自民党総裁選が終わり、立憲民主党の野田新代表に願うこと
祝日だった先週月曜、立憲民主党代表選の開票状況をリアルタイムで見守っていました。下馬評のとおり野田佳彦元総理と枝野幸男前代表の決戦投票となり、野田新代表が選出されています。野田新代表が当日の決意表明演説で触れたアサガオの話は印象深く、投票先を決めかねていた方々への最後の一押しとなったかも知れません。
1993年に初当選し再選を目指して出馬した1996年衆院選で落選。4年間浪人生活を送ったことに触れた野田氏は、出席した朝食会でアサガオの話題になった際、朝方咲くために必要な要件を自分は「太陽の光り」と考えたところ、「日が昇る前の夜の闇、夜の冷たさこそが大事」という展開になったと明かした。
「夜の闇や冷たさを知ってこそ、ぬくもりがうれしい」と納得したと述べ、「我々は夜の闇と夜の冷たさを知っている。そこで積み上げてきた政策こそ、今の時代の要請ではないか」と、自民党と戦う同僚たちを奮い立たせるように、政権交代への決意を示した。【日刊スポーツ 2024年9月24日】
野田新代表に決まったことで、金曜午後の自民党総裁選の結果を左右させたという見方があります。前回記事「ネットに繋がらなかった日々から思うこと」の中で、高市早苗経済安全保障担当大臣が急浮上している一方、小泉進次郎元環境大臣の勢いが止まっていたことを記していました。
結局、選挙戦前は本命視されていた小泉元大臣は3番手に沈み、高市大臣と石破茂元幹事長との決戦投票となっています。当初は出馬に必要な20人の推薦人確保も危ぶまれていた二人が決戦投票に進んだことについて、自民党内では「総裁選が様変わりした証しだ」と受けとめられているようです。
第1回目の投票では負けていた石破元幹事長が高市大臣に逆転勝ちしています。日本テレビの『【解説】石破新総裁“誕生のウラ側”…5回目の挑戦制す 勝敗のポイントは』の中で、石破新総裁が勝ち残った理由を次のように解説しています。
総裁選の討論などを通して、高市さんには2つの不安の声があがっていました。1つ目はいわゆる裏金議員へのスタンスです。高市さんは陣営に裏金議員が多かったことに加え、選挙での公認問題などで党内から「裏金議員に甘い」という声があがっていました。こうしたことから、ある自民党幹部は「裏金問題に甘い高市さんでは、衆院選はボロ負けになる」と指摘していました。
2つ目は、高市さんが打ち出した保守色への警戒感です。高市氏の「総理になっても靖国神社に行く」といった主張などに対して、党内からは「過激すぎる」という声もあがりました。立憲民主党の新しい代表が、保守的なスタンスな野田佳彦さんになったことで、「穏健な保守層が立憲に奪われる」と不安視する声も自民党内には出ていたんです。こうした仮に首相となった時の高市さんに対する不安感が、石破さんへの投票につながったのでは、とみています。
ディベート力が野田新代表に比べれば格段に劣る小泉元大臣の失速も、上記のような見られ方から勝ち切れなかった高市大臣も、立憲民主党代表選の結果に影響を受けたと言えます。政権交代をめざす立憲民主党側からすれば「石破新総裁でなければ自民党のウイークポイントを突きやすかったのに」と嘆く結果だったかも知れません。
野田新代表は衆院解散のタイミングなどを見誤り、民主党政権を終わらせた「戦犯」という批判が付きまとっています。私自身にそのような認識はなく、解散した日に行なわれた総理大臣としての記者会見で語った野田新代表の三つの言葉が強く印象に残っています。
一つは連合が力を注いできたテーマを表した「働くことを軸として、安心できる社会を作っていく」であり、あと二つは「2030年代に原発をゼロにする」「強い言葉で外交・安保を語る風潮が強まってきたが、極論の先に解決策はない」という言葉です。この三つの言葉こそ、今でも他党との明確な対抗軸になっていくものと考えています。
このような対抗軸は国民民主党からも支持されていくはずです。長く連合の活動に関わってきた組合役員の一人として、野田新代表のもと立憲民主党と国民民主党が手を携えていけるようになることを願っています。近いうちに必ず行なわれる総選挙戦では、連合が一体となって応援できる候補者の擁立を待望しています。
ただ掲げた対抗軸のもとの結集が重要であり、立憲民主党の立ち位置から程遠い政党との選挙協力には懐疑的です。1+1がプラスとならず、1+1がマイナスに働くような危惧すべき点として日本維新の会との距離感があります。
立憲民主党の理念や軸足と180度違う政党として、自民党以上に日本維新の会を思い浮かべます。所属している議員の中に評価すべき方々も少なくないのかも知れませんが、4月に投稿した記事「新着資料紹介『「維新」政治と民主主義』」に示したような政党としての体質の問題が非常に気になっています。
兵庫県議会の不信任決議を受け、斎藤元彦知事は失職する判断を下しました。さらに『兵庫・斎藤知事 高校生の手紙で出馬決意にSNS厳しい声「悲劇のヒーロー気取りか」「地元の声を聞け!」』という報道のとおり出直し選挙に出馬することを表明しています。本当に信じられないような思考回路の持ち主だと思っています。
斎藤知事の問題が注目を集めたことで維新の会に対する批判も強まっています。『泉房穂氏、斎藤元彦知事へ「知事になるべき方ではなかった、担いだ維新と自民党の責任重い」私見』『兵庫の斎藤知事だけじゃない! 維新の議員・首長に相次ぐ不祥事 “スパイ”、町有地占有、不同意性交…』というような報道を立て続けに目にしています。
『兵庫県・斎藤知事の“パワハラ問題”根源は「維新の傲慢体質にある」現職市議が決意の告発 大阪府議会議長から受けた公認取り消し圧力、恫喝、外見非難』という記事の中では次のような警鐘が鳴らされています。
世間をにぎわせた斎藤知事のパワハラ疑惑は、彼の失職だけで幕を下ろすわけではない。この問題の根源たる大阪維新の会の体質を変えない限り、“第二の斎藤”が現われるかもしれないのだ――。
「自民党総裁選が終わり、立憲民主党の野田新代表に願うこと」という記事タイトルを付け、ここまで綴ってきました。もう一つ気になることがあります。『「こんなのノーサイドじゃない」立憲・野田新代表の“刷新感”体制に党内から不満の声』というような報道があり、いきなり党内で軋轢が生じ始めているようです。
個人的には枝野幹事長という新体制を期待していましたが、小川淳也新幹事長という選択にも興味深いものを感じています。2021年11月の記事「衆院選挙が終えて思うこと」の中で、小川新幹事長主役の映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を紹介し、新幹事長の共産党との距離感に対する考え方について取り上げていました。
野田新代表は小川新幹事長に対し、このあたりのバランス感覚を期待しているのかも知れません。ただ新代表が思い描く人事を進めていくことに理解しつつも「ノーサイド」と宣言したからには、党内での納得感や合意形成を充分はかっていく努力を尽くして欲しいものと願っています。党内に対立の火種を作っていくようでは政権交代の道筋から遠ざかっていくだけだろうと思っています。
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