« 2024年6月 | トップページ | 2024年8月 »

2024年7月27日 (土)

総理をめざす政治家に望むこと

パリ五輪が始まりました。コロナ禍の緊急事態宣言中に開かれた3年前、このブログでは「57年ぶりの東京五輪が開幕」という記事を投稿しています。最近、堂場瞬一さんの著書『オリンピックを殺す日』を読み終えていますが、開催国の気候条件は二の次にされながら催される異質さなどを改めて思い起こしています。

アメリカの大統領選の行方にも世界中から視線が注がれています。バイデン大統領が選挙戦から撤退を表明し、ハリス副大統領が民主党の候補者になったことでトランプ前大統領の勢いに「待った」をかける展開となっています。8年前の7月には米大統領選と都知事選の違い」という記事を投稿していました。

都知事選をはじめとする日本の選挙とアメリカ大統領選との大きな違いがあります。候補者の政策や資質などを有権者が吟味できる期間の長さの違いです。アメリカ大統領選は選挙の年、1月から州ごとに政党内の候補者を決める争いが始まります。その結果をもとに全国党大会の中で大統領選の正式な党の候補者を決めます。今年で言えば、共和党がトランプ候補、民主党がクリントン候補を指名し、11月の本選に向けて激しい論戦やメディア戦略などが繰り広げられていきます。

このようにアメリカ大統領選の候補者の場合、1年以上にわたって国民から注目されることになります。新人候補だったとしても詳細な経歴や人柄などが明らかになり、ネガティブな情報も含め、大統領としての適格性を判断できる材料が揃えられていきます。前述したトランプ候補の排外主義にも賛否があり、共和党内では支持が上回ったという民意の表われだったものと理解しています。

8年前に記した内容ですが、前々回記事「政治家の好感度、その危うさ」につながっている問題意識です。本来であれば米大統領選のようにプラスとマイナス、それぞれの情報を有権者が知った上で、貴重な一票を投じられることが望ましいはずです。しかしながら候補者の資質や適格性という重要な判断材料が不足したまま投票せざるを得ないことの多い選挙戦の現状です。

その結果、前回記事「過ちに対する責任の処し方と問い方」の中で取り上げているような国会議員や自治体の首長を生み出していると言っても言い過ぎではないはずです。最近、このような問題意識を強めている理由があります。都知事選で注目された安芸高田市長だった石丸伸二氏の評価の落差が気になっていたからです。

もともとSNSを中心に熱烈な支持者を増やしていた石丸氏ですが、テレビ画面に映し出される爽やかな笑顔だけに触れていけば好感度は上がり続けていくように思っています。しかし、ネット上で石丸伸二氏から“恫喝の張本人”と名指しの市議「彼は嘘の発言をした責任の重さがわからない」』という記事などに触れていった場合、その好感度は大きく揺れ動くことになります。

安芸高田市の市政関係者が「彼は市民の政治不信を必要以上にあおっただけ。市長に就任当初から議会と対立し、それをSNSに発信して攻撃をする。2020年8月に、石丸さんから“恥を知れ!”と、吊るし上げられた武岡隆文市議は、誹謗中傷を受けて、精神的に相当つらそうでした」と語っています。

その記事の中では「武岡市議の“居眠り”は、後に無呼吸症候群による軽度の脳梗塞が原因だと医師の診断により判明している。そんな武岡市議は2024年1月に亡くなった。この“居眠り騒動”を皮切りに、石丸氏と議会の溝は広がっていく」と伝えています。

このような事情を知っている安芸高田市の市政関係者は「万が一にでも石丸さんが東京都知事になったら、首都である東京が大混乱に陥るのではないか……、そう不安な気持ちで見ていました」とまで語っていました。

もう一つ『「さすがに度が過ぎている」“石丸信者の攻撃” に20代社会起業家も苦しむ…本人に問われる “統制力” とは』という記事も紹介します。最後のほうに掲げられている「政治家として本当に国や自治体を変えたいのであれば、一部の熱狂的な “信者” だけでなく、幅広い支持が必要になるはず」「あらゆる人を “敵” と “味方” に分断する政治はやめてほしい」という言葉の重さをかみしめています。

