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2024年6月15日 (土)

改めて会計年度任用職員の課題

2022年11月に組合の執行委員長を退任した以降、このブログで労使交渉の課題を取り上げることは滅多にありません。労使交渉の当事者から離れているため当たり前な話であり、前回記事「三多摩集中行進に参加」のような取り組みの報告や時事の話題が中心となっています。

そのような中、今年3月には「会計年度任用職員制度の課題」という記事を投稿していました。今回、インデックス記事としてまとめてみることを考えたほど、これまで会計年度任用職員制度に関わる記事を数多く投稿しています。

会計年度任用職員」「会計年度任用職員制度の労使協議を推進」「会計年度任用職員制度、労使協議の現況」「会計年度任用職員制度、労使合意」「会計年度任用職員制度の組合説明会不安定雇用の会計年度任用職員」「会計年度任用職員の雇用継続に向けて」など、タイトル名に会計年度任用職員を掲げた記事だけでも以上のような数となります。

委員長を退いてから現委員長らに配慮し、労使課題の動きについて極力口をはさまないようにしています。ただ会計年度任用職員の雇用継続の課題に関しては若干例外的な対応をはかっています。雇用継続の課題は自分が現職の時に詰め切れず、大きな宿題として残してしまったという自戒の念があるからです。

私どもの組合は、保育園、学童保育所、学校事務職場などで働く嘱託職員の皆さんが組合加入し、労使交渉の積み重ねによって65歳までの雇用継続を勝ち取ってきました。それが会計年度任用職員制度が始まり、5年で雇い止めされるかも知れないという不安定な雇用に後戻りしています。

2020年4月会計年度任用職員制度が施行されたが、4回の「更新」を経て、私達組合員57名のうち8割が今年度末雇い止めに遭う。残酷だ。当局は更新期限が来たから公募に応募してもらうだけですよーなどと言うが、笑止。誰が何と言おうと雇い止めだ。これははっきりさせておく。

上記は自治労都本部の機関紙最新号の中で、思わず目に留まった区立図書館専門員労働組合の委員長の言葉です。私どもの組合員の皆さんの中にも同じように憤り、不安に駆られている方々が多いのだろうという思いを巡らす言葉でした。

全国的には3年から5年という雇用年限を定めていた団体が大半だったため、会計年度任用職員制度が始まり、国は3年、東京都は5年というマニュアルが整えられています。その結果、雇い止めの心配のなかった自治体の非常勤職員が一転して雇用不安にさらされています。

高年齢者雇用安定法では、使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保を求めています。会計年度任用職員制度を成立させた時の国会の附帯決議では、公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求めています。それにも関わらず、労働者にとって最も重要な雇用継続の課題を「改悪」する結果を招いていることの理不尽さに忸怩たる思いを強めてきました。

そもそも法律上、会計年度任用職員の再度の任用回数に上限は設けられていません。任用回数に上限を設けた場合でも、競争試験や公募は必須とされず、現職者を対象にした選考で継続雇用していくことは問題ありません。

このような点を把握していましたが、2019年10月、都内の自治体の中で私どもの市が突出した内容で決着することは困難でした。「公募によらない再度の任用は原則として連続4回」という東京都の示している基準を受け入れる際、組合からは「これまでの労使確認事項も尊重していく」という一文を付け加えることを求め、このことについても労使で確認していました。

「これまでの労使確認事項も尊重していく」という一文は、会計年度任用職員の65歳までの雇用継続が引き続き課題として残っているという問題意識です。しかし、このような問題意識は労使で隔たりがありました。市当局は5年に1回、現職者と新規採用希望者が競合する公募による採用試験を予定し、このことについて組合も合意しているという認識でした。

確かに改めて労使協議を提起しなければ、その内容で公募試験に進んでいくことを組合も合意していました。昨年6月の記事「労使の信頼関係について思うこと」に綴っているとおり信頼関係を維持するためには「約束したことは守る」という土台が欠かせません。約束が守れない場合、変更しなければならない場合、相手方に事情を丁寧に説明し、納得を得られるように努力しなければなりません。

2022年8月、公募試験実施まで2年を切る中「これまでの労使確認事項も尊重した」雇用継続のあり方について、改めて協議すべきものとして団体交渉で申し入れていました。この時、市当局側に渡した一連の資料は当時の市長にも私から直接手渡していました。ちなみに現市長と労使交渉の責任者である副市長にも同じ資料をお渡ししています。

副市長とは私が入所した頃から親しくお付き合いいただき、同じ職場の直属の上司としてお世話になったこともあります。副市長に就任されてからも時々、お話をする機会があり、会計年度任用職員制度の課題についても意見を交わしていました。なお、副市長らと話した労使交渉に関わる内容は委員長らにも適宜報告しています。

会計年度任用職員から正規職員への転換についてです。総務省が策定したマニュアルで「地方自治体の正規職員については、人事の公正の確保等の観点から、競争試験による採用が原則とされており、厳格な成績主義が求められている。このため、会計年度任用職員を正規職員に任用する場合には、競争試験などにより、正規職員としての能力実証を改めて行う必要がある」とし、会計年度任用職員を正規職員に転換する制度は設けられていません。

採用の方法を定めた地方公務員法第17条の2では「人事委員会を置かない地方公共団体においては、職員の採用は、競争試験又は選考によるものとする」とし、採用試験の手続き等は任命権者(市長)が定めることになります。したがって、市長が選考方法を定めることで、公募によらない採用は可能になるという考え方を副市長にお伝えしています。

