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2024年10月12日 (土)

衆院解散、より望ましい政治への転換を!

10月9日、戦後最短となる内閣発足から8日後に衆院が解散されました。3連休明けの15日に公示、27日に投開票日を迎えます。前回の記事「強烈な冗句? 納得と共感内閣」で「石破内閣ではこれまでの不充分さを払拭するような動きを期待していたところですが、裏金議員に対する公認問題でも迷走しています」と記していました。

総理就任前まで常に正論を唱えていながら自民党のトップの座を射止めた途端、石破総理が裏金事件に対する姿勢を一転させ、裏金議員を「原則公認」するという報道に接していたからです。その報道に驚きはなく、一事不再理という原則からも党内処分の「選挙で非公認」より重い党員資格停止中の議員以外、案の定、公認するのだろうと見ていました。

それが前回記事を投稿した以降、石破総理は「原則公認」方針を一転させています。党の役職停止や戒告という処分にとどまった裏金議員も含め、非公認の対象として広げることを表明しました。さらに処分されなかった裏金議員も含め、比例選での重複立候補を全員認めないという厳しい方針に改めています。

「原則公認」方針に世論や党内の批判が激しく、総選挙戦に大きな影響を及ぼすという危機感を持ったため、森山幹事長らと話し合って一度は決めた方針を転換せざるを得なかったようです。この方針転換には驚きました。しかし、石破総理の英断という評価する意味での驚きではありませんでした。

非公認となる閣僚経験者は総裁選前に石破総理から「非公認は絶対にないと内々に言われ、応援したのに裏切られた」と憤っています。このような報道も同時に目にしているため、仲間内の問題だったとしても石破総理は「平気で嘘をつく」という思いが強まっていました。

臨機応変の柔軟な判断、もしくは「聞く力」を発揮したというよりも、持論を覆して解散時期を早めた問題をはじめ、またブレたという残念な意味での方針転換に対する驚きでした。それこそ解散を急がず、裏金事件に関しては石破総理ならではの向き合い方が期待されていたのではないでしょうか。

東京地裁で旧安倍派の会計責任者に有罪判決が示されましたが、いつから誰の指示で始まったのか分からないままです。再開に関与した旧安倍派の幹部議員の名前を会計責任者は知っています。しかしながら法廷でも明らかにしていません。このような不明瞭さを残したまま「終わった問題」として幕引きを急ぐ姿勢が自民党に対する不信感を高めています。

これ以上、受動的な立場でありながら有罪判決を受けた会計責任者を追及すべきものではありません。その幹部議員の名前をはじめ、裁判が終わったのであれば、今後は政党という組織の自浄作用を発揮し、石破総裁自身が明らかにすべき責務を負っているはずです。

この幹部議員の名前すら明らかになっていないという現状は、これまで知っていながら口をつぐむ、正直に話していない、ある意味で嘘をついている国会議員が自民党内に跋扈している証しだと言えます。

正直さや誠実さから程遠い現状であり、そのことが自民党への信頼失墜を加速させているはずです。「党内野党」的な立場の時は切れ味の鋭い正論を繰り返していた石破総理も、結局のところ自民党という組織の中では「同じ穴のムジナ」となってしまうことに残念な思いを強めています。

衆院選での自民党の公約案が示されました。6本柱の1本目が「ルールを守る」です。前回記事でも指摘しましたが、ルールを守ることは当たり前であり、そのような言葉を公約の1本目に掲げなければならない自民党の現状が極めて憂慮すべき問題だろうと思っています。

問題が多い政権であれば、その座から下りる、このような緊張感のある政治が欠かせません。一方で、国民から不信を買う不祥事を繰り返していながら、政権を維持できたことで「信を得た、禊が済んだ」という話になるようでは深刻な問題です。「喉元過ぎれば」と同じ過ちが繰り返されることになりかねません。

ぜひとも今回の衆院解散が、より望ましい政治に転換していく機会につながることを願っています。そのためには野党第一党の立憲民主党の奮起に期待しなければなりません。前々回記事は「自民党総裁選が終わり、立憲民主党の野田新代表に願うこと 」でした。

政治論評的な記事として次回以降も、このような主旨の内容は綴っていくつもりですが、今回はマイナ保険証の問題に絞って書き添えます。『マイナ保険証へ「一本化」で“無駄な作業”が激増?  デジタル庁と厚労省の“官僚”が従事する「何も生まないブルシット・ジョブ」とは』という記事があるとおりマイナ保険証の評判は低迷したままです。

この問題でも石破総理のブレが見られていました。石破総理は総裁選の時点では、マイナ保険証への一本化について「納得しない人がいれば、併用も選択肢として当然」と発言していました。しかしながら紙の健康保険証を12月2日に廃止し、マイナンバーカードに原則一本化する政府方針に変わりがないようです。

東京新聞の『石破新内閣、マイナも手のひら返し? 保険証廃止「日程通りやりたい」新大臣が口々に…』という見出しの記事が伝えるとおり平将明デジタル大臣は就任会見で「従来の日程通りに進めていきたい」とし、石破内閣に代わっても岸田内閣からの方針を維持する考えを示しています。

福岡資麿厚労大臣も、就任会見で「12月2日に保険証の新規発行を停止する方針は堅持したい」と明言しています。留任した林芳正官房長官も総裁選では廃止期限などの「必要な見直しを行ないたい」としていため、石破政権に期待した「併用」を望む人から従来の方針踏襲に強い不満の声が上がっています。

このような事例からも同じ政権の枠組みが続く限り、大胆な方針転換の困難さが見て取れます。マイナ保険証の問題は前回記事の最後に触れようと考えていましたが、長い記事になっていたため先送りしていました。このブログに掲げても、掲げなくても立憲民主党の公約に影響を与えるものではありません。

ただ7日に発表された立憲民主党の公約の一つに「マイナ保険証の利用率が低迷する中、国民の不安が払拭されるまでは今の保険証を存続させる」という項目を見かけた時、安堵する思いもありました。いみじくも衆院の解散時期が早まったことで「政権交代を果たせば紙の保険証が存続できる」という具体的な選択肢を立憲民主党がアピールできるようになっています。

各論の一つとしての選択肢ですが、立憲民主党の立ち位置や軸足につながる総論的な話としてもマイナ保険証の問題は掘り下げることができます。マイナカードの取得は任意のままでマイナ保険証は義務付けるという矛盾した不誠実な問題をはじめ、国民の声に率直に向き合える政権なのかどうか問いかけていけるように思っています。

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