今週末の新規記事のタイトルは「総理をめざす政治家に望むこと」としています。もし石丸氏が将来的に総理大臣をめざしているのであれば上記の言葉を重く受けとめて欲しいものと願っています。もちろん米大統領選でのトランプ候補に強く望む政治的な姿勢ですが、ことさら対立を煽る手法を容易に変えられるものではないのかも知れません。

日本の政治のトップリーダーは大統領のように国民が直接選べるようになっていません。政権交代が果たせない限り、与党政治家の中から総理大臣が選ばれることになります。現状では自民党の総裁に選出された国会議員が総理大臣の座に着きます。自民党総裁選を9月に控え、出馬が取り沙汰される政治家を論評するメディアの記事も目に付くようになっています。

NEWSポストセブンは『有識者が「ポスト岸田に選んではいけない政治家」ランキング  石破氏は裏切りの過去、高市氏は細かすぎ、上川氏はアドリブ苦手…それぞれの厳しい評価』という見出しの記事の中で、総理にしてはいけない8人の政治家の名前を上げています。世論調査で必ずトップとなる石破氏に対しても手厳しい評価を下しています。

今年1月の記事「『国防』から思うこと」を通し、このブログでも石破氏のことを取り上げていました。久間章生元防衛相から「石破君、君は自分が一番賢い、自分が一番正しいと考えているようなところがある」と戒められたことや、身の安全が危ぶまれるイラクへの現地視察を何回も直前で見送っていた話などを紹介していました。

「自民党はもう一度、謙虚で、正直で、公平で公正な党として再出発をしていきたい」という言葉をはじめ、いつも国民受けする正論を述べる石破氏に対する好感度は高くなりがちです。しかし、様々な側面を直接見聞きできる同僚議員や部下となった官僚からの評価は低くなるという傾向があるようです。

月刊Hanadaが自民党総裁選の特集を組んでいることは金曜朝の新聞広告で知りました。官僚覆面座談会「石破、河野だけは絶対にダメだ!」という見出しに目が留まっています。石破氏とは比べられないレベルで、河野太郎氏に対する官僚からの評価は激烈さを増す傾向があります。

「議員として失格」河野太郎氏「“やから” を許すな」発言に批判殺到…党内からも「こらえ性がない」と呆れ声』『「素直にごめんと言えない男」河野太郎氏「やから」発言を釈明もやまぬ“炎上”貫かれてきた「ノー謝罪」姿勢』という記事が伝えるような河野氏の不誠実な対応ぶりも明らかになっています。

河野太郎  財務大臣から“円安けん制発言”に苦言呈されるも、SNSにまさかの“臭わせ”投稿』『高橋洋一氏バッサリ「経済音痴です」河野太郎デジタル相の「利上げ発言」斬り捨てる』という記事などに触れると、もし「自分が一番賢い」と思われているとしたら大きな勘違いだと言わざるを得ません。

このような報道が増えていながらも、次期総理候補として河野氏は必ず上位に顔を出しています。ちなみに河野氏は自民党の国会議員でありながら脱原発を唱え、「河野太郎の国会日記  ごまめの歯ぎしり」の頃のブログの内容は歯切れ良く、かつては好感度を高めていた政治家でした。それが様々な情報に接してきた現在、私自身にとって総理にしてはいけない政治家の最上位となっています。

いずれにしても総理をめざす政治家に対し、「あらゆる人を “敵” と “味方” に分断する政治」とは真逆な政治的な姿勢や立場性を望んでいます。寛容さであり、包摂さです。自分自身の「答え」の正しさに自信を持っていたとしても、異なる考え方や立場も認め合いながら、最適な「答え」を見出す努力を尽くして欲しいものと願っています。

意見が激しく対立しても、敵視し合うことなく、対話を重ねることで合意形成をはかる政治が重要です。総論から各論まで共通する理念として、外交の場面や改憲議論を通しても意識していくべき心得だろうと思っています。どなたが総理になったとしても、このような心得のもとに寛容な政治を切望しています。

| | コメント (0)

2024年7月20日 (土)

過ちに対する責任の処し方と問い方

このブログを始めた頃に「責任の処し方、あれこれ過ちとその処分のあり方」という記事を投稿しています。定められているルールを守れなかった、それが故意なのか、認識不足だったのかに関わらず、相応の責任の処し方が求められます。

まして明白な法律違反だった場合、厳格な処分につながっていくことを受け入れていかなければなりません。しかし、犯した過ちに対し、その度合いに見合った責任の処し方なのかどうか、以前のブログ記事の中で個人的に思うことを綴っていました。

