2020年5月23日 (土)

時事の話題、いろいろ思うこと Part2

前回記事は「時事の話題、いろいろ思うこと」でしたが、たった1週間で状況が大きく変わっています。よりいっそう個人的な思いが募る週末を迎え、「Part2」として書き進めています。

検察庁法改正案を束ねた国家公務員法改正案の今国会での成立を見送るという判断が明らかにされたのは月曜のことでした。さらに週刊文春のスクープによって、渦中の人物だった黒川検事長が辞職するという事態に至っていました。

東京高検の黒川弘務検事長(63)は21日、緊急事態宣言発令下の1日と13日に新聞記者らと賭けマージャンを行ったことを認め、辞表を提出した。22日の閣議で承認される。安倍晋三首相は黒川氏の辞表提出について記者団に対し、「首相として当然責任がある。批判は真摯に受け止める」と語った。

これを受け、政府は後任の人選に着手し、名古屋高検の林真琴検事長(62)の起用を軸に最終調整に入った。林氏は黒川氏と司法修習同期で、早くから将来の検事総長候補と目されてきた。黒川氏をめぐっては、1月末に検事長としての勤務延長を閣議決定。法解釈を変更する異例の手続きを取って黒川氏を重用してきただけに、辞任は政権にとって大きな打撃となる。

首相は新型コロナウイルス対策に全力を挙げ挽回を図る考えだが、求心力の低下は避けられない情勢だ。黒川氏は21日、「緊急事態宣言下における私の行動は緊張感に欠け、軽率に過ぎるものであり、猛省している」とするコメントを発表した。森雅子法相は、黒川氏の勤務延長を決めたことに関し、「閣議請議をしたのは私なので、責任を痛感している」と記者団に表明。黒川氏を訓告処分としたことも明らかにした。

法務省は衆院法務委員会理事懇談会に黒川氏に関する調査内容を報告。黒川氏は賭けマージャンだけでなく、記者側が用意したハイヤーを費用を支払わずに利用したことも認めた。黒川氏に関しては、内閣の判断で検察幹部の定年延長を可能とする検察庁法改正案が同氏の人事を後付けで正当化するものとして野党が批判を強めていた

政府・与党は同改正案の今国会成立を断念。秋の臨時国会での仕切り直しを目指すが、黒川氏の辞任は今後の議論に影響を及ぼしそうだ。21日発売の週刊文春は、新型コロナに対応する緊急事態宣言が発令され、外出自粛が求められる中で黒川氏が賭けマージャンを行ったと報道。野党からは首相や法相の責任を問う声が上がっている。 【JIJI.COM2020年5月21日

いろいろな思いが錯綜し、どこからコメントすべきか迷うほどです。まず何よりも国会審議で黒川検事長の名前が連日取り沙汰され、まして緊急事態宣言のもと様々な行動が規制されている中、重責のある方が極めて軽率な行為を重ねていたことにたいへん驚いています。

懲戒処分ではなく、退職金の減額等を伴わない監督上の措置としての訓告処分にとどまったことも意外でした。6千万円以上と見られている退職金が一切受け取れない「懲戒免職でもおかしくない」という声も耳にしています。

金曜の衆院法務委員会で、賭けマージャンは違法であることを前提としながらもレートが千点百円だったため、法務省の刑事局長は「社会の実情から見て必ずしも高額とは言えない」と答えていました。つまり訓告処分にとどめたことの理由の一つとして説明しています。

このあたりの問題意識について以前の記事(農水省の「ヤミ専従」疑惑)の中で、場合によって個々の案件に対して法律の解釈や運用面において社会通念上の幅があることを記していました。今後、厳格化をはかっていくのであればマージャンの楽しみ方を見直すべき人たちは相当な数に上るのではないでしょうか。

確かに懲戒免職では重すぎるのかも知れませんが、訓告処分が妥当だったという話にはつながりません。国家公務員倫理法でマスコミ関係者は利害関係者に当たらないと規定されています。それでも「職務の公正さを疑われるような接触は厳に慎むべきである」とも記されています。そのため、特定のマスコミ関係者と頻繁にマージャンを重ねていたことの問題性を軽視できません。

さらに緊急事態宣言下での問題行動であり、たいへんな信用失墜行為だったと言えます。そのような問題性が重なり合っているため、これまでの実績等を加味したとしても戒告以上の懲戒処分に至らなかった点が意外でした。「2月に定年を迎えさせておけば…」という温情や内情を熟知した当事者を追い込みすぎないための政治的な配慮が働いたのではないかと疑われかねません。

この問題を受け、安倍首相は特例的に定年延長を閣議決定したことについて「厳正なプロセスを経て請議がなされたと思っております」と述べた上で「法務省そして検察庁において、この人事について請議がなされた訳でありますが、最終的には内閣として決定を出しますので、総理大臣として当然責任があると考えております。ご批判は真摯に受けとめたいと考えております」と語っていました。

これまで様々な場面で安倍首相から「総理大臣として責任がある」「ご批判は真摯に受けとめたい」という言葉が数多く発せられています。他にも「丁寧に説明していきたい」という常套句がありますが、そのような言葉の後、何か具体的な対応や変化があったという記憶はありません。そのため、残念ながら重い言葉の中に「軽さ」を感じ取ってしまいがちです。

同じ日、検察庁法改正案について問いかけられ、安倍首相は「公務員制度改革にあたっては、国民の皆様の意見に耳を傾けることが不可欠であります。国民の皆様の理解なくして前に進めることはできないだろうと思います。そんな中で参議院の世耕幹事長もご自身の考えを述べられた訳でありまして、社会的な状況も厳しい状況にある。この法案を作った時とは状況が違っているのではないかと述べておられ、党にもそうした意見があるとも承知しております。そうした面も含めて検討していく必要があると考えています」と答えていました。

世耕幹事長の発言に違和感を抱いていましたが、その発言を受け、安倍首相まで「公務員の定年延長が国民から理解を得られない」という話を持ち出したことに本当に驚きました。検察庁法改正案と国家公務員法改正案などを一本化した「束ね法案」そのものを廃案にするという方針を耳にして、あまりにも身勝手な論点のすり替えにあきれています。

そもそも問題視されていたのは内閣や法相が必要と判断すれば、検察官の定年が最長3年延長でき、63歳の役職定年制も例外となるという規定です。検察は準司法機関という位置付けがあり、例外規定を一般の国家公務員と同じように設けることの問題性が指摘されていました。検察官も含め、国家公務員の定年を65歳まで延長することに反対意見が目立っていた訳ではありません。

数年前から公務員の定年延長の話は取沙汰されていました。公務員の制度を変更する際、いつも二通りの考え方が浮上します。民間に比べて公務員は優遇されているという批判を避けるため、先走った変更は控えるという考え方があります。その一方で社会全体の流れを作るため、公務員の制度を先行して変更していくという考え方もあります。

上記は3月末に投稿した記事「定年を迎える週に思うこと」の中の一節です。2月には「定年延長の話」という記事を投稿し、進展する少子高齢化による労働力不足を補うため、政府主導のもと70歳までの雇用延長が課題になっていることを記していました。これまでは使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められていました。

今後、高年齢者雇用安定法が改正された場合、70歳までの雇用確保が「努力義務」として求められるようになります。このような動きの中で国家公務員の定年延長が法案化されていました。もし公務員が先行することに大きな批判を受けるのであれば、それはそれで後発になることも仕方ないのかも知れません。

しかし、検察庁法改正案に向かった強い批判を避けるため、公務員やその組合へ批判の矛先を誘導するような意図があった場合、たいへん残念な振る舞い方だと言わざるを得ません。最近の報道によれば安倍首相自身、黒川検事長の定年延長も、検察庁法改正案の例外規定に関しても主体的に判断していなかったようです。

前回記事の中で、評論家の八幡和郎さんの『検察定年法、混乱の全真相』という記事に「黒川検事長の定年延長が森雅子法相の判断である」と書かれていることを紹介していました。ただ私自身の感想として森法相や法務省だけの判断で、官邸の関与があったかどうかは読み取れなかったことも書き添えていました。

すると今朝の読売新聞には「(黒川検事長は)菅官房長官を筆頭に官邸の覚えはめでたく」と伝え、官邸主導で東京高検検事長に昇格したという話が掲げられていました。さらに昨年末以降、検事総長の後任人事にも官邸が強く関与していることも綴られています。このような動きを生々しく伝えられるのは首相側近の官邸官僚からリークがあったのかも知れないと推測してしまいます。

週刊朝日のオンライン限定記事『「懲戒免職でもおかしくない」検察庁先輩の忠告を聞かなかった黒川元検事長の自業自得』には「黒川氏を『法務顧問』と言っていた菅官房長官」という話をはじめ、何人もの検察庁関係者が黒川氏に「政治と近づきすぎるな、もう辞めろ」と進言したところ黒川氏は苦笑いして「(安倍政権が)辞めさせてくれない」「他に人がいないそうです」と語っていたという話まで掲げられています。

「余人をもって代えかだい」と評価されていた黒川前検事長ですが、趣味のマージャンから致命傷を負ってしまいました。特に問題のない行動だと考えていた場合も、それとも発覚するはずがないものと考えていた場合も、社会的な影響に対する想像力の欠如や危機管理の甘さが厳しく問われる行為だったと言えます。

最後にもう一つ、やはり非常に驚いた時事の話題を紹介します。新型コロナウイルスに感染して自宅待機中に県から休業要請されているパチンコ店に3時間も、その利用者が金沢市議会議員という報道に接し、耳を疑いました。黒川前検事長も同様ですが、それぞれギャンブル依存症という視点でとらえることも必要なのかも知れません。

新型コロナウイルスに感染し、自宅待機を求められていた金沢市議会議員が19日、県から休業要請が出されていたパチンコ店を利用していました。議員は取材に対し「安易な気持ちで動いてしまい、非常に判断がよくなかったと反省している」と話しています。金沢市議会の松村理治議員(69)は19日午後2時ごろ、県から休業要請が出される中で営業していた市内のパチンコ店を訪れ、3時間程度、利用していたということです。

議員は先月、新型コロナウイルスへの感染が確認されて入院し、今月7日に退院しましたが、医師から2週間程度の自宅待機を求められ、この間にあった市議会の委員会を欠席していました。松村議員は取材に対し「緊急事態宣言が解除され、パチンコ店の休業要請も解除されたと勘違いし、中の状況が気になり、入ってしまった。議員という立場なのに、安易な気持ちで動いてしまい非常に判断がよくなかったと反省している」と話しました。議員辞職については否定しました。【NEWS WEB2020年5月21日

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2020年5月16日 (土)

