自民党総裁選と立憲民主党代表選
前々回記事「総理大臣を選ぶ自民党総裁選」、前回記事「総理大臣を選ぶ自民党総裁選 Part2」の冒頭で兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ等の問題を取り上げています。今回も少し触れていきますが、ついに日本維新の会も斎藤知事に辞職を求めるようになりました。県議86人全員が辞職要求する事態に至っています。
それでも最近の『兵庫・斎藤知事に辞職要求も…「県議が高圧的・威圧的な態度で尋問」維新・藤田幹事長が他党に反発』という報道では、日本維新の会の藤田文武幹事長はパワハラ疑惑について「多くが誤情報や誇張だ」と述べるなど、斎藤知事を追及する他党に対して激しく反発していました。
さらに驚くべき『維新の国会議員が問題発言 兵庫・斎藤知事疑惑の告発は「自民党とつくった怪文書」、元県民局長のプライバシー暴露も』という報道にも接していました。日本維新の会の掘井健智衆院議員は「亡くなった方(元県民局長)は、あれ(告発文書)は自民党さんらとつくった」と語っています。
このような声もあるため、四面楚歌となっている斎藤知事の到底信じられない居座りぶりを許しているのかも知れません。党のナンバー2の幹事長の発言をはじめ、この期に及んで告発文書の陰謀論を唱える国会議員の問題は、日本維新の会の組織的な体質を表面化させているように思えてなりません。
さて、立憲民主党の代表選は先週土曜に告示され、投開票日が今月23日です。自民党の総裁選も一昨日告示され、27日が投開票日となっています。同じ時期に実施されているのは偶然でなく、6月の新聞記事が伝えているように立憲民主党側の思惑が働いていたようです。
立憲民主党の野田佳彦元首相は18日のBSフジ番組で、次の立民代表選は自民党総裁選と同時期にやるべきだとの認識を示した。「同時期なら対比される。絶対に埋没しない代表選にするのが大事な戦略だ」と述べた。泉健太代表の任期は岸田文雄首相の総裁任期と同じく9月末に満了する。
野田氏は自民党が総裁選を前倒しするならば立民代表選も時期をそろえるべきだと主張した。「にぎやかに自民党がやった後ではダメだ。前にやって後から大きなお祭りがあったら消える」と語った。【日本経済新聞2024年6月19日】
その思惑が功を奏し、公平性に留意するマスメディア、特にテレビ番組は必ず自民党総裁選と立憲民主党代表選を連続して取り上げています。立憲民主党の代表選としては3年前の2021年11月に実施された時よりもテレビでの露出度が高まっているように思っています。
このブログでは3年前の9月に「自民党総裁選と野党の立ち位置」、11月に立憲民主党の代表選に触れた「衆院選挙が終えて思うこと」という記事を投稿しています。今回、ほぼ重なり合った時期に実施されているため、いろいろな意味で両党を対比した記事を綴りやすくなっています。
まず『「今になって言うな」立憲代表選候補者が自民党総裁選を一斉に批判 政治改革や選択的夫婦別姓の導入など訴えていることに』という報道のとおり自民党総裁選の候補者が掲げた個々の政策に対し、大きな違和感や不信感を募らせがちです。立憲民主党代表選の候補者それぞれ次のように批判しています。
野田佳彦元総理「今ごろ『政治改革』って言ってるけど、今ごろ言うなよと。不正の温床になっている企業団体献金や、政治資金パーティー、政策活動費、こういうものにメスを入れる本気の政治改革を実現をしていきたい」
枝野幸男前代表「『本気で自信があるならすぐにやれ』っていう話です。総理として政権を回していく自信があるならば、今おっしゃっていることで、特に野党をパクッているような話は、すぐにでもやれ。我々は協力する」
泉健太代表「もう“立憲民主党化”がここまで進むのかというぐらい立憲民主党の政策のオンパレード。政策を全然、訴えてこなかった人達が付け焼刃で訴えることの恐ろしさ、怖さ、中身の分かってなさに是非、我々は気付かなければいけない」