昨日、パリ五輪に臨む日本体操女子代表チームの宮田笙子主将の喫煙と飲酒の問題が報じられました。宮田主将は19歳であり、代表行動規範に違反した疑いによって代表を辞退することが日本体操協会の緊急会見で明らかにされています。

この会見の後「国会議員が言っちゃダメでしょ」猪瀬直樹  体操女子・宮田の喫煙疑惑に「たかがタバコ」と擁護も波紋』『「追い詰める必要がどこにある!」“たかがタバコ発言”で波紋を広げた猪瀬直樹氏が宮田笙子の五輪辞退決着にふたたび怒り!「なぜ名前まで晒して…」』という声も上がっています。

高校野球では部員の不祥事によって、甲子園大会の出場を辞退するという理不尽な対応が繰り返されています。今回、さすがにチーム全体の辞退という事態まで至っていませんが、紹介した記事のとおり協会の判断を「厳しすぎる」と批判する声を耳にしています。

特に猪瀬参院議員は「たかがタバコで何を騒いでいるのか。麻薬じゃないんだぞ!! 規則尽くめの杓子定規が日本をダメにしてきたのだ」と憤っています。確かに協会内部の規範違反にとどまっていれば、そのような見方もあり得るのかも知れません。ただ明らかな法律違反であり「国会議員が言っちゃダメでしょ」という指摘のほうが正論だろうと思っています。

このように法律を軽視する意見を堂々と発せられる国会議員の存在が、自民党の裏金問題を20年以上も許してきた土壌につながっているように認識しています。『堀井学衆院議員  秘書が“中止進言”も香典配布継続か「今さらやめることできない」』という報道なども、さらに認識を裏付ける事例の一つとして数えられます。

法律違反であることを自覚し、秘書からの進言がありながら「今までずっとやってきた、今さらやめることなんてできない。昔からのやり方なんだからやってください」と指示した堀井衆院議員の判断は致命的な過ちだったと言えます。加えて、他の議員も同様に続けている可能性を疑わせる判断だったように思えてしまいます。

私たちも自分自身が参列できない場合、どなたかに香典を託す時があります。交友関係が広く、多忙な国会議員であれば自ら参列できない場合は、より多いのだろうと思います。金権政治を防ぐ目的の公職選挙法で、寄附行為として利用されないように議員の代理として参列する秘書らが香典を持参することを禁止しています。

このことを代理で参列する秘書らは説明し、法の趣旨を有権者側も理解していかなければなりません。香典返しは受け取らず、お焼香だけして帰ることを堀井議員が指示すれば問題はありませんでした。もしくは後日、本人が出向き、香典を渡すような手はずを考えれば法律違反という過ちは避けられたはずです。

この問題を受け、堀井議員は自民党を離党しました。裏金問題の責任をとって、すでに次の衆院選に立候補しないことを表明しています。同様な罪を問われた菅原一秀元経産相は最終的に略式起訴され、議員辞職した後、2021年6月に公民権停止3年に処されていました。このことを踏まえれば、堀井議員の責任の処し方としては、即刻議員辞職する潔さが求められているのではないでしょうか。

宮城 大河原町議が“議会中にゲーム” 小学生が感想文で指摘』という町議の振る舞いや釈明の仕方には呆れています。とは言え、それこそ法律に違反しているというレベルの過ちではないため、本人が辞職を判断しない限り、周囲が強引に辞めさせるような手立てはなく、あくまでも勧告にとどまります。

週に1回、土曜か日曜のみ更新しているブログですので時事の話題が盛りだくさんになりがちです。『米軍なら「懲役250年」113人処分の海自、大物OBが憤る“劣化”の理由』という報道に驚いていましたが、それ以上に『18歳未満の女性のわいせつな動画を撮影  自衛官に停職3ヶ月の処分  データ消去と引き換えに金銭を要求』という記事に驚いています。

海上自衛隊呉地方総監部は16日、18歳未満の女性のわいせつな動画などを撮影し、データ消去を引き換えに金銭を要求したなどとして、護衛艦さみだれの海士隊員の男性(20)を停職3ヶ月の懲戒処分としたと発表しました。

