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2024年6月29日 (土)

都知事選の話 Part2

前回記事「都知事選の話」は、前振りのつもりだった掲示板の話が思っていた以上に長くなってしまいました。今回「都知事選の話 Part2」とし、改めて4年前の記事「都政の現場、新知事へのお願い」のような各候補者に関わる話を書き進めていきます。

このブログの管理人である私自身、選挙運動に一定の制約がある立場です。このところ1日のアクセス数が100件程度の場末のブログですが、やはり選挙期間中の投稿内容には細心の注意を払っていかなければなりません。

したがって、メディアやネット上で目にしている話題を紹介しながら個人的な思いを添えていくという記事内容を想定しています。さらに特定の候補者を誹謗中傷するような言葉や憶測は厳禁とし、あくまでも事実関係を中心に記していくつもりです。

このような基本的な立場を踏まえた上、8年前の7月には「参院選が終わり、次は都知事選」「都知事選、真っ只中」「米大統領選と都知事選の違い」という都知事選に絡む内容の記事を3週続けて投稿していました。

今回の都知事選、前代未聞の56人という立候補者の数をはじめ、様々な切り口から語ることができます。今のところ都知事選の話は「Part2」で終わらせる考えですので、組合役員を務めていた自治体職員の立ち位置から注目している事例を中心に取り上げていくことになります。

まず小池百合子v.s.蓮舫を元都庁幹部はどう見ているか 「間違いだらけの政策」と「間違いだらけの出馬会見」とは』という記事に注目していました。その記事の中で、東京都の知事本局計画調整部長や中央卸売市場次長、選挙管理委員会事務局長を歴任した澤章さんが取材に対して答えた次のような言葉を目にしています。

小池さんがサプライズ発表した後になって、関係部局へ指示が降りたわけです。もちろん現場は『聞いていない』と大騒ぎでした。ところが小池さんの側近は『知事のために早く実施しろ』と強い圧力をかけます。担当職員は残業に次ぐ残業で、身を粉にして働き続けました。

苦しい仕事が子育て世帯の支援につながるのなら納得もできますが、結局は小池さんによる人気取り施策の片棒を強制的に担がされているわけです。どこの部署でも似た状況で、都職員のストレスは看過できないレベルに達しています。特に管理職が『もう西新宿の本庁では働きたくない。出先に避難したい』と悲鳴を上げています。

サプライズ発表された施策とは、現在『018サポート』と名付けられている18歳までの子ども一人あたりに5千円給付するというものです。澤さんは『築地と豊洲』という著書を上梓し、市場移転問題のブラックボックスを内部の視点から明らかにしていました。

少し前に『ハダカの東京都庁』という澤さんの著書を読み終えています。その中で『築地と豊洲』の出版から4か月後、外郭団体の理事長を解任されたことが伝えられています。常識のなさを理由に解任された澤さんは「都庁も狭量になったものだと哀れみさえ感じた」とも書き添えています。

確かに都は税収が豊富なので、『018サポート』に『税金の無駄遣い』と異議を唱える都民は少数派でしょう。子育て支援という立派な大義名分もあります。しかし、だからと言って小池さんが自分への支持者を増やすため、都の税収を好き勝手に使っていいはずがありません。

上記も都庁のこと、小池知事のことをよく知っている澤さんの言葉です。確かに今年度の東京都の予算規模は過去最大です。高校学校等の授業料実質無料化などの施策も恩恵を受ける都民にとって歓迎すべきものとなっています。一方で、厳しい財政状況の近隣県との関係性をはじめ、持続可能な行政運営という視点が充分なのかどうか私自身も疑問視しています。

続いて連合東京、都知事選で小池氏支持  産別の蓮舫氏支援容認』という記事を紹介します。4年前も連合東京は中小企業・小規模企業振興条例制定への尽力や予算要望等に対する小池知事の対応を評価して「支持」を決めていましたので、この報道に接しても特段驚くことはありませんでした。

連合東京は19日、東京都知事選(20日告示―7月7日投開票)を巡り、現職の小池百合子氏を支持すると発表した。新型コロナウイルス禍での雇用政策や、顧客による著しい迷惑行為「カスタマーハラスメント」対策の条例検討などへの評価を理由に挙げた。同日の執行委員会で決定した。小池氏は連合東京を訪れ、斉藤千秋会長と政策協定書を交わした。

国政では連合は立憲民主党を支援している。同党出身の蓮舫氏らも出馬を表明しており、連合東京に加盟する産別労組や各組合の支援が割れる動きも想定される。斉藤会長は「小池氏以外の候補者を応援することもお互い尊重しあうことも確認した」と話した。連合東京は前回の都知事選でも小池氏を支持していた。【日本経済新聞2024年6月19日

