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2024年7月20日 (土)

過ちに対する責任の処し方と問い方

このブログを始めた頃に「責任の処し方、あれこれ過ちとその処分のあり方」という記事を投稿しています。定められているルールを守れなかった、それが故意なのか、認識不足だったのかに関わらず、相応の責任の処し方が求められます。

まして明白な法律違反だった場合、厳格な処分につながっていくことを受け入れていかなければなりません。しかし、犯した過ちに対し、その度合いに見合った責任の処し方なのかどうか、以前のブログ記事の中で個人的に思うことを綴っていました。

昨日、パリ五輪に臨む日本体操女子代表チームの宮田笙子主将の喫煙と飲酒の問題が報じられました。宮田主将は19歳であり、代表行動規範に違反した疑いによって代表を辞退することが日本体操協会の緊急会見で明らかにされています。

この会見の後「国会議員が言っちゃダメでしょ」猪瀬直樹  体操女子・宮田の喫煙疑惑に「たかがタバコ」と擁護も波紋』『「追い詰める必要がどこにある!」“たかがタバコ発言”で波紋を広げた猪瀬直樹氏が宮田笙子の五輪辞退決着にふたたび怒り!「なぜ名前まで晒して…」』という声も上がっています。

高校野球では部員の不祥事によって、甲子園大会の出場を辞退するという理不尽な対応が繰り返されています。今回、さすがにチーム全体の辞退という事態まで至っていませんが、紹介した記事のとおり協会の判断を「厳しすぎる」と批判する声を耳にしています。

特に猪瀬参院議員は「たかがタバコで何を騒いでいるのか。麻薬じゃないんだぞ!! 規則尽くめの杓子定規が日本をダメにしてきたのだ」と憤っています。確かに協会内部の規範違反にとどまっていれば、そのような見方もあり得るのかも知れません。ただ明らかな法律違反であり「国会議員が言っちゃダメでしょ」という指摘のほうが正論だろうと思っています。

このように法律を軽視する意見を堂々と発せられる国会議員の存在が、自民党の裏金問題を20年以上も許してきた土壌につながっているように認識しています。『堀井学衆院議員  秘書が“中止進言”も香典配布継続か「今さらやめることできない」』という報道なども、さらに認識を裏付ける事例の一つとして数えられます。

法律違反であることを自覚し、秘書からの進言がありながら「今までずっとやってきた、今さらやめることなんてできない。昔からのやり方なんだからやってください」と指示した堀井衆院議員の判断は致命的な過ちだったと言えます。加えて、他の議員も同様に続けている可能性を疑わせる判断だったように思えてしまいます。

私たちも自分自身が参列できない場合、どなたかに香典を託す時があります。交友関係が広く、多忙な国会議員であれば自ら参列できない場合は、より多いのだろうと思います。金権政治を防ぐ目的の公職選挙法で、寄附行為として利用されないように議員の代理として参列する秘書らが香典を持参することを禁止しています。

このことを代理で参列する秘書らは説明し、法の趣旨を有権者側も理解していかなければなりません。香典返しは受け取らず、お焼香だけして帰ることを堀井議員が指示すれば問題はありませんでした。もしくは後日、本人が出向き、香典を渡すような手はずを考えれば法律違反という過ちは避けられたはずです。

この問題を受け、堀井議員は自民党を離党しました。裏金問題の責任をとって、すでに次の衆院選に立候補しないことを表明しています。同様な罪を問われた菅原一秀元経産相は最終的に略式起訴され、議員辞職した後、2021年6月に公民権停止3年に処されていました。このことを踏まえれば、堀井議員の責任の処し方としては、即刻議員辞職する潔さが求められているのではないでしょうか。

宮城 大河原町議が“議会中にゲーム” 小学生が感想文で指摘』という町議の振る舞いや釈明の仕方には呆れています。とは言え、それこそ法律に違反しているというレベルの過ちではないため、本人が辞職を判断しない限り、周囲が強引に辞めさせるような手立てはなく、あくまでも勧告にとどまります。

週に1回、土曜か日曜のみ更新しているブログですので時事の話題が盛りだくさんになりがちです。『米軍なら「懲役250年」113人処分の海自、大物OBが憤る“劣化”の理由』という報道に驚いていましたが、それ以上に『18歳未満の女性のわいせつな動画を撮影  自衛官に停職3ヶ月の処分  データ消去と引き換えに金銭を要求』という記事に驚いています。

