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2024年12月 7日 (土)

高齢者雇用の課題

少し前の記事「選挙結果が左右する政治の行方」の冒頭で「組合の定期大会が開かれました。再任用職員や会計年度任用職員の課題について出席した組合員から切実な訴えが示されています。これまで当ブログで取り上げてきた課題であり、機会があれば次回以降の記事で深掘りできればと考えています」と記していました。

その後「選挙結果が左右する政治の行方 Part2」「兵庫県知事選、いろいろ思うこと」「兵庫県知事選、いろいろ思うこと Part2」というタイトルの記事が続き、労使課題に関わる内容からは離れた投稿を優先しています。執行委員長を退任した後、政治的な話題を取り上げることが多くなっています。

特に最近、兵庫県の斎藤元彦知事に関わる動きが非常に気になっています。数日前に目にした〈兵庫県政大混乱〉政府が「公選法違反の恐れある」と答弁、再び窮地の斎藤知事…“二人三脚”のパートナー立花氏が流した「不同意性交等罪」というデマ』という記事など、まだまだ当ブログを通して伝えたい話題が後を絶ちそうにありません。

12月2日から紙の健康保険証が廃止されています。マイナカードの取得は任意のままで、マイナ保険証は義務付けるという矛盾した問題に憤りながら河野太郎氏  りんたろー。によるマイナカードへの“不満”に言及「やる気のある病院だったら」』という記事を目にすると、河野総理の可能性が消えていることに心底安堵しています。

政治絡みの話題を少しだけ触れましたが、ここからが今回の本題です。このブログで4年前に「雇用継続の課題」「定年延長の話」という記事を投稿しています。高齢者雇用の課題として、最近「50万円の壁」にも注目が集まっています。11月25日に開かれた厚労省の審議会で、高齢者の働く意欲をそがないような制度の見直し案が示されています。

人口減少が続く中、15歳から64歳までの生産年齢人口の比率は6割を切るようになっています。労働力不足を補うための方策として、高齢者の雇用のあり方が大きな課題として認識されています。一定の収入がある高齢者にも「年金制度を支える側にまわってもらう」という考え方のもと在職老齢年金制度を設けています。

65歳以上で賃金と厚生年金を合わせて収入が月50万円を超えた場合、上回った年金の半分が減額されます。この仕組みが高齢者の働く意欲をそいでいるとの指摘もあり、年金が減らされる基準を現行の50万円から62万円や71万円に引き上げる案をはじめ、制度自体を撤廃する案を厚労省の審議会が示していました。

高年齢者雇用安定法では使用者側に65歳までの雇用継続を義務化しています。70歳までは努力義務としています。今後、上記のような動きも踏まえ、ますます70歳まで、もしくはそれ以上に働く高齢者が増えていくのだろうと思っています。一方で、年金が支給されるまでの年齢の場合、「50万円の壁」からは程遠い現状です。

地方公務員の再任用制度や新たに施行されている定年延長で、従来の定年年齢だった60歳以降、それまでの年収が激減します。フルタイム再任用だった場合、60歳以前の勤務時間と変わらず、仕事に対する役割や責任が、まったく同じでありながら年収が極端に下がることを嘆く職員は少なくありません。

私どもの組合の定期大会で示された意見は、この問題についての切実な訴えでした。発言された組合員は係長だった方で、定年後、年収は半減したとのことです。その方は裁判での事例を示した上、定年後に年収が6割以下になることの問題性を強く訴え、組合執行部に早急な解決に向けた具体的な行動を求めていました。

同一労働同一賃金という原則から、その訴えのとおりの解決が求められていることは確かです。ただ高齢者の雇用継続に関する裁判の事例を改めて調べてみると、必ずしも原告の労働者側が勝ち続けている訳ではないようです。再雇用格差訴訟  過去の最高裁判断を踏襲「正社員と性質異なる」』という記事では次のように伝えています。

正職員と再雇用者の基本給格差を巡り名古屋自動車学校(名古屋市)の元従業員が起こした訴訟で、最高裁が20日、正職員の6割に満たない部分を違法とした1、2審判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。不合理な労働条件格差を巡って最高裁が過去に示した枠組みや判断を踏襲し、基本給についても、各事業者ごとに異なる「性質や支給目的」をきめ細かく検討するよう求めた形だ。

最高裁は平成30年6月、今回と同様に定年後、再雇用された運送会社の嘱託社員の待遇格差を巡る訴訟の判決で「給与や手当などの個別項目ごとの趣旨を考慮すべきだ」との枠組みを初めて提示。令和2年10月には、大阪医科大と東京メトロの子会社で勤務していた契約社員らのボーナス(賞与)や退職金を巡る訴訟の判決で「性質や支給目的を踏まえて検討すべきだ」とする判断も示した。

今回の訴訟の1、2審判決では、仕事内容が同じ場合は「基本給が定年前の6割を下回る部分は不合理」との具体的な線引きが示されていた。だが、最高裁はこうした「数字」の是非には触れず、過去の判例で示された考え方を念頭に、基本給の性格などを詳細に検討していった。正職員の基本給は、勤続年数に応じた「勤続給」だけでなく、職務内容に応じて額が決められる「職務給」、職務遂行能力に応じて額が決められる「職能給」としての性質もあると指摘。

これに対し、再雇用の嘱託職員の場合は役職に就くことは想定されておらず、勤続年数に応じた増額もなかったことなどから「正職員とは性質や支給目的が異なる」とした上で1、2審判決はこうした点を「検討していない」と批判した。加えて、原告と自動車学校側が行っていた賃金面を含む労使交渉についても言及。1、2審判決では交渉の結果だけに着目し、具体的な経緯を勘案していないことも「法令の解釈適用を誤った違法がある」とした。【産経新聞2023年7月20日

上記の事例について、倉重公太朗弁護士の『「最高裁、基本給の同一労働同一賃金初判断」について解説』を読むことで「年功給である正職員と嘱託職員では基本給の性質が異なる」という論点を認識できます。差戻審の結果を待っている段階ですが、定年退職後、大幅に年収が下がることに対し、違法性が確定している訳ではないようです。

以前の記事「働き方改革への労組の対応」の中で、2018年6月1日に示されたハマキョウレックス事件と長澤運輸事件の最高裁判決について触れていました。ハマキョウレックス事件は正社員と有期雇用労働者の待遇の格差について、長澤運輸事件は正社員と定年後再雇用された嘱託社員(有期雇用)の待遇の格差について争われた事件でした。

ハマキョウレックス事件は労働者側が勝ち、長澤運輸事件は会社側が勝つという結果に分かれていました。ハマキョウレックス事件では有期雇用労働者と正社員との間に職務内容に差がないのにも関わらず、待遇に差があったことは労働契約法20条に違反すると判断されました。一方で、長澤運輸事件の有期雇用労働者は定年後に再雇用された高齢の労働者だったため、待遇差が不合理ではないと判断されていました。

もちろん組合執行部としては裁判の行方に関わらず、労使交渉を通し、もしくは自治労に結集しながら再任用職員の待遇改善に向けて全力を尽くしていかなければなりません。特に常勤職員に比べ、一時金の年間支給月数が半分程度にとどまっているため、いくつかの近隣市が実現しているように同一とする交渉結果を早期に勝ち得ることを期待しています。

最後に蛇足となりますが、私自身、来年春、また大きな節目を迎えます。健康だから働き続けられる、働き続けられるから健康を維持できる、このような思いのもと雇用継続を希望しています。使用者側にとって努力義務に過ぎませんので、来年4月以降、このブログのタイトルが「元公務員のためいき」に変わるかも知れませんが…。

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