高市総理のカタログギフトの問題
逆転で金メダルを獲得したフィギュアスケート「りくりゅう」ペアの活躍などで盛り上がったミラノ・コルティナ冬季オリンピックは幕を閉じています。銅メダルを獲得した17歳の中井亜美さんのフィニッシュ直後の首かしげ、エキシビションでのあざとポーズに魅せられた方々も多かったのではないでしょうか。
ただ人によっては「あざとい」という本来の意味で見られていたかも知れません。常に笑顔を振りまいている高市総理に対しても支持率の高さのとおり好感度を高めている方々が多いのだろうと思っていますが、やはり人によっては「あざとい」という印象を強めながら見られているのかも知れません。
以前の記事「改めて言葉の重さ」の中で、人によってドレスの色が変わるという話題を紹介していました。見る人によって、ドレスの色が白と金に見えたり、黒と青に見えてしまうという話です。安倍元総理に対する評価や見方が人によって大きく変わることについて、そのようなドレスの話と結び付けていました。
高市総理に対する評価や見方の個人差は、安倍元総理以上に大きいように感じています。このような傾向を受けとめながら前々回記事「衆院選が終わり、今、思うこと」の中で、高市総理の問題点や危うさを指摘することで若年層の支持を失っていくという構図について触れていました。それでも「問題視すべきことは、しっかり今後も指摘していかなければなりません」と記し、次のような問題意識につなげていました。
その際、上から目線の「答え」を押し付けるような言動は慎み、それこそ対立を煽るのではなく、多様な考え方を認め合いながら共感を広げていくための言葉や態度が極めて大切な前提になっていくように思っています。
長年、このブログを続けてきた中で上記のような問題意識を高めています。感情が先走った言葉、思い込みが目立つ「結論ありき」の批判、人格や容姿をけなすことなどは固く禁じています。単刀直入な批判意見は、同じ考えの方々には共感を得やすいのかも知れませんが、異なる考えの方々からは反発を招きがちです。
したがって、具体的な言動や事例を指摘した上で、何が問題なのか、なぜ批判するのか、丁寧な説明を加えていくように努めています。さらに「私はこのように思っています」という投げかけを軸とし、結論を押し付ける内容にならないよう心がけています。このブログをご覧になった方が、一人でも多く「なるほど、そのような見方もあったのか」と感じていただけるような文章や情報発信に留意してきています。
前置きが長くなって恐縮です。前回記事は「消費税について雑談放談」でした。そろそろ国政の話題から離れた題材を取り上げることを考えていました。結局、記事タイトルに掲げた「高市総理のカタログギフトの問題」に接したことで、今回も国政に関わる時事の話題に向き合うことになりました。
総選挙後、高市総理が自民党の衆院議員全員315人に3万円ほどのカタログギフトを配っていました。高市総理は「法令上問題ないものと認識している」とし、返還を求めない姿勢で押し通しています。詳しく解説した『高市首相のカタログギフト配布、どこが論点?』というサイトとともに時事通信の報道内容を紹介します。
高市早苗首相(自民党総裁)は25日の参院本会議で、同党の全衆院議員にカタログギフトを配布したことについて「法令上、問題はない」との認識を示した。計315人に対し、1人当たり約3万円分を配ったと明らかにした。野党は「政治とカネ」を巡る自民の体質が表れているとして批判を強めた。
政治資金規正法は、個人から政治家個人への政治活動に関する寄付を禁じている。首相は自身が代表を務める党奈良県第2選挙区支部の政治資金から支出したと説明。「政党支部から議員個人への寄付だ」と述べ、法に抵触しないとの考えを強調した。立憲民主党の田名部匡代幹事長への答弁。
複数の自民関係者によると、8日投開票の衆院選後に首相の秘書が所属議員の事務所を訪れ、カタログギフトを配布。肩書のない「高市早苗」名を記した「のし紙」が付けられていたという。首相は答弁で「厳しい選挙を経て当選したことへのねぎらいを込め、議員活動に役立ててほしいと考えた」と語った。
自民では昨年3月、当時の石破茂首相が2024年衆院選で初当選した15人に10万円相当の商品券を配布。石破氏は陳謝に追い込まれ、議員側は返却した。野党は国会で追及する構えだ。
中道改革連合の小川淳也代表は代議士会で「ギフトを党内にばらまく自民の体質は看過できない」と指摘。国民民主党の古川元久国対委員長は記者会見で「誤解を受ける軽率な行動は慎むべきだ」と述べ、首相が説明責任を果たすよう求めた。立民の水岡俊一代表は「懲りない人たちだ。政治とカネの問題をまた引き起こした」と指弾した。
自民内からも「法的に問題なければいいというものではない」(ベテラン)などと疑問の声が上がった。幹部の一人は「石破首相のことがあって1年だ。何をやっているのか」と不快感を示し、日本維新の会の幹部も「商品券問題から何も学んでいない」と語った。【時事通信 2026年2月25日】
まず法的な問題です。カタログギフトと商品券は似て非なるもので、陳謝した石破前総理の時とは異なるという見方があります。政治資金規正法で個人が政治家に寄付することを禁じています。ただ当選祝いや選挙のねぎらいとして、花束やお菓子を贈ることは問題ありません。商品券は金銭に見なされますが、カタログギフトはモノであり、違法ではないという解釈です。
