていました。

そのため、SNSの普及が真逆の流れを生み出しているという見方に触れ、たいへん意外だったという話を伝えていました。いずれにしても「自分と同じ意見や感性にしかアクセスしなくなった」という傾向は、よりいっそう個々人の考え方や主張の正しさを裏付ける機会につながっていくのだろうと思い返しています。

その結果、自分自身が正しいと信じている「答え」から遠くかけ離れた異質な考え方や意見に対し、ますます不寛容な関係性となり、相手方の言い分に耳を傾けてみようとする姿勢が乏しくなっていくように危惧しています。さらに自分自身の価値判断から離れた考え方を持つ他者自体を見下し、辛辣な言葉で嘲笑するような場面までSNS上では散見しています。

このような傾向は左や右、それぞれの立場性を問わず見受けられています。「ネトウヨ」や「パヨク」という言葉は、それぞれの立場から相手側を蔑称した時に使われているようです。そもそも他者から属性を一括りに決め付けられた批判も不愉快になりがちですが、「ネトウヨ」や「パヨク」という言葉を投げかけられてしまった場合、まず理性的な議論を交わしていくことは難しい関係性に陥ります。

おかげ様で当ブログのコメント欄常連の皆さんは、このような点について充分わきまえられている方々ばかりであり、たいへん感謝しています。私自身、立場性を明らかにしながら様々な主張を発信していますが、いつも異なる立場の方々に届くような言葉や内容を探し続けています。それでも時々、「その言葉は決め付けすぎではないのか」という不適切さを指摘される場合もありました。

あまり意識しすぎると筆が進まなくなるのかも知れませんので、いろいろな考え方があることを認め合い、異質な「答え」を持つ他者を見下さないという心構えに留意していただければ幸いなことだと願っています。もちろん違いは違いとして厳しく指摘し、率直な言葉で批判し合っていく関係性まで自制を求めるものではありません。

批判や苦情が寄せられてこそ、至らなかった点を気付く機会につながります。ただ批判する側も手法や度合いには注意しなければならず、何よりも「何が問題なのか」という点を強調していく必要があります。批判の矛先が相手を全否定し、人格攻撃するような内容につながっているようであれば問題です。さらに思い込みや決め付けた批判だった場合、ますます相手側の心には響かなくなります。

「ネトウヨ」や「パヨク」という言葉をNGとしている心構えと同様に次のような点についても留意しています。例えば「安倍首相は戦争をしたがっている」などという言葉は思い込みや決め付けた批判の類いだろうと思っています。安倍首相に限らず「戦争をしたがっている」ような人は皆無に近いはずです。しかし、安保関連法や防衛費の増大などに対しては個々人による評価が大きく枝分かれしていきます。

海上自衛隊の護衛艦「いずも」の空母化方針に抗議している団体に対し、他国からの指示のもと「日本の邪魔をしている」という見方も思い込みや決め付けた批判の類いだろうと思っています。左や右の立場性に関わらず、誰もが戦争は防ぎたい、そのような思いのもとに考え、行動しているものと考えています。そのための選択肢として、つまり戦争抑止のあり方として、どちらの判断が正しいのかどうかという関係性につなげていかなければ、立場性の相反する両者間の溝は絶対埋まっていかないものと受けとめています。

具体的な論点に対し、今回の記事で掘り下げることはできませんが、より望ましい「答え」を見出すためには幅広い考え方や情報に触れていくことが大切です。そのためには幅広い考え方や情報が発信できる社会であり続けることが極めて重要です。為政者から情報が統制されるような社会であっては問題であり、時の政権にとって都合の悪い情報だったとしても国民が的確に把握できる関係性こそ、健全な民主主義が担保できた姿だろうと思っています。

SNSなどで個々人の言論の自由が保障され、マスメディアからも幅広い情報が流れてくる社会でなければなりません。「2017年末、気ままに雑談放談」の中で『THE MANZAI 2017』に登場したウーマンラッシュアワーの村本大輔さんの漫才が強烈なインパクトを与えたことを取り上げていました。今年も村本さんは『THE MANZAI  2018』に出演し、原発やLGBTなど難しい時事問題をネタにしていました。「ユーモアもない“漫才”? ウーマンラッシュアワー、『THE MANZAI』で時事ネタ披露でネットからは賛否」と評価は割れています。

沖縄の米軍基地問題については「沖縄の海って誰のもの?」という言葉で問題提起されていました。村本さんが今年も出演でき、ネタの内容にも制約を受けなかったようであり、前述したような趣旨からも何よりなことです。もう一つ、辺野古の新基地建設工事を巡る芸能人の政治的な発言に関し、その是非に一石を投じている下記のような話題も紹介させていただきます。

モデルのローラ(28)らが呼びかけ大きな話題となっている、名護市辺野古の新基地建設工事の中止を求める署名。12月18日には、アメリカ政府から何らかの返答を求められる10万筆に達した。

一方で、この問題を取り上げた『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)が物議を醸している。20日放送の『モーニングショー』は「ローラ 突然の政治的発言“辺野古にNOを”」と題してこの問題を特集。

ローラが自身のInstagramで署名を呼びかけたことが「波紋を呼んでいる」とし、「仕事がなくなる心配はありませんか」「CMの契約条項に抵触しないか心配」といったネット上の声を紹介した。こうした『モーニングショー』の取り上げ方にTwitter上では批判が相次いでいる。

《ローラさんが「政治的発言」をすることによってCM出演などに影響が出るのではないか、という言説は「心配」しているふりをして「抑圧」しているだけ》(法政大学教授・上西充子氏)

《芸能人は政治的発言はタブーみたいなテロップの出し方やめてほしい。こういう報道を見たら若い人はやっぱり政治の話はしちゃいけないんだなと思うし、無関心が蔓延するだけ、投票率だって上がらない。ローラかっこいいよ!》(越谷市議・山田裕子氏)

《松本人志やつるの剛士、小籔など、現政権にゴマをする政治的発言は「政治的発言」としてカウントされない。他方でローラさんのように現政権の目指す方向と違う発言をするだけで「政治的発言」としてテレビで吊し上げられる》(政治学者・五野井郁夫氏)

番組内で高木美保(56)は「芸能人の政治的発言はタブーという考えはもう変える時代」「別に政治家を倒そうということではなくて、この国をよくしたいという純粋さでは」と訴えた。

「そもそも”政治的”な話題を避けているのはワイドショーのほうでしょう。テレビが沖縄の基地問題をまともに取り上げないから、ローラさんが自ら署名を呼びかけた側面もあるわけです。むしろ、ローラさんを揶揄するような取り上げ方をした『モーニングショー』のようなマスコミの姿勢こそ、問い直されるべきではないでしょうか」(マスコミ関係者)【2018年12月20日女性自身

最後に、この一年間、多くの皆さんに当ブログを訪れていただきました。本当にありがとうございました。どうぞ来年もよろしくお願いします。なお、冒頭にも記しましたが、次回の更新は例年通り元旦を予定しています。ぜひ、お時間等が許されるようであれば、早々にご覧いただければ誠に幸いです。それでは少し早いようですが、良いお年をお迎えください。

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2018年12月15日 (土)

区人勧のマイナス勧告

金曜日、新たな組合年度での第1回職場委員会を開きました。定数69名で成立要件は3分の2以上の実際の出席が必要です。今回、開会と同時に成立要件を満たす出席者が得られ、提案した議題もすべて承認いただきました。お忙しい中、出席くださった職場委員の皆さん、ありがとうございました。

その中の議題の一つが「2018年度賃金・一時金闘争について」でした。私どもの市職員の賃金水準は独自な人事委員会を持っていないため、東京都職員に準じています。そのため、東京都人事委員会勧告(都人勧)の内容を基本に改定していきます。今回の都人勧は年間一時金を0.1月分引き上げ、4.6月分とする内容でした。

