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2025年2月 8日 (土)

難航した地域手当を巡る労使交渉

2022年11月に組合の執行委員長を退任した後、協力委員の一人として組合ニュースの配布などをお手伝いしています。信任投票を受けることのない役職であり、労使交渉の当事者から退いたOBという立場であることには変わりありません。そのため、当たり前なことですが、後任の委員長らがやりにくくならないよう相談を受けない限り、労使課題について口を出させないように努めています。

ただ昨年6月に改めて会計年度任用職員の課題」、7月に「会計年度任用職員制度の課題、最新の動き」という記事を投稿しているとおり現委員長らと連絡を密にしながら側面からサポートした労使課題もありました。自分自身が委員長だった時、道筋を立てられなかった宿題という思いもあったからです。

加えて、2023年9月の記事「身近な政治、市長選の話」で伝えたとおり都議時代から私どもの組合と推薦関係があり、20年以上前から懇意にさせていただいていた方が現在の市長です。さらに昨年4月には、私が入所した頃から親しくお付き合いいただき、同じ職場の直属の上司としてお世話になった方が副市長に就任されていました。

このような関係性があったため、会計年度任用職員制度の労使協議の経緯や論点等をまとめた資料を市長と副市長に渡し、私自身の問題意識を伝える機会も設けてきました。もう一つ宿題という思いのある労使課題として、地域手当の引き上げを巡る問題がありました。この問題では昨年8月に「地域手当の見直しに安堵」という記事を投稿しています。

市町村単位で細分化された地域手当の問題性に対し、昨年6月、市長自ら総務省に出向き、地域手当の支給割合についての要望書を提出されていました。このような心強い経緯がある中、近隣市と肩を並べられる12%から16%への引き上げが来年度予算で成立していくことを期待していました。

毎年、通常であれば自治労都本部統一の賃金・一時金闘争は11月、遅くとも12月中には決着しています。今回、地域手当について東京23区と同じ支給率の20%を統一要求として掲げたため、越年闘争となっていました。今まで16%支給されていた自治体からすれば、めざしたい要求だろうと理解しています。

しかし、私どもの市にとっては来年度からの16%引き上げが、まず何としても確保すべき現実的な要求の到達点だったように個人的には感じていました。前述したとおり労使交渉の当事者から外れていますので、そのような感想を委員長らに漏らした程度で越年交渉の行方を静観していました。

1月に入り、予算編成作業が進み、来年度の地域手当は14%という情報が伝わってきました。組合員の皆さんに限らず、複数の管理職の方からも一気に16%に引き上げないことを疑問視する声が私の耳に届くようになっていました。そして、越年した統一闘争の山場として1月30日に団体交渉が予定されていました。

その前の週の昼休み、事前に委員長らに断った上、副市長とお会いする機会を得ていました。市長と副市長が、組合や職員との関係を大事にしていきたいという思いが強いことをしっかり受けとめています。したがって、地域手当の課題解決の行方が、その信頼関係に影響を及ぼしかねないという問題意識を直接伝えたかったからです。

結果は「来年度14%」という市側の方針が強固なものであることを確かめた場にとどまっています。それでも直接お話できたことで私自身の頭の中で、次善の策として組合にとっての望ましい対応の仕方について判断する材料を得られる機会となっていました。ちなみに自治労都本部が年明けの統一闘争で掲げた獲得目標は下記の4点です。

  1. 地域手当の最低16%支給の確保
  2. 常勤職員と再任用職員の一時金の同一月数支給
  3. 会計年度任用職員の4月改定と遡求適用
  4. 会計年度任用職員の雇用回数上限の撤廃

地域手当20%という高めだった統一要求が「最低16%」に改められていました。実施時期も明記されていないため、いつから16%なのかという確約が大きな論点になるのだろうと考えを巡らしていました。副市長と話した内容の報告とともに委員長や書記長には、このような私自身の考えを参考までに伝えていました。

委員長からは「この4月からの16%を譲れない」という強い決意が示され、そのことに水を差すような思いはない旨を申し添えています。付け加えて、私自身が副市長と懇意にしているため「懐柔された訳ではないから」という一言も添え、「分かっています」と答えてもらっていました。

結局のところ1月30日の団体交渉を経て、今年4月からの地域手当14%を労使合意しています。新年度から16%という期待を裏切ってしまう結果になっていますが、労使が真摯に向き合った中での交渉結果を重く受けとめなければなりません。その上で、現時点までの交渉内容をどのように組合員の皆さんに伝えるべきか、大事な作業が待っていました。

深夜まで及んだ交渉の後、委員長は体調を崩され、月曜まで休暇を取っていました。火曜の昼休み、まだ完調ではない委員長と相談し、次号の組合ニュースの原稿作りを手伝うことになりました。その際、心がけた点として労使それぞれに対し、あえてマイナスイメージにつながるような書き方を避けたことです。

「地域手当、2%引き上げて今年4月から14%に  引き続き16%の確約に向け、2月21日に団体交渉」という見出しを付けた記事の内容は下記のとおりです。なお、知り合いの皆さんにとって匿名のブログではありませんが、インターネット上に発信する作法として具体的な自治体名等は控えるようにしていることをご理解ください。

       ◇        ◇

昨年末までに決着できなかった自治労都本部統一の賃金・一時金闘争は改めて1月30日を山場とし、別記4項目を獲得目標として各自治体での交渉が進められました。私どもの組合も30日夜、午後11時過ぎまで団体交渉や折衝を重ね、要求の実現を全力でめざしました。

