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2024年7月 6日 (土)

会計年度任用職員の課題、最新の動き

前々回記事「都知事選の話」、前回記事都知事選の話 Part2」と2週続けて都知事選の話題を取り上げてきました。新規記事のタイトルは「Part3」としていませんが、明日が投票日のため冒頭で少しだけ都知事選に絡む話にも触れてみます。

「満員電車ゼロ」を含めて「公約達成ゼロ」!?の小池都知事  職員からの評価はどうだったのか』『「都職員の多くは辞めてほしいと思っている」「都政新報」記者が語る小池都政2期目の“総決算”「トップダウンで、現場はやる気を失った」』という記事を最近のYahoo!ニュースのトップ画面で目にしています。

それぞれ「就任時から指摘されてきた現場の声を聞かないトップダウン方式で、都職員はすっかりやる気を失っているという」という都政の現場の実情を伝えている記事内容です。トップダウンのすべてを否定するつもりはありませんが、まったく部下から理解を得られないような指示は何らかの問題を内包したままなのだろうと思っています。

いずれにしてもマスメディアは選挙期間中、候補者のネガティブな情報の報道は選挙妨害と取られかねませんので必然的に控えがちとなります。本来であればプラスとマイナス、それぞれの情報を有権者が知った上で、貴重な一票を投じる判断につなげていけることが望ましいはずです。

ただ虚偽の情報が選挙結果を左右するような事態に至った場合、取り返しのつかない大失態です。したがって、大半のマスメディアが選挙期間中の報道内容について慎重にならざるを得ない現状も、ある程度やむを得ないのだろうと理解しています。それでも明らかな事実関係の報道まで控え気味になることはどうなのだろうかと思っています。

“既成政党に与しない”石丸伸二の選対本部長は「自民党政経塾」塾長代行! 応援団筆頭に統一教会系番組キャスターの元自民党職員も』という内容には二の足を踏んだとしても、7月3日に示された『石丸氏の投稿巡る訴訟、二審も名誉毀損認める  安芸高田市に賠償命令』という司法判断を伝えるマスメディアの記事も少なかったように感じています。

さて、小池知事のことを伝える前掲した二つの記事のニュースソースは都政新報というローカルなメディアです。1950年に創刊された自治体専門紙で、都庁のほぼ全職員に加えてOBや関係者らが精読しているため、都職員向けに発行する都政新報と紹介されています。

東京都の政策や人事、議会の動きに限らず、都内の区市町村の動きも同じように詳しく伝えています。そのため、都職員以外の定期購読者も相当な数に上るのではないでしょうか。週2回発行され、私どもの組合にも届きますので昼休みに顔を出した時、必ず目を通しています。

先週月曜『調布市  非正規職員、再任上限撤廃  正職との均等待遇に前進』という見出しが、すぐ目に入りました。このブログで少し前に改めて会計年度任用職員の課題」という記事を投稿していましたが、その課題に関わる画期的な動きを伝える記事でした。

非正規雇用の職員の処遇改善が全国的にも課題となる中、調布市では会計年度任用職員の処遇を改善し、再度任用の上限を撤廃した。2020年の制度導入時に設定した再任上限を一律で撤廃するのは都内自治体では初めてと見られ、正規雇用職員との均等待遇に向けて前進した。同市人事課は「時代の流れ」と説明する。

上記は当該の記事のリードに書かれた内容です。本文には、予算上の職種の廃止や勤務評定上の問題などの理由がない限り、希望するすべての職員が来年度以降も継続して働くことができる規則改正を行なったと書かれています。市人事課は「雇用の安定や人材確保難への対応。採用側と労働者側双方の負担軽減につなげるため」と説明しています。

東京都に合わせる形で私どもの市や調布市は、公募によらない再度の任用は連続4回までと定めていました。会計年度任用職員制度が始まり、5年目の今年度、多くの会計年度任用職員を公募して採用する必要性に迫られています。当該の会計年度任用職員の皆さんの雇用継続に向けた不安は、はかり知れないものです。

調布市では昨年度から労使で協議を進め、公募にかけるのは事務負担が重い上、仮に公募したとしても多くの場合は同じ人を採用することが見込まれるため、再任上限の撤廃を決めたと都政新報の記事に書かれています。職種によっては「改めて公募をかけても集まらない可能性があり、継続的に働いてもらうほうが現実的」という人事課担当者の声も紹介されています。