月例給は今年も国家公務員に対する人事院勧告の官民較差を下回る結果となっていました。初任給は改善(千円引き上げ)されましたが、給料表の改定は概ね26歳までの初任層のみにとどまっていました。組合は11月2日に「2018賃金改定に関する自治労都本部統一要求書」を市当局に提出し、文書回答を得た後、11月13日の団体交渉で下記の内容で労使合意をはかっていました。

  1. 東京都人事委員会の勧告通り初任給を千円引き上げる。初任給の引き上げに伴い、初任層の月例給を引き上げる。実施時期は2019年4月1日
  2. 一時金は0.1月分引き上げて年間一時金を4.6月分とする。再任用職員は0.05月分引き上げて年間2.4月分とする。来年度、夏と年末ともに2.3月分(再任用1.2月分)ずつの配分とする。
  3. 年末一時金2.325月分(再任用1.25月分)の支給日は12月17日。今年度の一時金引き上げ分の支給は2019年2月1日を予定

多岐にわたる要求項目の中で、会計年度任用職員制度や時間外勤務縮減の課題については引き続き労使協議していくことを確認しています。また、最近の記事の冒頭で触れていましたが、11月13日に開かれた団体交渉は賃金交渉のゴールである一方、新たな課題を巡るスタートでもありました。

各種手当の中で都の水準を上回っている額や運用について見直したいという提案が示されました。今後、年度末まで交渉を重ねながら理不尽な提案は押し返し、納得できる決着点をめざしていきます。組合員の皆さんに大きな影響を与える提案内容であり、金曜の第1回職場委員会の議題に掲げて詳細や組合の考え方を報告しています。

さて、前回記事「働き方改革への労組の対応」のコメント欄で、nagiさんから次のような要望が示されていました。前回記事を投稿した直後、今週末の新規記事は別な題材の内容の投稿を考えていました。特別区人事委員会の動きは私どもの市に対して直接影響を与えるものではありませんが、重要な論点が含まれている題材だったため、当初の予定を変更して今回の記事に臨んでいます。

ブログ都議で有名な音喜多駿都議のブログで知ったのですが、今年の東京都人事委員会の勧告で約1万円のマイナス改定勧告があったが、23区長会がそれにしたがわないことを表明したそうですが、これは事実なんでしょうか。まあ誰でも給与が下がるのを肯定できるわけないのですが、今まで給与をあげる根拠に人事委員会の勧告を理由にしていたならば、マイナスの時に従わないのはダブスタ批判を受けるのは間違いない。まあこの辺りは詳しくないので、そのうちOTSU氏が記事に取り上げるかもしれません。それを期待しています。

東京都人事委員会勧告という記載は誤りで、特別区人事委員会の問題です。このコメントを受け、さっそく音喜多駿都議のブログを拝見しました。その中で紹介していた柳ケ瀬裕文都議の記事「公務員給与は下がらず。勧告無視はおかしいだろう!」が経過や問題点を分かりやすくまとめられていました。そのブログ記事のほぼ全文を紹介した上、「何が問題なのか」を伝えさせていただきます。

今回はあまりにも、憤りを感じたので一筆。東京23区の「公務員給与」についてです。そもそも公務員(特別区)の給与は、どうやって決まるのか?毎年、特別区内民間企業の給与実態を調査する。その実態をベースに、現状の公務員給与と比較し、第三者委員会である「人事委員会」が高いかどうか判断し、その差を埋めるべく「○○円アップしなさい」「○○円値下げしなさい」などと勧告を出すのです。各区長はこの判断を「尊重」して給与の改定を行います。

さて、今年の人事委員会による勧告はどうだったのか?驚くべきことに、月給で平均9,671円という大幅な引き下げを勧告!!!この金額は月給を平均2.46%引き下げるという大胆な提案であり、特別区職員の間では、大きな衝撃が走った訳です。

これは人事制度の改正が影響している。特別区では新たに、主任職を将来の係長職への昇任を前提としたポストと位置付けた。そのため、係長となって責任や負担が増えることを危惧し、主任職とならずにワンランク下のポスト(主事)にとどまることを選択する職員が続出。その結果、職種(ポスト)は低いけど、給与は高い職員が増加し、民間との比較で大きな乖離がでた訳です。

それにしても、約1万円の引き下げ勧告はインパクトがありますね。例年、勧告の通り給与の引き上げをしてきたので、当然、引き下げになるだろうと考えていたら。。。23区職員の給与下げず、勧告非実施 区長会と労組妥結

なんと!給与は下げないという。特別区長会と労働組合は職員給与を据え置くことで妥結。これまで人事委員会勧告を「金科玉条」とし、職員給与「値上げ」の根拠としてきたのに、「値下げ」の勧告は無視するとは。

特別区長会の西川会長のコメントによると、引き下げ勧告は「人事・給与制度の抜本的な改正の過渡期に生じた一過性の歪みが主な要因」とした上で民間企業を始め、国や多くの地方公共団体において給与水準の引上げが見込まれる中で、有為な人材の確保がより厳しく なる恐れがあり、かつ、引下げの影響は特別区の常勤職員のみならず、多方面に及ぶことも懸念されます。

だそうです。なんとでも理屈はつけられるもので。人事委員会勧告は、民間給与実態の調査が50人以上の事業所しか対象にしておらず、そもそも民間の実態を正しく反映していません。区民が納得できるように、勧告の在り方そのものを改善すべきと考えています。ですが、さすがに、値上げについては盲目的に「勧告」に従い、値下げとなると、さまざまな理由をつけて「勧告」を無視するのは、まさにダブルスタンダードそのもので、区民の理解は得られないでしょう。

毎年、特別区職員労働組合連合会(特区連)が区長会と賃金改定交渉を行なっています。その際、特別区人事委員会勧告(区人勧)の内容をもとに交渉が進められ、組合側は財政難を理由にした値切りなどを警戒しながら「完全実施」を求める立場でした。そもそも柳ケ瀬都議が解説しているとおり東京23区内の民間賃金の相場を調査し、区職員の賃上げや賃下げを区人勧が示す役割を負っています。

以前の記事「人事院勧告の話、インデックス」などで伝えているとおり人事院勧告や各自治体の人事委員会勧告のあり方や仕組みについて検討すべき課題は散見しています。政治の意向を忖度しているような場面が見受けられた時もあります。それでも労働基本権に制約がある公務員労働組合側からすれば中立的な機関からの勧告は最低限「完全実施」を求めていくことになります。

当然、民間賃金水準を調査した結果であるマイナス勧告も、これまで労働組合側は基本的に受け入れてきています。特区連も同様です。したがって、23区内の民間賃金の水準が大幅に急落した調査結果をもとに示された月1万円近くのマイナス勧告であれば決して望ましい話ではありませんが、今回も受け入れざるを得なかったものと思っています。

このような基本的な姿勢を違え、引き上げの時は「完全実施」を求め、引き下げの時は勧告を無視するようであれば「ダブルスタンダードだ」と批判されても仕方ありません。しかし、今回は柳ケ瀬都議も把握されているとおり人事・給与制度の抜本的な改正の過渡期に生じた一過性のゆがみが大きな理由とされ、月例給平均9,671円という理不尽なマイナス勧告に至っていました。

区職員の方々にとって、肩書きの名称は変わっても基本的に同じ職責のもとに同じ仕事に励むことで、現給は保障された人事・給与制度の見直しでした。特区連としては区長会側と労使協議を尽くした上での決着内容だったはずです。さらに民間賃金水準の相場も、わずかだったとしても上向いている傾向が見られている中、区職員の月給だけが1万円ほど下げられる、このような矛盾こそ大きな問題だったはずです。

このような思いを背にした都区連などの労働組合側が「勧告の実施見送り」を強く求め、区長会側と交渉を重ねたことは必然だったものと見ています。11月22日未明、マイナス勧告を見送るという回答を引き出せたことは同じ公務員組合役員の立場から何よりな朗報でした。特区連側は「公務員労働運動にとっても画期的な到達点」「過去に例のない引き下げ勧告の実施を阻止した」と評価しています。