海上自衛隊によりますと、海士隊員の男性は、当時交際相手だった女性が18歳未満であるとしりながらわいせつな動画や画像を撮影・保存したり、交際の解消を告げた女性に対し、わいせつなデータの消去を引き換えに金銭を要求したということです。

海士隊員の男性は3月28日に恐喝未遂の疑いで逮捕、4月12日に児童買春・児童ポルノ法禁止法違反の疑いで再逮捕されていました。逮捕時の警察の調べに対し、男性は容疑を認めていたということです。海士隊員の男性は「多大な迷惑を掛けたことを反省しております。本件に関し、いかなる処分も受ける所存です」とコメントしています。

また、海上自衛隊護衛艦さみだれ艦長の古賀直樹二等海佐は「隊員がこのような規律違反を起こしたことにつきまして、大変申し訳なく思っております。国民の不信を招く事案を生起させたことを重く受け止め、更なる教育・指導を徹底してまいります」とコメントしています。【中国放送2024年7月16日

長い記事になっていますが、当該記事の全文を掲げました。逮捕され、犯罪の容疑を認めている隊員に対する処分が「停職3か月」、目を疑いました。市職員が公金を自宅に持ち帰り、すぐ全額を戻していたとしても処罰され、懲戒免職まで至ります。同じ公務員でありながら、この落差にたいへん驚いたニュースでした。

前回記事「政治家の好感度、その危うさ」の最後のほうで、兵庫県の斎藤元彦知事を巡る様々な問題について取り上げていました。斎藤知事や側近の違法行為疑惑を告発した文書を警察やメディアに送った元西播磨県民局長は、県の懲戒処分を受けた後、自ら命を絶っています。

この問題に絡み、疑惑の真偽を調べる県議会の調査委員会が6月19日に開かれています。元県民局長は調査委員会で話す予定だったことを問答式の陳述書として書き残していました。その陳述書をはじめ、ワインをねだるやり取りを録音したデータなどが、次のような文書を添えて遺族から調査委員会に提出されています。

主人がこの間、県職員のみなさんのためをと思ってとった行動は、決して無駄にしてはいけないと思っています。主人が最後の言葉を残していました。そこには“一死をもって抗議をする”という旨のメッセージとともに、19日の委員会に出頭はできないが、自ら作成した「陳述書」および参考の音声データの提出をもって替えさせてほしいこと、そして百条委員会は最後までやり通してほしいことが記されていました。

斎藤知事のパワハラやたかり体質について『〈おねだり兵庫県知事・告発職員は死亡〉「まだ飲んでない」の一言でワインをゲット。一方「生意気で」「目立った」職員にはキレ散らかすパワハラ三昧…“妨害工作”もおこなわれた百条委員会の中身』という記事の中で詳しく書かれています。

今後、斎藤知事の疑惑は徐々に明らかにされていくはずです。責任の処し方として、今のところ本人は辞職を頑なに拒んでいます。しかしながら『辞職は不可避か、頼みの吉村大阪府知事からも苦言呈された斎藤元彦兵庫県知事「パワハラ疑惑」』という記事の中で伝える下記のような事実関係に注目しなければなりません。

この時期の知事の対応次第では、状況がここまで悪化することはなかったかもしれない。素直に自分の非を認めて「申し訳ありませんでした。今後は問題に丁寧に向き合い改善していきたいと思います」などと釈明をすれば沈静化する可能性もありましたが、知事にはそのつもりはさらさらなく、A氏に処分を下すことで乗り切ろうとしていました。

つまり斎藤知事が対応を誤らなければA氏とされている元県民局長の命は救えたはず…、このような見方が成り立ちます。斎藤知事にとって過酷な構図かも知れませんが、取り返しのつかない過ちを犯したことに間違いありません。重大な責任の問われ方として「辞職」一択にならざるを得ないことを真摯に受けとめて欲しいものと願っています。

| | コメント (0)

2024年7月13日 (土)

政治家の好感度、その危うさ

都知事選の話」をPart2」まで続け、前回記事は「会計年度任用職員制度の課題、最新の動き」という労使課題を取り上げています。今回はネット上で見かけた興味深い記事を紹介しながら「政治家の好感度、その危うさ」というタイトルを付けて書き進めてみます。

先週日曜に都知事選が投開票され、現職の小池知事が三選を果たしています。 日曜の朝、新聞のテレビ番組欄を目にした時、NHKの「東京都知事選開票速報」には「出口調査の結果は? 夜8時ジャストに速報」と記されていました。