時事の話題、いろいろ思うこと

前回記事「人員確保・コロナ関連で統一要求」の冒頭で「新規記事は時事の話題を通し、いろいろ個人的に思うことを綴ることも考えていました」と記していました。ただ私どもの組合員の皆さんに対する速報的な意味合いを踏まえ、ローカルな話題を取り上げていました。

今回の記事では、いろいろな時事の話題を紹介しながら個人的に思うことを書き進めてみます。なお、あくまでも個人的に思うことであり、私自身が直接綴る言葉で「答え」の正しさを押し付けるような書き方には注意を払っていくつもりです。

適切な評価を下していくためには「誰が」に重きを置かず、その言動や判断は正しいのか、色眼鏡を外して物事を見ていくことが必要だろうと考えています。そして、物事を適切に評価していくためには、より正確な情報に触れていくことが欠かせません。誤った情報にしか触れていなかった場合は適切な評価を導き出せません。また、情報そのものに触れることができなかった場合、問題があるのか、ないのか、評価や判断を下す機会さえ与えられません。

これまで何回も掲げてきた私自身の問題意識です。上記のような考え方のもとに当ブログは多面的な情報を提供する一つの場として、率直な主張や政権批判を展開している他のサイトも積極的に紹介しています。そのサイトでの批判の仕方や辛辣な言葉に反発を覚えたとしても、多様な考え方や意見を認め合っていくことの大切さについてご理解くださるようお願いします。

さて、1週間先送りしたことで取り上げたい時事の話題が増えています。真っ先に取り上げるべき話題は「#検察庁法改正案に抗議します」の問題です。3月末に投稿した記事「定年を迎える週に思うこと」の中で、国家公務員の定年が60歳から段階的に65歳まで延びる法案は黒川弘務検事長の定年延長の問題と絡み合って審議に影響を与ていく可能性を予見していました。

審議が本格化し、やはり法案の中に盛り込まれた問題性を指摘する声が高まっています。ツイッターで抗議する投稿が500万件を超え、小泉今日子さんら多くの著名人も強いトーンで批判しています。ロッキード事件の捜査に携わった元検事総長らが法案に反対する意見書を法務省に提出するという異例な事態に至っています。

残念に思うことは普段から安倍首相を支持されている方々の中で、例えば政治評論家の加藤清隆さんは元格闘家の高田延彦さんに対して「プロレスで忙しくて知らないのだろうが、検察庁改正案は65歳定年制導入のため」というような言葉でリプライする姿勢です。LITERAの記事『加藤清隆、竹内久美子、百田尚樹…安倍応援団が「#検察庁法改正案に抗議します」に「中国の陰謀」「テレビ局が黒幕」とトンデモバッシング!』の一節を紹介します。

抗議の意思を表したきゃりーに対して、加藤氏は〈歌手やってて、知らないかも知れないけど、検察庁法改正案は国家公務員の定年を65歳で揃えるため。安倍政権の言いなりになるみたいな陰謀論が幅をきかせているけど、内閣が検察庁を直接指揮することなどできません。デタラメな噂に騙されないようにね。歌、頑張って下さい〉とクソリプ。これにはきゃりーも〈歌手やってて知らないかもしれないけどって相当失礼ですよ、、、、〉と反論していたが、当然だろう。職業や属性など関係なく、誰にでも政治権力を批判できることこそ民主主義の条件だからだ。

現在、国家公務員法改正案などと一本化した「束ね法案」としての検察庁法改正案が審議されています。「法案を読まずに批判するな」と非難する声を耳にしますが、その人たちこそ読んでいないのか、理解不足なのか、条件反射的に安倍政権を擁護してしまうのか、たいへん悩ましく思っています。

嘉悦大学教授の高橋洋一さんは法案の原文を読んでいながら『「定年延長」国家公務員法改正案は、黒川氏人事とは関係ない』と解説しています。しかし、検察官の定年だけ63歳のままとして「年金難民」にする懸念を訴えていることで、今、何が強く批判されているのかどうか理解していないのか、あるいは意図的に論点をずらしているのか疑問に思います。

問題視されているのは内閣や法相が必要と判断すれば、検察官の定年が最長3年延長でき、63歳の役職定年制も例外となるという規定です。このような規定が入る法案に対し、元検事総長らは意見書で「今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺ぐことを意図していると考えられる」と指摘しています。

ちなみに昨年10月の段階ではなかった規定であり、解釈の違法性を問われている黒川検事長の定年延長を後付けで繕ったものと見られています。そのため「黒川氏人事とは関係ない」と言い切ってしまうことも早計だろうと思っています。

黒川検事長を次の検事総長に押し込むための法改正だったかどうか、評論家の八幡和郎さんの『検察定年法、混乱の全真相』という記事が参考になります。そこには黒川検事長の定年延長が森雅子法相の判断であることが記されています。それでも森法相や法務省だけの判断で、官邸の関与があったかどうかは読み取れませんでした。

若狭勝氏、同期の黒川氏は「自ら辞めるのでは…」』という記事も興味深い内容でした。若狭さんは黒川検事長を「出世欲のない、性格的にも愛すべき男」と評し、「小渕さん(小渕優子元経産相。政治資金規正法違反事件で15年不起訴処分)、甘利さん(甘利明元経済財政担当相。URを巡る現金授受疑惑で16年不起訴処分)の事件で『守護神』と書かれたが、いくら力があっても黒川が処分を変えることは絶対ない」と語っています。

5月13日の朝日新聞朝刊には検察OBの「今回の問題でさらし者にされた黒川が犠牲者だ」とかばう声が紹介され、黒川検事長自身が周囲に「私の知らないところで物事が動き、名前ばかり出ている」と困惑気味に話していることも伝えていました。

いずれにしても政治的な立ち位置にとらわれず、より正確な情報を把握した上で、何が問題なのか、冷静で丁寧な議論が求められているものと思っています。そのような意味で、日本維新の会の参院議員の音喜多駿さんはブログ記事『「#検察庁法改正案に抗議します」何が最大の問題なのか?私の問題意識・ポイントはここだ』の中で淡々と論点を整理されていました。

いろいろな時事の話題を通し、個人的に思うことを書き進めていくつもりでしたが、一つの話題で相当な長さとなっています。簡略化に努めながら、もう少し続けさせていただきます。続いて『現金10万円給付 マイナンバーは余計だ』(東京新聞)『マイナンバーカードが邪魔…一律10万円「電子申請」大失政』(日刊ゲンダイ)という話題です。

第1段階のカードの取得者は14%、第2段階のマイナポータル登録者は1年前で1万8500人で全人口の0.01%を切っていました。リンク先の東京新聞の社説では「なぜ国民の大半が受け入れていない制度を、急を要する生活支援策に組み入れたのか。もし制度を広げるためにコロナ禍に便乗したのだとすれば弁明の余地はない」と指摘しています。

早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉さんは『「緊急事態宣言延長」は国民のせいなのか。安倍晋三は1カ月何をやってきたのか』という論評の中で「事業活動再開のためのガイドラインが緊急事態宣言解除判断日に揃っていないということは、政府は最初から1カ月で緊急事態宣言を解除するつもりが無かったと言っているに等しい」と安倍首相を批判していました。

466億円予算化した布マスクは、まだ私の家には届いていません。不良品が多く、検品の費用に8億円かかるそうです。新型コロナウイルスの対策に向け、安倍首相らは懸命に力を尽くしているのだろうと思っています。土曜朝の読売新聞には月刊Hanadaの広告が掲げられ、『不眠不休でコロナと闘う安倍総理』という見出しを目にしています。

とは言え、チグハグ感が否めないことも確かです。弁護士の澤藤統一郎さんのブログを訪問し、毎日新聞に掲載された時世ネタの川柳を目にとめていました。コロナ禍を取り上げ、安倍政権をチクリと釘をさす川柳が多い中、『ウイルスは「やってる感」では騙せない(東京 三次)』が最も目をひいていました。最後に下記の話題を紹介し、長くなった記事を終わらせていただきます。

23カ国・地域の人々を対象にそれぞれの指導者の新型コロナウイルス対応の評価を尋ねた国際比較調査で、日本が最下位となった。日本の感染者数、死者数は世界との比較では決して多いわけではないが、安倍晋三首相らの指導力に対する日本国民の厳しい評価が浮き彫りになった。

調査はシンガポールのブラックボックス・リサーチとフランスのトルーナが共同で実施。政治、経済、地域社会、メディアの4分野でそれぞれの指導者の評価を指数化した。日本は全4分野のいずれも最下位で、総合指数も最低だった。

政治分野では、日本で安倍政権の対応を高く評価した人の割合は全体の5%にとどまり、中国(86%)、ベトナム(82%)、ニュージーランド(67%)などに大きく劣った。日本に次いで低かったのは香港(11%)で、フランス(14%)が続いた。世界平均は40%で、感染者・死者ともに世界最多の米国は32%、韓国は21%だった。

ブラックボックスのデービッド・ブラック最高経営責任者(CEO)は「日本の低評価は、緊急事態宣言の遅れなどで安倍政権の対応に批判が続いていることと合致している。間違いなくコロナウイルスの指導力のストレステスト(特別検査)で落第した」と分析した。

総合指数でも日本は16と最低で、次いでフランス(26)が低かった。最高は中国(85)。全体的にはNZを除く先進国の指導者が低い評価にあえいだ。調査は23カ国・地域の1万2592人を対象に、4月3~19日にオンラインで実施した。【時事通信2020年5月8日

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2020年5月 9日 (土)

人員確保・コロナ関連で統一要求

前回記事は「最近、読んだ本」でしたが、新型コロナウイルスに絡む内容にも触れていました。コロナ関連の話題はメディアやネット上にあふれ、様々な情報や考え方に触れることができます。新規記事は時事の話題を通し、いろいろ個人的に思うことを綴ることも考えていました。

ただ私どもの組合員の皆さんに対する速報的な意味合いを踏まえ、ローカルな話題となりますが「人員確保・コロナ関連で統一要求」という記事タイトルの内容で書き進めています。まず週明けに発行する組合ニュースの一部をそのまま紹介します。「人員確保・新型コロナ関連で自治労都本部統一要求 緊急事態宣言の期間、5月31日まで延長 」という見出しを付けた内容です。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための緊急事態宣言の期間が5月31日まで延長されています。宣言発出後、規模縮小や交代制勤務によって繁忙が増している職場の多い中、日々、感染リスクに注意しながら業務に向かい合う組合員の皆さんに心から敬意を表しています。

職員の感染防止対策を要請 今回のような緊急事態や大規模災害時、私たち自治体職員は重要な役割を負わなければなりません。過度な職員数の削減は非常時に充分対応できなくなる恐れがあります。そのため、毎年5月に自治労は「人員確保に関する要求書」を全国一斉に各自治体当局に提出しています。