区長会側は「特別区の現在・未来を見据え、熟慮を重ねた上での決定」とし、「改正に伴う現在の給与制度適用の実態を充分に斟酌した上で、来年の公民比較の方法について検討するよう人事委員会に伝えたい」と言及しています。このような事情を理解された自治体議員の皆さんが多いため、今のところ柳ケ瀬都議や音喜多都議のように批判する声は広まっていないように理解しています。

私自身の問題意識、「何が問題なのか」は以上のような見解となります。このような事情や経過についてnagiさんからも理解を得られ、「ダブルスタンダード」というような批判が避けられれば誠に幸いなことだと考えています。最後に、私どもの組合の第1回職場委員会の資料の中でも下記のような【参考情報】として、組合員の皆さんにお知らせしていることを付け加えさせていただきます。

参考情報】 特別区人事委員会は月例給を平均9,671円引き下げる勧告を示していました。人事・給与制度の見直しによって生じた官民較差であり、特区連(組合側)は猛反発していました。11月22日未明、区長会との交渉の結果、マイナス勧告の実施見送りで労使合意することができています。「改正の過渡期に生じた一過性のゆがみが主な原因」という認識を区長会側にも持たせたことが解決につながっていました。

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2018年12月 9日 (日)

働き方改革への労組の対応

前回記事「入管法改正案が衆院通過」の冒頭で触れたとおり先月末、連合地区協議会の労働学習会『働き方改革への労組の対応』が催されました。以前の記事「働き方改革の行方」の中で紹介した連合東京の労働政策局長に今回も講師を依頼していました。この学習会の内容もたいへん重要であり、さっそく今週末に投稿する記事本文を通して概要を報告させていただきます。

さて、10月2日に発足した「全員野球内閣」は第4次安倍改造内閣に位置付けられます。返り咲きを果たした時が第2次安倍内閣と数えられ、それ以降、安倍首相のもとに総選挙が2回執行されました。総選挙後の組閣ではない場合、改造内閣と呼ばれます。その都度、いろいろなキャッチフレーズが安倍首相から発せられています。

一昨年夏の参院選挙後に発足した第3次安倍改造内閣は「未来チャレンジ内閣」と称し、働き方改革を一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジと位置付けました。労使の代表も有識者として構成した働き方改革実現会議を発足させ、政府は「多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます」と広報していました。

  1. 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善 
  2. 賃金引き上げと労働生産性の向上 
  3. 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正 
  4. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題  
  5. テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方 
  6. 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備 
  7. 高齢者の就業促進  
  8. 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立 
  9. 外国人材の受け入れの問題

検討事項として上記の9項目があげられていました。今回の労働学習会に参加する際、以前の記事「働き方改革の行方」に目を通し、政府の働き方改革実現会議における検討事項の9番目が「外国人材の受け入れの問題」だったことに目を留めていました。このような流れの中で入管法が見直された訳ですが、果たして政府広報の「働く人の立場・視点」で押し進めていたのかどうか疑問が残りがちです。

そもそも働き方改革実現会議のメンバーがILOの三者構成原則から外れ、有識者15名のうち労働側代表が連合の神津会長一人であるというバランスの問題も指摘されていました。2年前の労働学習会の中で、講師から構成メンバー全体の中で労働問題として働き方について語れる有識者自体が極めて少数であることの懸念も示されていました。そのため、使用者側の目線を優先した「働かせ方」改革にならないよう注意しなければならない点が前回の労働学習会の中で強調されていたことを思い出しています。

その後、働き方改革関連法は今年6月の通常国会で成立し、来年4月から順次施行されていきます。戦後、まもなく労働基準法等が施行された以降、70年ぶりの労働法の大改革だと言われています。法案審議を通して基礎データの不備などが発覚した結果、裁量労働制を拡大する法案は見送られました。一方で、様々な懸念点が指摘されている高度プロフェッショナル制度は成立しています。

労働学習会の講師は「連合として批判もたくさんあるが、働き方改革の方向性は一致している」という言葉を示されています。社会問題化している大きな課題として講師は「長時間労働を前提とする男性社会」「非正規労働者の低処遇な労働条件(正規・非正規格差)」をあげられていました。このような課題の解決に向け、働き方改革関連法が効果を上げていけば確かに何よりなことです。

働き方改革関連法で何が変わるのか、限られた時間の中で講師から分かりやすく説明していただきました。このブログでは主要な課題に絞って紹介させていただきます。全体的な内容が分かる資料として、厚生労働省等の発行した『「働き方」が変わります!!』というリーフレットも講師から配布されていました。リンク先のサイトにPDF形式で当該の資料が閲覧できますので興味を持たれ方はご参照ください。

大きな課題の一つは長時間労働の是正であり、労働時間規制等の見直しです。労働時間は原則1日8時間・週40時間ですが、労使協定、いわゆる36協定によって、定める範囲内で使用者は労働者に時間外労働をさせることができます。この36協定で定める時間外労働の上限を月45時間・年間360時間とすることが原則化されました。

臨時的な事情を具体的に明記した特別条項を設けることで原則以外の時間外労働が認められることになります。その際も、①年に1回を限度に単月100時間未満(休日労働を含む)、②2~6か月平均で月80時間以下(休日労働を含む)、③年720時間以下、④原則(月45時間)を超えるのは年6か月までという時間外労働を規制するルールが定められています。違反した場合、使用者側に罰則が科せられることになります。

続いて、「同一労働同一賃金」の課題です。労働学習会の冒頭、連合が制作した10分ほどのDVD『2018 どうやって取り組む?同一労働同一賃金』を視聴しました。非正規雇用で働く人の処遇改善の必要性や「同一労働同一賃金」について解説し、労働組合としての対応を伝える動画です。やはりリンク先のサイトでご覧になれますので、ぜひ、興味を持たれ方はご参照ください。

働き方改革関連法の成立によって、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で職務内容が同一だった場合、同じ賃金を支給し、差別的な取扱いが禁止されます。この制度の施行は2020年4月1日ですが、中小企業は1年遅れの2021年4月1日とされています。パートタイム労働者と有期雇用労働者を一括規制し、派遣労働者も含め、不合理な待遇の相違を禁止します。

①個々の待遇ごとに当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して不合理性を判断、②「同一労働同一賃金ガイドライン案」を厚生労働大臣告示、「指針」化、③基本給、賞与、諸手当、福利厚生などすべての待遇について均等・均衡の実現、このような点の必要性の説明が講師から加えられています。

その際、今年6月1日に示されたハマキョウレックス事件と長澤運輸事件の最高裁判決についての説明も受けました。ハマキョウレックス事件は正社員と有期雇用労働者の待遇の格差について、長澤運輸事件は正社員と定年後再雇用された嘱託社員(有期雇用)の待遇の格差について争われた事件でした。

ハマキョウレックス事件は労働者側が勝ち、長澤運輸事件は会社側が勝つという結果に分かれていました。ハマキョウレックス事件では有期雇用労働者と正社員との間に職務内容に差がないのにも関わらず、待遇に差があったことは労働契約法20条に違反すると判断されました。一方で、長澤運輸事件の有期雇用労働者は定年後に再雇用された高齢の労働者だったため、待遇差が不合理ではないと判断されたようです。

今回の労働学習会の直前、厚労相の諮問機関である労働政策審議会の部会が「同一労働同一賃金」の具体的なルールを示す指針(ガイドライン)をまとめたことも講師から報告を受けました。日本経済新聞の下記の記事『正社員の待遇下げ「望ましくない」、同一賃金実現へ厚労省が指針に明記』が紹介されましたが、労働者側にとって歓迎すべき動きでした。

厚生労働省は27日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会で、「同一労働同一賃金」の具体的なルールを示す指針(ガイドライン)をまとめた。基本給や賞与、福利厚生などについて不合理とされる待遇差の事例を示したうえで、正社員の待遇を引き下げて格差を解消することは「望ましくない」と明記した。

同一賃金は正社員と、パートや派遣社員など非正社員の不合理な待遇差の解消をめざす取り組み。6月に成立した働き方改革関連法に盛られ、2020年4月から順次適用される。厚労省は16年12月に指針の原案をまとめたが、今回は国会での法案審議や審議会の議論での指摘を反映した。