少しでも接戦が見込まれた場合、ここまで「8時ジャスト」とうたえなかったはずであり、選挙戦の最終盤まで小池知事の優勢は揺るぎなかったようです。当初、小池知事と蓮舫候補との一騎打ちと見られていましたが、2位に躍り出たのは安芸高田市長だった石丸伸二候補でした。

前回記事の冒頭で「本来であればプラスとマイナス、それぞれの情報を有権者が知った上で、貴重な一票を投じる判断につなげていけることが望ましいはずです」と記していました。ネット上で様々な情報を入手するように努めていると、石丸候補のマイナスにつながるような事例をいくつか目にしていました。

開票後、各メディアの番組に石丸候補は立て続けに出演しています。「パワハラ臭ぷんぷん」石丸伸二氏「本当に熟読されました?」とライターを逆質問…ラジオ番組での対応が“高圧的”と批判続出』という記事をはじめ、問いかけに対する石丸候補の振る舞いを批判した報道が目立つようになっています。

ちなみに都知事選直後の当ブログの今回の記事は石丸「候補」という呼称で統一していくつもりです。そもそも石丸候補の資質が都知事選後に急変した訳ではありません。『「メッキが剥がれた感ある」石丸伸二氏  都知事選2位の大躍進も…古巣で“反対派”が当選、恫喝訴訟で敗訴の相次ぐ醜聞』という見方を伝える記事は少なくありません。

都知事選後の『「当選していたら東京でもとんでもないことしていたよ」石丸伸二氏の躍進を安芸高田の市議たちはどう見たか?「独裁、パワハラ… 彼は安芸高田をガタガタにした」「後継者が落選したのが民意」』というような石丸候補の好感度を下げる地元の声も、選挙前からネット上では散見していました。

このあたりの話をまとめた『「信念など欠片もない政治家」選挙特番に出演した石丸伸二氏をXで13人の“オピニオンリーダー”次々批判 意外な共通点が』という記事は興味深い内容となっています。石丸候補を批判する声が増えていることは確かですが、その批判者を激しく批判する石丸候補の「岩盤支持層」が多数であることも間違いありません。

古市憲寿氏「こっちとしては不思議でした」 石丸伸二氏との“舌戦”受け長文投稿 「政治屋」質問の意図は』という記事の中で、古市さんの「もし石丸さん支持をもっと増やしたいなら、石丸さんを批判する人も仲間にしていかなくちゃいけない訳です」という意見はうなづけるものがあります。

このような声が高まる中、石丸伸二氏、山崎怜奈との“ブチギレ”質疑応答に自ら触れる「かわいそうなことになってましたね」』という記事が石丸候補の言い分を伝えています。「総じて対応が厳しめだったと思うんですけど」という問いかけに対し、石丸候補は自らのスタンスを次のように答えています。

僕はコミュニケーションの基本として、ミラーリングするんですよ。善意には善意で返すし、敵意には敵意でちゃんと返すんですよ。雑な質問に雑に答えたら、ぐちゃぐちゃになるんでうまく整理するんですけど。相手が真剣に調べてきているときには、クオリティを担保して返すようにしています。

今回の記事タイトルは「政治家の好感度、その危うさ」としていますが、石丸候補の話だけで相当な長さとなっています。上記のような考え方に対しても評価は分かれていくのかも知れませんが、このあたりで石丸候補に特化した話は一区切り付けさせていただきます。今回の記事を通して訴えたいことは政治家に限りませんが、好感度は見る角度によって大きく変動するという話についてです。

マイナスにつながる情報に触れることなく、プラス面の情報ばかり入手していれば必然的に好感度は上がっていくはずです。爽やかさ、聡明さ、若々しさなど外見上のプラスの評価も加わり、好感度が増していくこともよくある話です。選挙戦であれば負のイメージの付いた政党とは距離を置き、しがらみのなさが好感度を押し上げていく傾向もあります。

清新なイメージ通りの内実の伴った人物であれば問題ありません。しかし、中には意図的に表の顔と裏の顔を使い分けているケースもあるはずです。目上には従順で、自分より下だと思った相手には高圧的になる人物も少なくありません。そのような人物が重責を担う組織のトップや政治家になっていた場合、何らかの綻びが生じていきがちです。