今年は裏面内容の要求書を5月8日に市当局に提出しました。要求書の冒頭で、職員が新型コロナウイルスに罹患しないための感染防止対策、住民の安全と健康を守るための充分な業務体制の確立を求めています。職員の安全と住民サービスの維持は優劣を付けられるものではなく、感染症対策においては表裏一体のものとなります。

11日から交代制勤務職場の対象が見直されています。そのことが職員の安全軽視と受けとめられないように留意し、引き続き職員の感染防止対策に力を注ぐよう要請しています。緊急事態であるため、課を越えた応援態勢などを了解していますが、問題が見受けられる場合は別途協議します。さらに個々の事例で労使協議が必要な場合は、その都度申し入れます。

感染症の終息まで長い月日を要し、6月以降も3密には注意しなければなりません。ただ心の距離感は広げず、支え合っていければと考えています。なお、この統一要求書の提出は現業統一闘争の前段に位置付けられています。今後、秋の後段闘争に向け、単組現評独自要求書も提出する予定です。

組合ニュースの内容を掲げただけで終わらせれば、たいへん省力化できた記事となります。本来、ブログをはじめ、SNSで発信する内容は短文であることが主流だろうと理解しています。

特にスマホ利用者が増えている中、このブログのように毎回長文となるサイトは敬遠されがちなのかも知れません。それでも今回も、いつものように相応の長さの記事内容になるのだろうと見越しています。

上記の組合ニュースを補足する上でネット上から興味深い記事を見つけています。ブックマークし、定期的に訪問している「hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)」の最近の記事『ジョブなき社会の公務員減らしの帰結』が目にとまっていました。

行政評論家の大原みはるさんの『コロナでわかった、やっぱり日本は公務員を「減らしすぎ」だ』という論評が紹介されていました。興味を持たれた方は、それぞれリンク先のサイトをご参照ください。私自身や自治労の問題意識が次の大原さんの言葉に集約されています。

冷静に考えれば公務員は社会に必要な職業である。たとえば、新型コロナウィルスに関して、なくてはならない働きをしている保健所や公的医療機関。感染者の把握や感染拡大防止で後手に回ったとして批判を受けているが、もともと「平時」を基準に体制が構築されており、緊急時においては明らかに人手不足であることが今回わかった。

もちろん「平時」に余裕がありすぎて、明らかに余剰となる人員配置を求めている訳ではありません。常勤職員の削減を地方行革の柱とし、際限もなく減らし続ける方向性に対して疑問を呈してきています。とりわけ削減の標的にされがちな現業職場ですが、直接雇用の自治体職員として残すことが大規模災害時にどれほど心強いことなのか訴え続けています。

このあたりについては以前の記事「減り続けている現業職場」 「激減する自治体職員と災害対応」の中で詳述しています。そのため、次年度の予算編成や職員採用計画が固まる前の5月に毎年、自治労に加わっている自治体単組は一斉に人員確保要求書を各首長あてに提出しています。その中で現業職員の確保を重視し、秋に取り組まれる現業統一闘争の前段として位置付けています。

続いて、職員の感染リスクの問題です。最近の記事「緊急事態宣言発令 Part2」の中で伝えたとおり私どもの市では、人と人との接触の機会を減らす目的としての業務体制の縮小、職員に感染者が出た場合の部署全体の自宅待機を避けるための交代制、2通りの方策をとっていました。

通勤電車等でのリスクを2分の1とし、出勤後の職場内での3密が避けられ、万が一のリスクを分散させる方策として望ましいのは後者であり、可能な限り在宅勤務の交代制を取り入れるよう求めてきました。

ただ職場実情によって困難な場合があることも了承していました。そのため、交代制勤務を望みながら平時と大きく変わらない勤務体制のままだった組合員の皆さんに対しては申し訳ない思いがありました。

緊急事態宣言の期間が延長され、このままの勤務体制が継続されるのだろうと考えていましたが、上記の組合ニユースに記しているとおり週明け11日から交代制勤務職場の対象が見直されます。これまで交代制が基本でしたが、11日から交代制職場が例外扱いとなります。

この変更案が事前に組合に示された時、 コロナ対応の業務に追われている職場をはじめ、交代制勤務は非常に厳しくなっていたという事情が説明されました。そのため、11日以降は時差勤務の奨励等で職員の感染防止に努めたいと市側は説明しています。

もともと全職場で同様な取扱いがはかれていなかったため、このタイミングでの見直しもやむを得ないものと判断しました。その際、交代制勤務の見直しによって職員の感染対策の意識に緩みが生じないように注意すべきではないかと伝えています。

加えて、組合ニュースに記した職員の受けとめ方に対する懸念を副市長らに伝えています。「職員の感染防止よりも業務を優先したのか」と思われないよう職員全体に周知する際、その点に留意した説明の必要性を訴えていました。副市長からは「職員の感染防止に力を尽くす考えに変わりない」という答えを得ています。

最後に、組合ニュースにも掲げた問題意識です。緊急事態宣言の期間が終わっても一気に以前と同じような日常生活には戻れないはずです。「密閉」「密集」「密接」という3つの密には注意し、多くの方々との会食の機会も減らし、ソーシャルディスタンスを常に意識していかなければなりません。そのような中でも心の距離感は広げず、支え合っていければと考えています。

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2020年5月 2日 (土)

最近、読んだ本

前回記事「一律10万円の特別定額給付金」の中で、あくまでも個々人の自主的な判断を大前提とし、特別定額給付金の支給を機会に組合員から提案された趣旨に沿った寄付の仕組みを作れないかどうか考え始めていたことを紹介していました。それに対し、コメント欄でyamamotoさんとKEIさんからは否定的なご意見が寄せられていました。

緊急事態宣言が発出された後、執行委員会の開催は見合わせているため、メール等を介して他の組合役員の考えも聞き取りました。その結果、組合としての寄付金の取り組みは誤解を招かないように給付金のタイミングから外し、あまり急がずに今後の検討課題とすることにしています。

さて、三多摩メーデーをはじめ、手帳に記されていた予定すべてが白紙となっています。外出そのものを自粛しているため、必然的に自宅で本を読んで過ごす時間が増えています。記事タイトルに掲げたとおり最近、読んだ本を読み終えた順ではありませんが、いくつか紹介しながら自分なりの感想を一言二言添えさせていただきます。

新型コロナウイルス感染拡大という時節柄、まず感染症関連の書籍を紹介します。いつも立ち寄る書店に特設コーナーがあり、真っ先に手にしたのが『復活の日』でした。著者は小松左京さんで小説という形を取っていますが、科学的な解説や米ソ冷戦時代の社会的背景が克明に描かれ、リアリティをもって新種のウイルスの怖さを感じ取れます。

当初「たかがかぜ」と侮っていた人類は数か月の間に絶滅の危機を迎えます。そのウイルスは低温に弱く、かろうじて南極大陸に赴いていた1万人ほどの人々が助かります。残された女性は16人、絶望の中から人々は人類の「復活の日」をめざしていきます。小説を初めて読み、コマーシャルで見た記憶のある草刈正雄さんが帰還する映画のクライマックスシーンを思い出していました。

続いて『ロビンソン・クルーソー』の著者でもあるダニエル・デフオーさんの 『ペスト』です。「カミュの『ペスト』よりも現代的と評される傑作」という宣伝文句にひかれて手にしていました。訳者は平井正穂さんで、一切見出しのない文章が続くことに驚きました。内容は1665年、ペストに襲われたロンドンの状況を同時代に生きた著者が事実の伝承という立場から綴ったものです。

たいへん興味深かった箇所を紹介します。当時のロンドン市には様々な法律があり、疫病患者が出た場合は家屋閉鎖し、その家族全員が40日間隔離されます。監視人が置かれ、健康な人も外に出られず、感染して全員死亡した事例は珍しくなかったようです。このような手法の効果について著者は疑問視していました。

見たところ病気にかかっている気配のない人たちを通じて蔓延し、自分が誰からうつされ、誰にうつしたか知らないまま感染が広がった事態の多さを書き残しています。一方で、仕事を失った人々を監視人として市が雇い、生活困窮者には現金や食物を与えるなど、かゆい所に手が届く施策があったことも伝えています。

さらに印象深い記述に目がとまりました。「それ自身としてはいかにも悲惨事だが、ある意味では一種の天の配剤ともいうべきことが起こった」と記した後、猛烈に荒れ狂った疫病が3か月で3万から4万人の生命を奪わなければロンドン市は「彼らの生計をみてやったり、食物を与えてやることなどは、とてもできなかったろう」と続けていました。

まったく話題は変わりますが、大阪市長だった橋下徹さんの『交渉力』も最近、読んだ本の一つです。「何か達成したい目標がある時、相手を説得し、対立する意見をまとめていく交渉力の有無が、結果を左右する。どんな職種・役職であれ、何かを成し遂げるために必須となるのが交渉力だ」と橋下さんは語っています。参考にすべき点も多くあり、素早く読み終えた書籍でした。

昨年11月の記事「トヨタの労使交渉」の中で『トヨトミの野望』という小説のことを紹介していました。覆面作家の梶山三郎さんが「巨大自動車企業の真実を伝えたいから、私は、ノンフィクションではなく、小説を書きました」と述べているとおり登場人物の実名は容易に特定でき、トヨトミ自動車の御曹司である豊臣統一はトヨタの豊田章男社長のことだと分かります。

その続編『トヨトミの逆襲』も面白く、一気に読み終えた書籍です。「この役員は要らない。おれの方針にいちいち突っかかってくる」と豊臣社長は考えて人事にあたり、「自分の方針を理解し、自分の手足となって動いてくれる理想のチームができた」と思っていました。しかし、小説の最後には自分が「裸の王様」だったことに気付き、耳の痛い進言を重ねていた部下を次期社長に指名します。

最後に『「新聞記者」という欺瞞』です。3月に投稿した「映画『新聞記者』」の最後のほうで多面的な情報に触れていかなければ、より望ましい「答え」に近付けないため、機会があれば安積明子さんの新著も読んでみたいと記していました。通勤帰りに立ち寄る書店では、なかなか見かけず、ようやく最近手に入れていました。

夕刊紙に「“反権力”ふりかざす左派メディアを喝破!」という見出しで紹介されていましたが、扇情的な書きぶりは目立たず、安積さんが知り得ている事実関係を淡々と綴られた内容だったという印象です。この本は当ブログで取り上げるもりでしたので、特に印象深かった箇所に付箋を添えていました。

「真相に迫るためには、正義が多元にあるという前提に立たなくてはいけない。自分の正義が絶対とは限らないのだ」と記されている箇所であり、私自身もそのように考えています。個々の事実関係の見方で評価が分かれる箇所もありましたが、森友学園、加計学園、桜を見る会などで安倍政権を批判すべき内容も綴られていました。