指針では正社員と非正社員の能力や経験、貢献度などが同じなら、基本給や賞与についてそれぞれに同じ額を支給するよう求めた。仕事の能力や経験などに差がある場合は、金額に一定の差が生じることも認めている。

一方、通勤手当や出張旅費は正社員と同一額を支給しなければならないと明記。更衣室や休憩室、転勤者用の社宅など福利厚生は原則として、正社員と差を設けてはならないとした。退職金や家族手当などは「不合理な待遇の相違の解消が求められる」としたが、企業によって支給目的が異なることが多く、具体例は示さなかった。

同一賃金を巡っては、正社員の手当などをなくして待遇を下げることで実現をめざす企業が増えるとの懸念も根強い。指針では「労使で合意することなく正社員の待遇を引き下げることは望ましい対応とはいえない」との考えを新たに加えた。

日本では非正社員の賃金水準は正社員の約6割にとどまり、欧州と比べて格差が大きい。非正社員として働く人は2千万人を超え、労働者全体の約4割を占める。働き手の意欲を高めるには、不合理な待遇をなくすことが欠かせない。賃金体系全体の見直しを迫られる企業も多くなりそうだ。【日本経済新聞2018年11月28日

二つの大きな課題に絞って書き進めてきました。それでも書き漏らしている話は数多く残っていますが、そろそろ今回の記事はまとめさせていただきます。以前の記事で紹介した「会計年度任用職員」の制度化は公務職場における「同一労働同一賃金」に向けた大きな流れの中で位置付いているものと受けとめています。上記のような動きを「追い風」とし、市当局との労使交渉につなげていく決意を新たにしています。

いろいろ不満な点が残っていたとしても働き方改革関連法は成立しています。私たち労働組合の役員は法改正の内容を的確に把握し、労使対等原則のもとに働き方改革の流れを受けとめながら組合員の皆さんの待遇改善につなげていかなければなりません。議長代行として閉会の挨拶を行なった際、このような思いを添えさせていただきました。最後に、講師を務めていただいた労働政策局長、参加された皆さん、ありがとうございました。

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2018年12月 1日 (土)

入管法改正案が衆院通過

水曜の夜、連合地区協議会の労働学習会『働き方改革への労組の対応』が催されました。以前の記事「働き方改革の行方」の中で紹介した連合東京の労働政策局長に今回も講師を依頼していました。この学習会の内容もたいへん重要であり、機会を見ながら当ブログの記事本文を通して改めて紹介させていただくつもりです。

この労働学習会に参加する際、以前の記事「働き方改革の行方」に目を通してみました。政府の働き方改革実現会議における検討事項は9項目あり、その9番目が「外国人材の受け入れの問題」だったことに目が留まりました。当たり前な話なのかも知れませんが、そのような流れの中で入管法改正の問題につながっていることを再認識したところです。

直近の記事は「徴用工判決の問題」「徴用工判決の問題 Part2」でした。韓国大法院は三菱重工に対しても賠償を求める判決を下し、ますます日韓関係が混迷化していく様相です。2回にわたって難しい論点が内在した問題を取り上げてきましたが、今回は記事タイトルに掲げたとおり入管法改正案について触れてみます。

入管法の正式名称は出入国管理及び難民認定法です。日本人を含めたすべての人の日本への出入国と日本に在留する外国人の在留資格に関する事項、さらに難民についても記されています。この二つは本来、何の関係もないため、別々の法律になっている国も多いようですが、日本は一つの法律にまとめています。

外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理・難民認定法(入管難民法)改正案は27日夜の衆院本会議で、自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数により可決された。与党は28日に参院で審議入りさせ、今国会の会期延長も辞さない構えだ。同法改正案は12月上旬にも成立する見通しとなった。

同法改正案は、単純労働を含む分野で外国人労働者を受け入れるため、在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」を新設するのが主な内容だ。来年4月1日に施行する。1号資格取得者は、比較的簡単な仕事をすることが想定される。日本語能力や就業分野に関する試験に合格しなければならない。在留期間は最長5年で、家族は帯同できない。農業や建設業など14業種で受け入れを検討している。【読売新聞2018年11月27日l

外国人労働者の雇用拡大の問題も当ブログで取り上げるタイミングを見計らってきましたが、火曜の夜、法案は衆院を通過し、審議の舞台は参院に移されています。より望ましい「答え」を見出すためには異なる視点や立場から多面的なチェックをはかれる関係性が非常に重要なことだと考えています。

具体例として労使交渉があり、国権の最高機関である国会は最もその機能を発揮して欲しい舞台だと言えます。ただ残念ながら法案の不充分さが数多く指摘されたとしても圧倒多数の議席を占める与党側は「成立ありき」で推し進め、対抗する野党側には問題視した法案を押しとどめる力がない現況です。逆に「何でも反対でパフォーマンスが過ぎる」という批判が野党側に浴びせられる場合まであります。

今回の入管法改正案に関しても国民の多数は「拙速に決めるべきではない」と考えています。しかし、そのような声には耳を貸さず、このまま強引に法案を成立させる構えを与党側は崩していません。最近の傾向として、それでも内閣支持率には大きな影響を与えないという構図が顕著になっています。そのため、ますます与党側の強引な国会運営が目立つようになっているのではないでしょうか。

外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法改正案が審議入りした。政府は、来年度から5年間の受け入れを最大約34万5千人とし、初年度は最大約4万8千人とする見込みを示した。業種別では介護が累計最大6万人などと説明した。だが、こうした数字は現時点での「入り口」の目安を示したにすぎない。5年ごとに次の5年の見込み数を提示するというのでは、将来的に何人受け入れることになるのかが分からない。

しかも、安倍晋三首相は人手不足が解消された場合について「すでに在住する外国人の在留をただちに打ち切り、帰国させることは考えていない」とも述べた。人手が足りないという理由で入国を認めるのに「該当する仕事」がなくなっても日本に住み続けることになる。日本で別の仕事に就くことを認めるのならば、制度の趣旨そのものが根底から覆る。

そもそも何を基準に人手不足やその解消を判断するのか。産業の盛衰は世の常だ。人口が増えていた時代でも、人材募集に苦戦した業種や企業は存在した。人手が足りないというだけで、外国人を受け入れるのは安易に過ぎる。さらに問題なのが、日本人の雇用への影響だ。産業界が外国人労働者に期待するのは「安い労働力」の確保であり、賃上げをしたくないという経営者の本音が垣間見える。

政府は「日本人と同等以上の報酬を雇用契約の基準とする」としているが、各国をみれば、外国人に合わせる形で自国民の賃金水準が下がっているのが現実だ。安倍政権は経済界に賃上げを求めている。安い労働力を大規模に招き入れることは生産性向上に資するのか。政権全体としての政策にちぐはぐな印象を受ける。

外国人労働者が母国に残した家族について、社会保障サービスを制限するための法改正は、通常国会以降となる。こうした法改正は、外国人労働者の受け入れ拡大とセットにするのが筋だ。首相は国民への丁寧な説明を約束したが、制度上の課題やあいまいさは残ったままだ。なぜ外国人を大規模に受け入れなければならないのか。法案の目的は依然としてはっきりしていない。政府・与党は今国会での法案成立にこだわらず、土台部分をしっかり築き直すよう求めたい。【産経新聞2018年11月15日

安倍政権を擁護することが多い産経新聞も上記のような問題点を伝えています。移民政策に対する向き合い方が異なっていたとしても、今回の入管法改正案の曖昧さの問題点は上記のとおりであり、いわゆる右や左の立場性を超えて批判の声が高まっているように見受けられます。日本社会の将来の姿を左右する可能性のある法案審議の進め方として、このような国民の思いとのネジレがあったままで良いとは到底思えません。

その中でも1点だけ前向きにとらえるべき見方があるように思っています。この法案がクローズアップされたことで、技能実習生という名目で来日している外国人労働者の劣悪な労働環境の問題が注目を集めるようになりました。本来であれば、入管法改正案の動きとは別に切り込まなければならない課題だったはずです。

