選挙結果が左右する政治の行方
金曜の夜、私どもの組合の定期大会が開かれました。再任用職員や会計年度任用職員の課題について出席した組合員から切実な訴えが示されています。これまで当ブログで取り上げてきた課題であり、機会があれば次回以降の記事で深掘りできればと考えています。
前回の記事は「衆院選が終えて、2024年秋」でしたが、今回「選挙結果が左右する政治の行方」というタイトルを付けて書き進めていきます。与党が過半数割れした衆院選の結果を受け、国民民主党の公約である年収「103万円の壁」の見直しが現実味を帯びてきました。
ここで最近、実際にあった話を紹介します。私の職務は徴税吏員で、先日「年収を103万円超えないようにしていたのに住民税は納めなくてはならないのですか?」という問い合わせの電話を受けました。「103万円の壁」が注目を集めていますが、こちらは所得税がかかるかどうかのラインです。
その電話をされた方の年収は102万円だったため、住民税は「100万円の壁」であることを説明させていただきました。他にも年収の壁は社会保険料がかかるかどうか、企業規模によって「106万円の壁」「130万円の壁」というものがあります。これらの壁についても政治の場で議論が加速しているようです。
最低賃金が引き上げられ、パートやアルバイトの方々の年末に向けた働き控えする時期が早まっています。103万円となった1995年と比べ、最低賃金は1.73倍に伸びたことを根拠として、国民民主党は壁を178万円まで引き上げるよう主張しています。働き控えが解消されれば年末に向けた人手不足の現状を改善していけることは確かです。
ただ国と地方の税収は7~8兆円ほど減る見通しです。国民民主党は減収によって消費意欲が高まり、税収は増えると説明していますが、楽観的過ぎるという指摘を受けています。恒久的な制度の見直しですので、安定した財源確保の議論が必須だろうと思っています。
いずれにしても国民民主党の議席4倍増という選挙結果が、今後の政治の行方を揺り動かしています。「手取りを増やす」というキャッチコピーが若者を中心に広く共感を呼び、国民民主党のSNSを駆使した選挙戦術が効果を発揮したと見られています。
東洋経済の記事『テレビが選挙報道をやめた結果「起きた大逆転」 玉木雄一郎氏は「YouTube」をどう使ったのか』の冒頭で「若者層は国民民主に託して政治を変えようとしている。その間を取り持ったのはYouTube。テレビでも新聞でもない。若者がYouTubeで政治を動かしたと言える。この十数年起こらなかった大変革が起きた」と書かれています。
SNSの活用は選挙費用を抑えられるというメリットもあり、国民民主党の玉木代表は「小さな政党になったので、なかなかテレビとか新聞とかで取り上げられることが減ってきますので、自分のメディアを持たなきゃいけない」ということで6年前からYouTubeを始めたと語っています。
「先見の明があるとかじゃなく、背に腹をかえられなくてやって…」と玉木代表は説明していますが、動画配信アプリなどを使ったSNS戦略が今回の衆院選で開花したことは間違いありません。実は東洋経済の記事の中で目に留まった箇所があります。メディアコンサルタントの境治さんが次のような問題意識を示しています。
安倍政権がクレームをつけて萎縮したのだ。2014年に当時の自民党副幹事長・萩生田光一氏の名で選挙報道の公平を求め、「出演者の発言回数や時間」も同じにする旨の要望を各キー局に書面で送った。こういう「量的公平」は公平性の一部でしかない、とかなんとか猛反論すべきなのに、なし崩し的に萎縮していった。
境さんはTBSテレビの報道特集の中でインタビューを受けています。その時の放映内容は『「メディアが選挙期間中にもっと報道すれば、投票率も違う」放送時間は20年で半減…選挙報道とテレビの役割を検証【報道特集】』という見出しの付けられたサイトで確認できます。選挙報道の淡泊さが投票率を下降させている一因であるという特集でした。
テレビの選挙報道は2010年代に入ってから「選挙公示日を迎えたらもう割とハッキリね。最初に党首が何を演説したかというのは伝えるけど、それぐらいですよね」と境さんは指摘し、「このままでは選挙報道はYouTubeにとってかわられる」と問題提起しています。
それはそれで仕方のない流れなのかも知れません。ただ懸念すべきこともあります。かなり前に「SNSが普及した結果…」という記事を投稿しています。インターネットの普及は幅広く詳しい情報を手軽に素早くコストをかけずに入手できるため、大多数の方が「異なる立場の人々の意見と接する機会が増えている」傾向にあるものと考えていました。
しかし、その考えは誤りで、SNSの普及が真逆の流れを生み出しているという内容を取り上げた記事でした。法政大学の総長だった田中優子さんの「SNSが普及した結果、人は自分と同じ意見や感性にしかアクセスしなくなった。異なる立場の人々の意見と接する機会がなくなり、人々は極端な意見をもつようになっている」という言葉などを紹介していました。
より望ましい「答え」を見出すためには多面的な情報に触れていくことが欠かせません。政治の行方を左右していく選挙戦の場合、それこそ各候補者や政党のネガティブな情報も含め、しっかり把握した上で一票を投じていくべきだろうと思っています。そのためにも萎縮せず、マスメディアが多面的な情報を発信していく役割を担っていかなければならないはずです。
アメリカ大統領選ではトランプ前大統領の返り咲きという結果が示されています。ハリス副大統領の「対立や恐怖、分断のページをめくる時が来た」という訴えに共感し、このような政治の志向性が、あらゆる国々で広がっていくことを望んでいたため、個人的には残念な結果でした。この選挙結果はアメリカ国内にとどまらず、ウクライナやパレスチナでの戦争の行方も左右していくのかも知れません。
やはり選挙期間中のため、マスメディアの取り上げ方が極端に減っていますが、兵庫県知事選は来週日曜11月17日に投票日を迎えます。『斎藤元彦前知事“猛追”に慌てた前尼崎市長陣営が手法“丸パクり”再選なら“補助金問題で辞任”の恐れも』『「斎藤元知事のまさかの当選は」兵庫県知事選の現状と見通しについて』という報道のとおり斎藤前知事が猛追しているようです。
斎藤氏は失職後、積極的に街に出て県民に語り掛け、その様子をXに投稿している。その姿だけを見れば、低姿勢で好感が持てる「青年政治家」だと感じる人も少なからずいることだろう。
紹介した記事の中では上記のような見方が伝えられています。公益通報者を自死に追い込んだ責任を負っている斎藤前知事が、もし兵庫県政に返り咲いた場合、どのような混乱が待ち構えているのでしょうか。兵庫県民の皆さんが一票を投じる際、ぜひ、幅広い情報をもとに判断願えれば幸いなことです。
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