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2025年1月11日 (土)

年末年始に読み終えた書籍

9連休だった年末年始、予定の入っていなかった最後の3日間、数年ぶりの発熱で寝込んでいました。コロナ禍以降、ワクチン接種翌日、1回だけ37度を超えただけでした。5年以上、カゼにもかかっていませんでしたが、1月3日に38.8度まで上がっていました。幸い6日の出勤日には平熱まで下がり、年始休暇を延長しなくても済んでいました。

さて、前回記事は元旦に投稿した「2025年、画蛇添足に留意」でした。いつもお正月のみ変則な投稿間隔となっているため、このブログの入力画面に向かうのは久しぶりです。新規記事の題材はいくつか頭に浮かんでいましたが、結局「年末年始に読み終えた書籍」というタイトルを付け、時事の話題に絡めながら個人的に思うことを書き進めていきます。

年末休暇に入る前『救国ゲーム』という文庫本を読み終えていました。著者は結城真一郎さんです。リンク先の紹介文のとおりミステリ小説仕立てとなっていますが、限界集落の問題をはじめ、過疎化が進む地方と都会との関係性など現在の日本の課題を真正面から切り込んでいる物語でした。

“奇跡"の限界集落で発見された惨殺体。その背後には、狂気のテロリストによる壮絶な陰謀が隠されていた。否応なく迫られる命の選別、そして国民の分断――。最悪の結末を阻止すべく、集落の住人・陽菜子は“死神"の異名を持つエリート官僚・雨宮とともに、日本の存亡を賭けた不可能犯罪の謎に挑む。

今回「『◯◯◯』を読み終えて」という記事タイトルとしていません。したがって、年末年始に読み終えた書籍のサワリのみの紹介にとどめていきます。もし関心を持たれた方はリンクをはった先のサイトで詳細をご確認くださるようお願いします。

ちなみに『救国ゲーム』の中では、ドローンや自動運転車両などIT技術の活用が地方再生の実践例として描かれています。初代の地方創生大臣を務めた石破茂総理は人一倍、地方再生・創生という課題に対する思い入れが強いようです。年頭の記者会見では『地方創生2.0を強力に推し進めていく」という決意を語っています。

ただ作家の山田順さんからは『石破茂首相の年頭宣言「地方創生2.0」「令和の列島改造」の評判最悪。これでは地方はさらに衰退する!』と手厳しい評価を下されています。「政府機関の地方移転」「都市部の企業の地方移転促進」など目新しい目玉政策が乏しく、「列島改造」という言葉には時代錯誤という批判の声も上がっています。

山田さんは論評の最後のほうで「もはや人口減は、どんな手を打っても防げない」とし、「地方創生」より「地方安定」をめざし、維持できない公共インフラや行政サービスは切り捨て、人口の中核都市への「集住」をはかり、スマートシティ化コンパクトシティ化を急ぐべきと提起しています。

山田さんが提起するような「答え」しか残されていないのかどうかは分かりません。今後の地方再生・創生のあり方に向けて『救国ゲーム』も大きな問題提起を包み込んだ書籍でした。「正解」は容易に見出せづらいのかも知れませんが、山田さんが指摘する下記のような誤った政策判断は即刻見直していくことも欠かせないはずです。

ふるさと納税というのは、じつは全国規模で見るとまったく意味のない税制だ。このワースト5にあるように、大きく税収を減らしている自治体があるからだ。つまり、本来どこかの自治体に入るはずの税金がほかの自治体に移るだけで、全国規模での税額はほぼ変わらない。

しかも、そこから返礼品や事務処理費用が差し引かれてしまうので、ある意味で、無駄な支出が増える。また、返礼品に指定された業者だけが儲かり、同地域の他の業者は疲弊する。公平な市場競争が失われてしまう。

前半から中盤にかけて、いろいろ予定も入っていましたが、やはり9連休ということもあり、久しぶりにブックオフで3冊購入しました。『拘留百二十日』『“安倍後”を襲う日本という病』『情報隠蔽国家』の3冊です。これまでも幅広い立場性の著書のハードカバーは専らブックオフで手に入れていました。

読み終えた順番に並べていますが、真っ先に読み始めたのは『拘留百二十日』でした。検察を揺るがした「大阪地検フロッピーディスク証拠改竄事件」に際し、特捜部長だった大坪弘道さんが犯人隠避の容疑で逮捕されました。この書籍は一貫して無実を訴えた大坪さんの獄中手記です。