政治や行政、さらに労働組合がそれぞれの役割を充分果たせていなかった現状を反省しながら、必要な対策を講じていく機会につなげるべきものと考えています。法案の行方に関わらず、安価な労働力の確保のための外国人労働者の受け入れ拡大であるようでは大きな問題です。産経新聞が訴えているとおり将来的には国内の賃金水準の引き下げを招きかねません。

最後に、この問題を取り上げた「hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)」の記事『外国人労働者問題の基本認識』『UAゼンセンの外国人労働方針』を紹介させていただきます。詳しい内容はリンク先のサイトをご参照いただければと考えていますが、専門家の視点から労働組合側のスタンスの難しさを解説されています。

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2018年11月25日 (日)

徴用工判決の問題 Part2

このブログは毎週1回、土曜もしくは日曜に更新しています。以前はお寄せいただいたコメントに即応するように努めていたため、ほぼ毎日、ブログに関わる時間を見つけていました。現在は実生活に過度な負担を欠けずに続けていくためにも、たいへん恐縮ながらコメント欄への対応も含めて土曜もしくは日曜に限るようにしています。

さらに言葉や説明が不足しないように難しい問いかけに対しては記事本文を通してお答えするように努めています。そのため、記事タイトルに「Part2」を付け、前回の内容を補足する新規記事の投稿が増えています。今回、外国人労働者の受け入れ拡大の問題を記事タイトルに考えていましたが、前回記事に寄せられたコメントに対応する内容が膨らみそうだったため、早めに「徴用工判決の問題 Part2」に改めていました。

さて、前回記事の初めのほうで、次のように前置きさせていただきました。あくまでも個人的な考え方の整理であり、閲覧されている皆さん一人ひとりが様々な「答え」をお持ちであろうかと思います。したがって、一つの「答え」を押し付ける意図は毛頭なく、多様な情報に触れる機会だとお考えいただれば幸いなことだと記していました。この言葉は前回以上に今回の内容には当てはまるのかも知れません。

先週末、ご教授ください! さんからのコメントを受け、前回記事では触れられなかった点について補足していました。その時にお答えした内容に少し手を加えながら紹介していきますが、まず「私自身、専門家ではありませんので、いろいろな資料を読み、私なりに理解している点についてお伝えします」と一言添えさせていただきました。韓国大法院の裁判官の間でも解釈が分かれる難しい問題でもあり、論点は前回記事で触れた次の箇所だと考えています。

韓国大法院が今回の判決を下す際、反対した2人の裁判官は「請求権・経済協力協定の対象には個人請求権も含まれ、原告が個人請求権を行使することは制限される」とし、「国際法に照らすと、国民の財産などに関する問題を国家間の条約で一括して解決するのは一般的に認められている。協定が憲法や国際法に違反していないのならば、内容を好む、好まないに関わらず、守らなければならない」と指摘していました。

このような問題において守るべき国際法ですが、1969年に国連国際法委員会が条約に関する慣習国際法を法典化した「条約法に関するウィーン条約」を採択しています。その第26条に「効力を有するすべての条約は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない」と書かれています。この点において、日韓請求権協定を守らない韓国に対しては「国際法に照らし、あり得ない判断だ」という批判につながります。しかしながら次のような論点もあるため、徴用工の問題は複雑化しています。

かつて国家総動員法による徴用は日本国民全体に強要されたものです。植民地だった当時、訴えている原告も日本人として、当時の法律に基づき徴用(詳細は後述)されたものであると見られています。しかし、その植民地支配(日韓併合条約)が不当だと解釈されれば、この関係性も不当だということになります。2016年に三菱マテリアル(旧三菱鉱業)は元中国人労働者に対して個人賠償することを決めています。その違いは韓国は植民地だったが、中国は占領地だったという違いからだそうです。

前回記事の中で「しかしながら徴用され、過酷な環境を強いられた原告のような労働者がいたことも事実として押さえなければなりません」という記述がありました。この記述は私自身の思いをそのまま表わした言葉です。この言葉の直前にはテキサス親父さんの元徴用工の「強制的に奴隷のように働かされた」という主張に対し、朝鮮半島出身者の中には本土出身者より稼ぐ者もいた、という解説を紹介していました。

この解説に対し、私から「自発的な出稼ぎでそのような待遇の労働者がいたことも事実だろうと思います」と記した上、前述した言葉につなげていました。両面から少数の事例をもって全体像を決め付けられないという問題意識を提起したつもりでした。ただ先日、このブログをご覧になった組合員から次のような指摘を受けました。

「過酷な環境を強いられた原告」=「強制的に奴隷のように働かされた」と読み取れるため、その点に疑問を持つ人たちも多い中、「事実として押さえなければなりません」は決め付けた言葉ではないかという指摘でした。「なるほど」と思いながらも「奴隷のように」はテキサス親父さんの解説からの引用だったため、指摘を受けた時、最初は戸惑いました。

元徴用工は賃金が支払われず、感電死する危険がある中で溶鉱炉にコークスを投入するなど過酷で危険な労働を強いられていたという事実認定は大きな争点になっていないものと理解していました。それでも過酷な環境を強いられたかどうか疑問視される人たちもいる中、直前の言葉「自発的な出稼ぎでそのような待遇の労働者がいたことも事実だろうと思います」とのバランスを取って断定調に記さないほうが良かったものと省みています。

加えて、KEI さんから「朝鮮半島で徴用が始まったのは1944年になってからのことなので、原告は「徴用」された労働者ではないことが明らかになっています。しれっと嘘を書かないように」という指摘を受けました。このあたりも前回記事の中で触れるべき点だったようです。原告が日本に来たのは1943年でした。国民徴用令は日本内地において1939年7月から施行されていました。当初、朝鮮での適用は控え、1944年9月から実施されるようになっていました。

そのため、KEI さんから徴用工と呼ぶのは嘘だと指摘を受けてしまったようです。戦時体制下における労働力確保のため、1942年には「朝鮮人内地移入斡旋要綱」による官斡旋方式も始まっていましたが、いずれにしても原告は国民徴用令のもとで日本に来た労働者ではなく、法的な言葉としての「徴用工ではない」という指摘はその通りだと思っています。私自身、前回記事を書き進める際、次のような報道も目にしていました。

河野太郎外相は9日の記者会見で、韓国最高裁が確定判決で新日鉄住金に賠償を命じた元徴用工訴訟の原告について、「募集に応じた方で、徴用された方ではない」と述べた。政府は判決後、原告らを「旧朝鮮半島出身労働者」と表現しており、その理由を説明した形だ。政府は、戦時中の朝鮮半島での動員には、募集▽官によるあっせん▽徴用--の3段階があったと説明。従来は一括して「旧民間人徴用工」などと表現していたが、判決後は区別している。自民党からは「原告らは『募集工』と呼ぶべきだ」との声が上がっていた。【毎日新聞2018年11月9日

言葉の使い方は重要です。上記の事実関係を把握していたため、最初、せめて「徴用工」と括弧を付けて記すことも考えていました。このブログでの言葉や用語の使い方に迷った時、参考にするのは自宅に届く読売新聞です。読売新聞では括弧も付けずに徴用工と記していましたので、このブログでも同じ対応をはかっていました。ちなみに前回記事の最後のほうで紹介した前大阪市長の橋下徹さんの論評「徴用工問題、日本が負けるリスク」の中には次のような記述があります。

労働者側は日本企業で強制的に働かされたと言い、日本政府や自民党は強制ではないと主張する。日本のメディアの多くでは「徴用工」という言葉を使っているが、これは強制的に働かされたことを意味するので、安倍晋三首相や日本政府そして自民党は「徴用工」という言葉を使わずに、「朝鮮半島労働者」と名付ける。強制ではないと強調したいのであろう。しかし、労働者のことをどう呼ぶかはあまり問題ではない。

