« 難航した地域手当を巡る労使交渉 | トップページ | 『賃金とは何か』を読み終えて »

2025年2月15日 (土)

混乱と分断が続く兵庫県政

久しぶりに前回記事は「難航した地域手当を巡る労使交渉」という労使課題を取り上げたローカルな話題でした。今回も兵庫県を巡るローカルな話題だと言えますが、伝わってくる様々な事案や騒動ぶりは全国規模の波紋を広げるニュースの数々です。

昨年11月に「兵庫県知事選、いろいろ思うこと」、少し前に「混迷を深める兵庫県政」という記事を投稿していました。今回の新規記事は「混乱と分断が続く兵庫県政」というタイトルを付け、出口の見えてこない斎藤元彦知事が再選を果たした兵庫県政に注目し、時事の話題を紹介しながら私自身の思いを書き添えていきます。

まず『石丸伸二氏の告発状提出  都知事選巡り公選法違反疑い―市民団体』という報道です。昨年7月の東京都知事選で石丸伸二さんが、集会をライブ配信した業者に違法な報酬の支払いを約束した疑いが発覚しています。兵庫県知事選で斎藤知事がPR会社に対してインターネットによる選挙運動の対価とし、報酬を支払った疑いと類似した公職選挙法に絡む事案です。

石丸さん側の事案は業者への発注後、陣営内から「公選法に抵触する可能性がある」との指摘が出たため、キャンセル料として発注額と同額を支払い、業者スタッフはボランティアで参加した形にしています。ただ業者に支払われた約97万円の中には約45万円の人件費が含まれていたため、公選法違反の買収に当たる疑いが生じています。

斎藤知事側の事案は『兵庫県知事選で報酬受け取り疑い、PR会社関係先を捜索…神戸地検と県警』という報道のとおり強制捜査まで至っています。この事案については昨年11月の記事兵庫県知事選、いろいろ思うこと Part2」の中で次のように個人的な見方を添えていました。

疑惑を招く問題が斎藤知事には立て続いています。様々な法律に対する理解不足や認識の甘さがあるように思えてなりません。加えて、そのあたりの不充分さをフォローしていく人材が周囲にいないのか、進言できる関係性を築けないのか、省みる点が多々あるのではないでしょうか。

石丸さんの陣営には、法律に抵触するという認識を持てる人材がいたため軌道修正をはかっています。ただ取り繕い方に穴を残したことも問題ですが、そもそも当初の発注内容と実態が基本的に変わらず、キャンセル料という名目に変えている手法がまかり通って良いのかどうか甚だ疑問です。

法律に対して「違反になることを知らなかった」という言い分は通用しません。違法性の疑いを認識しながら「ここまでは許される」「このような形にすれば大丈夫」とい身勝手な解釈だった場合、違法性を問われる可能性が充分あり得ることに注意を払わなければなりません。兵庫と東京の容疑、それぞれ反面教師とすべき事例だろうと思っています。

続いて兵庫県知事選をめぐる誹謗中傷  立花孝志氏の発信“情報源”一枚の文書を検証【報道特集】』という報道が衝撃的です。真偽不明の文書がNHK党の立花孝志党首に渡ったことで、知事選の最中「陰謀によって斎藤知事ははめられた」という構図が作り上げられ、竹内英明前県議らは執拗な攻撃にさらされました。たいへん残念なことに竹内前県議は自死に至っています。

さらに選挙期間中、自ら命を絶っていた元県民局長の名誉をズタズタにする誹謗中傷が立花党首から発せられていました。立花党首は、元県民局長が「10人と不倫した」「不同意性交を繰り返していた」という話を選挙演説の中で声高に叫んでいました。しかし、上記の「報道特集」中で、自らの発言の根拠を問われた際、立花党首は次のように釈明しています。

これはね、根拠めちゃくちゃ薄いです。「10人ぐらい」と言ってた人は1人いましたね。政見放送の時に「10年」と「10人」が 引っかかって、そのまま「10人」って言っちゃったみたいですね。「まぁ、ええわ」みたいな感じで。「あんま変わらんわ」って感じなんで。

「報道特集」では、立花党首が「元県民局長は不同意性交をしていなかった」と発言を訂正したのは選挙から2週間後のことだったと伝えています。元県民局長の不倫という話が事実だった場合、道徳的な責任は免れませんが、刑事的な責任は問われません。不倫スキャンダルが明らかになりながら大きなダメージを負わなかった政治家のケースもあります。

昨年7月の「過ちに対する責任の処し方と問い方という記事の中で、斎藤知事を告発した元県民局長の遺書について触れています。そこには「一死をもって抗議をする」という言葉が残されていました。斎藤知事を熱烈に支援されていた方々からすれば、その言葉の重みを到底受けとめられるものではなかったはずです。

