地域手当の見直しに安堵
自民党の総裁選が9月12日告示27日投開票、立憲民主党の代表選が9月7日告示23日投開票と決まりました。前回記事「『承認をひらく』を読み終えて」も政治に絡む話につながっていましたが、ますます今後、望ましい政治のあり方を題材にした投稿が増えていくのだろうと思っています。
ただ今週末に投稿する新規記事は、久しぶりに公務員の労働条件に関わる話題を取り上げます。8月8日に下記のとおり人事院勧告が示されています。今回の勧告の中で、来年度から地域手当の支給地域等が大きく見直される内容も示されていました。
人事院は8日、2024年度の国家公務員給与を引き上げるよう国会と内閣に勧告した。最も人数が多い行政職は月給を平均2.76%(1万1183円)引き上げる。2%を超えるアップは、1992年度の2.87%以来、32年ぶり。賃上げが進む民間との格差を埋める。人材確保のため、月給は若年層の引き上げを重視。初任給も高卒、大卒ともに2万円を超える増加で、過去最大の上昇幅となった。
ボーナス(期末・勤勉手当)は0.10カ月増の4.60カ月分。月給とボーナス両方のプラス勧告は3年連続となる。勧告は地方公務員の給与改定の参考となるため、各地の自治体でも給与増が進む見通しだ。【共同通信2024年8月8日】
上記の報道の中では触れられていませんが、地域手当見直しの動きは私どもの組合にとって、たいへん重要な勧告内容でした。そのため、このブログでも機会を見て必ず取り上げようと考えていました。9年前に「地域手当を巡る問題点」、5年前には「諸手当の見直し提案」という記事を投稿しています。
これまで地域手当は市町村単位で支給割合が定められていましたが、来年度から都道府県を基本とし、支給割合の級地区分は7級地から5級地(20、16、12、8、4%)に再編されます。市町村単位での設定による理不尽さが指摘されてきたため、今回の勧告で広域化を進めた内容となっています。
私どもの市の地域手当は12%、同一生活圏の近隣市は15%や16%、この格差が制度導入以降、ずっと課題認識されてきました。今回の勧告で三多摩地域は2級地の16%に位置付けられます。東京都特別区は従前通りの水準となる1級地の20%です。
都道府県を基本としながら4%の差が残るため、私どもの組合ニュースには「三多摩格差と言わざるを得ない事は残念です」と書かれていました。中核的な市は個別に指定され、道府県の中でも枝分かれしているため、東京都全体が同じ支給割合にならなかったことは許容範囲なのだろうと受けとめています。
全国的に見ると支給割合が上がる市町村、下がる市町村、明暗が分かれています。そのような中で、私どもの市が4%引き上げられる地域に決まったことは、たいへん喜ばしいニュースでした。「2025年4月から16%へ」という見出しを掲げた組合ニュースを手にした組合員の皆さんの笑顔を見ることができています。
その組合ニュースの紙面には「2025年4月より住居手当の激変緩和措置が終了し35歳以上不支給となりますが、地域手当が16%になった場合、総額で上回ることになります」と説明し、モデル35歳1級81号級の今年度と来年度の手当支給額の比較を示した表も掲載されていました。
A4判の限られた紙面ですので、なぜ、住居手当のことが関連して説明されているのか、詳しく解説できていないのは仕方ないことだろうと思っています。昼休みに委員長と会った時、たいへん重要な課題だった地域手当に関する内容は次回以降、もう少し掘り下げたほうが良いのではないかと伝えています。
相談した結果、協力委員の一人でもあり、9月以降、職場回覧する資料の原稿作りに私自身が協力することになりました。このような経緯もあり、今回のブログ記事に向き合っていました。
まず地域手当を巡る問題に対し、労働組合側が決して受動的立場だった訳ではありません。自治労や公務員連絡会は人事院や総務省との中央交渉を重ねてきています。時には職場署名にも取り組んできました。
私どもの組合も市側との団体交渉等を通し、地域手当の不合理さを訴え、市独自な判断として近隣市と同じ率まで引き上げることを検討するよう求めてきました。隣接した市で16%と10%という格差がありながらも、独自な引き上げで解消していた事例を示した上での要求でした。
昨年9月の記事「身近な政治、市長選の話」で伝えていましたが、都議時代から私どもの組合と推薦関係があり、20年以上前から顔見知りの方が市長に就任されています。その市長からも市町村単位で細分化された地域手当の問題性をご理解いただいていました。今年6月には総務省に市長自ら出向き、地域手当の支給割合についての要望書を提出されていました。
このような心強い経緯がある中ですので、今回の勧告を踏まえた支給割合での来年度予算が成立していくことを信頼しているところです。市長が総務省に要望書を提出したことは組合ニュースで報告していましたが、大きな節目を迎えた今、改めて組合員の皆さんに市長との連携をアピールすることの意義も感じ取っています。
続いて、地域手当と住居手当が関連していた問題です。2018年11月の団体交渉で「住居手当1万2千円を都と同額の1万5千円に引き上げる。年齢要件がないのは三多摩26市で当市のみであり、この機会に支給対象を35歳未満としたい」という見直し提案が示されました。
労使合意が得られれば2019年度から改めたいという提案でした。東京都に準拠した取扱いへの変更提案ですが、地域手当の支給率は都(20%)と私どもの市(12%)で大きな開きがあります。このような大きな格差がある中、都準拠とする提案を容易に受け入れられないことを組合は強く訴えました。
2014年度から導入された地域手当は前述したとおり市町村ごとに細かく率を定めているため、様々な点で不合理さが指摘されていました。都の場合、人事異動によって支給率が大幅に変動する問題性を踏まえ、三多摩で働く都職員も20%に合わせています。したがって、地域手当に関して都は国の定めた基準に従わず自主的な判断を行なっていました。
三多摩の多くの市が15%又は16%であり、私どもの市の12%は低いほうの部類となっていました。人材確保や人材流出を防ぐ観点からも地域手当の支給率を12%にとどめておくことの問題性を組合は提起し、手当全般を都並に揃えるのであれば、この機会に地域手当の支給率の引き上げを同時に検討すべきではないかと訴えてきました。
さらに一定の年齢をもって住居手当が支給されなくなる制度は不合理で、国家公務員や民間企業の支給実態を調べてみても都の制度自体が特異なものであることも組合は強調してきました。このような交渉の結果、住居手当の見直し提案は年度を越えた継続協議の扱いを確認してきました。
私自身が執行委員長を退任した後となりますが、2023年2月の団体交渉で4年間先送りさせてきた住居手当見直し提案を合意しています。35歳以上の対象者の支給額を千円ずつ引き下げる激変緩和措置が確認でき、2025年4月に向けて地域手当の支給地域等の見直しが予定されていたからです。
都準拠に固執するのであれば地域手当引き上げとの同時決着を組合は求めてきましたが、「三多摩26市中25市が都準拠となっているため、対外的に説明が付かない」という市側の切実な事情を受けとめ、2025年度からの地域手当引き上げを期待した上での労使合意だったことを理解しています。
このような経過があり、地域手当4%引き上げという朗報とともに住居手当の激変緩和措置が2025年度に終了するという説明を今回の組合ニュースで加えていました。公務員の総人件費抑制の流れが強まっていた時期であれば、全体的に低位な支給割合に合わせるという動きもあったかも知れないため、私どもの組合にとって本当に安堵する勧告内容だったと言えます。
| 固定リンク
コメント