この後、橋下さんは「強制労働の問題でも、徴用=強制があったかどうかということよりも、問題となっている企業の当時の労働環境がどうであったのか、それは世界各国でのそれと比べてどうだったのか、日本だけが特殊だったのか、という比較検証が必要である」という提起につなげています。このような提起も参考にした上、徴用工という言葉を当ブログでも採用していました。

以上のような論点がありますが、外交保護権は消滅したが、個人の損害賠償請求権は消滅していないという解釈の適否も大きな論点となっています。様々な切り口からの論点が存在しているため、たいへん難しい問題に至っているものと理解しています。それに対し、日韓併合条約の正当性をはじめ、徴用工の問題は日韓請求権協定によって解決済み、このように考えている人たちからすれば今回の韓国大法院の判決は決して容認できないものとなっています。

このように淡々と説明を加えているため、nagiさんからは私自身が「判決に賛意を示しているのか、反対なのかよく読み取れませんでした」と問いかけられています。いつものことで恐縮ですが、二者択一で問われれば、どちらでもないという答えになります。前回記事に託した内容全体が私自身の「答え」です。2012年に韓国大法院が「個人請求権は消滅していない」と審理を差し戻し、2013年にソウル高裁が賠償支払いを命じた時点から、ある程度予想できた判決だったと思っています。

韓国政府が司法と事前に調整しなかったことについて、三権分立の原則からやむを得ないものと見ています。示された判決内容を尊重していくことも三権分立の原則から重視すべき点なのかも知れませんが、判決後、韓国政府は日韓関係を未来志向的に発展させていくことに触れながら対応策をまとめていく方針を示しています。そのため、日韓請求権協定に基づく国と国の約束を守れず、このまま韓国政府が問題を放置するような時こそ、強く憤るべき局面だろうと考えています。

前回記事の中で「国家間の約束は重く、これまで徴用工だった方々に充分な保障がされていなかった場合、韓国政府の責任として対応すべきものと考えています。ちなみに判決に反対した2人の裁判官は「個人請求権を行使できないことで被害を被った国民に対し、国家は正当な補償をしなければならない。日本企業の代わりに韓国政府が補償するべきだ」という意見も添えていたようです」と記していました。

したがって、賠償を命じられた企業も、日本政府も新たな負担をすべきとは考えていません。自分の腹が痛む、痛まないに関わらず、個々人が正しいと思う言葉を発せられる、このような社会であることが重要です。考え方は異なっていても、多様な「答え」があることを認め合っていける関係性も欠かせません。異なる「答え」に批判が集中し、声を出すこと自体、委縮するような雰囲気につながる事態は避けなければなりません。

今回の判決を示す際、前述したとおり韓国大法院の裁判官の中でも意見は分かれていました。韓国内の声も一色ではありません。日本国内も同様です。今後、どのような対応策が望ましいのか、いろいろ難しい問題があるのかも知れません。しかし、双方が感情的な反発や敵愾心を燃やす声だけの一色となり、強硬な姿勢を示す選択しかなかった場合、たいへん残念な事態だろうと思います。

四国人さんからのコメントには様々な論点が含まれていました。ここまで記したことでお答えしている点がある一方、充分補え切れていない点があることもご容赦ください。その中で明確にお答えすべき点として、私どもの組合の執行委員から韓国を強く非難したいという相談を受けた場合の問いかけです。このブログで徴用工判決の問題を取り上げていますが、そもそも執行委員会等で議論している訳ではありません。

あくまでも私自身の個人的な見解を示しています。したがって、韓国を非難したいという執行委員に対して自制を求めることは考えられません。その際、私自身の考えを伝えるかも知れませんが、最終的な判断は執行委員自身に委ねる関係性となります。組織として議論を尽くし、一定の方向性が決まっている事案についても状況に応じ、その方向性と相反する個人的な意見が示された場合も同様だろうと考えています。

膨らむどころか、前回記事以上の長さとなっています。寄せられたコメントすべて網羅できていませんが、前回の内容を補いながら改めて私自身の考えを書き進めてきました。慰安婦財団解散の問題にも触れるつもりでしたが、このあたりで今回の記事は区切りを付けさせていただきます。

最後に、レバノン日本国特命全権大使だった天木直人さんのブログ記事を紹介します。すべて私自身の見方と一致している訳ではなく、言葉使いも気になるため、紹介すること自体に批判を受けるのかも知れませんが、多様な「答え」に触れ合う機会としてご理解くださるようお願いします。

韓国政府は昨日21日、慰安婦財団の解散を正式に発表した。これに関し、日本は、安倍政権はもとより、与野党もメディアも世論も、狂ったように猛反発している。国際合意を一方的に破るような国は国ではないと。これでは日韓関係はなりたたないと。それを言うならトランプの米国に言うべきだ。しかし、私が書きたいのはその事ではない。米国と違って韓国は合意を破っていない。その事を言いたいのだ。

報道を冷静に読むと、韓国政府ははっきりと述べている。韓国政府は日韓合意を破棄するつもりはないと。日韓合意を順守することに変わりはないと。その一方で、すべての報道は教えてくれている。元慰安婦のうち約7割は財団が支給した現金を受け取ったが、一部の慰安婦や市民団体が合意を批判して受け取らないままだと。これを要するに、慰安婦財団の役割が終わったということだ。

受け取らないと決断した元慰安婦がいまさら受け取ることはない。日韓合意に反対する市民団体が反対を止める事はない。個人の拒否する意思や反対行動を、政府の合意で一方的に捻じ曲げたり、阻止する事は出来ない。それが民主主義だ。役目の終わった慰安婦基金の残りの財源を無駄にしないためにも、韓国政府の言う通り、他の目的に有効に使われるように日韓両政府は協議を始めるべきなのだ。

ここまで書いていくと、賢明な読者ならもうお分かりだろう。韓国政府は日韓合意を一方的に破棄したわけではない。あの日韓合意はもはやその役割を終えただけなのだ。日本が一方的に約束違反だと怒り狂っているだけだ。ついでに言えば、あの徴用工問題もそうだ。個人の補償請求権は、日韓合意で消滅したわけではない。このことは日本政府も認めている。韓国最高裁の判決は、日韓両政府にあの時の不十分な日韓合意について善後策を考えろと命じただけだ。

そして文在寅大統領は安倍首相と違って司法の中立性を尊重し、最高裁の判断を尊重し、日韓両政府で善後策を考えようと安倍首相に提案しているのだ。慰安婦問題といい、徴用工問題と言い、今度の騒動から見えたもの。それは日本と言う国が、政治家もメディアも世論も、歴史を直視する勇気を持たず、隣国に対する反感、差別意識から抜けきれないという事である。残念でならない(了)

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2018年11月17日 (土)

徴用工判決の問題

今期の賃金交渉は早期に決着できました。独自な人事委員会を持たない当市は東京都の人事委員会勧告の内容をもとに改定することを基本としています。今回もその基本原則を確認し、先週火曜夜に労使合意しました。今年も月例給の引き上げは見送られていますが、年間一時金は0.1月分引き上げられて4.6月分となります。

その夜に開かれた団体交渉は賃金交渉のゴールである一方、新たな課題を巡るスタートでもありました。各種手当の中で都の水準を上回っている額や運用について見直したいという提案が示されました。今後、組合員の皆さんに詳細を報告し、年度末まで交渉を重ねながら理不尽な提案は押し返し、納得できる決着点をめざしていきます。

このブログでは政治的な話題を取り上げることが多くなっていますが、組合活動の日常は労働条件を巡る労使協議が大半を占めています。このあたりの関係性の説明は以前の記事「組合の政治活動について」や「一つの運動として」の中で綴っていました。今回も日常の組合活動からは離れた非常に難しい話題に触れてみるつもりです。

前々回記事「原発の話、インデックスⅡ」の冒頭、「再び、組合役員の担い手問題」のコメント欄で韓国の最高裁(韓国大法院)が戦時中の徴用工に賠償を命じた判決の問題も取り上げられていたため、 私からは「この場でも私自身の考え方を示すべき点があろうかと思いますが、難しい問題であればあるほど中途半端に触れないように努めています」と書き添えていたことを紹介していました。

