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2025年3月15日 (土)

会計年度任用職員制度の現況

前回記事は「混乱と分断が続く兵庫県政 Part3」でした。まだまだ目が離せない兵庫県政ですが、さすがに「Part4」は避け、今回は私どもの組合の労使課題の現況について取り上げます。どこかのタイミングで、このブログで取り上げなければならないものと考えていた現況です。

組合員からの電話に絶句

記事タイトルに掲げている会計年度任用職員制度の現況が、悔やんでも悔やみ切れない非常に残念な事態に至っています。2月中頃の昼休み、昔から顔馴染みの組合員の方から私のスマホに電話がありました。「だめだったの…」という試験結果の連絡でした。

その方は学校事務職場の会計年度任用職員で、2次試験の結果が示され、不合格という知らせを受けたとのことです。理不尽にも次年度以降、本人の意に反して職を奪われることになります。連絡を受けた直後は文字通り絶句、しばらく言葉が出てきませんでした。

健康課という職場で一緒だった方で、直営の人間ドック事業の嘱託職員として事務に従事されていました。組合員だったため、人間ドック事業が廃止された際、何らかの形で雇用が継続できるよう力になれたことを思い出しています。

今回、組合役員から離れているため、私自身が何か直接的な力になれることのない無力感や歯がゆさから言葉を失っていました。このような悩ましさとともに、組合員である現職者に対する労使交渉の「成果」が1次試験免除だけであることを言い添えなければならない事態に呆然としていました。

もともと明るい性格の方であり、極端な沈痛さを感じさせない声色でしたが、内心の無念さははかり知れないものだったはずです。大きな瑕疵がない限り、試験結果は基本的に受け入れざるを得ない不本意な制度設計を最終的に組合も認めています。そのため、少しでも期待を持たせられるような言葉を一言も告げることができませんでした。

このような連絡が組合員からあったことは委員長らに報告したいと伝え、電話での会話を終えています。その後、委員長に確認したところ学校事務以外の職場も含め、複数の組合員から不合格とされた結果について連絡や相談を受けていることを知らされています。

委員長時代の労使交渉

昨年6月の記事改めて会計年度任用職員の課題」で詳述していますが、私どもの組合は、保育園、学童保育所、学校事務職場などで働く嘱託職員の皆さんが組合加入し、労使交渉の積み重ねによって65歳までの雇用継続を勝ち取ってきました。それが会計年度任用職員制度が始まり、5年で雇い止めされるかも知れないという不安定な雇用に後戻りしていました。

全国的には3年から5年という雇用年限を定めていた団体が大半だったため、会計年度任用職員制度が始まり、国は3年、東京都は5年というマニュアルが整えられました。その結果、雇い止めの心配のなかった自治体の非常勤職員が一転して雇用不安にさらされています。

高年齢者雇用安定法では、使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保を求めています。会計年度任用職員制度を成立させた時の国会の附帯決議では、公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求めています。それにも関わらず、労働者にとって最も重要な雇用継続の課題を「改悪」する結果を招いていることの理不尽さに忸怩たる思いを強めてきました。

そもそも法律上、会計年度任用職員の再度の任用回数に上限は設けられていません。任用回数に上限を設けた場合でも、競争試験や公募は必須とされず、現職者を対象にした選考で雇用継続していくことは問題ありません。

このような点を把握していましたが、2019年10月、都内の自治体の中で私どもの市が突出した内容で決着することは困難でした。「公募によらない再度の任用は原則として連続4回」という東京都の示している基準を受け入れる際、組合からは「これまでの労使確認事項も尊重していく」という一文を付け加えることを求め、このことについても労使で確認していました。

「これまでの労使確認事項も尊重していく」という一文は、会計年度任用職員の65歳までの雇用継続が引き続き課題として残っているという問題意識です。しかし、このような問題意識は労使で隔たりがありました。市当局は5年に1回、現職者と新規採用希望者が競合する公募による採用試験を予定し、このことについて組合も合意しているという認識でした。

確かに改めて労使協議を提起しなければ、その内容で公募試験に進んでいくことを組合も合意していました。以前の記事「労使の信頼関係について思うこと」に綴っているとおり信頼関係を維持するためには「約束したことは守る」という土台が欠かせません。約束が守れない場合、変更しなければならない場合、相手方に事情を丁寧に説明し、納得を得られるように努力しなければなりません。

2022年8月、公募試験実施まで2年を切る中「これまでの労使確認事項も尊重した」雇用継続のあり方について、改めて協議すべきものとして団体交渉で申し入れました。組合の対応案は下記のとおりで、この時、市当局側に渡した一連の資料は当時の市長にも私から直接手渡していました。

【組合の対応案】

人事評価による再度の任用は原則として連続4回とする。現職者の培ってきた業務に対する知識や経験を重視し、5回目に際しては引き続き任用を希望する現職者を対象とした選考試験を実施する。選考方法は面接試験とする。欠員が生じる場合などは新規採用希望者を別途募る。その際は広報等を通じて募集する。

会計年度任用職員制度を導入する際、市当局は「培ってきた知識と経験を重視しているため現職者にはアドバンテージがある」という見方を示していました。しかし、このような見方のもとに現職者と新規採用希望者を競い合わせ、結果的に現職者全員が合格していった場合、競争試験のあり方に疑義を招きかねません。

このような懸念を解消し、現職者の雇用不安を取り除く手立てとして、組合は上記のような具体的な対応案を市当局側に示しました。人事評価による選考は連続4回という原則は崩さず、5回目は現職者のみを対象にした面接試験を実施するという案です。公募した後に新規採用希望者と競い合わせることの不合理さを解消するための切実な要求でした。