恫喝で炎上の長谷川議員の“威圧的言動“が次々と明らかに… 「記憶にございます」発言の宮沢元議員が当時感じた印象を本音告白』という記事の中で、同じ安倍派だった宮沢博行元衆院議員は長谷川岳衆院議員について「何度も接したことはあるが、爽やかで優しい感じの人で威圧的な言動の報道があったというのは、私たちにしてみると意外な感じ、想像がつかない」と語っています。

きっと有権者の多くも長谷川衆院議員に対し、同じような印象を持っていたはずです。本来の資質だと思われるネガティブな情報が明らかにされていく中で、長谷川衆院議員に対する好感度は急降下しているのではないでしょうか。見た目の好感度をはじめ、どの政党に所属しているのかどうかなどを決め手とし、候補者の資質が未知のまま一票を投じることは決して稀な話でありません。

今、そのことの悩ましさと苦しさを兵庫県職員は痛切に思い知らされているのかも知れません。自治労兵庫県職労は『知事の「パワハラ疑惑」告発の県幹部が死亡   職員労組に「辞職」求められた知事 「辞職ではなく職員との信頼関係を再構築し県政を立て直す」と表明』という記事のとおり斎藤元彦知事に対し、ただちに辞職するよう申し入れています。

斎藤知事は東大経済学部を卒業後、総務省に入り、大阪府の財政課長を経て、2021年7月の兵庫県知事選に立候補しています。 43歳という若さ、県政の刷新、大阪府との連携強化をアピールしながら初当選を果たし、大阪以外で初めて誕生した維新系知事でした。好感度は高く、未知の魅力や期待は、結果的に未知の危うさだったようです。

知事の「パワハラ疑惑」告発の県幹部が死亡   職員労組に「辞職」求められた知事 「辞職ではなく職員との信頼関係を再構築し県政を立て直す」と表明』『「兵庫県、はずかしい」知事のX投稿発掘→「ブーメラン」の指摘 告発された「パワハラ」体質、その素性を振り返る』『兵庫・維新系パワハラ県知事の「犠牲者」はもう1人いる! 別の職員の死亡「隠蔽」の疑い』という驚くべき事実関係が立て続けに報じられています。

最後に紹介するのはディリー新潮の『斎藤兵庫県知事 県政史上最低の会見、副知事辞任で四面楚歌に…「告発した元局長が亡くなってもパワハラを証言する人はいる」』という記事です。「知事寄りの会派は、無記名に反対するかも知れませんけど」という記述がありましたが、まだ斎藤知事を擁護しようとする動きがあることに驚いています。

その記事の中で、亡くなられた元県民局長のメッセージが掲げられています。元県民局長は現職時に毎月、県民や職員に向けてホームページ上でメッセージを送っていました。今年3月、懲戒処分を受ける前の最後のメッセージの一部は次のような内容でした。このような職員が書いた告発文を斎藤知事は「嘘八百」「公務員として失格」と切り捨てていたことを伝え、その記事は結ばれています。

このメッセージ欄は一般県民の皆さんの読者もいらっしゃるようですが、一方で、県職員の中にも何人かの愛読者がいるようです。自分は間もなく、県を退職します(予定)が、これから県を支えていく後輩の皆さんに最後に伝えておきたいことを書いておきます。

我々は公務員です。仕事は県民の皆さんのためにするものです。自分のために、自分の栄達のために、仕事をしてはいけない、仕事を利用してはいけない、県民を利用してはいけない。そして、自分の損得勘定で行動してはいけない、人を選別してはいけない。昇任、出世は結果であって、それを目的にしてはいけない。(中略)

最後に。人を大切にすること、義を通すこと、誠実であることを、ひとりの人間としてずっと心に持ち続けて欲しいです。そして、筋を通そうとして挫けることがあっても、理不尽な現実の壁に跳ね返されても、諦めないで下さいね。「いつかきっと」と心に念じながら。

素晴らしい人にたくさん出会えますように。県民の皆さんの心に残る仕事に出会えますように。長らくのご愛読ありがとうございました。お世話になりました。おわり。

| | コメント (0)

2024年7月 6日 (土)