最大の争点だった地域手当引き上げの課題は、次年度から16%まで引き上げるという回答を得ることができませんでした。もともと16%で23区と隣接している市が18%まで引き上げるという情報をはじめ、15%だった市は今年4月から16%とする交渉結果が伝えられていました。

しかし、これまで私どもの市のように12%以下だった自治体の大半は、次年度からの16%をめざした交渉が難航していました。財源の問題に加え、引き下げる場合や引き上げる場合も「段階的に」という基準が人事院勧告の中で示されているという理由からです。

私どもの市の場合、市長が昨年6月、総務省に自ら出向き、市町村単位で細分化された地域手当の問題性について要望書を提出されていました。このような経緯を踏まえれば、団体交渉の責任者である副市長らに対し、今年4月から16%まで引き上げるべきではないかと組合は強く主張しました。

たいへん残念ながら30日の交渉では、地域手当を2025年度4月から14%に引き上げるという確認にとどまりました。しかしながら引き続き労使交渉を推進し、次回2月21日に予定されている団体交渉では、2026年度からは近隣市と同率となる16%まで引き上げるという明確な回答を得られるよう全力を尽くします。

なお、獲得目標に掲げている再任用職員や会計年度任用職員の切実な要求も継続協議とし、2月21日の交渉に向けて前進をめざしています。自治労都本部統一の獲得目標以外で、30日の交渉を通し、いくつかの内容を労使合意しています。とりわけ会計年度任用職員の時間外勤務手当の支給を原則化できたことは大きな前進です。

       ◇        ◇

2月21日の交渉に向けては市長や副市長らが、2026年度からの地域手当16%の確約をはじめ、組合の切実な要求に一つでも多く前進した回答を示していただけることを心から願っています。最後に、これからも組合員の一人として在籍していけるのであれば、組合の活動で何かお役に立てるようなことは下支えできればと思っています。

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コメント

初投稿ですが、深夜にまで及んだ交渉の結果、体調を崩されるとか、本末転倒にも程があるのでは無いでしょうか。
こちらの自治労加盟の職場でも、半強制的な職場集会への参加要請。それも、前日夕方とかに平気で。有給休暇・定時退勤の妨害です。
月に数千円もの組合費を半強制的に徴収しながら、やっていることはあまりにも非民主的ではないでしょうか。
以前、立憲民主党の議員が自民党の議員に選挙で大敗した際、自治労県本部が誰に投票したかをアンケートで聞くなど、自治労役員関係者が自治体職員に対してしていることには酷いことがあまりにも多いですし、自身が持病(自己免疫疾患。生活習慣病とは異なり、完治の見込みは無い)に非常に苦しんでいることもあるため、自治労代議員等への就任は、すべてお断りしています。当方、体調の関係で、もう10数年間、酒は一切口にできないですし、飲食を伴う会合自体、苦痛で苦痛でたまりませんので。
若手職員の青年部活動も、職員の負担になっているようで、見ていて気の毒でなりません。

投稿: 一地方公務員 | 2025年2月19日 (水) 02時44分

一地方公務員さん、コメントありがとうございました。

プロフィール覧に「基本的に平日はコメント欄の参加も控えているため、個別の問いかけに即応できないことをご容赦ください」と記しています。以前、たいへん多くのコメントをお寄せいただいていた頃、実生活に過度な負担をかけないためのマイルールでした。

現在、コメントを受けること自体が極めて稀な状況となっていますので、今回のような大切な問いかけには週末を待たずにお答えさせていただきます。

まず労使交渉によって体調を崩すような事態は、ご指摘のとおり絶対避けなければなりません。かなり昔は早朝までの徹夜交渉もありましたが、最近は日をまたぐことのない時間に解散しています。

今回、委員長だけ体調を崩してしまいました。11時過ぎまで及んだ交渉だけが原因ではないのだろうと見られていますが、一地方公務員さんが懸念されるような点は今後も注意していかなければなりません。

賃金闘争等に絡む職場集会のお話だろうと推察していますが、私どもの組合では組合員を直接動員した取り組みは一切なくなっています。各種集会や学習会に対する参加要請も、あくまでも組合ニュースで周知し、希望を募るだけの関係性となっています。

つまり組合執行部が組合員の皆さんに対し、現在、半強制的と思われるような働きかけは一切ありません。私自身は40年以上、組合役員として関わってきていますので、一地方公務員さんの組合の様子がよく分かります。

一方で、そのような目に見える形での組合活動が「組合の強さ」につながってきたのだろうとも思っています。ただ一地方公務員さんのような問題意識を抱えている組合員が少なくないことを組合執行部は認識していかなければならないものと考えています。

選挙に関するアンケートも匿名で一定配慮した質問だったものと思っていますが、やはり前述したとおりの問題意識を組合執行部は認識していかなければなりません。

私自身の推測でお答えし、少しずれた内容があったかも知れませんがご容赦ください。この「公務員のためいき」は一地方公務員さんの抱くような疑念にお答えしたいという目的で開設し、20年近く続けています。

もしお時間等がありましたら数々のバックナンバーもご覧いただければ幸いです。右サイドバーの「ココログ」のロゴ上の検索機能をお使いただければ様々なテーマの記事を探せるようになっています。

最後に、お体を大切にされ、ストレスはため込まないようご留意ください。

投稿: OTSU | 2025年2月19日 (水) 06時04分

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