労働組合の活動方針は「組合員にとってどうなのか」という視点を基軸に決めていかなければなりません。政治団体ではありませんので選挙に関わる方針は、その時々でベターな選択を模索し、結果的に「組合員のため」につながるのであれば適切な判断だったと評価されていくのではないでしょうか。

そもそも一票を投じる判断は組合員の皆さん一人ひとりに委ねられています。その上で、労働組合は選挙の取り組みに関する重要性や意義などを丁寧に情報発信し、組合員の皆さんからご理解ご協力を得られるように努めています。

そのような意味合いからも、連合東京の斉藤会長が各産別労組に「小池氏以外の候補者を応援することもお互い尊重しあう」と表明されていることは適切な対応だったと思っています。連合東京としての組織的な判断を下しても、日常の活動に影響を及ぼすような不団結の要因は残さないという賢明さだと受けとめています。

5月末に連合本部の芳野友子会長は、立憲民主党や共産党などに推される形で無所属で立候補する意向を表明した蓮舫候補について「連合は共産党とは考え方がまったく違う。そこの考え方を再度、立憲民主党には申し上げることになる」と述べていました。この発言に対しては、あえて「非共産」という立場を強調する必要があったのかどうか、個人的には違和感がありました。

5月に投稿した「三多摩メーデーに絡む個人的な思い」という記事を通し、このあたりの私自身の問題意識を綴っています。たいへん光栄なことに斉藤会長も当ブログをご覧になっているというお話を伺っています。個々の選択肢に対する考え方に差異はあるのかも知れませんが、僭越ながら「組合員のため」の組合活動を基軸にすべきという考えには賛同を得られているものと思っています。

蓮舫候補の政策について少し触れてみます。7つの約束の1番目が「現役世代の手取りを増やす」です。その具体的な施策として「新しい条例で、都と契約する事業者に、働く人の待遇改善を要請します」を掲げています。いわゆる「公契約条例」ですので、労働組合の役員経験者として歓迎すべきものです。

その次に「まずは非正規の都職員を、専門職から正規化するなど処遇を改善します」が掲げられています。前々回記事「改めて会計年度任用職員の課題」の中で触れているとおり大半の会計年度任用職員の皆さんの雇用不安を取り除き、士気を高めていくためにも、5年ごとに競争試験を強いる運用の見直しを含めた公約であって欲しいものと願っています。

気になる点もあります。「本物の行財政改革」という公約ですが、より効率的な行政運営に努めていくことは当然です。ただ「行財政改革」という言葉には「公共サービスを切り下げる」「人件費を削る」というネガティブな側面があることも留意願いたいところです。「維新政治」と距離を置いているはずの蓮舫候補が「行財政改革は得意分野」と語る姿はプラスにならないように思っています。

私どもの組合に関わる話にも触れていきます。自治労組織内の国会議員をはじめ、自治労都本部が推薦している議員の多くは立憲民主党に所属しています。そのため、今回の都知事選では蓮舫候補の勝利をめざして全力を尽くしているところです。

4年前、自治労都本部は連合東京の組織決定を否定しない立場を重視し、特定の候補者の推薦や支持を見送っていました。連合東京内で「小池氏以外の候補者を応援することもお互い尊重しあう」と確認されていますが、自治労都本部は今回も同様な判断を下したようです。

私どもの組合ニュースの最新号で自治労都本部の対応は「自主投票」と伝えていました。ちなみに私自身が現職の組合役員だった時、選挙の取り組みにおいて「自主投票」という言葉は使っていませんでした。もともと個々人の自主的な一票であり、そのようなこだわりを持っていましたが、細かすぎる話だったのかも知れません。

最後に、安芸高田市長だった石丸伸二候補についてです。各メディアの情勢調査では小池候補が先行し、蓮舫候補が追う展開となっています。石丸候補も猛追し、2位をうかがう勢いだと見られています。ただ「こいつら殺されても仕方ないよな?」暴走する支持者たち…SNSで大絶賛される安芸高田市長・石丸伸二氏「人気の正体」』という記事に触れていくと、石丸候補に対する評価も少し変わりそうです。

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2024年6月22日 (土)

都知事選の話

木曜日、東京都知事選挙が告示されました。7月7日の投票日まで都知事選の話題がメディアを賑わしていくことになります。前代未聞の56人という立候補者の数は『掲示板枠足りずファイルで増設、風が吹くと揺れ正面から見づらく…候補「明らかに不公平」』という問題を生じさせています。

各候補者のポスターを掲示板に貼る位置は固定されています。届出順が1番だった場合、掲示板の「1」の位置に貼らなければなりません。届出順は受付順が基本ですが、1番が欲しくて徹夜で並ぶような事態を避けるため、受付初日の朝に抽選で決めることが専らです。