先月末には時事通信が『非常勤、採用更新を柔軟化  3年ごとの選考不要に  公務員の人材確保・人事院』という見出しの記事を配信していました。ハローワークなど国の機関で働く非常勤の国家公務員(期間業務職員)である会計年度任用職員の採用の更新を柔軟化する方針を固めたという報道です。

期間業務職員の任期は原則1年。現在、選考なしで採用更新できる回数の上限は「連続2回」で、職員は最大3年ごとに面接選考などを受け直す必要があるが、この回数制限を撤廃する。勤務実績や能力に基づいて更新することで、不安定雇用の解消や人材の確保を目指す。人事院は月内をめどに新たな運用について周知する方向で調整している。国の運用見直しは、地方自治体の採用にも影響を及ぼしそうだ。

時事通信が伝えている上記の記事のとおり全国的に見ると、会計年度任用職員の再任上限を撤廃する動きが徐々に広がっているようです。しかしながら都内の自治体では動きが鈍く、会計年度任用職員制度の「導入時に上限を設定していなかったのは文京、世田谷、板橋、八王子、狛江で、ここに今回、新たに調布が加わったのみ」と都政新報は伝えています。

さらに都政新報の記事では「ただ、労働力を安定的に確保するため、今後、上限を撤廃する自治体が増える可能性もある」と続けています。今年3月に投稿した記事「会計年度任用職員制度の課題」の中で、上限を設けることが地公法第13条の平等取扱いの原則に違反する可能性について指摘していました。

このような点も踏まえ、私どもの市でも上限を撤廃する方向性に舵を切る必要性があるはずです。しかし、現時点までに積み上げてきた労使協議結果をいきなり白紙に戻すような要求は控えなければなりません。来年度以降の必要な見直しに向けた要求としてメリハリを付けなければ労使の信頼関係に疑念を持たれかねません。

その一方で、これまでの労使協議を踏まえた上で今年度、本格実施される前に確認すべき点があることを誠実に組合は申し入れていく必要性に迫られているものと思っています。そのような見直し協議自体を市側に拒まれれば、たいへん残念ながら現時点までに決まっている内容をそのまま受け入れていくことになります。

少し前に「これまでの組合の考え方を踏まえた運用(案)」という下記のような箇条書きのメモをまとめ、副市長にお渡ししていました。委員長と書記長にも渡し、これまで労使で確認してきた内容を原則としながらも、実質的には調布市が懸念したような問題を解消していけるのではないかと伝えています。

  • 3月26日付『連続4回の「公募によらない再度の任用」をされた月給制職員の職の取扱いについて』に沿った対応を原則とするが、継続した業務に従事する現職者に対して一定の運用をはかる。
  • 現職者は書類・筆記等による選考(1次試験)を免除し、面接試験(2次試験)のみを受けるという運用まで確認済み。
  • 新規採用希望者と競い合わせることの問題を解消するため、年度内の早期に現職者のみを対象にした面接試験を実施する。
  • 欠員が生じる場合、広報等を通して公募する。

継続した業務に従事する職員とは、保育園、学童保育所、学校事務職場などに勤務し、これまで主管課が中心となって採用してきた会計年度任用職員を想定しています。早い時期に継続意向調査を行ない、あまり事務負担のかからない所属長を中心にした面接試験によって次年度の採用を決めるという運用を求めています。

7月1日に人事課長名で「月給制職員の令和6年度採用試験の実施について(通知)」が発せられています。「原則として公募による競争試験を実施しなければならない」と記されていますが、原則を踏まえながらの運用や例外を認めていける余地が残され、まだ間に合うタイミングであることを願っています。

今回の記事の冒頭で「現場の声を聞かないトップダウン方式」を批判しています。「改めて会計年度任用職員の課題」という記事の中では「労使交渉の窓口を飛び越えてトップダウンで方針を転換させるような手法も望んでいません。そのような手法には批判的な立場であり、あくまでも労使交渉の折衝窓口である人事課長らに理解を得た上、より望ましい運用をはかれないかどうかという問題意識を抱えています」と記しています。

このような思いと現職の組合役員ではないという立場も踏まえ、ここから先は今後、労使協議を通して何らかの動きを作ることができるのかどうか見守っていかなければならないものと思っています。もちろんお役に立てることがあり、声をかけていただければ全力で応援していこうとも考えています。

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