民間企業に非正規労働者の処遇改善や正社員化を求めておきながら、政府や自治体が非正規で働く人を増やしているようでは説得力を欠く。国の機関では、事務の補助やハローワーク相談員などで、計15万8000人の非常勤職員が働いている。2018年度に比べ、約1万人増えた。

全国の自治体では非正規の公務員が計69万人に上り、05年度に比べて24万人増えた。一般事務員のほか、保育士や教員、図書館職員などとして働いている。国にしても自治体にしても、厳しい財政事情の中、少ないコストで行政ニーズに応えようとしてきたことが、非正規の増加につながっているのだろう。

非正規の収入は少なく、生活が不安定になりがちだ。行政は処遇改善を図るとともに、希望者には正規登用の道を広げるべきだ。特に問題が指摘されているのは、自治体の「会計年度任用職員」制度だ。かつては自治体がそれぞれの基準で非正規を採用してきたが、政府が20年、労働条件を統一するために導入した。

雇用は会計年度ごとに更新されるが、パート勤務であっても期末手当などが支給されるようになった点が特徴だ。ただ、それでも正規の公務員に比べ賃金は抑えられており、「官製ワーキングプア」と批判されている。非正規公務員らでつくる団体の調査によると、年収が250万円未満の人が8割に上った。

行政機関で働いても、安心して暮らせるだけの収入を得られないようでは話にならない。自治体の中には、会計年度任用職員の勤務時間を、正規の職員より1日あたり15分程度短くしているところもある。こうした自治体は、窓口の開設時間に合わせて勤務時間を決めている、と説明しているが、人件費を抑えるために勤務時間をわずかに短く設定し、パートとして雇用しているのであれば問題だ。

非正規で働く人の中には、「都合の良い時間に働きたい」という理由で、自ら会計年度任用職員を選ぶ人もいるだろう。一方で、毎年度、「雇い止め」にあうのではないかと不安に思いながら、非正規として行政の仕事を担っている人も少なくない。

正規公務員の採用は、試験による選考が原則だ。だが、会計年度任用職員が希望した場合には、勤務実績などを考慮して試験を一部免除するなど、特別な選考方法を検討してもよいのではないか。【読売新聞2023年10月20日

上記の記事には『会計年度職員  行政は正規雇用の道を広げよ』という見出しが付けられています。このように会計年度任用職員の雇用継続に関しては、いわゆる「公務員バッシング」から程遠く、解決に向けて「追い風」が吹いているものと思っています。

正規職員への道が開けていることは、会計年度任用職員の皆さんの士気が高まる制度につながるはずです。副市長には、このような制度の確立とともに大半の会計年度任用職員の皆さんの雇用不安を取り除き、士気を高めていくためにも組合が求めているような運用に対するご理解を求めています。

昨年度末、現職者は書類・筆記等による選考(1次試験)を免除し、面接試験(2次試験)のみを受けるという運用を労使で確認しています。一歩前進したとも言えますが、新規採用希望者と競い合わせることの問題は解消できていませんでした。

当たり前なことですが、労使協議してきた取扱いを白紙に戻させるような僭越な思いは微塵もありません。労使交渉の窓口を飛び越えてトップダウンで方針を転換させるような手法も望んでいません。そのような手法には批判的な立場であり、あくまでも労使交渉の折衝窓口である人事課長らに理解を得た上、より望ましい運用をはかれないかどうかという問題意識を抱えています。

3月26日付で連続4回の「公募によらない再度の任用」をされた月給制職員の職の取扱いについて、庁内で確認されています。その文書に沿えば、5月から6月にかけて公募によらず選考により採用する現職者を決定する運びとなっています。

そのため、5月28日に自治労都本部の統一要求書を提出する際、会計年度任用職員制度の課題に関して、委員長から一言申し入れるようお願いしました。会計年度任用職員制度がスタートする前には、65歳まで雇用継続を労使で確認してきた経緯を踏まえ、恒常的な業務に従事する職員も競争試験ではなく、選考で採用する例外の一つに加えるよう市当局側に要請しています。

例外にならなかった場合、合否の決定が2月上旬という時期について憂慮しています。合格者は再度の任用回数を新たに1回目から数えていきますが、年休は繰越できる制度設計です。採用されず、年休が余っていれば年度末にまとめて取得されるはずです。そもそも4月以降の仕事を見つけるためにはタイトな日程を強いられることになります。

仮に現職者の合格を前提とした競争試験だった場合、このような憂慮は無用となります。その場合、新規採用希望者からすればアンフェアな競争試験だと見られかねません。これまで定めてきた取扱いを原則としながらも、このような問題を解決するための何らかの運用のあり方を探るべきものと考えています。

言うまでもありませんが、法的に問題があるようであれば組合側は要求すること自体控えなければなりません。法的に問題がなかったとしても住民の皆さんから理解を得られない要求も自制していかなければなりません。しかし、会計年度任用職員の雇用継続は堂々と訴えるべき課題であり、このブログでも頻繁に取り上げています。

最後に、会計年度任用職員制度の課題は昨年9月の記事「身近な政治、市長選の話」の中で触れた「お上至上主義」「横並び主義」の壁に直面しています。今後の行方を左右する重要な5年目を迎え、さらなる運用改善が実現しなければ「前例主義」というもう一つの壁が立ちはだかりかねないことを危惧しています。

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