立候補者の極端な多さは『番号「1」なぜこの位置に?都知事選で異例のポスター掲示順、選管「今回特有の工夫」』という話まで伝わってきています。告示日当日の抽選で決まり、主要な候補者が続くことの多い「1」からの並びを、より視認性の高い位置になるよう考慮したとのことです。

都知事選に立候補できる条件は「日本国民であること」「満30歳以上であること」「法務局に預ける供託金300万円を用意すること」などです。法定得票数を集められなければ供託金は没収されてしまいますが、300万円という金額は宣伝効果を考えれば廉価だと思う候補者が増えているようです。

特に有権者数は今回11,533,132人、首都の代表を決める都知事選に対する注目度は際立っているため、これまでも立候補者は乱立気味でした。過去5回の都知事選を振り返ると、2011年が11人、2012年が9人、2014年が16人、2016年が21人、2020年が22人で過去最多でした。今回、その倍以上となり、選挙管理委員会の苦労ははかり知れません。

48人分の枠しかない掲示板への対応を心配していましたが、候補者にファイル等を渡すという「苦肉の策」には驚かされています。追加費用負担を桁違いに抑え、各自治体の選挙管理委員会に労力負担をかけない対応方法に、どちらかと言えば私自身は評価しています。

この対応方法に至る判断として、有力候補の陣営は必ず午前8時30分までの受付に並び、その時点での抽選対象者も48人以内に収まるという見通しがあったからだと思っています。

万が一、49人の抽選となり、現職都知事の陣営が49番を引き、ポスターが掲示板の枠外のファイルとなった場合、どれほど叱責されるか分かりません。しかし、絶対そのような事態にならないという見通しを確信した「苦肉の策」だったはずです。

いずれにしても今回『都知事選ポスター掲示板が《公衆電話のピンクチラシ》に…N国党“掲示板ジャック”は選挙制度の愚弄』『《都知事選「ほぼ裸ポスター」問題》自らの“みだら写真”を貼った女性は迷惑防止条例違反にあたるのか  弁護士の見解は』など、ポスター掲示板を巡る低劣な話が目立っています。

候補者が政策や主張などを訴える政見放送は11時間以上になります。公平公正さの観点から有力候補のみに絞ることはできず、必ず全候補者を平等に放送しなければなりません。NHKは『政見放送「短縮考えず」地上波で放送、11時間20分超も 53人準備の都知事選』という報道のとおりEテレやBSも利用せずに対応するようです。

告示翌日の金曜日、林芳正官房長官が記者会見で、ポスター掲示板は「候補者自身の選挙運動用ポスターを掲示するために設置されるもので、候補者以外が使用できるものではない。場合によって処罰の対象になる」との見解を示しています。しかしながら現在の公職選挙法でポスターの記載内容を制限したり、掲示板の枠の売買を禁止したりする規定はありません。

4月の東京15区の衆院補選では、つばさの党が「表現の自由」の範囲内での合法的な選挙運動と豪語していましたが、他陣営の街頭演説を妨害したなどとする公職選挙法違反(自由妨害)容疑で逮捕、起訴されています。つばさの党の黒川敦彦代表は勾留中にも関わらず、都知事選に立候補しているため他陣営は警戒を強めているようです。

巨額な資金がなくても、一定の要件を満たせば、誰もが立候補できる選挙制度であるべきです。選挙運動も権力側から監視や制約を受けない自由さが担保されていかなければなりません。ただ公職選挙法の枠内では想定していなかった問題が生じている昨今、守るべき重要な原則は踏まえた上で必要な見直しをはかっていくべきだろうと思っています。

前回は久しぶりに労使課題を取り上げた「改めて会計年度任用職員の課題」という記事を投稿していました。今回、都知事選が始まり、時事の話題について書き進めています。掲示板の話題は前振りのつもりでしたが、書き始めると思っていた以上に話を広げてしまいました。

ここから各候補者に関わる話に入る予定でしたが、幸い(💧)にも都知事選は長丁場の戦いです。欠かさず毎週末に更新しているブログですので、4年前の記事「都政の現場、新知事へのお願い」のような話は来週の土曜か日曜に投稿する次回の記事「都知事選の話 Part2」に先送りすることを決めています。

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2024年6月15日 (土)

改めて会計年度任用職員の課題

2022年11月に組合の執行委員長を退任した以降、このブログで労使交渉の課題を取り上げることは滅多にありません。労使交渉の当事者から離れているため当たり前な話であり、前回記事「三多摩集中行進に参加」のような取り組みの報告や時事の話題が中心となっています。

そのような中、今年3月には「会計年度任用職員制度の課題」という記事を投稿していました。今回、インデックス記事としてまとめてみることを考えたほど、これまで会計年度任用職員制度に関わる記事を数多く投稿しています。