さらに触れるのであれば腰を落ち着けて取り上げるべき問題だろうと思い、たいへん恐縮ながら言葉や説明が不足しそうな触れ方は避けてきました。なかなか難しい問題であり、見送ったままにすることも望ましい判断だったのかも知れません。それでも今回、私なりの問題意識をまとめてみる機会としています。

あくまでも個人的な考え方の整理であり、閲覧されている皆さん一人ひとりが様々な「答え」をお持ちであろうかと思います。したがって、一つの「答え」を押し付ける意図は毛頭なく、多様な情報に触れる機会だとお考えいただれば幸いなことです。まず事実関係を整理するため、次の報道内容を紹介します。

日本の植民地時代に強制労働させられたとして元徴用工の韓国人ら4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟で、韓国大法院(最高裁)は30日、同社の上告を棄却し、1人当たり1億ウォン(約1千万円)を支払うよう命じた2013年のソウル高裁判決が確定した。日本企業に賠償を命じる判決が確定したのは初めてで、日韓関係は新たな火種を抱え込んだ。

日本政府は、元徴用工の個人請求権は日韓国交正常化に伴う1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場。これに対し13人の判事全員による審理では、7人が「請求権協定は日本の不法な植民地支配に対する賠償請求交渉ではなかった」と結論づけ、強制動員被害者の日本企業への慰謝料請求権は協定の適用対象外だとした。一方、協定に含まれるとした反対意見は2人だった。

原告らは2005年2月に提訴。一、二審では時効などを理由に棄却された。だが12年に最高裁が「個人請求権は消滅していない」と審理を差し戻し、13年にソウル高裁が賠償支払いを命じた。元徴用工による損害賠償請求訴訟は、高裁と地裁を含めて他に14件あり、今後は一、二審ですでに賠償命令が出たものも含めて日本企業側が敗訴する公算が大きい。韓国政府が認定した元徴用工は22万人で今後、提訴が相次ぐ可能性がある。同様の訴訟が起きている中国や、徴用工問題を「過去の清算」として賠償を求める北朝鮮にも影響を与える恐れもある。

韓国の歴代政権は、徴用工問題は協定で解決済みという立場を維持してきたが、判決を受けて再検討を始める見通し。李洛淵首相は「司法判断を尊重し、判決と関連した事項を綿密に検討する」とした政府の立場を発表した。新日鉄住金は「日韓請求権・経済協力協定と日本政府の見解に反するもので、極めて遺憾」と書面でコメントを公表。判決に応じなければ、韓国内の資産を差し押さえられる可能性があるが、同社は資産の有無を明らかにしていない。

<日韓請求権協定> 国交正常化を定めた1965年の日韓基本条約と同時に締結された付随協約。第1条で日本の韓国に対する経済協力として、当時の約1080億円に当たる3億ドルを無償供与し、別に2億ドルの長期低利貸付を行うことを定めた。第2条で日韓両国とその国民の間の財産、権利、利益、請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」ことを確認。第3条では協定に関する紛争はまず外交で解決し、解決しない場合は仲裁委員会の決定に服すると規定した。【東京新聞2018年10月31日

この判決が示された後、主要な新聞社が揃って判決内容を批判的な論調で報道していました。これまで新聞社の基本的な立ち位置によって評価が分かれる傾向もありましたが、この問題に限っては、ほぼ足並が揃っていたようです。ZAKZAKの【痛快!テキサス親父】の次のようなコラム記事の一部を紹介しますが、多くの日本人が同じような気持ちを抱き、怒っているのかも知れません。

1965年に日韓両国は、「日韓基本条約」と「日韓請求権・経済協力協定」を締結し、国交を結んだ。この際、日本は、韓国国内に残した約53億ドルとされる莫大な資産を放棄したうえ、当時の韓国の国家予算の約2・5倍という総額8億ドル(無償3億ドル、有償2億ドル、民間融資3億ドル)を経済協力金として支払ったという。日本の外貨準備額が18億ドルのときの8億ドルだぜ!俺は、日本人をすごいと思う。

この協力金には、日本の敗戦に伴う、韓国人への未払い賃金なども含まれていた。韓国政府がまとめて受け取り、自国民へ補償するという約束で、請求権問題は「完全かつ最終的に解決した」と記されたんだ。ところが、韓国政府はこの大金を経済発展のために使ってしまい、個人の未払い賃金には払わなかったという。そして、このことを2005年まで自国民に伝えてこなかった。韓国最高裁は今回、国家間の条約や歴史を無視して、日本企業に賠償命令を出した。

世界に向けて「わが国は法治国家ではない」と宣言したようなものだ。そして、文在寅大統領率いる韓国政府は「司法府の判断を尊重する」と、うそぶいているという。こんなヒドイ話はないぜ。親が子供の給料を会社からネコババしておきながら、子供は給料を親ではなく会社に請求しているようなトンチンカンな話だぜ。二重請求だろ?自国民をダマして、ダマしきれなくなったら、形だけの裁判所を使って日本企業に支払い命令を出したといえる。「国家ぐるみの詐欺」と言われても仕方ないんじゃないか?

元徴用工の「強制的に奴隷のように働かされた」という主張に対し、朝鮮半島出身者の中には本土出身者より稼ぐ者もいたという記述が上記のコラムの続きの中にありました。自発的な出稼ぎでそのような待遇の労働者がいたことも事実だろうと思います。しかしながら徴用され、過酷な環境を強いられた原告のような労働者がいたことも事実として押さえなければなりません。

さらに「日本の左派団体やメディアが暗躍しているんじゃないのか?」という言葉もありましたが、憶測や思い込みが先走ってしまうと事実関係を正しく把握できない恐れもあります。このように淡々と怒りを前面に出さずに今回の問題を語ると「韓国に寄り過ぎだ」と批判され、やはり「左派団体の一人」というレッテルを貼られてしまうのでしょうか。

確かに左に位置する立場の方々は今回の判決に際し、怒りを前面に出していない傾向があります。このブログの中で時々紹介している弁護士の澤藤統一郎さんは「徴用工訴訟・韓国大法院判決に真摯で正確な理解を」というタイトルの記事を投稿されていました。「判決は、けっして奇矯でも、反日世論迎合でもない。法論理として、筋が通っており、条理にかなっていることも理解しなけばならない」と訴えられています。

そもそも日本政府も日韓請求権協定があっても、個人の損害賠償請求権があることを認めていました。1991年8月27日の参院予算委員会で、外務省の柳井俊二条約局長(当時)は「両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決した訳でございます。その意味するところでございますが、日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」と答弁していました。

韓国大法院が今回の判決を下す際、反対した2人の裁判官は「請求権・経済協力協定の対象には個人請求権も含まれ、原告が個人請求権を行使することは制限される」とし、「国際法に照らすと、国民の財産などに関する問題を国家間の条約で一括して解決するのは一般的に認められている。協定が憲法や国際法に違反していないのならば、内容を好む、好まないに関わらず、守らなければならない」と指摘していました。

このような考え方に立った場合、安倍首相や河野外相らが「国際法に照らし、あり得ない判断だ」と強い口調で批判されていることも理解できます。一方で、個人の請求権は消滅していないという解釈も残されている中、もう少し含みを持たせた言葉のほうが適切だったのではないかと感じていました。特に現時点では三権分立における司法としての判断であり、このまま韓国政府が国家間の信頼関係を損ねるような時こそ、強く批判する局面だろうと思っています。

韓国側の政権は日本と比較できないほど大きく変遷してきています。しかし、国家間の約束は重く、これまで徴用工だった方々に充分な保障がされていなかった場合、韓国政府の責任として対応すべきものと考えています。ちなみに判決に反対した2人の裁判官は「個人請求権を行使できないことで被害を被った国民に対し、国家は正当な補償をしなければならない。日本企業の代わりに韓国政府が補償するべきだ」という意見も添えていたようです。