今回、初めての試みとして複数の本をまとめて紹介させていただきました。一つ一つは踏み込み不足で、全体を通して脈路のない記事内容になっていることをご容赦ください。残念ながら緊急事態宣言の期間は延びる見通しです。例年であればゴールデンウイークの真っ只中ですが、ステイホーム週間が続くため、まだまだ読書量は増えそうです。

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2020年4月25日 (土)

一律10万円の特別定額給付金

直近の記事は「緊急事態宣言発令」「緊急事態宣言発令 Part2」でした。今回も新型コロナウイルスに絡む内容となります。前回記事の中で、経済も大事、感染症対策も大事だと考え、優先順位が曖昧なまま「二兎を追う者は一兎をも得ず」という諺のとおりになりかねないことを懸念していました。その後に次のように記しています。

10万円の給付の問題も目的が迷走しそうな印象を受けています。コロナウイルスの影響で収入減となった方々への生活支援が目的であるはずです。経済対策の一つに数えられていますが、外出自粛が長引きそうな局面において消費を促すという目的は横に置いて考えるべきです。

その上で30万円給付の施策は対象者の線引きの不明確さや支給までの迅速さが問題視されたため、10万円一律支給という方法に改めたものと理解しています。所得制限を設けず、窓口の混雑による感染リスクを高めないように申請方法が検討されていることに安堵しています。なりすましなどの対策は欠かせませんが、基本は本人の申出を信頼して受け付けていくことになるはずです。

NPO法人ほっとプラス理事の藤田孝典さんは『現金一律10万円給付が始まる前に考えておきたいこと』の中で公務員や国会議員らも受け取るべきであり、不毛な対立や分断はやめようと訴えています。藤田さんが訴えられる問題意識はまったくそのとおりだと受けとめています。ただリーマン・ショック後の緊急経済対策とした定額給付金の目的や趣旨とは峻別して位置付けることも必要だろうと思っています。

一律10万円の給付は特別定額給付金と呼ばれる見通しで、リンク先の総務省のサイトに示されているとおり概要が決まっています。そのサイトに掲げられた施策の目的として「人々が連帯して一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服するため」と説明されています。

安倍首相も「みんなでこの状況を乗り越えていく中において、すべての国民に配る方向が正しいと判断した」とし、「みんなで乗り越えていく」という点を強調されています。30万円の給付はコロナウイルスの影響で収入減となった方々への生活支援が目的でしたが、その目的から大きく転換したということを押さえなければなりません。

前回記事に綴った私自身の見込んだ理解とは異なる目的や趣旨となっています。給付に向けた迅速性や公平さを重視した一律支給とし、申請後、所得等の条件から外れた受給者に対しては後から課税対象として取り戻すような制度設計も思い描いていました。個々人に辞退や寄付の判断を委ねるような曖昧さは避けて欲しかったからです。

いずれにしても公務員は後ろめたさを持ちながら申請し、給付を受けたことで批判されるような対立関係が生じることを懸念していました。そのような意味合いから藤田孝典さんの「対立や分断はやめよう」という問題意識に共感を覚えています。今回、公務員も支給対象に位置付けられ、どのような声が上がってくるのか注視していました。

広島県の湯崎英彦知事は21日、政府が緊急経済対策として全国民に一律給付する10万円について、県職員から供出してもらい、県の財源に充てる考えを示した。実施するかは今後、検討する。県の休業要請に応じた中小企業などに支払われる10万~50万円の協力支援金の財源約100億円が必要で、湯崎知事は「聖域なく検討したい」と述べた。

県によると、県警や県教委の職員も含む約2万5000人が対象で、全員が受け取れば計算上、総額25億円に上る。県の財政調整基金の残高は、2018年7月の西日本豪雨からの復旧などで取り崩しが続き、20年度末の残高は33億円の見込み。湯崎知事は「感染拡大防止のためにやらなければいけないことはたくさんあるが、圧倒的に財源が足りない」と理解を求めた。

一方、県職員からは不満の声が漏れる。男性職員の一人は「事前に説明があっても良かったのでは。強制でなくても、『右にならえ』で出さざるを得なくなると思う」と戸惑っていた。総務省特別定額給付金室は「あくまで家計の支援を目的とした個人への給付で、公務員から寄付を募って事業の財源とすることは想定していない」としている。【読売新聞2020年4月21日

閣僚や多くの国会議員は受け取りを自粛することを申し合わせています。大阪市の橋下徹元市長は「公務員は受け取り禁止となぜルール化しないのか」と訴え続けています。そのような中、上記報道のとおり広島県の湯崎英彦知事は県職員に対し、10万円を受け取った後の供出を求めました。

脳科学者の茂木健一郎氏(57)が21日、ツイッターを更新。広島県の湯崎英彦知事が新型コロナウイルス感染対策で政府が全国民に一律給付する10万円のうち、県職員が受け取った分の活用を検討する考えを示したことに「これは無理筋なのでは…」と投稿した。湯崎知事は記者会見で、休業要請に応じた中小事業者に支給する協力金など支援策の財源確保のため、「財源は聖域なく検討したい」と述べた。

県によると、職員数は教職員や警察官を含めて約2万5千人。茂木氏は「絶句」と反応。「県職員の方だって、生活者としての側面があり、知事といえどもこれは無理筋なのでは…」と指摘した。

茂木氏の投稿にネットでは「国が給付するものを知事が取り上げるとは…」「勝手にこんなことしていいんですかね!」「これはやりすぎ」「他人の金をどう使うか決められるんですね。凄いなあ」「広島県民として残念」「公務員はコロナでも給料減らないし、私は賛成です」などの声があった。【スポニチアネックス2020年4月21日

湯崎知事の発言に対し、上記のとおり異論や反対意見が多かったようです。そのため、湯崎知事は翌日には「給付金を強制的に供出させるという誤解を与えた。言葉の選び方が悪かった」と発言を訂正した上で謝罪していました。また、今のところ橋下元市長の訴えに対し、賛同する声の広がりも見られていません。

以上のような経緯や今回の特別定額給付金の目的等を踏まえ、私自身の考えも定まりました。申請するかどうか迷っている組合員から相談を受けた際は「受け取りましょう」と答るつもりです。感染リスクを心配しながらも「全国各地のあらゆる現場で取り組んでおられる方々への敬意と感謝の気持ち」としての特別定額給付金を受け取り、地域経済に貢献できればと考えています。

最後に、緊急事態宣言が発令された直後、組合員から実際に提案された話を紹介させていただきます。「減収に苦しむ方々が多い中、私たち公務員として何か寄付などに取り組めませんか」と相談を受けました。趣旨に賛同することをお伝えし、具体的な方策は宿題としてお預かりしていました。

湯崎知事の拙速な発言を反面教師とした上、あくまでも個々人の自主的な判断を大前提とし、特別定額給付金の支給を機会に提案の趣旨に沿った仕組みを作れないかどうか考え始めていました。そのように考えていたところ下記の報道を目にし、たいへん参考になる動きだと注目しています。

新型コロナウイルス対策の一環で政府が行う1人10万円の現金給付をめぐり、自治労神奈川県職員労働組合は24日、組合員らに対し、給付された現金を県に寄付する提案を始めた。休業や短縮営業の要請に応じた事業者のために県が用意した「協力金」では不十分として、寄付分を上乗せして支給してもらうという。

自治労県職労は同日、組合報の号外を発行。その中で、県が用意した10万~30万円の協力金について、「雇用、営業、生活の危機に立たされている方に十分なものとは言えない」と指摘。「働く仲間を支えるため」として、10万円の給付金を県が用意した基金に寄付する形で拠出し合い、協力金に上乗せしてもらうことを提案した。

10万円の使途をめぐっては、広島県の湯崎英彦知事が、県職員への支給分を県のコロナ対策の原資として「活用を検討する」と発言。事実上撤回する事態に追い込まれた。自治労神奈川県職労の米倉尚人中央執行委員長は「給付金の使途は一人ひとりが考えること」と断ったうえで、「困っている勤労者に届く形で使わせていただきたい」と賛同を求めている。22日に労組役員が集まって会議を開いた際、「県が協力金支給を決めたのは良いが、額が少ない」との話が出て、提案することにしたという。

神奈川県は感染拡大を防ぐため、東京都と同じく、ネットカフェや映画館などを含む6業種の事業者に休業を要請し、居酒屋を含む飲食店などには短縮営業を求めた。ただ、用意した協力金の額が最大30万円で、東京都が「50万円か100万円」とするのと比べて少ないという不満が出ていた。【朝日新聞2020年4月25日

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2020年4月18日 (土)

緊急事態宣言発令 Part2

テレビの報道番組やワイドショーから伝えられる内容は新型コロナウイルスに絡む話題一色だと言えます。それほど深刻な事態であり、皆さんの関心もコロナウイルスの話に集まっているはずです。このブログの前回記事も「緊急事態宣言発令」でした。今回も「Part2」を付け、コロナウイルスに関する話題から個人的に思うことを書き進めてみるつもりです。

ここ数日で様々な動きがありました。新型コロナウイルスの感染者急増を受け、東京都など7都府県に発令していた緊急事態宣言の対象地域が全都道府県に拡大されています。同時に新たな生活支援策として全国民に一人当たり一律10万円を給付することになりました。減収世帯への30万円給付は取り下げ、補正予算案を組み替える異例な事態となっています。

30万円の給付は不評だったため、多くの国民の声を受けとめ、土壇場で臨機応変に判断したという見方も成り立ちます。野党からは朝令暮改であることを批判し、責任を追及する声も上がっています。それでも多くの国民は前者のように見ているのではないかと思っています。

それよりも緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大した経緯が気になっています。拡大に向けた専門家による諮問委員会の招集が「唐突だ」という不満の声も漏れ聞こえています。前回記事で「最近は医学の専門家の意見を踏まえ、判断を下しているように見受けられます」と記していましたが、外形的な姿に過ぎなかったのかも知れません。

そもそも対象となった都市部から地方への人の流れは予見できていた話であり、早い段階で専門家は全国への緊急事態宣言発令を主張されていたようです。経済への影響を理由に反対論があり、7都府県にとどめていました。最終的な決断は政治家が下すことに異論ありませんが、このところ目的と手段が迷走しているように思えてなりません。

前回記事に「コロナウイルス収束後の経済政策を優先した結果、壊滅的な事態を招いてしまっては本末転倒です。火災が発生し、現金や貴重品を持ち出すことに時間を取られ、逃げ遅れてしまうことは絶対避けなければなりません」と記していました。その後、もっと的確な比喩があることを思い出していました。