会計年度任用職員」「会計年度任用職員制度の労使協議を推進」「会計年度任用職員制度、労使協議の現況」「会計年度任用職員制度、労使合意」「会計年度任用職員制度の組合説明会不安定雇用の会計年度任用職員」「会計年度任用職員の雇用継続に向けて」など、タイトル名に会計年度任用職員を掲げた記事だけでも以上のような数となります。

委員長を退いてから現委員長らに配慮し、労使課題の動きについて極力口をはさまないようにしています。ただ会計年度任用職員の雇用継続の課題に関しては若干例外的な対応をはかっています。雇用継続の課題は自分が現職の時に詰め切れず、大きな宿題として残してしまったという自戒の念があるからです。

私どもの組合は、保育園、学童保育所、学校事務職場などで働く嘱託職員の皆さんが組合加入し、労使交渉の積み重ねによって65歳までの雇用継続を勝ち取ってきました。それが会計年度任用職員制度が始まり、5年で雇い止めされるかも知れないという不安定な雇用に後戻りしています。

2020年4月会計年度任用職員制度が施行されたが、4回の「更新」を経て、私達組合員57名のうち8割が今年度末雇い止めに遭う。残酷だ。当局は更新期限が来たから公募に応募してもらうだけですよーなどと言うが、笑止。誰が何と言おうと雇い止めだ。これははっきりさせておく。

上記は自治労都本部の機関紙最新号の中で、思わず目に留まった区立図書館専門員労働組合の委員長の言葉です。私どもの組合員の皆さんの中にも同じように憤り、不安に駆られている方々が多いのだろうという思いを巡らす言葉でした。

全国的には3年から5年という雇用年限を定めていた団体が大半だったため、会計年度任用職員制度が始まり、国は3年、東京都は5年というマニュアルが整えられています。その結果、雇い止めの心配のなかった自治体の非常勤職員が一転して雇用不安にさらされています。

高年齢者雇用安定法では、使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保を求めています。会計年度任用職員制度を成立させた時の国会の附帯決議では、公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求めています。それにも関わらず、労働者にとって最も重要な雇用継続の課題を「改悪」する結果を招いていることの理不尽さに忸怩たる思いを強めてきました。

そもそも法律上、会計年度任用職員の再度の任用回数に上限は設けられていません。任用回数に上限を設けた場合でも、競争試験や公募は必須とされず、現職者を対象にした選考で継続雇用していくことは問題ありません。

このような点を把握していましたが、2019年10月、都内の自治体の中で私どもの市が突出した内容で決着することは困難でした。「公募によらない再度の任用は原則として連続4回」という東京都の示している基準を受け入れる際、組合からは「これまでの労使確認事項も尊重していく」という一文を付け加えることを求め、このことについても労使で確認していました。

「これまでの労使確認事項も尊重していく」という一文は、会計年度任用職員の65歳までの雇用継続が引き続き課題として残っているという問題意識です。しかし、このような問題意識は労使で隔たりがありました。市当局は5年に1回、現職者と新規採用希望者が競合する公募による採用試験を予定し、このことについて組合も合意しているという認識でした。

確かに改めて労使協議を提起しなければ、その内容で公募試験に進んでいくことを組合も合意していました。昨年6月の記事「労使の信頼関係について思うこと」に綴っているとおり信頼関係を維持するためには「約束したことは守る」という土台が欠かせません。約束が守れない場合、変更しなければならない場合、相手方に事情を丁寧に説明し、納得を得られるように努力しなければなりません。

2022年8月、公募試験実施まで2年を切る中「これまでの労使確認事項も尊重した」雇用継続のあり方について、改めて協議すべきものとして団体交渉で申し入れていました。この時、市当局側に渡した一連の資料は当時の市長にも私から直接手渡していました。ちなみに現市長と労使交渉の責任者である副市長にも同じ資料をお渡ししています。

副市長とは私が入所した頃から親しくお付き合いいただき、同じ職場の直属の上司としてお世話になったこともあります。副市長に就任されてからも時々、お話をする機会があり、会計年度任用職員制度の課題についても意見を交わしていました。なお、副市長らと話した労使交渉に関わる内容は委員長らにも適宜報告しています。

会計年度任用職員から正規職員への転換についてです。総務省が策定したマニュアルで「地方自治体の正規職員については、人事の公正の確保等の観点から、競争試験による採用が原則とされており、厳格な成績主義が求められている。このため、会計年度任用職員を正規職員に任用する場合には、競争試験などにより、正規職員としての能力実証を改めて行う必要がある」とし、会計年度任用職員を正規職員に転換する制度は設けられていません。