会計年度任用職員の課題、最新の動き

前々回記事「都知事選の話」、前回記事都知事選の話 Part2」と2週続けて都知事選の話題を取り上げてきました。新規記事のタイトルは「Part3」としていませんが、明日が投票日のため冒頭で少しだけ都知事選に絡む話にも触れてみます。

「満員電車ゼロ」を含めて「公約達成ゼロ」!?の小池都知事  職員からの評価はどうだったのか』『「都職員の多くは辞めてほしいと思っている」「都政新報」記者が語る小池都政2期目の“総決算”「トップダウンで、現場はやる気を失った」』という記事を最近のYahoo!ニュースのトップ画面で目にしています。

それぞれ「就任時から指摘されてきた現場の声を聞かないトップダウン方式で、都職員はすっかりやる気を失っているという」という都政の現場の実情を伝えている記事内容です。トップダウンのすべてを否定するつもりはありませんが、まったく部下から理解を得られないような指示は何らかの問題を内包したままなのだろうと思っています。

いずれにしてもマスメディアは選挙期間中、候補者のネガティブな情報の報道は選挙妨害と取られかねませんので必然的に控えがちとなります。本来であればプラスとマイナス、それぞれの情報を有権者が知った上で、貴重な一票を投じる判断につなげていけることが望ましいはずです。

ただ虚偽の情報が選挙結果を左右するような事態に至った場合、取り返しのつかない大失態です。したがって、大半のマスメディアが選挙期間中の報道内容について慎重にならざるを得ない現状も、ある程度やむを得ないのだろうと理解しています。それでも明らかな事実関係の報道まで控え気味になることはどうなのだろうかと思っています。

“既成政党に与しない”石丸伸二の選対本部長は「自民党政経塾」塾長代行! 応援団筆頭に統一教会系番組キャスターの元自民党職員も』という内容には二の足を踏んだとしても、7月3日に示された『石丸氏の投稿巡る訴訟、二審も名誉毀損認める  安芸高田市に賠償命令』という司法判断を伝えるマスメディアの記事も少なかったように感じています。

さて、小池知事のことを伝える前掲した二つの記事のニュースソースは都政新報というローカルなメディアです。1950年に創刊された自治体専門紙で、都庁のほぼ全職員に加えてOBや関係者らが精読しているため、都職員向けに発行する都政新報と紹介されています。

東京都の政策や人事、議会の動きに限らず、都内の区市町村の動きも同じように詳しく伝えています。そのため、都職員以外の定期購読者も相当な数に上るのではないでしょうか。週2回発行され、私どもの組合にも届きますので昼休みに顔を出した時、必ず目を通しています。

先週月曜『調布市  非正規職員、再任上限撤廃  正職との均等待遇に前進』という見出しが、すぐ目に入りました。このブログで少し前に改めて会計年度任用職員の課題」という記事を投稿していましたが、その課題に関わる画期的な動きを伝える記事でした。

非正規雇用の職員の処遇改善が全国的にも課題となる中、調布市では会計年度任用職員の処遇を改善し、再度任用の上限を撤廃した。2020年の制度導入時に設定した再任上限を一律で撤廃するのは都内自治体では初めてと見られ、正規雇用職員との均等待遇に向けて前進した。同市人事課は「時代の流れ」と説明する。

上記は当該の記事のリードに書かれた内容です。本文には、予算上の職種の廃止や勤務評定上の問題などの理由がない限り、希望するすべての職員が来年度以降も継続して働くことができる規則改正を行なったと書かれています。市人事課は「雇用の安定や人材確保難への対応。採用側と労働者側双方の負担軽減につなげるため」と説明しています。

東京都に合わせる形で私どもの市や調布市は、公募によらない再度の任用は連続4回までと定めていました。会計年度任用職員制度が始まり、5年目の今年度、多くの会計年度任用職員を公募して採用する必要性に迫られています。当該の会計年度任用職員の皆さんの雇用継続に向けた不安は、はかり知れないものです。

調布市では昨年度から労使で協議を進め、公募にかけるのは事務負担が重い上、仮に公募したとしても多くの場合は同じ人を採用することが見込まれるため、再任上限の撤廃を決めたと都政新報の記事に書かれています。職種によっては「改めて公募をかけても集まらない可能性があり、継続的に働いてもらうほうが現実的」という人事課担当者の声も紹介されています。