確かに経済が壊滅し、財政が破綻すれば国民の生命や暮らしを脅かすことになります。しかしながら経済も大事、感染症対策も大事だと考え、優先順位が曖昧なまま後手に回ってしまった場合「二兎を追う者は一兎をも得ず」という諺のとおりとなりかねません。

10万円の給付の問題も目的が迷走しそうな印象を受けています。コロナウイルスの影響で収入減となった方々への生活支援が目的であるはずです。経済対策の一つに数えられていますが、外出自粛が長引きそうな局面において消費を促すという目的は横に置いて考えるべきです。

その上で30万円給付の施策は対象者の線引きの不明確さや支給までの迅速さが問題視されたため、10万円一律支給という方法に改めたものと理解しています。所得制限を設けず、窓口の混雑による感染リスクを高めないように申請方法が検討されていることに安堵しています。なりすましなどの対策は欠かせませんが、基本は本人の申出を信頼して受け付けていくことになるはずです。

NPO法人ほっとプラス理事の藤田孝典さんは『現金一律10万円給付が始まる前に考えておきたいこと』の中で公務員や国会議員らも受け取るべきであり、不毛な対立や分断はやめようと訴えています。藤田さんが訴えられる問題意識はまったくそのとおりだと受けとめています。ただリーマン・ショック後の緊急経済対策とした定額給付金の目的や趣旨とは峻別して位置付けることも必要だろうと思っています。

これまで当ブログの中でも「密閉」「密集」「密接」という3つの密を避ける心構えをしっかり持ち続けなければならないことを訴えています。しかしながら3密という言葉を耳にするようになった初期の段階で、どれほど徹底していたかどうかと問われれば甘かった点があったと答えざるを得ません。

症状の表れない感染者がどこにでもいる、もしかしたら自分自身が知らない間に感染しているかも知れない、このように考えた時、3密の重要性が身にしみてきます。2週間後も元気な自分でいるため、周囲に迷惑をかけないため、今、最大限の努力や配慮が求められているものと考えています。

前回記事に「法に基づく宣言が発令され、期限も明確になったことで対策のステージは一気に高まりました」と記したとおり4月7日以降とそれ以前、個々の行動に対する対応は大きく変わっています。そのように振り返った時、安倍首相夫人である昭恵さんが3月15日に宇佐神宮を参拝していたという話もあまり強く批判できません。

「問題ない」とは決して言えず、常に注目されている首相夫人という立場から軽率な行動だったことは確かです。しかし、緊急事態宣言が発令された後の4月9日、高井崇志衆院議員が歌舞伎町の風俗店に出向いていたという話は軽率な行動だったというレベルではありません。立憲民主党を除籍処分されていますが、国会議員としての資質を大きく問われ、議員辞職すべき失態だと思っています。

最後に、来週発行する組合ニュースの内容の一部をそのまま紹介します。「新型コロナウイルス感染症対策、最大限の努力を 4月7日に緊急事態宣言が発出」という見出しを付け、下記の内容を掲げています。組合員の感染リスクを低減し、万が一のリスクを分散させるためにも交代制勤務が可能かどうかを基本に協議しています。

4月7日、新型コロナウイルス感染症対策の特別措置法に基づき緊急事態宣言が7都府県を対象に発出されました。期間は7日から5月6日までです。緊急事態宣言を受け、感染症対策としての職員の勤務体制の取扱い等の案について組合に提示されました。その案に沿って「業務継続の考え方」が通知されています。恒常的な勤務体制の変更ではなく、緊急を要するため組合としても迅速に対応しています。

人と人との接触の機会を減らす目的としての業務体制の縮小、職員に感染者が出た場合の部署全体の自宅待機を避けるための交代制、2通りの方策があります。リスク回避の方策として望ましいのは後者であり、可能な限り交代制勤務の検討を求めていました。ただ職場実情によって困難な場合があることも了承していました。5月7日以降も続く場合は改めて労使協議が必要という認識です。3密に留意し、最大限の努力で難局を乗り切りましょう。

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2020年4月12日 (日)

緊急事態宣言発令

4月7日、政府は新型コロナウイルス感染症対策本部で特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令しました。感染が急拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象で実施期間は7日から5月6日までです。

これまでも不要不急の外出の自粛は要請されてきました。今後、法的根拠のある各知事からの要請になった訳ですが、罰則が設けられていないため、どうしても個々人の意識によって外出自粛の効果は左右されてしまいがちです。さらに宣言が出た後、7都府県の知事の判断に足並みが揃っていませんでした。

ネット上で興味深い記事を見つけています。今回紹介するサイトはブックマークし、定期的に訪問しているBLOGOSで目にした記事が多くなっています。BLOGOSのコメント欄は閉じられていますので、リンク先はそれぞれ筆者のサイトとしています。

まず一つ目が国際カジノ研究所長の木曽崇さんの『まさか百合子がマトモに見える日が来るとは思わなかった、という話』です。一つ一つ全文を転載していくと非常に長い記事内容となってしまいますので、ポイントとなる箇所のみを紹介していきます。関心を持たれた方はリンク先のサイトをご参照ください。

いや、黒岩知事の仰る「休業要請をするのなら補償とセットでなければ…」はもちろん仰る通りなのですけども、逆に「この1カ月間は人と接しないことを徹底してもらえれば、特別に要請する必要もなくなる」というのは、実質的に域内の営業者に対して何の補償もないまま「兵糧攻め」をするのと同義なんですが?

この事業者への休業要請をしないまま消費者にだけ強力な自粛をかけてゆく(しかも国の権限を借りて)という方針は、大阪も含めて東京以外の緊急事態宣言のかかった他府県は皆、同じだそうでして、東京都民としてはまさか百合子の方がマトモに見えて来る日が来るとは思いもしなかった、というのが感想です。

土曜の朝刊、読売新聞一面の『専門家に聞く』で片山善博元総務相も「休業要請には補償を迫られるが、財政に余裕がないからだという。ただそれだと、外出自粛で客足が落ち、事業者が干上がっても、府県の関知するところではないというように聞こえる。東京都の言い分に利があるのではないか」と語っていました。ただ「ない袖は振れない」という事情も理解できるため、片山元総務相は「財政の問題は重要なので、国の関与が欠かせない」と書き添えています。

感染拡大の防止を最大の目的とし、外出自粛によって効果が最も期待できるのであれば、より実効性を高める措置が求められているはずです。東京都以外の府県の知事に苦しい説明をさせず、地域によって対応が大きく分かれる不公正さを払拭するためには、やはり国の責任で財政的な手立てが必要であるもの考えています。

NPO法人ほっとプラス理事の藤田孝典さんは『麻生太郎財務大臣 今度は他人事のように「東京は金持っているんだろうね」 東京都の休業要請協力金支給』というブログ記事で「最近の麻生財務大臣は評論家のようであり、当事者意識に欠けているのではないか。東京都などの財政力がある自治体は休業補償できて、他県ではできないなら、それを財務大臣は調整して補うようにしないのだろうか」と訴えています。

いまは政府が率先して、財政支出を通じた強いメッセージを打ち出す時期であるはずだ。その主軸である当事者がこのような状況であることに残念でならない。改めて麻生太郎財務大臣には、市民、事業者目線での財政出動や支援をおこなう自治体への地方交付税の加算措置など踏み込んだ政策決定をしてほしい。

藤田さんのブログ記事は上記の言葉で結ばれています。そもそも安倍首相は事業規模108.2兆円の緊急経済対策を発表した時、「世界的に見て最大級の経済対策だ」と強調していました。ただ国からの直接支出は18.6兆円にとどまり、「規模ありき」で積み上げた施策の多さも目立っています。

財政や経済の先行きを心配することも重要ですが、過去に例のない緊急事態だと受けとめるのであれば現段階で最も必要とされる施策は素早く進めて欲しいものと願っています。コロナウイルス収束後の経済政策を優先した結果、壊滅的な事態を招いてしまっては本末転倒です。火災が発生し、現金や貴重品を持ち出すことに時間を取られ、逃げ遅れてしまうことは絶対避けなければなりません。

好意的に言えば、総理のトップダウンで物事が決まっていると言う事が出来ますが、私の目には「なんでもかんでも総理(と総理補佐官)のトップダウンで決まっている」ようにしか見えません。しっかりとボトムアップで積み上げて行って、最後にトップダウンが来るというのが理想的な姿です。最初からトップダウンを目指すと失敗するのは、民主党政権で明らかになった事ですが、その轍を現政権も踏んでいるような気がします。

上記は元衆院議員の緒方林太郎さんのブログ『迷走する新型コロナ対策 日本政府の意思決定が遅い理由』の中の一文です。2月末に投稿した当ブログの記事「新型コロナウイルスの感染対策」の中で小中高校の一斉休校は「最側近の官邸官僚と見られている今井首相補佐官の献策のみが安倍首相の判断につながっていました」と記していました。

布マスクを全世帯に2枚配布する施策も「国民の不安はパッと消えます」という官邸官僚の発案だったようです。さすがに最近は医学の専門家の意見を踏まえ、判断を下しているように見受けられます。今回の緊急事態宣言もクラスター対策班の北海道大学教授である西浦博さんの理論疫学に基づき次のような説明が加えられています。

東京都では感染者の累計が1,000人を超えました。足元では5日で2倍になるペースで感染者が増加を続けており、このペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1か月後には8万人を超えることとなります。しかし、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます。

国際政治学者の篠田英明さんはブログの記事『社会運動家化する「専門家」たちの「責任」』の中で、「医療崩壊を防ぐ」という目標は社会的意義と内容が明確で良い目標だと評価しています。その一方で「8割減少」は架空の条件下の抽象モデルの話を具体的な日本の現実に強引に当てはめようとするだけの考え方で、 果たして現実的な意味があるのか定かではないと指摘しています。

このような見方があるのかも知れませんが、実際に緊急事態宣言は発令され、5月6日までという期限も区切られました。これまで前回記事「新入職員の皆さんへ 2020」で伝えていたとおり私どもの市でも感染防止の観点から様々な緊急的な対応をはかってきていました。法に基づく宣言が発令され、期限も明確になったことで対策のステージは一気に高まりました。

人と人との接触機会を減らす目的とともに職員の感染者が出た場合、部署全体が自宅待機となるような事態を防ぐため、先週金曜から交代制勤務が取り入れられるようになっています。その業務継続案は事前に組合にも示され、金曜以降、個々の職場の問題点は可能な限りの是正を求めています。

時給制の会計年度任用職員も含め、在宅勤務等の扱いとしながら有給保障を確認できています。このような職場環境が社会全体では当たり前ではないことを自覚し、私たち自治体職員は緊張感を持って職責を果たしていかなければなりません。最後に、NPO法人POSSE代表の今野晴貴さんの記事『政府の助成金を使って「コロナ解雇」を回避してほしい 声を上げ始めた労働者たち』をご紹介します。