採用の方法を定めた地方公務員法第17条の2では「人事委員会を置かない地方公共団体においては、職員の採用は、競争試験又は選考によるものとする」とし、採用試験の手続き等は任命権者(市長)が定めることになります。したがって、市長が選考方法を定めることで、公募によらない採用は可能になるという考え方を副市長にお伝えしています。

民間企業に非正規労働者の処遇改善や正社員化を求めておきながら、政府や自治体が非正規で働く人を増やしているようでは説得力を欠く。国の機関では、事務の補助やハローワーク相談員などで、計15万8000人の非常勤職員が働いている。2018年度に比べ、約1万人増えた。

全国の自治体では非正規の公務員が計69万人に上り、05年度に比べて24万人増えた。一般事務員のほか、保育士や教員、図書館職員などとして働いている。国にしても自治体にしても、厳しい財政事情の中、少ないコストで行政ニーズに応えようとしてきたことが、非正規の増加につながっているのだろう。

非正規の収入は少なく、生活が不安定になりがちだ。行政は処遇改善を図るとともに、希望者には正規登用の道を広げるべきだ。特に問題が指摘されているのは、自治体の「会計年度任用職員」制度だ。かつては自治体がそれぞれの基準で非正規を採用してきたが、政府が20年、労働条件を統一するために導入した。

雇用は会計年度ごとに更新されるが、パート勤務であっても期末手当などが支給されるようになった点が特徴だ。ただ、それでも正規の公務員に比べ賃金は抑えられており、「官製ワーキングプア」と批判されている。非正規公務員らでつくる団体の調査によると、年収が250万円未満の人が8割に上った。

行政機関で働いても、安心して暮らせるだけの収入を得られないようでは話にならない。自治体の中には、会計年度任用職員の勤務時間を、正規の職員より1日あたり15分程度短くしているところもある。こうした自治体は、窓口の開設時間に合わせて勤務時間を決めている、と説明しているが、人件費を抑えるために勤務時間をわずかに短く設定し、パートとして雇用しているのであれば問題だ。

非正規で働く人の中には、「都合の良い時間に働きたい」という理由で、自ら会計年度任用職員を選ぶ人もいるだろう。一方で、毎年度、「雇い止め」にあうのではないかと不安に思いながら、非正規として行政の仕事を担っている人も少なくない。

正規公務員の採用は、試験による選考が原則だ。だが、会計年度任用職員が希望した場合には、勤務実績などを考慮して試験を一部免除するなど、特別な選考方法を検討してもよいのではないか。【読売新聞2023年10月20日

上記の記事には『会計年度職員  行政は正規雇用の道を広げよ』という見出しが付けられています。このように会計年度任用職員の雇用継続に関しては、いわゆる「公務員バッシング」から程遠く、解決に向けて「追い風」が吹いているものと思っています。

正規職員への道が開けていることは、会計年度任用職員の皆さんの士気が高まる制度につながるはずです。副市長には、このような制度の確立とともに大半の会計年度任用職員の皆さんの雇用不安を取り除き、士気を高めていくためにも組合が求めているような運用に対するご理解を求めています。

昨年度末、現職者は書類・筆記等による選考(1次試験)を免除し、面接試験(2次試験)のみを受けるという運用を労使で確認しています。一歩前進したとも言えますが、新規採用希望者と競い合わせることの問題は解消できていませんでした。

当たり前なことですが、労使協議してきた取扱いを白紙に戻させるような僭越な思いは微塵もありません。労使交渉の窓口を飛び越えてトップダウンで方針を転換させるような手法も望んでいません。そのような手法には批判的な立場であり、あくまでも労使交渉の折衝窓口である人事課長らに理解を得た上、より望ましい運用をはかれないかどうかという問題意識を抱えています。

3月26日付で連続4回の「公募によらない再度の任用」をされた月給制職員の職の取扱いについて、庁内で確認されています。その文書に沿えば、5月から6月にかけて公募によらず選考により採用する現職者を決定する運びとなっています。

そのため、5月28日に自治労都本部の統一要求書を提出する際、会計年度任用職員制度の課題に関して、委員長から一言申し入れるようお願いしました。会計年度任用職員制度がスタートする前には、65歳まで雇用継続を労使で確認してきた経緯を踏まえ、恒常的な業務に従事する職員も競争試験ではなく、選考で採用する例外の一つに加えるよう市当局側に要請しています。

例外にならなかった場合、合否の決定が2月上旬という時期について憂慮しています。合格者は再度の任用回数を新たに1回目から数えていきますが、年休は繰越できる制度設計です。採用されず、年休が余っていれば年度末にまとめて取得されるはずです。そもそも4月以降の仕事を見つけるためにはタイトな日程を強いられることになります。