判決後、韓国政府は「司法の判断を尊重して、最高裁の今日の判決と関連する事項を綿密に検討する」とし、政府の対応策をまとめていく方針を示していました。その上で「強制徴用の被害者が受けた傷を迅速かつ最大限に癒すことができるよう努力していく」と強調し、同時に日韓関係も「未来志向的に発展させていくことを希望する」という立場を表明していました。

日本政府も、私たち日本人も、この韓国政府の言葉の底意を信頼し、感情的な反発や敵愾心を燃やすことなく、今後の推移を見守っていくことが肝要だろうと考えています。「甘すぎる」という見方もあろうかと思いますが、あくまでも現時点での私自身の「答え」となります。なお、前大阪市長の橋下徹さんは「徴用工問題、日本が負けるリスク」という論評を示し、『徴用工判決「日本は全く悪くない」は本当なのか?』という論点を提起されています。

最後に、韓国の男性アイドルグループ防弾少年団(BTS)のメンバーが着た原爆キノコ雲のTシャツの問題について一言だけ触れさせていただきます。至らない点や問題があれば指摘し、改めてもらう、場合によって相応のペナルティも必要なのかも知れません。しかし、このような問題に限らず、nagiさんから紹介されたコラム「われわれ韓国人が手を差し出すべき日本人もいる」の著書が述べているような冷静さを保つことによって、日韓両国民は歴史問題の痛みを乗り越え、未来への扉を開けられるのではないでしょうか。

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2018年11月10日 (土)

定期大会を終えて、2018年秋

記事タイトルに悩む時がありますが、今回、悩まず「定期大会を終えて、2016年秋」「定期大会を終えて、2017年秋」という3年続けた同じパターンでの記事タイトルとしています。金曜の夜、私どもの組合の定期大会が開かれました。5年前の記事「定期大会の話、インデックスⅡ」の中で詳しく綴っていますが、組合員全員の出席を呼びかけるスタイルで続けています。

2年前の定期大会で特別議案「組合財政の確立に向けて」を確認し、経常的な収入に見合った支出構造に近付ける努力を重ねています。定期大会の会場の見直しもその一つでした。組合員数は1,160人です。組合員全員の出席を呼びかけているため、これまで千人以上収容できる市民会館の大ホールで催してきました。2階席は使用していませんでしたが、実際の出席者数に比べて大ホールは広すぎて、残念ながらガランとした雰囲気になりがちでした。

一人でも多くの出席を呼びかけながら300人も入らない会場で催した場合、初めから出席者をあまり集める気がないように思われてしまいます。このような点を考慮し、大ホールを定期大会の会場に定着させていました。しかしながら組合員数の減少に伴い、出席者数も漸減してきていました。そのため、昨年から会場を1,201席の大ホールから246席の小ホールに移していました。

昨年の最終的な出席者数は168人でした。残念ながら「うれしい悲鳴」を上げることなく、背伸びしない身の丈に合った小ホールの収容規模に見合った出席者数だったと言えます。小ホールへの変更に合わせ、食事と出席記念品の配布をやめていました。そのため、300人前後で推移してきた出席者数の減少は、ある程度想定していました。

昨年の168人という数は大成功と喜べるものではありませんが、ことさら悲観するレベルのものでもありませんでした。今年の出席者数は162人で、雨が降る中で昨年並みの数字となりました。この水準で今後も推移していくことも期待できるため、しばらく小ホールでの全員参加型の組合大会を維持していけるのかも知れません。

さて、定期大会冒頭の執行委員長挨拶は例年通り簡潔な内容の挨拶に努めました。ちなみに人前で挨拶する機会が多いため、檀上で緊張するようなことはありません。原稿がなくても大丈夫ですが、いろいろ話を広げてしまい、割り当てられた5分という時間をオーバーしてしまう心配があるため、毎年、定期大会だけは必ず挨拶する内容の原稿を用意しています。ここ数年、挨拶原稿のほぼ全文をブログで紹介しています。今回の内容は下記のとおりでした。

私自身、組合役員を長く続ける中で「組合は必要」という思いを強めています。人事評価制度の本格実施や時間外勤務縮減の動きを受け、ますます職員一人一人の声を労使交渉に反映させていくことの大切さを感じ取っています。管理職からの評価結果が昇給額を左右し、生涯賃金に影響を与えていきます。管理職からの「評価を下げるぞ」という一言が、場合によって部下からすればハラスメントという関係性につながりかねません。

組合は査定昇給の実施にあたって慎重な労使協議を求めてきました。合意する際、第1次評価者と第2次評価者とのダブルチェック機能の強化など恣意的な評価を防ぐ手立てなどを取り入れさせてきました。管理職の皆さんが初めから恣意的な評価を下そうと考えていないものと思いますが、制度や運用面でのチェック機能を設けることの大切さは言うまでもないはずです。

時間外勤務縮減の課題に際し、市長にとって20時完全退庁宣言は「職員のため」という意識からでした。しかし、組合員からは「残りたくて遅くまで残っている訳ではない」という声があり、組合はそのことを申し入れた上、20時に完全退庁できる職場体制の確立こそ急務という認識を労使で確認してきた経緯もあります。

一職員の立場であれば、市側が進めている制度や運用に修正をかけることは難しく、まして市長や副市長らに率直な意見を伝える機会も皆無に近いのだろうと考えています。職員の大半が加入している労働組合があり、実際に活動を担う組合役員がいるからこそ発揮できる組合の大事な役割だと言えます。

しかしながら担い手がいなくなれば充分な役割を果たせず、看板だけの組合になりかねません。このような問題意識を踏まえ、今回、本日配布した議案の中で協力委員の創設を提案させていただきました。ぜひ、協力委員の創設が組合活動を活性化させるための一つの手法として、ご理解ご協力をいただけますようよろしくお願いします。

来年7月には参議院議員選挙があります。労使関係を象徴的な例示として上げることができますが、より望ましい「答え」を見出すためには幅広い視点から多面的なチェックを加えていける仕組みが重要です。国会の場でこそ、そのような健全な機能が発揮されなければなりません。

そのためにも幅広く多様な声を国会に届けることが欠かせず、自治労の代表である岸まきこさんを参議院に送り出すことの意義や大切さは増しているものと考えています。同時に自治労の代表を国会に送り続けることは「組合員のため」という労働組合の立場や方針からのものであり、ぜひ、そのような考え方について組合員の皆さんのご理解ご協力をよろしくお願いします。

まだまだお話したいこと、取り上げるべき大事な課題が数多くあります。それでも皆さんからの発言の時間を充分保障するためにも、挨拶は短めにさせていただきます。最後に、これからも常に「組合員にとってどうなのか」という判断基準を大事にし、組合運動の先頭に立ち、全力を尽くす決意です。

出席者からの発言として、今回も保育士の方から「公立保育園の大切さ」のアピールがありました。その他に質疑はなく、執行部提案はすべて原案通り承認を得られました。その中には前々回記事「再び、組合役員の担い手問題」でお伝えした「協力委員」の創設も確認できました。さっそく何人かの方にお声かけしていますが、快く引き受けていただけています。今後、担い手不足の閉塞感を転換できる切っかけになることを願いながら多くの方々をお誘いしてみようと考えています。

今回の定期大会を区切りとして、たいへん長い間、組合役員を務められた執行委員や元委員長で特別執行委員だった方が退任されました。本当にお疲れ様でした。長い間、お世話になりました。たいへん寂しいことですが、協力委員制度が大きく育つことを期待した上、様々な事情を抱えながらも組合役員に立候補された皆さんとともに前向きに頑張っていく決意を固めています。

定期大会が終わった後、今年も金曜の夜だったため、遅くまで飲み語り合ってしまいました。さらに土曜と日曜に予定が入っていることもあり、今週末の新規記事はいつもに比べれば簡潔な記事にまとめさせていただきました。最後に、組合員の皆さん、大会運営にご協力いただいた皆さん、ご来賓やメッセージをお寄せくださった皆さん、新旧の組合役員の皆さん、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

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