吉田晴美衆院議員「議論されることは空手形ばっかりじゃないかと。国会中にできたことを先延ばしにし、総選挙目前になって色んな良いことを出してくる」
その上で、候補者たちは政権交代の必要性を訴えていました。立憲民主党の代表選の先には政権交代をめざした総選挙戦が控えています。自民党の総裁選は総理大臣を決める一発勝負です。そのような意味で立憲民主党の代表選は、総理大臣候補者の顔として誰が相応しいのかを決める準決勝戦に例えられます。
総理をめざす政治家に対し、「あらゆる人を “敵” と “味方” に分断する政治」とは真逆な政治的な姿勢や立場性を望んでいます。寛容さであり、包摂さです。自分自身の「答え」の正しさに自信を持っていたとしても、異なる考え方や立場も認め合いながら、最適な「答え」を見出す努力を尽くして欲しいものと願っています。
意見が激しく対立しても、敵視し合うことなく、対話を重ねることで合意形成をはかる政治が重要です。総論から各論まで共通する理念として、外交の場面や改憲議論を通しても意識していくべき心得だろうと思っています。どなたが総理になったとしても、このような心得のもとに寛容な政治を切望しています。
上記は7月に投稿した記事「総理をめざす政治家に望むこと」の中に掲げた私自身の願いです。立憲民主党の候補者は4人とも上記のような立ち位置や軸足を信頼できる方々だと思っています。このような多様性を認めるという軸足のもとに各論としての選択的夫婦別姓の必要性に対する「答え」も導き出されていくべきものと考えています。
しかし、自民党総裁選で本命視されている小泉進次郎元環境相は選択的夫婦別姓を肯定し、リベラルな面を見せている一方、『「聖域なき改革」「三位一体」父ほうふつさせる小泉氏、経験不足指摘には「チーム力で補う」』という新聞記事が伝えるような新自由主義的な立場を鮮明にしています。ライドシェアの全面解禁や解雇規制緩和などを唱えています。
「聖域なき規制改革」を強力に進めていく先は、強い者がより強くなる競争社会の肯定であり、そのことに気付かれているのかどうか疑問に思っています。自分自身の軸足が定まっていないトップリーダーは菅義偉前総理らにとって担ぎやすい神輿となり、改めるべき自民党の体質を残した傀儡政権になってしまうのではないかと危惧しています。
『島根・丸山知事が小泉進次郎氏の「解雇規制緩和」に異論、“親子2代で雇用を非正規化”のド正論を裏付ける数字』という見出しの掲げられた記事の中で、小泉元環境相が掲げた解雇規制の緩和に対し、島根県の丸山達也知事は 「会社側が従業員を今より解雇しやすくすることにしか意味がない。正規の人を非正規と同じにする意味での格差是正が実現する」と疑問を呈し、次のように続けています。
「解雇規制があることで転職が阻まれている訳ではない。正規の人の雇用を不安定にするだけだ。若い世代が子どもを持とうと思わないような社会を実現しようとしているのか、直接会って話をしたいくらいだ」とし、父親の小泉政権下で派遣労働が拡大されたことに触れながら「親子2代で雇用を非正規化しようとしている。日本人の一生に安定感を与えないということだ」と批判しています。
立憲民主党の代表選は野田元総理と枝野前代表との争いに絞られてきているようです。どちらが代表に選ばれても少し前の記事「政権をめざす政党に望むこと」「政権をめざす政党に望むこと Part2」に託しているような私自身の問題意識に対し、しっかり応えてくださる理念や政策をお持ちの方だと思っています。
ただ一点だけ気になることとして、自民党に勝利することのみを最優先し、政治的な立ち位置や軸足が180度違う日本維新の会と必要以上に接近して欲しくないものと願っています。それこそ立憲民主党が大切にすべき政党としての軸足に疑問を抱かれ、逃げていく票は相当な数に上るような気がしています。
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