仮に現職者の合格を前提とした競争試験だった場合、このような憂慮は無用となります。その場合、新規採用希望者からすればアンフェアな競争試験だと見られかねません。これまで定めてきた取扱いを原則としながらも、このような問題を解決するための何らかの運用のあり方を探るべきものと考えています。

言うまでもありませんが、法的に問題があるようであれば組合側は要求すること自体控えなければなりません。法的に問題がなかったとしても住民の皆さんから理解を得られない要求も自制していかなければなりません。しかし、会計年度任用職員の雇用継続は堂々と訴えるべき課題であり、このブログでも頻繁に取り上げています。

最後に、会計年度任用職員制度の課題は昨年9月の記事「身近な政治、市長選の話」の中で触れた「お上至上主義」「横並び主義」の壁に直面しています。今後の行方を左右する重要な5年目を迎え、さらなる運用改善が実現しなければ「前例主義」というもう一つの壁が立ちはだかりかねないことを危惧しています。

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2024年6月 8日 (土)

三多摩集中行進に参加

前回記事「政治資金規正法改正の動き」の冒頭で、このブログを続けていることの励みになる出来事を紹介させていただきました。新規記事を投稿しても、どれほどの方にご覧いただけているのか手応えが薄くなりがちな最近の当ブログのアクセス状況です。

そのような中、三多摩平和運動センター総会後の交流会の席で、 引き続き注目くださっている方々と懇談でき、たいへん感激していました。すると奇遇にも、翌日の土曜夜、連合宮城に勤務されている方からも、よりいっそう励みになるメールをいただきました。

その方は連合三多摩にも関わっていたことがあったため、自治労宮城県本部の皆さんとの懇親会の場で「公務員のためいき」が話題になったとのことです。「自治労宮城の役員の方たちの多くが読んで共感していました。時には自分の挨拶の時などに、文面を拝借しているそうです()」という恐縮する光栄なお話を報告いただきました。

その方のメールには「やっぱり自分の思いは、SNSで発信した方がいいんだと思いました。誰かが見てて共感してくれてるから。そして同じ思いを持つ誰かに継承されるのかもしれないから」という言葉が添えられていました。

翌朝、返信したお礼のメールで、関心をお寄せくださっている方々が決して少なくないことを伝えていただき、ブログを続けていく大きな励みにつながっていることを書き添えています。とりわけ当ブログの内容に共感いただきながら「時には自分の挨拶の時などに」というくだりに感激しています。

以前の記事に「運動のあり方、雑談放談」や「一つの運動として」というものがあります。私自身にとって当ブログの運営は一つの運動として位置付けています。運動という言葉を辞書で調べれば「目的を達成するために積極的に活動すること、各方面に働きかけること、選挙運動、労働運動、学生運動」という説明が加えられています。

様々なテーマごとに反対集会やデモ行進が取り組まれていますが、私自身、介護の事情があって参加する機会は限られていました。そのため、自宅で取り組める私なりの運動として、このブログに向き合っているという話を以前の記事の中で綴っていました。

「同じ思いを持つ誰かに継承されるのかもしれないから」という連合宮城の方の言葉は私自身の問題意識につながるものです。より望ましい「答え」を見出していくためには、多面的な情報や幅広い考え方に触れていくことが重要だろうと考えています。

そのような意味合いからインターネット上で、賛否が分かれる考え方や興味深いサイトを当ブログの中で頻繁に紹介しています。一つの運動としての情報の拡散であり、共通する思いが連鎖し、広がっていくことを願った試みだと言えます。

したがって、このブログを通して発信した言葉が共感いただき、その方が発する言葉として広がりを見せていけるのであれば何よりなことです。このような思いがあるため、一人でも多くの方に当ブログを訪れていただけることは本当に嬉しく、毎週欠かさず更新していく励みとなっています。

記事タイトルから離れた前置きが長くなっていますが、ここまでに記してきた思いは具体的なテーマでの運動に直結する問題意識です。具体的なテーマの中でも反戦平和に関わる運動に対し、個々人の賛否や評価が大きく分かれがちです。

前回記事の冒頭で、三多摩平和運動センターの総会に参加したことを伝えていました。この総会後、一昨年は「平和や人権問題の議論提起」、 昨年は「平和運動センター総会で発言」という記事を綴っています。

労働組合の役員の立場であれば、平和運動に取り組むことが不団結の要因になりかねないような現状は絶対避けていかなければなりません。そのためにも憲法9条を守ることが「なぜ、平和につながることなのか」など丁寧な情報発信が必要です。

私自身の問題意識は2年前「Part2」にわたった「憲法9条があるから平和を保てるのか?」という記事を通して詳述しています。専守防衛を厳格化した日本国憲法の平和主義を肯定的にとらえるのかどうか、このような論点を託した内容のブログ記事(参考「平和の話、インデックスⅣ」)を数多く綴ってきています。

