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2024年7月13日 (土)

政治家の好感度、その危うさ

都知事選の話」をPart2」まで続け、前回記事は「会計年度任用職員制度の課題、最新の動き」という労使課題を取り上げています。今回はネット上で見かけた興味深い記事を紹介しながら「政治家の好感度、その危うさ」というタイトルを付けて書き進めてみます。

先週日曜に都知事選が投開票され、現職の小池知事が三選を果たしています。 日曜の朝、新聞のテレビ番組欄を目にした時、NHKの「東京都知事選開票速報」には「出口調査の結果は? 夜8時ジャストに速報」と記されていました。

少しでも接戦が見込まれた場合、ここまで「8時ジャスト」とうたえなかったはずであり、選挙戦の最終盤まで小池知事の優勢は揺るぎなかったようです。当初、小池知事と蓮舫候補との一騎打ちと見られていましたが、2位に躍り出たのは安芸高田市長だった石丸伸二候補でした。

前回記事の冒頭で「本来であればプラスとマイナス、それぞれの情報を有権者が知った上で、貴重な一票を投じる判断につなげていけることが望ましいはずです」と記していました。ネット上で様々な情報を入手するように努めていると、石丸候補のマイナスにつながるような事例をいくつか目にしていました。

開票後、各メディアの番組に石丸候補は立て続けに出演しています。「パワハラ臭ぷんぷん」石丸伸二氏「本当に熟読されました?」とライターを逆質問…ラジオ番組での対応が“高圧的”と批判続出』という記事をはじめ、問いかけに対する石丸候補の振る舞いを批判した報道が目立つようになっています。

ちなみに都知事選直後の当ブログの今回の記事は石丸「候補」という呼称で統一していくつもりです。そもそも石丸候補の資質が都知事選後に急変した訳ではありません。『「メッキが剥がれた感ある」石丸伸二氏  都知事選2位の大躍進も…古巣で“反対派”が当選、恫喝訴訟で敗訴の相次ぐ醜聞』という見方を伝える記事は少なくありません。

都知事選後の『「当選していたら東京でもとんでもないことしていたよ」石丸伸二氏の躍進を安芸高田の市議たちはどう見たか?「独裁、パワハラ… 彼は安芸高田をガタガタにした」「後継者が落選したのが民意」』というような石丸候補の好感度を下げる地元の声も、選挙前からネット上では散見していました。

このあたりの話をまとめた『「信念など欠片もない政治家」選挙特番に出演した石丸伸二氏をXで13人の“オピニオンリーダー”次々批判 意外な共通点が』という記事は興味深い内容となっています。石丸候補を批判する声が増えていることは確かですが、その批判者を激しく批判する石丸候補の「岩盤支持層」が多数であることも間違いありません。

古市憲寿氏「こっちとしては不思議でした」 石丸伸二氏との“舌戦”受け長文投稿 「政治屋」質問の意図は』という記事の中で、古市さんの「もし石丸さん支持をもっと増やしたいなら、石丸さんを批判する人も仲間にしていかなくちゃいけない訳です」という意見はうなづけるものがあります。

このような声が高まる中、石丸伸二氏、山崎怜奈との“ブチギレ”質疑応答に自ら触れる「かわいそうなことになってましたね」』という記事が石丸候補の言い分を伝えています。「総じて対応が厳しめだったと思うんですけど」という問いかけに対し、石丸候補は自らのスタンスを次のように答えています。

僕はコミュニケーションの基本として、ミラーリングするんですよ。善意には善意で返すし、敵意には敵意でちゃんと返すんですよ。雑な質問に雑に答えたら、ぐちゃぐちゃになるんでうまく整理するんですけど。相手が真剣に調べてきているときには、クオリティを担保して返すようにしています。

今回の記事タイトルは「政治家の好感度、その危うさ」としていますが、石丸候補の話だけで相当な長さとなっています。上記のような考え方に対しても評価は分かれていくのかも知れませんが、このあたりで石丸候補に特化した話は一区切り付けさせていただきます。今回の記事を通して訴えたいことは政治家に限りませんが、好感度は見る角度によって大きく変動するという話についてです。

マイナスにつながる情報に触れることなく、プラス面の情報ばかり入手していれば必然的に好感度は上がっていくはずです。爽やかさ、聡明さ、若々しさなど外見上のプラスの評価も加わり、好感度が増していくこともよくある話です。選挙戦であれば負のイメージの付いた政党とは距離を置き、しがらみのなさが好感度を押し上げていく傾向もあります。