今回の場合、高市総理個人からではなく、カタログギフトは自民党奈良県第二選挙区支部から贈っているという説明も加えられています。このような説明によって、まったく違法性は問われないと強弁されています。しかしながら熨斗には「高市早苗」と書かれ、政党支部の表記はありません。
そもそも地方の一支部が、なぜ、衆院議員全員に贈る必要があったのか、1千万円近くとなるカタログギフトの支出を負担しなければならなかったのか、いろいろ疑問が生じます。やはり外形的には高市総理個人からの贈答であり、政党支部のお金を個人の財布代わりに使っている実態も問題視せざるを得ません。
さらに「政党交付金という公金」を充当したのではないと説明していますが、お金に色は付いていません。今後の収支報告を注目しなければなりませんが、説明通りであれば政党支部への企業献金が主な原資として自民党衆院議員に贈ったカタログギフトの代金に充てられたということになります。なかなか違和感のある構図だと言わざるを得ません。
いずれにしても法的には問題ないのかも知れませんが、社会通念上の振る舞い方や物価高に苦しむ国民感情を照らした時、1千万円近くの贈答が適切な行為だったのか甚だ疑問です。日本政治に詳しい中央大学の中北浩爾教授は「自民党には気遣いを示す『贈り物文化』がある。ただ時代の流れとともに一般常識との乖離が目立ってきた。違法性はなくとも考え直す時期に来ている」と指摘しています。
続いて、たいへん気になることがあります。最近の記事「36年ぶりの真冬の総選挙 」の中で触れた「なぜ、36年ぶりなのか、このような苦労を想像できる人物が一人でもいれば、真冬に解散する判断は見合わせてきたからではないでしょうか」という見方につながる危惧です。
自分一人で物事を判断しがちな高市総理に対し、「それはどうでしょうか」と即座に待ったをかけられる側近の存在が薄いように感じています。商品券とカタログギフト、その違いがあったとしても石破前総理の支出額150万円に比べ、今回の高市総理の大盤振る舞いぶりのほうが際立っています。
上記に示した時事通信の記事では「石破首相のことがあって1年だ。何をやっているのか」「商品券問題から何も学んでいない」と与党内からも苦言する声が上がっていることを伝えています。
このような認識や危機感を持ち、高市総理をいさめられる人物が周囲に一人でもいれば今回のような問題は回避できたはずです。今後、もっともっと重大な場面でも多角的なチェック機能を果たせないことが起きうるのではないかと危惧しています。
たいへん長い記事となっていますが、もう少し続けます。中道改革連合の代議士会で小川淳也代表が「鬼の首でも取ったかのように目くじらを立てるつもりはありません」と前置きした上で、次のように訴えていました。
「これからもいろいろな問題が出てくると思いますが、各委員会で質疑に立つにあたって、ぜひ日和ることなく、相手の政権の支持が高いとか高くないとか、人気がある政権だとか、ない政権だとかに一切左右されてはならない、我々野党第一党の矜持ですから。そこは自信と確信を持って対応をお願いしたいと思います」と述べた。
そして「関連して法案や予算の審議に、こうしたテーマをめり込ませることは必ずしも私どもも本意ではございません。仮に万一そのような扱いをせざるを得ない時は、冒頭1分なのか2分なのか3分なのか。鮮やかにキレよくさわやかに、こうした倫理観を問うということもあわせてお願いをしたいと思います。仮に重ねてこのような事態が頻発する場合、別途政治倫理を問う場は他にありますので。法案審議や予算審議に影響を与えないことに留意しつつ、不問には付さないという態度を筋道を立てながらしっかり主張していきたい」と語った。
概ね共感できる考え方だと思っています。昨日の予算委員会でも高市総理のカタログギフトの問題が取り上げられています。小川代表の質問に対し、高市総理は一人約3万円分の金額に関して「結婚式のご祝儀を参考にした」と答えています。多くの議員からねぎらって欲しいとの連絡を受け、次のように考えたそうです。
「飯会苦手な女です」と話した上で「セキュリティーが確保できる個室レストランで何十回にも分けて食事会をやるとしたら、せこい話だが、お金がかかる」とし、3万円ほどのカタログギフトを贈ることを決めたと説明しています。違法性については改めて否定し、「昭和の中小企業のおやじ社長みたいなところがまだ私にはある。何らかの気持ちを示したい中で、ぎりぎりの判断だった」とも述べていました。
冒頭に記したとおり高市総理に対する評価や見方は人によって大きく枝分かれしています。このような説明によって納得されていく方、そもそも初めから問題視していない方も多いように感じています。そのため、支持率を急降下させる要因の一つとなった昨年3月の石破前総理の商品券とは異なり、しばらくすれば「終わった問題」になっていくのだろうと懸念しています。
野党側が引き続き追及していくと「しつこい、まだやっているの」「もっと重要なことがあるだろう」というような批判を受けかねないことを心配しています。しかし、今回の問題が、このまま幕引きされていった場合、ますます高市政権に対するチェック機能が低下していく引き金になるように思えてなりません。


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