悩ましい立ち位置のもとで

2022年11月に組合の執行委員長を退任した後、当たり前なことですが、後任の委員長らがやりにくくならないよう相談を受けない限り、労使課題について口を出させないように努めていました。昨年度末に現職者の一次試験免除を確認したことで、公募による競争試験そのものを現執行部が合意したことを知ったのも交渉が終わってからでした。

労使合意したという話を耳にした時、個人的な思いは非常に複雑でしたが、その判断を表立って批判しないように自重していました。雇用継続の課題は自分が現職の時に詰め切れず、大きな宿題として残してしまったという自戒の念もあり、現執行部の判断を信頼しながら受けとめていました。

当時の組合ニュースでは「一次試験免除を勝ち取りました」と伝えています。ただ大きな成果であることを認めながらも、残念ながら私自身の懸念や不安が拭えたとは到底言い切れない交渉結果だったと言えます。実は最近、委員長から相談を受け、率直な意見を交わす機会が増えています。

会計年度任用職員である組合員複数名の雇用継続を果たせなかったという深刻な結果が生じた後、この当時の思いを改めて委員長に伝える機会がありました。自分が委員長を続けていたとしても結果は変わらなかったかも知れませんが、「勝ち取った」という伝え方はできなかったものと思っています。

その言い方には交渉の到達点という評価がこめられています。公募による競争試験が必須とされる限り、到達点ではなく、制度発足5年目の今年度、運用を巡る労使協議の継続が欠かせないものと考えていました。そのような認識に対し、合意した当時の委員長と私自身の間で温度差があったようです。

協力委員の一人として組合ニュースの配布などをお手伝いしていますが、信任投票を受けることのない役職であり、労使交渉の当事者から退いたOBという立場であることには変わりありません。一方で、2023年9月の記事「身近な政治、市長選の話」で伝えているとおり都議時代から私どもの組合と推薦関係があり、20年以上前から懇意にさせていただいていた方が現在の市長です。

さらに昨年4月には、私が入所した頃から親しくお付き合いいただき、同じ職場の直属の上司としてお世話になった方が副市長に就任されていました。このような関係性と詰め切れなかった宿題という思いがあったため、会計年度任用職員制度の労使協議の経緯や論点等をまとめた資料を市長と副市長に渡し、私自身の問題意識を伝える機会も設けてきました。

もちろん労使交渉の責任者である副市長と話した内容は委員長らに適宜報告しています。労使交渉に関わる責任や判断する権限のない悩ましい立場ですが、昨年月の記事「会計年度任用職員制度の課題、最新の動き」のとおり組合執行部と連絡を密にしながら側面からサポートしてきました。

ただ労使交渉の窓口を飛び越えてトップダウンで方針を転換させるような手法は望まず、あくまでも労使交渉の折衝窓口である人事課長らに理解を得た上、より望ましい運用をはかれないかどうかという問題意識のもと側面支援してきたつもりです。そのため、昨年7月の記事の最後には次のように記していました。

このような思いと現職の組合役員ではないという立場も踏まえ、ここから先は今後、労使協議を通して何らかの動きを作ることができるのかどうか見守っていかなければならないものと思っています。もちろんお役に立てることがあり、声をかけていただければ全力で応援していこうとも考えています。

たいへん悔やまれる残念な結果に

会計年度任用職員制度を導入した際、私どもの市と同様に「再度の任用は4回まで」と定めていた市が上限を撤廃した動きを受け、組合執行部は上限の撤廃を求めて交渉に臨んでいました。それはそれで追随すべき重要な要求ですが、これまで合意してきた労使交渉の結果を踏まえた上、現職者の雇用継続に向けた今年度における運用のあり方が最も重要で喫緊の課題だろうと考えていました。

このような問題意識を委員長らに伝えていましたが、たいへん残念ながら冒頭に記したとおり雇用継続を希望した複数名の現職者が実質的な雇い止めとなる現況に至っています。組合執行部は全力で労使協議を進めていたはずであり、やはり私自身が交渉の当事者だったとしても力は及ばなかったかも知れません。

それでも悔やまれるのがトップダウンは望ましくないなどと考えず、組合員の雇用継続を最優先にして「やれることは何でもやる」という危機意識のもとに、もっともっと積極的に組合執行部を支えていくべきだったのではないか…、取り返しのつかない現況を受け、このように省みています。

組合執行部が2月21日の団体交渉で「本人からすれば来年度も同じように働けると思っていたのに働けなくなったのは、雇用止めされたと同じだ」「当局は現職者にアドバンテージがあると主張していた。その認識は、公募を行なった所属長等に充分な周知をはかれていたのか」などと訴えたことを職場回覧資料で伝えています。

いずれにしても雇用継続を果たせなかった組合員の皆さんに深くお詫びしなければなりません。前委員長として課題を解決できず、現執行部に引き継ぎ、側面支援できる立場だったのにも関わらず、組合が望む到達点とすべき結果まで見届けられなかったことなどを猛省しています。本当に申し訳ありませんでした。

組合に加入していながら雇用を守れなかったという事態は、会計年度任用職員の皆さんに大きな動揺を与えています。組合を脱退したいという申出が急増しています。組合執行部の人数が少ない中、その対応に追われている委員長らのたいへんさにも心を痛めています。

最後に、脱退を申出されている皆さんを慰留していくためにも、来年度以降の再任回数の上限撤廃は何としても勝ち取るべき課題であるものと考えています。私自身のことですが、内定通知が届き、4月以降も市役所で働き続けられます。組合員として関わり続けられるため、お役に立つことがあれば今後も現執行部を精一杯支えさせていただきます。

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