清新なイメージ通りの内実の伴った人物であれば問題ありません。しかし、中には意図的に表の顔と裏の顔を使い分けているケースもあるはずです。目上には従順で、自分より下だと思った相手には高圧的になる人物も少なくありません。そのような人物が重責を担う組織のトップや政治家になっていた場合、何らかの綻びが生じていきがちです。

恫喝で炎上の長谷川議員の“威圧的言動“が次々と明らかに… 「記憶にございます」発言の宮沢元議員が当時感じた印象を本音告白』という記事の中で、同じ安倍派だった宮沢博行元衆院議員は長谷川岳衆院議員について「何度も接したことはあるが、爽やかで優しい感じの人で威圧的な言動の報道があったというのは、私たちにしてみると意外な感じ、想像がつかない」と語っています。

きっと有権者の多くも長谷川衆院議員に対し、同じような印象を持っていたはずです。本来の資質だと思われるネガティブな情報が明らかにされていく中で、長谷川衆院議員に対する好感度は急降下しているのではないでしょうか。見た目の好感度をはじめ、どの政党に所属しているのかどうかなどを決め手とし、候補者の資質が未知のまま一票を投じることは決して稀な話でありません。

今、そのことの悩ましさと苦しさを兵庫県職員は痛切に思い知らされているのかも知れません。自治労兵庫県職労は『知事の「パワハラ疑惑」告発の県幹部が死亡   職員労組に「辞職」求められた知事 「辞職ではなく職員との信頼関係を再構築し県政を立て直す」と表明』という記事のとおり斎藤元彦知事に対し、ただちに辞職するよう申し入れています。

斎藤知事は東大経済学部を卒業後、総務省に入り、大阪府の財政課長を経て、2021年7月の兵庫県知事選に立候補しています。 43歳という若さ、県政の刷新、大阪府との連携強化をアピールしながら初当選を果たし、大阪以外で初めて誕生した維新系知事でした。好感度は高く、未知の魅力や期待は、結果的に未知の危うさだったようです。

知事の「パワハラ疑惑」告発の県幹部が死亡   職員労組に「辞職」求められた知事 「辞職ではなく職員との信頼関係を再構築し県政を立て直す」と表明』『「兵庫県、はずかしい」知事のX投稿発掘→「ブーメラン」の指摘 告発された「パワハラ」体質、その素性を振り返る』『兵庫・維新系パワハラ県知事の「犠牲者」はもう1人いる! 別の職員の死亡「隠蔽」の疑い』という驚くべき事実関係が立て続けに報じられています。

最後に紹介するのはディリー新潮の『斎藤兵庫県知事 県政史上最低の会見、副知事辞任で四面楚歌に…「告発した元局長が亡くなってもパワハラを証言する人はいる」』という記事です。「知事寄りの会派は、無記名に反対するかも知れませんけど」という記述がありましたが、まだ斎藤知事を擁護しようとする動きがあることに驚いています。

その記事の中で、亡くなられた元県民局長のメッセージが掲げられています。元県民局長は現職時に毎月、県民や職員に向けてホームページ上でメッセージを送っていました。今年3月、懲戒処分を受ける前の最後のメッセージの一部は次のような内容でした。このような職員が書いた告発文を斎藤知事は「嘘八百」「公務員として失格」と切り捨てていたことを伝え、その記事は結ばれています。

このメッセージ欄は一般県民の皆さんの読者もいらっしゃるようですが、一方で、県職員の中にも何人かの愛読者がいるようです。自分は間もなく、県を退職します(予定)が、これから県を支えていく後輩の皆さんに最後に伝えておきたいことを書いておきます。

我々は公務員です。仕事は県民の皆さんのためにするものです。自分のために、自分の栄達のために、仕事をしてはいけない、仕事を利用してはいけない、県民を利用してはいけない。そして、自分の損得勘定で行動してはいけない、人を選別してはいけない。昇任、出世は結果であって、それを目的にしてはいけない。(中略)

最後に。人を大切にすること、義を通すこと、誠実であることを、ひとりの人間としてずっと心に持ち続けて欲しいです。そして、筋を通そうとして挫けることがあっても、理不尽な現実の壁に跳ね返されても、諦めないで下さいね。「いつかきっと」と心に念じながら。

素晴らしい人にたくさん出会えますように。県民の皆さんの心に残る仕事に出会えますように。長らくのご愛読ありがとうございました。お世話になりました。おわり。

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