評価が分かれがちなテーマだからこそ、少しでも「なるほど」と思えるような言葉を不特定多数の方々に発信していくことが非常に重要です。特に反対集会やデモ行進が異なる立場の方々に共感を呼びづらく、そこで訴える主張が広がりを得られにくくなっている中、SNSを通した情報発信の貴重さを感じ取っています。

もちろん多くの方が集まり、生の声で反戦平和を訴える行動そのものを否定するものではありません。リアルな場面での具体的な取り組みとともにSNSを駆使した情報発信が相乗効果を発揮し、平和を築くという大きな目的に近付けていけることを理想視しています。

このような思いのもと好天に恵まれた土曜日の午後、三多摩平和運動センターが呼びかけた三多摩集中行進に参加しています。多摩地域の3か所に集まり、ミニ集会の後、それぞれ立川市内の公園までデモ行進するという取り組みです。

スローガンには「オスプレイの横田基地配備に反対しよう!」「核兵器禁止条約の批准を実現させよう!」 「沖縄・辺野古新基地建設に反対しよう!」「日米地位協定の抜本的見直しをはかろう!」改憲発議をストップさせよう!」「原発再稼働に反対しよう!」が掲げられています。

私どもの組合からは6名、全体では150名ほどが参加しています。この取り組みに参加された方々に対し、上記のスローガンに至る理由の説明は不要であるはずです。ただ集会に足を運ぶことのない方々に向けては、なぜ、そのようなスローガンに至っているのか丁寧な情報発信が必要だろうと思っています。

限られた時間で進めていく集会やデモの中で、長々とした説明は困難であり、端的な訴えが定番になることは致し方ないものです。そのため、今回のような取り組みを間近で見かけた方が興味を持ち、ネット検索した際、スローガンそれぞれの背景が分かり、少しでも共感の輪が広がっていけるような運動の組み立ても大切なのだろうと考えています。

このブログが三多摩平和運動センターとオフィシャルな連携をはかっている訳ではありませんが、「勝手連」的な意味合いで上記のような関係性の一助になれればと願っています。今回の記事で一つ一つ取り上げることはできませんが、横田基地にオスプレイ」「突然、横田基地にオスプレイ」という以前の記事だけでも紹介します。興味を持たれた方がリンク先の記事を参照いただければ幸いなことです。

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2024年6月 1日 (土)

政治資金規正法改正の動き

金曜の夜、三多摩平和運動センターの総会に個人会員の資格で参加しています。この総会後、一昨年は平和や人権問題の議論提起」、 昨年は平和運動センター総会で発言」という記事を綴っていました。今年の総会に絡んだブログ記事は機会があれば改めて投稿したいものと考えています。

今週末に更新する記事の冒頭では、このブログを続けていることの励みになる出来事を紹介させていただきます。かつて1日あたりのアクセス数は千件前後で推移していましたが、最近は100件に届かない日もあります。その内訳も過去の記事へのアクセスが大半を占めています。

新規記事を投稿しても、どれほどの方にご覧いただけているのか手応えが薄くなりがちな中、総会後の交流会の席で一昨年10月の記事安倍元総理の国葬 Part2」の冒頭で紹介した自治労都本部の副委員長と再びお会いする機会を得ていました。

初めてお会いした時に「ブログをずっと見ています」とお声かけいただいていましたが、今も同様に注目くださっていることを知り、たいへん感激しています。一緒に懇談していた女性の副委員長からも、私のブログが「自治労関係者の間でよく知られていますよ」と言っていただき、ますます感激しています。

このような言葉に触れられることがブログを続けていくことの大きな励みにつながっています。お二人には、いろいろ会話させていただきながら「やめるのはいつでもやめられますので、できる限り続けていきます」という決意(🎵)をお伝えしていました。

さて、記事タイトルに掲げた本題です。政治資金規正法改正に向けた大きな動きがありました。『自公維が規正法修正案で合意、今国会で成立の見通し…公明・山口代表「首相の決断を大事にしたい」』という報道のとおり岸田総理は、公明党の山口代表、日本維新の会の馬場代表とそれぞれ会談し、自民党案を修正することで合意しました。

自民が示した修正案は、公明の要望事項のうち、〈1〉政治資金パーティー券購入者の公開基準額の「5万円超」(現行「20万円超」)への引き下げ〈2〉政党が議員に支出する政策活動費(政活費)の支出などをチェックする第三者機関の設置――などを盛り込んだ。維新が要望していた政活費の改革では、年間支出の上限額を定めることや、10年後に領収書などを公開する仕組みを早期に設けることを明記した。