確かに経済危機で経済的なコストとリスクが経営者にのしかかっている。だがそれを、一方的に労働者おしつけるのはアンフェアだ。例えば、コロナで縮小した需要に対し、製品やサービスを共同してつくる「取引先」に対し、一方的に解約してリスクを押し付けることは許されないだろう。

同じように、労働者も「労働契約」を結んだ対等な契約当事者だ。しかも、経営者は「経営権」があるために経営上のリスクを第一義的に引き受ける責務がある。だからこそ、解雇の前に行政の施策を最大限活用することは、「当然の義務」だと考えられるのだ。

飲食店ユニオンの事例は、労働者が行動を起こすことで、経営者に雇用維持の努力を促すことができることを示している。またそれは、「政府の政策を有効に機能させるための方法」でもある。

コロナウイルスの猛威の前に、特にダメージの大きい観光や飲食行界の中小企業では、自分の解雇撤回を要求することに萎縮してしまっている労働者多いと思われる。

しかし、労働者が自分の持つ権利を主張しなければ、積極的に国の制度も利用せず、安易な解雇に流れてしまう企業も少なくないのが現実である。世界的な危機においても、労働者の命や生活を守るために、労働組合が重要な役割を果たせることを、ぜひ知っておいてほしい。

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2020年4月 4日 (土)

新入職員の皆さんへ 2020

市役所の前の並木道、桜が満開に咲き誇っていました。東京で観測史上最も早い開花宣言のあった3月14日、その日に雪が降って話題になりました。先週日曜にもノーマルタイヤでの走行を心配するほどの雪が降り積もっていました。それでも新入職員を迎える4月に入ってからも市役所前の桜の花びらは散らずに私たちの目を楽しませてくれました。

前回記事「定年を迎える週に思うこと」の最後のほうで「新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、様々な催しが中止されています。定年をお祝いただく会がいくつか3月に予定されていましたが、すべて取りやめていました」と記していました。亡くなられた方や重篤な症状に苦しむ方々が多い中、感染拡大を少しでも防ぐためにも必要な判断だろうと思っています。

この4月に新しく社会人になられた皆さん、いつもであれば歓迎会や同期で会食を重ねながら懇親を深められたはずです。残念なことですが、新型コロナウイルスの脅威が広がる懸念のある中、「密閉」「密集」「密接」という3つの密を避ける心構えをしっかり持ち続けなければなりません。

ブログを開設した翌年の4月に「新入職員の皆さんへ」という記事があり、その後「新入職員の皆さんへ 2014」「新入職員の皆さんへ 2017」「新入職員の皆さんへ 2019」 という記事を投稿しています。昨年同様、今回もタイトルに「2020」を付けて新規記事を書き進めています。

新任研修初日の昼休み、組合として挨拶に伺うのが毎年の恒例となっています。委員長挨拶から組合の簡単な説明、そして、早期の組合加入を呼びかける場です。4月1日に新規採用職員が入所し、いつも1週間ほど新任研修が行なわれます。今年は23名の新入職員を迎えています。

入所日の前日、3月31日に研修担当部署の係長から組合事務所に電話が入りました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で今年は新任研修を1日のみに短縮して実施することになったという連絡です。必要最低限の研修内容とし、対応する職員の数を絞るという話でした。

そのため、組合からの挨拶時間も見送らせていただきたいという依頼であり、たまたま組合事務所にいた私が対応しました。そもそも昼休み時間に入ってからの設定であり、市側の研修内容とは一線を引いている点を伝えました。とは言え、感染防止に万全を期するという事情は理解できるため、委員長の私と書記長の2人に絞って出向くという調整をはかりました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響は深刻な事態を招いています。まだまだ広がる懸念がある中、皆さんの研修内容に影響を及ぼし、しばらく歓迎会も見合わせていくことになります。組合の説明会を兼ねた歓迎会も今週末に予定していましたが延期しています。

残念なことですが、この事態を乗り越え、1日も早く、平穏な日常が取り戻せることを願っています。そのためにも私たち自治体職員は率先して感染対策に力を注いでいかなければなりません。この事態を克服できた後、皆さんが入所した時は「たいへんだった」と過去形で語れる時が早く訪れることを願ってやみません。

翌4月1日、新入職員の皆さんを前にし、私からは上記のような話を添えていました。もともと昼休み時間に行なうため、研修初日の挨拶は非常に簡単なものにとどめています。1週間ほどの研修期間中、必ず金曜日の夜に定めて新人歓迎オリエンテーションと呼んでいる本格的な組合説明会を催していました。

その会の中で、いつも10分ほどの持ち時間を割り当ててもらい、新入職員の皆さんに伝えたい私自身の思いを詳述していました。その機会が延びてしまったため、本日配布した機関誌の特集記事「組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」などに目を通していただきたいことをお願いしています。

ただ多忙な中、お配りした資料全体に目を通す時間が取れない場合、組合について簡潔に紹介したA4判4頁のカラー刷りのリーフレットだけでもご覧になり、早期に組合加入いただけることをお願いしていました。そのリーフレットの中にも次のような私からの挨拶文を掲げています。

新入職員の皆さん、ご入所おめでとうございます。人生の大きな節目、新たなスタートラインに立たれ、緊張感と期待感を巡らされていることと思われます。これからの市役所生活の中で、皆さんが組合の様々な役割を活用され、組合も皆さんのお力になれればと考えています。

職員数を一人でも減らしたい市の方針がある中で、組合は住民サービスの維持・向上のためにも、職員が健康でいきいきと働き続けていくためにも、必要な部署に必要な人員配置の必要性を市側に訴えてきています。その意味でも今回、多くの新入職員の皆さんを迎えることができたことを先輩職員一同、心から歓迎し、期待しています。

組合について、よく分からない、もしくはネガティブな印象をお持ちの方もいらっしゃるかも知れません。今回、お配りした組合の機関誌の特集記事を通して「組合は必要」という私なりの考えを綴らせていただいています。なぜ、必要なのか、まず労働条件の問題は労使対等な立場で決めるという原則があります。

さらに組合の最も大切な役割として、一人ひとりが働き続ける上で困った時に支え合い、皆で助け合うという役割があるからです。「ワンフォーオール、オールフォーワン」という言葉で表せられる役割だと言えます。ぜひ、そのような大切な役割がある組合に一日も早くご加入いただけますようよろしくお願いします。

いつもであれば研修期間中の昼休み、組合役員が加入届を受け取りに顔を出していました。今回、新入職員の皆さんに対し、加入届を4月10日までに組合事務所へ届けていただくか、最寄りの職場の組合役員にお渡しいただくことをお願いしています。それでも4月10日過ぎに組合役員側からの確認や働きかけが欠かせないものと考えています。

持参される方は「一人もいないのでは」という悲観的な見方を示す組合役員もいましたが、早々に加入届を提出してくださった方がいます。先輩組合員に案内されながら組合事務所を訪れていたそうです。その組合役員の予想が良い意味で外れたことを幸いとしながら来週末までに何人加入いただけるのか、初めての試みに期待と不安が交錯しています。

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2020年3月28日 (土)

定年を迎える週に思うこと

2月初めに「定年延長の話」という記事を投稿し、国家公務員の定年が60歳から段階的に65歳まで延びる動きを紹介しました。この法案は今国会で成立し、その後、地方公務員にも定年延長の動きは波及していくものと見込まれています。ただ下記報道のとおり黒川検事長の定年延長の問題と絡み合っていくと審議に影響を与える可能性もあるようです。

政府は13日の閣議で、検察官などの国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げるための法案を決定しました。13日に閣議決定された国家公務員法の改正案では、事務次官などを除いて60歳となっている国家公務員の定年について、少子高齢化の進展を踏まえ、経験が豊富な職員を最大限活用するため、令和4年度から段階的に65歳に引き上げるとしています。

また、60歳以上の給与はそれまでの水準の7割程度にするとしているほか、60歳になった職員を原則、管理職から外す「役職定年制」を導入するとしています。これに併せて、検察官の定年についても63歳から65歳に段階的に引き上げるための検察庁法の改正案も13日、閣議決定されました。この中では、検事総長の定年は65歳のままとし、「役職定年制」と同様の趣旨の制度を導入し、63歳になった検察官は原則、次長検事や検事長に任命できないなどとしています。

また、定年延長については、国家公務員法の改正案に合わせて最長で3年まで可能とするとしています。政府は今の国会で法案の成立を目指す方針ですが、検察官の定年延長をめぐっては、政府がことし1月、法解釈を変更して東京高等検察庁の黒川検事長の定年を延長したことに対し、野党側から批判が相次いでおり、法案の審議に影響を与えることも予想されます。【NHK NEWS WEB 2020年3月13日

数年前から公務員の定年延長の話は取沙汰されていました。公務員の制度を変更する際、いつも二通りの考え方が浮上します。民間に比べて公務員は優遇されているという批判を避けるため、先走った変更は控えるという考え方があります。その一方で社会全体の流れを作るため、公務員の制度を先行して変更していくという考え方もあります。

今回の定年延長の動きは後者に位置付けられます。高年齢者雇用安定法で使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められていますが、定年を65歳以上としている事業所は厚生労働省の統計で10.9%にとどまっています。今後、社会全体で70歳までの雇用確保が「努力義務」として求められていく動きもある中、国家公務員の定年延長も判断されたのだろうと見ています。

いずれにしても今年3月末の定年対象者の年齢は60歳です。マラソンに例えれば42.195キロ先のゴールをめざして走ってきたところゴール直前で「まだゴールは先」と告げられずに済んだ世代だと言えます。そのうちの一人が私自身でした。定年延長のメリットもあるようですが、予定した年齢で無事にゴールを迎えられることのほうに安堵しています。

実はゴールという言葉を繰り返していますが、フルタイム再任用として続けるため、3月31日と4月1日で職場環境の変化は一切ありません。主任職の場合、同じ部署で同じ職責のもとに再任用されることが原則化されています。そのため、大きな節目であることに間違いありませんが、卒業式を迎える時のような感傷的な思いはありません。

もともと当ブログでは個人的な話をあまり取り上げていません。今回、記事タイトルに掲げながら個人的な話を取り上げることに少しためらいもありましたが、時事の話題を絡めながら「今、思うこと」を書き進めさせていただいています。振り返れば過去には「公務員になったイキサツ」「組合役員になったイキサツ」「組合役員を続けている理由」という記事も投稿していました。