2011年12月に出版された書籍ですが、問いかけられている検察に関わる深刻な課題は決して断ち切れていない現状です。昨年末『最高検“袴田さんを犯人だと決めつけたかのように自白求めた”』という報道のとおり最高検察庁は「犯人ありき」とした不当な取り調べの問題性などを認め、無罪が確定した袴田巌さんに改めて謝罪しています。

もし袴田さんの死刑が執行されていた場合、取り返しの付かない司法の大失態でした。これまで無実だったのにも関わらず、冤罪の汚名を着せられたまま命を奪われた方々がいなかったとは誰も断言できません。たいへん恐ろしいことです。死刑制度を巡る賛否は分かれがちですが、せめて本人が再審を求めている段階での執行は見合わせるべきだろうと思っています。

『拘留百二十日』の中で取り上げられている厚労省の村木厚子局長事件での捜査も「検察のストーリーありき」のもと、あげくの果てに証拠を改竄するという不祥事を引き起こしています。その部下から「手違いでデータを変えてしまった」と報告を受けていたため、大坪さんは犯人隠避という容疑を否認し続けました。

それまで取り調べる側だった大坪さんが、厳しく取り調べられる側に置かれ、検察権力の恐ろしさや理不尽さを赤裸々に綴った書籍です。この書籍の中で、容疑を認めない限り、保釈が容易ではない現実を詳しく伝えています。いわわる「人質司法」と批判されている問題です。

いみじくも昨日『角川歴彦氏「人質司法は人間の尊厳をけがす」2億円国賠訴訟の第1回口頭弁論で声を震わせ』という報道に接しています。KADOKAWAの角川歴彦元会長は意見陳述で「無罪を主張すれば仕打ちを受けるというのは、法律に反する」と強調しています。

7か月余にわたった勾留期間中、心臓に持病があったにも関わらず、かかりつけ医への通院が許されず「生きるために最低限の医療すら受けられなかった」と振り返った上で、「人質司法は人間の尊厳をけがし、基本的人権を侵害するものだ」と声を震わせていました。

口頭弁論後の記者会見で、代理人弁護士らは「明らかに恣意的な勾留。罪を認めないことへの報復だ」と批判し、「人質司法を改めるよう問題提起する訴訟は初めてとみられる」と説明しています。さらに「人質司法は日本の刑事司法の闇の部分。裁判所の判断に注目して欲しい」と語っていました。

否認すれば身柄拘束が長引くとされる「人質司法」は、最高裁がまとめた統計資料にも表れている。2023年に全国の地裁であった刑事裁判で、起訴後1カ月以内に保釈された被告の割合は、起訴内容を認めた場合は23.4%だったのに対し、否認した場合は8.3%と大幅に下がり、無罪を訴える被告の9割が勾留されていた。

このような現状を憂慮し、思い起こすのは大川原化工機の社長らが軍事転用可能な機械を中国などに不正輸出した疑いで逮捕、起訴され、1年以上も勾留されていた事件です。幹部3人のうち1人は、勾留中に見つかった胃がんで亡くなっていました。

治療を理由に保釈請求しましたが、検察側は「証拠隠滅の恐れがある」と反対し、裁判所も認めませんでした。がんが見つかった段階で適切な治療を施していれば延命できていたかも知れないと思うと、司法側の硬直した判断が本当に残念でなりません。

先日、この事件を巡って『警視庁捜査員ら3人不起訴  大川原化工機、虚偽文書作成容疑など―東京地検』という報道も目にしています。不起訴を受け、代理人弁護士は「犯罪の成否について裁判所の判断を仰ぐ機会が奪われるのは不当。検察審査会に審査を申し立てる方針だ」とのコメントしています。刑事告発した元役員は「納得がいかない。不起訴ありきで形式的に手続きが進められたのではないか」と憤っています。

年明けのNHKスペシャルでは『“冤罪”の深層〜警視庁公安部・内部音声の衝撃〜』というタイトルを掲げた番組で、大川原化工機の事件の生じた経緯や背景を伝えています。いずれにしても同じ過ちが二度と繰り返されることのない司法制度の確立に向け、過去の事件の真相究明や検証は徹底的にはかって欲しいものと願っています。

「年末年始に読み終えた書籍」から話が広がり、いつものことながら長文ブログとなっています。あと2冊、1回の記事で区切りを付けようと考えていましたが、無理せず、気負わず、次回以降に先送りさせていただきます。お正月の変則な投稿間隔から平常モードに戻りますので、次回の更新は来週の土曜か日曜となります。

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