政治家の言葉、露わになる資質
前回記事は「両極端な評価のある兵庫県知事」でした。兵庫県政を巡る動きとして『斎藤知事側近の元総務部長を懲戒処分へ 告発者私的情報の漏洩を認定 停職3カ月案も』という新たな報道に接しています。大きな動きだと言えますが、今回の記事は兵庫県以外の時事の話題を中心に取り上げていきます。
真っ先に取り上げるのは「米は買ったことはありません、支援者の方々がたくさん米をくださるので。まさに売るほどあります」と発言し、辞職に追い込まれた江藤拓前農水相の問題です。『「ねぇ、バカなの?」宮崎県民も激怒!江藤農水相のヤバすぎる言い訳に国民ウンザリ』という週刊女性PRIMEの辛辣な見出しの記事を目にしています。
米の価格高騰に苦しむ消費者の神経を逆撫でする致命的な失言でした。このような言葉を国民がどのように受けとめるのか、常識的な想像力が働かなかったことに驚きます。特に農水相という重責ある立場でありながら、国民の痛みと無縁であるという「自慢話」がどれほど愚かな発言だったのか、手厳しい批判の声に表われています。
「こんなんが大臣やってるから何も変わらないんだろうな。もはや人災」「世間知らずの二世議員に国民の苦しみが分かるわけない」という声が前掲した記事の中で紹介されています。その記事では、発言が問題視された翌日以降の江藤前農水相のお粗末な釈明や迷走ぶりを伝えています。
報道陣の取材に応じた江藤農水大臣は、今回の発言について「撤回というより修正したい」と弁明。売るほどあるという発言は「言い過ぎだった」とし、「妻からも怒られた」と明かした。また、このような失言をした理由として「ちょっとウケを狙って強めに言いました」と説明した。
この稚拙な言い訳は火に油を注いでしまったようで、《ウケ狙いとか国民のこと舐めてんの?これがウケると思ってる感覚がもうズレてる》《妻から怒られたって…調子に乗りすぎてママに怒られる小学生かな?》と、さらなる炎上を招いた。
また、記者から進退や責任の取り方について問われると、不快感をあらわにした表情で「進退?」「責任の取り方?」と聞き返す呑気ぶり。進退に関わるほどの深刻な事態にも関わらず、本人は事の重大さに気がついていない様子だった。
その後、石破茂首相から厳重注意を受けると発言そのものを撤回。20日の参院農林水産委員会では「確かにウケる話ではないですよね。まったくピント外れだったと思います。現場を見る努力はしてきたつもりなんですが、庶民感覚はないと断ぜられるような発言をしてしまったことはまさに恥ずかしい。返す返すも不適切な発言だったとおわびを申し上げたい」と謝罪した。
一方で、「言い訳はしたくないのですが、宮崎ではたくさんいただくと“売るほどある” というふうによく言うんですよ。ですから宮崎弁的な言い方でもあった」と主張。“宮崎弁のせい”ともとれる言い訳に、SNS上では呆れた反応も少なくない。
失言自体、批判を受けたとしても、その後の対応ぶりによって沈静化していくこともあります。今回の江藤前農水相の場合、問題発言の後の対応そのものが火に油を注ぐ展開となっていました。今回の記事タイトルを「政治家の言葉、露わになる資質」としているとおり江藤前農水相の言葉の数々が、政治家としての資質を露わにしています。
さらに『江藤拓“年貢大臣”の永田町の評判はパワハラ気質の「困った人」…農水官僚に「このバカヤロー」と八つ当たり』という日刊ゲンダイの記事も目にしています。問題発言を切っかけに江藤前農水相のパワハラ気質など、あまり伝わっていなかったリーダーとして戒めるべき資質まで露わにされています。
12年前の記事「暴言や失言と本音の発言」の中で「暴言や失言の大半は本音の発言が表面化したに過ぎないものと考えています」と記し、次のように続けています。口を滑らせたという不用意な「うっかり」もあれば、暴言という認識がないまま発言し、強い批判にさらされているケースもあろうかと思います。
批判を受けた後、発言内容を撤回する場合が多いようですが、その本心を180度変える機会につなげられるほうが稀であるように感じています。そのような本音を二度と口外しないことを心に刻む方のほうが多数派になるのかも知れません。暴言や失言と本音の発言、政治家の場合、それらをトータルに見られた上で人物評価が積み重ねられていくはずです。
つい最近、自民党の西田昌司参院議員が、ひめゆりの塔の展示内容について「歴史の書き換え」などと発言し、問題視されたため発言を撤回していました。しかし、琉球朝日放送『西田議員「ひめゆり」発言に謝罪/歴史観は「事実」と強弁も/歴史を書き変えるのは誰か 沖縄』が伝えるとおり西田議員の本心や歴史観そのものは変わっていません。
西田議員にとって「日本軍がどんどん入ってきて、ひめゆりの隊が死ぬことになった。そして米国が入ってきて、沖縄が解放された」という歴史観は、27年にわたった占領時代、アメリカに都合のいい教育をされた結果であると考えています。西田議員は沖縄戦体験者の証言を直接伺ったことがないのかも知れません。
西田議員の発言に対し「戦後80年という節目を迎える今なお、沖縄に対する無理解と差別の構造は続いていると私たちに突き付けています」「この人の発言を許せない。根っこは、教科書から(集団自決での日本軍の)軍命を消し去った姿勢と同じなんです。国の姿勢は歴史を勝手に書き換える方向にもっていって、この人たちの青図を見ているからその方向をたどろうとするけれど、許されませんよ」と非難する声が上がっています。
「これまで県民が語り継いできた沖縄戦の歴史は、日本とアメリカ、どちらの国家のものでは決してありません。それは、両国の政治や外交、軍事の思惑に翻弄され、犠牲になった住民の視点の歴史」という言葉が、極めて真っ当な認識だろうと受けとめています。このような認識を踏まえた時、自分にとって都合のいい歴史に書き換えようとしているのは西田議員自身だと言わざるを得ません。
政治家が発した言葉によって、その政治家の立場性や資質が露わになっていきます。陰謀論を信じがちで、思い込みによる発言を繰り返すような政治家は到底支持できません。まして根拠の乏しい事実関係をもとに他者を批判した場合、誹謗中傷ととらえられ、敵対する関係につながっていくだけです。
LITERAが最新記事『国民民主党の問題は山尾志桜里や須藤元気より“暴言王”足立康史を候補にしたこと 陰謀論やデマ拡散、山口敬之や統一教会擁護も』で伝えているとおり国民民主党が、日本維新の会に所属していた足立康史元衆院議員を参院選比例代表の公認候補としています。連合との絡みから国民民主党の動きに注目していますが、望ましくない資質が露わな政治家の擁立は極めて残念な話だと思っています。
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