立花党首らは元県民局長を誹謗中傷することで、自死の理由や意味合いをすり替えていく意図があったのではないかと思わざるを得ません。さらに〈兵庫・斎藤応援勢力で内紛〉立花氏「文書は維新の県議からもらった」 維新県議はこれを否定も「会ったことは認める」維新の百条委副委員長がなぜ?』というお粗末な話まで伝わってきています。

この問題に対し、斎藤知事が「詳細は承知していませんので、今ご指摘いただいた方の問題だと思っていますので、私がコメントすることはないです」と明言を避けていたため、弁護士の橋下徹さんはXで「斎藤さんの特徴。自分の疑惑が書かれた怪文書については放置してもいいものを必死になって作成者を特定。他方、自分の利益になる怪文書は放置」と指摘しています。

批判された兵庫県知事選報道  2人のジャーナリストが抱いた違和感と新聞に課した役割』という記事は、神戸新聞の記者がジャーナリストの池上彰さんと江川紹子さんにインタビューし、まとめた内容です。その中から「県民局長のプライベート情報、報じなかった三つの理由」という見出しが付けられた内容をそのまま紹介します。

私たちはこれまで、亡くなった元西播磨県民局長のプライベート情報の内容を報じていない。なぜ報じないのか。幾度となく読者や有権者、そして同僚からも聞かれてきた。理由は大きく三つある。

一つ目として最も重視したのが、告発者の人格と告発内容の真偽は無関係ということだ。今回の告発問題では、そもそも告発文にある内容が本当かどうかが問われている。元県民局長の私的な事情は切り離し、慎重に取り扱うべきと考えた。

二つ目は、元県民局長の私的情報を県当局が収集したという経緯に、違法性の疑いが拭えないからだ。公益通報者保護法では通報者の探索を禁じている。しかし、県当局は文書を把握した直後から職員のメールを解析し、元県民局長のパソコンを押収した。私的情報はその中から見つかったとされており、「違法収集証拠」の可能性がある。

三つ目は、私的情報そのものの真実性だ。今も元県民局長の人格を否定する言葉とともにネット上に拡散されているが、取材ではこれらの情報が事実かどうか裏付けが取れていない。

ましてや政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が、選挙ポスターや動画投稿サイトで「自殺の真相」として取り上げた一部情報については、後に立花氏本人が「勢いで言ってしまった」と釈明している。捜査関係者に確認しても自死の理由は不明のままだ。

最後に告発文書の内容についても触れたい。元県民局長は、ほぼ同じ内容の文書を県内部の公益通報窓口に通報している。県はこれを受理し、知事を含む幹部のハラスメント研修を導入するなど是正措置を取っている。ほぼ同じ内容の文書を「誹謗中傷性が高い」と懲戒処分の理由にしながら、もう一方では「公益性があった」と判断する矛盾が生じている。

私的情報を「報じない」という選択が間違っていたとは思わない。だが、選挙期間中、「情報が氾濫していて何が真実か分からない」という有権者の戸惑いを何度も聞いた。池上彰さん、江川紹子さんが示したのは「報じない」理由を正直に説明する道だった。新聞社は今、読者との向き合い方を改めて問われていると痛感している。(県庁担当・前川茂之)

最後に『「兵庫県民は分断されている。いつになったら県民は穏やかにお茶できるの?」斎藤知事巡る問題で激論』という見出しの記事を紹介します。元プロテニスプレイヤーの沢松奈生子さんが、地元西宮市でのお茶の話題は「斎藤知事一色」で、友人の間でも意見が割れ、穏やかな日常が失われていると次のように語っています。

もう友人との会話もアメリカ大統領選挙みたい。兵庫県民は分断してるんです。「私は斎藤さんが正しいと思う、だまされてはる」という友達もいれば、「いや、そんなね、冷静に考えてみいや」ていう友人もいる。本当に一つ言わせてほしいのは、この一年、兵庫県民は穏やかにお茶できないんです。アメリカ大統領選見てて他人事とは思えない。

斎藤知事のパワハラ疑惑などに対し、県議会に設けられた百条委員会の報告書は近日中に示されます。前述した公選法違反の疑いに加え、オリックス優勝パレードを巡る背任容疑の告発状も受理されています。このような動きの先に斎藤知事が再び失職する可能性もあり得ます。混乱と分断、まだまだ続きそうです。一刻も早く、正常な県政に修復されることを願わざるを得ません。

|

« 難航した地域手当を巡る労使交渉 | トップページ | 『賃金とは何か』を読み終えて »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 難航した地域手当を巡る労使交渉 | トップページ | 『賃金とは何か』を読み終えて »