先月末には時事通信が『非常勤、採用更新を柔軟化  3年ごとの選考不要に  公務員の人材確保・人事院』という見出しの記事を配信していました。ハローワークなど国の機関で働く非常勤の国家公務員(期間業務職員)である会計年度任用職員の採用の更新を柔軟化する方針を固めたという報道です。

期間業務職員の任期は原則1年。現在、選考なしで採用更新できる回数の上限は「連続2回」で、職員は最大3年ごとに面接選考などを受け直す必要があるが、この回数制限を撤廃する。勤務実績や能力に基づいて更新することで、不安定雇用の解消や人材の確保を目指す。人事院は月内をめどに新たな運用について周知する方向で調整している。国の運用見直しは、地方自治体の採用にも影響を及ぼしそうだ。

時事通信が伝えている上記の記事のとおり全国的に見ると、会計年度任用職員の再任上限を撤廃する動きが徐々に広がっているようです。しかしながら都内の自治体では動きが鈍く、会計年度任用職員制度の「導入時に上限を設定していなかったのは文京、世田谷、板橋、八王子、狛江で、ここに今回、新たに調布が加わったのみ」と都政新報は伝えています。

さらに都政新報の記事では「ただ、労働力を安定的に確保するため、今後、上限を撤廃する自治体が増える可能性もある」と続けています。今年3月に投稿した記事「会計年度任用職員制度の課題」の中で、上限を設けることが地公法第13条の平等取扱いの原則に違反する可能性について指摘していました。

このような点も踏まえ、私どもの市でも上限を撤廃する方向性に舵を切る必要性があるはずです。しかし、現時点までに積み上げてきた労使協議結果をいきなり白紙に戻すような要求は控えなければなりません。来年度以降の必要な見直しに向けた要求としてメリハリを付けなければ労使の信頼関係に疑念を持たれかねません。

その一方で、これまでの労使協議を踏まえた上で今年度、本格実施される前に確認すべき点があることを誠実に組合は申し入れていく必要性に迫られているものと思っています。そのような見直し協議自体を市側に拒まれれば、たいへん残念ながら現時点までに決まっている内容をそのまま受け入れていくことになります。

少し前に「これまでの組合の考え方を踏まえた運用(案)」という下記のような箇条書きのメモをまとめ、副市長にお渡ししていました。委員長と書記長にも渡し、これまで労使で確認してきた内容を原則としながらも、実質的には調布市が懸念したような問題を解消していけるのではないかと伝えています。

  • 3月26日付『連続4回の「公募によらない再度の任用」をされた月給制職員の職の取扱いについて』に沿った対応を原則とするが、継続した業務に従事する現職者に対して一定の運用をはかる。
  • 現職者は書類・筆記等による選考(1次試験)を免除し、面接試験(2次試験)のみを受けるという運用まで確認済み。
  • 新規採用希望者と競い合わせることの問題を解消するため、年度内の早期に現職者のみを対象にした面接試験を実施する。
  • 欠員が生じる場合、広報等を通して公募する。

継続した業務に従事する職員とは、保育園、学童保育所、学校事務職場などに勤務し、これまで主管課が中心となって採用してきた会計年度任用職員を想定しています。早い時期に継続意向調査を行ない、あまり事務負担のかからない所属長を中心にした面接試験によって次年度の採用を決めるという運用を求めています。

7月1日に人事課長名で「月給制職員の令和6年度採用試験の実施について(通知)」が発せられています。「原則として公募による競争試験を実施しなければならない」と記されていますが、原則を踏まえながらの運用や例外を認めていける余地が残され、まだ間に合うタイミングであることを願っています。

今回の記事の冒頭で「現場の声を聞かないトップダウン方式」を批判しています。「改めて会計年度任用職員の課題」という記事の中では「労使交渉の窓口を飛び越えてトップダウンで方針を転換させるような手法も望んでいません。そのような手法には批判的な立場であり、あくまでも労使交渉の折衝窓口である人事課長らに理解を得た上、より望ましい運用をはかれないかどうかという問題意識を抱えています」と記しています。

このような思いと現職の組合役員ではないという立場も踏まえ、ここから先は今後、労使協議を通して何らかの動きを作ることができるのかどうか見守っていかなければならないものと思っています。もちろんお役に立てることがあり、声をかけていただければ全力で応援していこうとも考えています。

| | コメント (0)

« 2024年6月 | トップページ | 2024年8月 »