長い市役所生活の中で組合役員を担い続けた経験は貴重なことだったと思っています。私の前の委員長たちは上部団体に活躍の場を移しながら定年を迎えています。私自身は介護の負担があり、単組の委員長に専念させていただいてきました。自分自身が望んだ選択でしたが、他の組合役員の皆さんらに対し、いろいろな場面でお力になれなかったことを改めてお詫び申し上げます。

あわせて私どもの組合において私自身が歴代委員長に比べて相当長く務めてきていることの功罪も顧みています。その評価は組合員の皆さんに委ねることになりますが、先日発行した機関誌の特集記事の「おわりに」には次のような私自身の思いを記しています。ちなみに特集記事の見出しは当ブログの最近の記事のタイトル「組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」をそのまま使っています。

組合役員を長く続けている中で「組合は必要」という思いを強めています。私自身、別な頁で紹介されているとおり3月末に定年を迎えます。大きな節目でしたが、昨年11月の段階で引き続き執行委員長を担う判断を下していました。

ここまで長く務めてきた責任として、何とか「ピンチをチャンス」に変えるため、よりいっそう努力していくつもりです。組合加入率の問題や組合役員の担い手不足という厳しさに直面し、そのような思いを強めています。

同時に私一人や執行部だけの力で変えられるものではなく、そうすべきものではありません。情勢や問題意識を組合員の皆さんと共有化し、これからの組合の組織や活動のあり方について、ともに考え、ともに力を出し合っていくことが重要です。そのような意味で、今回の特集が情勢や問題意識の共有化に少しでも寄与できていたら本当に幸いなことだと考えています。

なお、今年も個人の責任で運営しているブログ『公務員のためいき』に書き込んだ記事内容を引用している箇所があります。もともと組合を身近に感じていただくための一つのツールとして開設しているブログです。

ただ組合員の皆さんが必ずしもご覧になっているものではありませんので、時々、今回のような引用を試みています。そのブログは毎週1回週末に更新しています。ぜひ、機会がありましたら、ご覧いただければ幸いです。

最後に、この特集記事の中で毎年、ストライキ批准投票の結果を報告しています。すでに組合ニュースでもお伝えしましたが、別記のとおり批准率(組合員総数に対する賛成の比率)は85.03%、投票率92.69%、賛成率91.74%で、過去20年ほどで最も高い数字だった昨年の水準に並ぶ高い結果を得られています。

ストライキの是非に対する賛否の投票で組合活動を直接評価するものではありませんが、組合員の皆さんからの信頼度をはかる大きな目安でもあり、たいへん心強く受けとめています。このような組合員の皆さんからの信頼に応えるため、これからも精一杯頑張る決意です。ぜひ、引き続き組合活動への力強い結集をよろしくお願いします。

4月1日以降、職場がそのままであることを前述していましたが、組合役員としての立場や役割もまったく変わりません。1年ごとの任期であるため、11月の定期大会に向けて判断を重ねていくことになります。「定年を迎える週に思うこと」というタイトルで書き進めてきましたが、当面、3月までと変わらない日常生活が続くことになります。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、様々な催しが中止されています。定年をお祝いただく会がいくつか3月に予定されていましたが、すべて取りやめていました。懐かしい方々と久しぶりに語り合える機会が見送られ、残念でしたが仕方ありません。

3月31日の辞令伝達式の後に予定されていた市長との懇話会も取りやめたという連絡を金曜日に受けました。懇話会の後、そのまま休暇を取って何人かで会食に行く約束も交わしていました。小池都知事の自粛要請を受け、辞令を受け取った後は職場に戻り、普段通りの仕事に励もうと考え始めています。

最後に、オリンピック・パラリンピックの開催延期が決まった途端、小池都知事は感染の危険性を強く訴え出しています。これまで開催の判断に影響を及ぼすため、自粛要請を控えていたとしたら「都民ファースト」の言葉に違和感を覚えてしまいます。

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2020年3月21日 (土)

財務省職員の遺書全文公開

時々『週刊文春』を購入しています。先週水曜の朝、迷わず最新号を立ち寄ったコンビニのレジに持ち込んでいました。最新号の特集記事の見出しは「妻は佐川元理財局長と国を提訴へ 森友自殺 財務省職員遺書全文公開」でした。この問題は事前に報道があり、発売後には遺書の内容などを各メディアでも取り上げています。

森友改ざんで自殺の職員「佐川氏の指示」 手記・遺書公表 学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が、佐川宣寿元国税庁長官(62)の指示で決裁文書の改ざんを強要され自殺に追い込まれたとして、赤木さんの妻が18日、佐川氏と国に約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

妻は「元はすべて佐川氏の指示。パワハラで有名な佐川氏の指示には誰も背けない」とする赤木さんの手記や遺書を公表。代理人を通じて「夫が死を決意した本当のことを知りたい」と訴えた。

訴状などによると、当時財務省理財局長だった佐川氏は、安倍晋三首相が国会で国有地売却問題について「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した後の2017年2~4月、「野党に資料を示した際、森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」などと財務省幹部に指示。幹部は近畿財務局に改ざんを命じた。

近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木さんは2月26日、同局の上司から呼び出されたのを皮切りに、3~4回にわたって決裁文書から安倍昭恵首相夫人や政治家らの関与を示す部分を削除する作業を強制された。赤木さんは「こんな事をする必要はない」などと強く反発したり涙を流したりして抗議したが、本省や上司の指示のためやむを得ず従った。

この間、連続出勤や午前2~3時までの長時間労働が重なり、7月にうつ病を発症して休職。12月には大阪地検から電話で事情聴取を受け「改ざんは本省のせいなのに、最終的には自分のせいにされる」と心理的負荷が強まり、翌18年3月7日に自殺した。手書きの遺書には「これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる なんて世の中だ」などと書かれていた。

妻は国に対し「健康状態の悪化を容易に認識し、自殺を予見できた」として約1億7百万円を、佐川氏には「改ざんの強制で極めて強い心理的負荷を受けることは予見できた」として5百5十万円を求めた。妻は提訴の理由について「死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか。土地の売り払いはどう行われたのか、真実を知りたい」と代理人を通じてコメントした。財務省は「(訴状の)内容を確認していないことから、コメントは差し控えたい」としている。

政府、再調査せず 政府は18日、森友学園問題で決裁文書の改ざんに関わり自殺した財務省近畿財務局職員の手記公表を受け、改ざんの経緯などを改めて調査する考えはないとした。

安倍晋三首相は、官邸で記者団から手記に関する受け止めを聞かれ「財務省で事実を徹底的に明らかにした。改ざんは二度とあってはならず、今後も適正に対応していくものと考えている」と語った。再調査には触れなかった。自らの責任についての質問には、答えずに立ち去った。

財務省の茶谷栄治官房長は参院財政金融委員会で、2018年6月に公表した調査報告書では、改ざんが行われた当時に理財局長だった佐川宣寿氏が方向性を決定付け、理財局が一連の行為を指示したと結論づけていると説明した。自殺した職員が理財局からの度重なる指示に反発したことも認定したとして「新たな事実は見つかっていないと考えられる。再調査は考えていない」とした。

麻生太郎財務相は同委で「関与した職員に厳正な処分を行い、私自身も閣僚給与を自主返納した」として問題は決着済みと強調。「大臣の職責を果たしていきたい」と、改めて辞任を否定した。中日新聞2020年3月19日

ネットで検索したところ上記の新聞記事が詳しい経緯を伝えていました。今回のブログ記事は他のサイトに掲げられている内容の紹介が多くなります。私自身の手元に『週刊文春』がありますが、著作権の問題に留意した紹介の仕方に努めなければなりません。

そのため、すでにネット上に公開されている情報について、引用元を添えながら紹介することが最も著作権の問題を避けられる方法だからです。入力する作業の負担も軽減されるため、そのような構成でまとめさせていただくことをご容赦ください。

やはりネットで検索したところAbemaTIMESというサイトに『週刊文春』最新号の特集記事の内容が詳しく掲げられていました。『「財務省は喧嘩を売っている」「弁護側は出てきた全員を証人申請」森友文書改ざん、自殺職員のメモを託された相澤冬樹氏』という見出しの記事で、財務省近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが自殺に追い込まれた経緯などを伝えています。

「森友問題。佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それに指示NOを誰れもいわない理財局の体質はコンプライアンスなど全くない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止府」(原文ママ)

2018年3月7日、学校法人「森友学園」との土地取引をめぐる公文書が改ざんされた問題が国会で激しく追及される中、自ら命を絶った財務省近畿財務局の職員・赤木俊夫氏(当時54)が最後に残したメモだ。また、手記には「国会を空転させている決裁文書の調書の差し替えは事実です」「元は、すべて、佐川理財局長(当時)の指示です。」「3月7日頃にも修正作業の指示が複数回あり、現場として私は相当抵抗しました」と、上からの指示を受けた様子が実名を含め克明に記されていた。

遺族は18日、これら自宅のパソコンに遺されたA4サイズ7枚と手書きのメモ2枚の公開に踏み切り、佐川宣寿・元財務省理財局長と国に損害賠償を求めて提訴した。代理人弁護士が会見で読み上げたメッセージの中で、赤木氏の妻は「夫が死を選ぶ原因になった改ざんは、誰が何のためにやったのか。今でも夫のように苦しんでいる人を助けるためにも佐川さん、どうか改ざんの経緯を、本当のことを話してください。よろしく願いします」と訴えている。

これらの手記を託されたのが、NHK大阪放送局の記者時代から森友学園問題を取材、19日発売の『週刊文春』に記事を寄せた相澤冬樹・大阪日日新聞論説委員だ。18日のAbemaTV『AbemaPrime』では、相澤氏を招いて話を聞いた。

■「切り捨てられてしまった」と感じ提訴に踏み切る

相澤氏がメモや手記に最初に接したのは1年4カ月前のこと。「今でもはっきり日付を覚えている。2018年11月27日だった。奥さんは私がNHKを辞めた経緯を知り、自分の夫と似たような境遇だと感じたらしく、“お会いしたい”と連絡をくれた。ただし、近畿財務局やマスコミが怖いということで、取材前提ではないということでお会いした。

奥さんは当時のことを鮮明に覚えていて、語ってくれた。深夜残業が続き、会計検査院にまで嘘をつかされた。真面目な公務員としてやっていられない。だから異動の希望を出していた。上司も“たぶん大丈夫だ”と言ったらしい。ところが蓋を開けてみると、彼だけが残され、他のみんなが異動してしまった。奥さんに“ものすごくショックだ”と言ったという。ほどなく、彼はうつ病で休職、2度と職場に戻れなかった。ただ、僕はそんなに突っ込んだ話はできないと思っていた」。