海上自衛隊呉地方総監部は16日、18歳未満の女性のわいせつな動画などを撮影し、データ消去を引き換えに金銭を要求したなどとして、護衛艦さみだれの海士隊員の男性(20)を停職3ヶ月の懲戒処分としたと発表しました。

海上自衛隊によりますと、海士隊員の男性は、当時交際相手だった女性が18歳未満であるとしりながらわいせつな動画や画像を撮影・保存したり、交際の解消を告げた女性に対し、わいせつなデータの消去を引き換えに金銭を要求したということです。

海士隊員の男性は3月28日に恐喝未遂の疑いで逮捕、4月12日に児童買春・児童ポルノ法禁止法違反の疑いで再逮捕されていました。逮捕時の警察の調べに対し、男性は容疑を認めていたということです。海士隊員の男性は「多大な迷惑を掛けたことを反省しております。本件に関し、いかなる処分も受ける所存です」とコメントしています。

また、海上自衛隊護衛艦さみだれ艦長の古賀直樹二等海佐は「隊員がこのような規律違反を起こしたことにつきまして、大変申し訳なく思っております。国民の不信を招く事案を生起させたことを重く受け止め、更なる教育・指導を徹底してまいります」とコメントしています。【中国放送2024年7月16日

長い記事になっていますが、当該記事の全文を掲げました。逮捕され、犯罪の容疑を認めている隊員に対する処分が「停職3か月」、目を疑いました。市職員が公金を自宅に持ち帰り、すぐ全額を戻していたとしても処罰され、懲戒免職まで至ります。同じ公務員でありながら、この落差にたいへん驚いたニュースでした。

前回記事「政治家の好感度、その危うさ」の最後のほうで、兵庫県の斎藤元彦知事を巡る様々な問題について取り上げていました。斎藤知事や側近の違法行為疑惑を告発した文書を警察やメディアに送った元西播磨県民局長は、県の懲戒処分を受けた後、自ら命を絶っています。

この問題に絡み、疑惑の真偽を調べる県議会の調査委員会が6月19日に開かれています。元県民局長は調査委員会で話す予定だったことを問答式の陳述書として書き残していました。その陳述書をはじめ、ワインをねだるやり取りを録音したデータなどが、次のような文書を添えて遺族から調査委員会に提出されています。

主人がこの間、県職員のみなさんのためをと思ってとった行動は、決して無駄にしてはいけないと思っています。主人が最後の言葉を残していました。そこには“一死をもって抗議をする”という旨のメッセージとともに、19日の委員会に出頭はできないが、自ら作成した「陳述書」および参考の音声データの提出をもって替えさせてほしいこと、そして百条委員会は最後までやり通してほしいことが記されていました。

斎藤知事のパワハラやたかり体質について『〈おねだり兵庫県知事・告発職員は死亡〉「まだ飲んでない」の一言でワインをゲット。一方「生意気で」「目立った」職員にはキレ散らかすパワハラ三昧…“妨害工作”もおこなわれた百条委員会の中身』という記事の中で詳しく書かれています。

今後、斎藤知事の疑惑は徐々に明らかにされていくはずです。責任の処し方として、今のところ本人は辞職を頑なに拒んでいます。しかしながら『辞職は不可避か、頼みの吉村大阪府知事からも苦言呈された斎藤元彦兵庫県知事「パワハラ疑惑」』という記事の中で伝える下記のような事実関係に注目しなければなりません。

この時期の知事の対応次第では、状況がここまで悪化することはなかったかもしれない。素直に自分の非を認めて「申し訳ありませんでした。今後は問題に丁寧に向き合い改善していきたいと思います」などと釈明をすれば沈静化する可能性もありましたが、知事にはそのつもりはさらさらなく、A氏に処分を下すことで乗り切ろうとしていました。

つまり斎藤知事が対応を誤らなければA氏とされている元県民局長の命は救えたはず…、このような見方が成り立ちます。斎藤知事にとって過酷な構図かも知れませんが、取り返しのつかない過ちを犯したことに間違いありません。重大な責任の問われ方として「辞職」一択にならざるを得ないことを真摯に受けとめて欲しいものと願っています。

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