首相は31日夜、首相官邸で記者団の取材に応じ、両党の要望を受け入れたことについて、「『法改正を今国会で確実に実現する』とした国民との約束を果たさなければ、政治への信頼回復ができないという強い思いから、思い切った、踏み込んだ案を提示する決断をした」と述べた。

公明と維新は修正案を評価しており、山口氏は首相との会談後、記者団に「首相の決断を大事にしたい」と語った。馬場氏も会談後、修正案への対応について「基本的には賛成する」とした。首相と馬場氏との会談では、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)についても、使途公開と未使用分の国庫返納を義務づける立法措置を講じることで合意した。

自民は5月17日に単独で改正案を提出後、29日には3年後の見直し規定などを設ける修正案を示したが、公明や野党から「不十分」との批判が出ていた。首相は、法改正に世論の理解を得るには、さらなる譲歩で公明と維新の協力を得る必要があると判断した。【読売新聞2024年5月31日

公明党と日本維新の会が採決で賛成に回ることから、修正案は来週にも衆院を通過し、今国会で成立する見通しとなっています。ただ他党の要求を「丸のみ」した岸田総理の判断に対し、自民党内に大きなしこりを残しているようです。麻生副総裁の周辺からは「これまで政権を支えてきたが、今後の対応は考えざるを得ない」との声が漏れています。

このブログでは2月に「自民党の裏金問題」「もう少し自民党の裏金問題」という記事などを通し、何が問題なのか、どのように見直していくべきなのか綴ってきています。お時間等の許される方はリンク先の記事を参照いただければ幸いですが、結論的な問題意識は次のとおりです。

今回の自民党の裏金問題を通し、最も批判しなければならない点は定められたルールを守れなかった国会議員の多さです。その上で、政治資金収支報告書には記載できなかった使途の全容です。もし私的な流用がまかり通っていたのであれば、たいへん悪質な問題だと言えます。

今後、検討すべき論点は、党から支給される政策活動費も含めた使途の透明性が一つだろうと考えています。もう一つは、事務所の会計責任者が法的な責任を問われた場合、「秘書任せだった。自分は知らなかった」という言い訳が通用しなくなる政治家本人の責任を問う連座制の導入ではないでしょうか。

上記のような問題意識に沿って考えた時、今回の政治資金規正法改正の動きが真っ当なものなのかどうか、いろいろ疑問に思うところがあります。そもそもルールをどのように変えたとしても、決められたルールを守らない、もしくは抜け道を探すような国会議員が今後も跋扈するようでは政治への信頼は地に墜ちたままとなります。

前回記事「ゼロ歳児にも選挙権、維新の公約から思うこと」の冒頭で、政治資金パーティーを巡る立憲民主党の動きを記しています。『「パーティー禁止」掲げる立憲、迷走の果てに謝罪  本気度を疑わせる無定見な言動」で混乱』という記事のとおり立憲民主党は、今回の迷走ぶりを率直に反省しなければならないはずです。

2月に投稿した記事の中で、国会議員が事務所を維持するための費用をはじめ、当選を重ねていくためには一定の政治資金が欠かせないことを記しています。そのため、国会議員に対して過度な「身を切る改革」を求めることで、自己資金に余裕がなければ政治家になれないような社会にしてしまっては問題だと思っています。

歯止めをかけなければならない点は、巨額の資金を提供できる特定の人物や団体の影響力で政治が歪められていくような癒着を防ぐことです。したがって、政治資金パーティー券購入者の公開基準額が「5万円超」でも、現行の「20万円超」のままだったとしても、表に出せないような資金提供があるとしたら、その行為自体を問題視しなければなりません。

確かに法的に問題のない行為でも、あえて公表したくないというケースがあるのかも知れません。それでも透明性を重視した制度に見直していくのであれば、原則として購入者すべてを公開していく方向性が真っ当なように思っています。そのため「5万円超では2万円のパーティー券が2枚しか売れなくなる」という声は不透明さを前提にしているように感じがちです。

政策活動費の使途の公開も同様です。透明性が肝要であり、その仕組み作りによって社会一般の常識から逸脱した使われ方を防ぐことが求められています。例えば講演会の後、講師の飲食費を政策活動費として支出する程度であれば許容範囲だろうと考えています。そのような線引きも含め、認められる事例を整理していくことも必要な気がしています。

最後に「本物の領収書」公開し“維新案”説明  政策活動費「10年後の公開」実例でアピール』という報道を紹介します。「有言実行」をアピールしてみせた格好ですが、事業者や住所などをマスキングした領収書の大半は飲食代で「10年後の公開時に虚偽記載や不記載が見つかっても、政治資金規正法では公訴時効が5年とされていて罪に問えない」と指摘されています。

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