そして妻は、すぐに今回の手記を出してきたという。「彼女の方から、いきなり“これ、ご覧になりたいですよね”と。『週刊文春』の記事で内容を知った皆さんの心を震わせるものだった思うが、私も本当にすごいものが遺されていたんだなと感じた。ただ、奥さんは“夫の遺志に沿うためには、これは出した方がいいだろう。

でも出したらどうなるか。非常に怖く、なかなか出せない。だから記事にはしないでほしい。出されたら私は死にます”と言った。名がたくさん出ているし、財務局の人たちに迷惑をかけてはいけないという思いがとても強いようだった。私はその目を見て、これは本気だ、これは了解なしに出すことはできないと思った」。

それから1年あまり。妻と交流する中で、少しずつ心境に変化も生じてきたという。「“夫がわざわざこれを作ったのは、世の中に訴えたいからだろうな”と。確かに、そうでなければこういう書き方にはならない。世の中の人に知ってほしいから書いている。そして、改ざんはなぜ必要だったのか。誰が、どういうふうにして赤木さんに改ざんをさせたのか。あの土地取引は本当に正当なものだったのか、といった疑問も湧いてきた。財務省が出した調査報告書の内容にも納得がいかなかった」。

赤木氏の手記には、「すべて佐川元理財局長の指示であり、本省幹部が文書の改ざん範囲を決定し、改ざん範囲がどんどん拡大、修正回数は3、4回に及んだ」「大阪地検特捜部は事実関係を把握していた」「本省ではなく、近畿財務局の責任となるだろう」といった内容が含まれている。こうした点について妻は自ら関係者に話を聞くうちに、裁判を起こし、手記を公表せざるを得ないと考えたという。

「奥さんは“俊君にお詫びして、なぜこんなことをしたのか説明してほしい”と、弁護士を通じ佐川氏に手紙を2度送っている。しかし、佐川氏からは“行けません”ということならまだしも、一切返事がない。そして、それまでは話をしに来てくれていた財務局の人たちまで“もう行けません”と言い出した。“自分は切り捨てられたのか。結局、裁判しかない”と感じた。そして、最大の証拠である手記は裁判に提出するとともに、世にも問うた方がいいだろうという気持ちになっていった」。

その上で相澤氏は、今の妻の心境について、「個人への恨みやつらみでやっているわけではない」と強調する。「例えば佐川さん個人が責任追及される格好になっているが、実は昨日、奥さんが“見たい”というので、佐川さんの自宅に案内した。ただ、佐川さんに会おうというわけでもなく、手紙も置かず、とにかくじっと見ているだけ。そして、“この街は幸せそうな街ですね”と言った。

“だけど、佐川さんも佐川さんの家族も、きっともう幸せではないのでしょうね。佐川さんもかわいそう”と。つまり、訴えた相手だし、手記の中でも佐川さんが全て指示したと書かれてはいるが、もしかしたら佐川さんも何らかの指示、しがらみのなかでやらざるを得なかったのではないかという気持ちもあるということだ。そこも含めて全部知りたいという気持ちがある」。

■「弁護側は手記に出てきた全員の証人申請をする」

19日の国会では、手記に関する質疑が行われた。麻生財務大臣は「少なくともこの問題で一番問題なのは、文書の改ざんが行われたことが一番問題なので、これは深くお詫び申し上げなければならんところだと思っている」、財務省の茶谷官房長は「財務省としてはできる限りの調査を尽くした結果を示したものであり、新たな事実は見つかっていないと考えられることから再調査を行うようなことは考えていない」と答弁。

また、安倍総理は囲み取材で「真面目に職務に精励していた方が、自ら命を絶たれる、大変痛ましい出来事であり、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたいと思う。財務省においては麻生大臣の下で、事実を徹底的に明らかにしたところだが、改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していくものと考えている」とコメントしている。

相澤氏は「今までは与野党も国民も“問題だ”という人たちと、“問題はなかった”という人たちが二つに割れ、議論も平行線をたどってきた。しかし今回は違う。この事件で亡くなった犠牲者の遺族が“あの調査報告書では納得できないと”声を上げた。国は当然、納得が行く説明をする義務があるはずだ。しかし財務省は“再調査するつもりはない”と直ちに明言した。“重く受け止め、検討させていただきます”みたいな曖昧な官僚答弁でもなかった。本当に許されない態度だし、正面きって喧嘩を売っていると感じた」と怒りを露わにする。

「手記には佐川さんはじめ、色んな人が実名で出てくる。例えば“次の財務事務次官”とも言われている、理財局長だった太田充主計局長。近畿財務局長だった美並義人東京国税局長。理財局総務課長だった中村稔駐英公使。不正に関わったと指摘されているこれらの人たちは、みな出世している。一方、不正を実行させられた赤木さんは死んでいる。このことに国民は納得するのか。弁護側は全員の証人申請をする。赤木さんの話が嘘だというなら、証明してくださいという話だ。

また、中途半端な賠償請求額で裁判を起こせば、国は“あげます、だから裁判は終わり”としてしまう。だから向こうが認諾できないよう、あえて高い金額を設定し、法廷できちんと真相究明をしようというのが2人の弁護士の考え方だ。彼らは大阪で過労死問題を手掛けてきたので、遺族の願いが勝ち負けや賠償金ではなく真相究明だということもちゃんと分かっている。ぜひやってほしいと期待している」。

また、今後について相澤氏は「例えば麻生財務大臣が“俺は知らなかった”で済むことなのか。社員が不祥事を起こした企業の社長がそうは言えないだろうし、責任者として真相究明、再発防止の努力をしなければならない。そして、財務大臣の上にいるのは総理大臣だ。度合いは色々あるにしても、国政に対して、全く無責任だとは言えない。役所がやったことだと言うのなら、まさに政治家の責任において解明し、遺族が納得いくような説明をすべきだ」と訴えた。

ジャーナリストの堀潤氏は「これから裁判を闘うのは本当に大変なことだと思うし、本来は裁判にまでしなくても良かった話だったと思う。それを重く受け止め、真相を明らかにした上で、政治家と官僚、本庁と出先機関、キャリアとノンキャリといった関係、構造のあり方についてもメスを入れていくのが総理や大臣の責任だと思う」と話した。

たいへん長い記事となって恐縮です。要点の抜粋か、関心のある方のみリンク先を参照いただくという紹介の仕方も考えましたが、今回、該当の記事内容の全文をそのまま転載しています。森友学園との土地取引を巡り、公文書が改ざんされた問題に悩み、自ら命を絶つことになった赤木さんやご遺族の無念さを知ってもらうためにもそのように思い直しました。

このブログでは3年前に「森友学園の問題から思うこと」という記事を投稿しています。その記事の中で「森友学園の問題で安倍首相や昭恵夫人が贈収賄につながるような働きかけを関係機関に行なっていないことはその通りだろうと考えています」と書き残しています。その考えは今も変わっていません。

しかし、昭恵夫人が森友学園と関わっていたことは事実でした。そのことを把握されていなかったのかも知れませんが、安倍首相が国会で「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁したことも事実です。そして、この答弁が一連の公文書改ざんの問題につながり、赤木さんの自死という悲劇を招いたことも事実だろうと思っています。

改ざんの指示が佐川元理財局長だったことも事実認定されています。ただ佐川元理財局長や財務省の判断による「忖度」から始まった問題だったのか、官邸や政治家からの指示があったのかどうかは不明瞭なままだと言えます。安倍首相が公文書の改ざんに直接関わっているとは考えられませんが、財務省だけに責任を負わせる問題だったのかどうかは釈然としません。

紹介した上記記事の中で、赤木さんの妻は「だけど、佐川さんも佐川さんの家族も、きっともう幸せではないのでしょうね。佐川さんもかわいそう。もしかしたら佐川さんも何らかの指示、しがらみの中でやらざるを得なかったのではないか。そこも含めて全部知りたい」と語られていたことを伝えています。

赤木さんの遺書の全文公開と提訴が改めて森友問題の真相解明や責任を問い直す機会につながることを願っています。しかしながら麻生財務相は男性職員の遺書について「新たな事実が判明したとは考えられず、再調査を行うことを考えているわけではない」と述べていました。同時に麻生財務相は遺書を「まだ読んでいない」と明かしていましたが、自分自身で読まずに再調査を否定する不誠実さに批判の声も上がっています。

一方で、安倍首相は遺書に目を通された上で「真面目に職務に精励していた方が、自ら命を絶たれる、大変痛ましい出来事であり、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたいと思う。財務省においては麻生大臣の下で、事実を徹底的に明らかにしたところだが、改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していくものと考えている」と述べています。

言葉は丁寧ですが、やはり再調査には消極的です。そもそも安倍首相の軽率な国会答弁が問題の発端であることを自覚されているのかどうか疑問です。今回の問題でも普段から安倍首相を支持されている有識者からは「もっと国民生活に直結した問題を議論すべき」という声が上がるのだろうと思っています。

確かに新型コロナウイルスへの対応など優先順位の高い重要な課題の議論が疎かになるようでは問題ですが、首相の軽率な言動によって行政が振り回され、あってはならない公文書の改ざんにつながっているような事態を決して見過ごせません。公文書管理法第1条で公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民の共有の知的資源」と定義しています。

国民の命と暮らしを守るべき責務のある政府は日々、重要な政策判断を積み重ねています。その判断が適切だったのかどうか、場合によって時間差があることは仕方ありませんが、いずれかの段階で国民に明らかにしなければなりません。そのためにも公文書管理の重要性がうたわれている訳ですが、桜を見る会の問題を巡る対応をはじめ、現政権での管理の杜撰さが目立ちます。

提訴後に記者会見した弁護士の「亡くなった赤木さんは手記の最後に『今の健康状態と体力ではこの方法しかとれなかった』と記している。本当は事実を自ら伝えたかったはずだ。この裁判で真実を明らかにしたい。裁判を通じて、今後、違法なことを命じられた現役の職員たちが声をあげて抵抗できるような組織にしていきたい」という言葉の重さも強く感じ取っています。

最後に、今回のような長い記事を綴っている私自身の問題意識を改めて説明させていただきます。以前から当ブログには幅広い見識の方々が訪れてくださっています。そのことを意識し、事実関係を中心とする情報提供に努め、扇情的な「批判ありき」の言葉は避けるように心がけています。その上で過去に何回か掲げてきた次の記述を紹介し、今回の記事を終わらせていただきます。

適切な評価を下していくためには「誰が」に重きを置かず、その言動や判断は正しいのか、色眼鏡を外して物事を見ていくことが必要だろうと考えています。そして、物事を適切に評価していくためには、より正確な情報に触れていくことが欠かせません。誤った情報にしか触れていなかった場合は適切な評価を導き出せません。また、情報そのものに触れることができなかった場合、問題があるのか、ないのか、評価や判断を下す機会さえ与えられません。

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