会計年度任用職員制度の課題
前回の記事「進めなければならないカスハラ対策」は久しぶりに組合が取り組んでいる課題を中心にまとめていました。今回も「会計年度任用職員制度の課題」というタイトルを付け、継続的に組合が力を注いでいる課題について取り上げます。
これまで当ブログでは「会計年度任用職員」「会計年度任用職員制度の労使協議を推進」「会計年度任用職員制度、労使協議の現況」「会計年度任用職員制度、労使合意」「会計年度任用職員制度の組合説明会」など、会計年度任用職員制度に関わる記事を数多く投稿しています。
2年前には「不安定雇用の会計年度任用職員」「会計年度任用職員の雇用継続に向けて」という記事があり、この内容をもとにまとめた参考資料「会計年度任用職員の雇用継続に向けた組合の考え方」という文書を執行委員会で確認しています。この文書は団体交渉における市側の責任者である副市長をはじめ、当時の市長にも直接手渡していました。
昨年9月の記事「身近な政治、市長選の話」の中で伝えているとおり新市長とは、都議時代から私どもの組合と推薦関係があり、20年以上前から顔見知りの方です。組合の委員長は退いていましたが、このような関係性があったため、前市長に渡した資料を参考までに新市長にもお渡ししています。
やはり昔から顔馴染みの先輩が新市長の政策ブレーンとして参与に就任していたため、この参考資料「会計年度任用職員の雇用継続に向けた組合の考え方」を渡しています。現職の時、詰め切れなかった課題だったという意識があり、現委員長らに報告しながら独自の判断で動いていました。
課題に対する詳しい経緯等はリンク先の記事で詳述していますが、要約すると次のとおりです。かなり前から私どもの組合は、保育園、学童保育所、学校事務職場などで働く嘱託職員の皆さんの組合加入を進めてきています。そして、労使交渉の積み重ねによって65歳までの雇用継続を確認してきました。
それが会計年度任用職員制度が始まり、5年で雇止めされるかも知れないという不安定な雇用に後戻りしています。このような理不尽さを何としても解消したいため、現職の組合役員を離れていますが、労使交渉を側面支援できるような機会を常々探っていました。
新市長らに参考資料を渡したこと以外、もう一つ貴重な機会に恵まれていました。昨年8月の記事「ベーシックサービスと財源論 Part2」の中で、季刊誌「とうきょうの自治」の連載記事「新着資料紹介」を担当することになったという話を伝えています。
担当してから3回目となる最近発行された冬号で、自治労総合組織局が編著した『会計年度任用職員の手引き』を紹介しています。私自身の寄稿した内容ですが、許可を得ず、このブログに転載することは控えなければなりません。したがって、そのまま利用するものではなく、連載記事の内容に沿って私自身の問題意識を改めて示していくつもりです。
前述したとおり組合役員を長く務めてきたため、連載記事の中で会計年度任用職員のことを取り上げられればと考えていました。今回、まさしく発行されたばかりの新着資料として『会計年度任用職員制度の手引き』を紹介できる機会を得ていました。
表紙には「法律から組織化までのすべてを解説!~この労働条件は当たり前?その疑問に答えます~」という副題が添えられています。会計年度任用職員制度に関わる方々、関心を寄せられている方々、すべての方に手にしてもらいたい貴重な資料としての手引きだと言えます。
先日『自治体の非正規職員、6.9%増 74万人、財政難で正規増えず』という報道に接しています。自治体職員の4人に1人が会計年度任用職員であり、常勤職員とともに地方行政の重要な担い手となっています。このような現況を受け、地方自治法、地方公務員法の一部が改正され、2020年4月から会計年度任用職員制度がスタートしています。
それまで自治体ごとに曖昧だった任用の明確化や期末手当の支給等が可能になりました。「官製ワーキングプア」と揶揄される賃金労働条件の改善が一歩前進したことも事実ですが、まだまだ同一労働同一賃金の趣旨から程遠い現況です。
背景の一つとして、法改正の趣旨がいまだ全国の自治体当局に浸透していない実態もあり、会計年度任用職員が不安定な雇用にとどめられています。さらなる法改正が必要な課題だった勤勉手当の支給は、自治労の粘り強い取り組みによって今年4月から会計年度任用職員にも支給できるようになっています。
一方で、法改正の必要はなく、現行制度によって対応できるはずの課題も不充分なままであることが目立っています。当事者や組合の最も切実な訴えは雇用継続の課題です。総務省がまとめた事務処理マニュアルでは「公募によらない再度の任用は連続2回を限度」とし、東京都は連続4回を原則としているため、多くの会計年度任用職員が雇止めの不安にさらされています。
しかしながら法律上、同一の会計年度任用職員が再度任用される回数に上限は定められていません。さらに「上限を設けることが地公法第13条の平等取扱いの原則に違反する可能性を指摘し、上限を撤廃させる必要があります」と紹介した手引きの中には記されています。
法的に会計年度任用職員の任期は一会計年度内であり、任用を自動的に更新することはできません。このような制約があることを受けとめながら再度の任用において、客観的な能力の実証を日常的な人事評価によって対応している自治体が多いのではないでしょうか。
手引きには「選考においては公募を行うことが法律上必須ではない」とも記されています。どうしても再度の任用回数の上限を撤廃できなかった場合、競争試験だけは避け、引き続き任用を希望する現職者を対象とした選考試験での対応が望ましいのではないか、このように私自身や私どもの組合は考え、市側に訴え続けています。
雇止めの不安をなくし、現職者の培ってきた業務に対する知識や経験を活かしていくことが住民サービスの質の維持向上につながっていくものと確信しています。『会計年度任用職員制度の手引き』を通読することで、このことを改めて認識する機会となっていました。
以上が「新着資料紹介」に綴った内容となりますが、文体は「である調」です。「ですます調」に変えながら必要な文章整理や新たな情報なども加えています。ちなみに許可を求めれば、このブログで全文をそのまま転載することの了解は得られるのだろうと思っています。
少し話は横道にそれますが、連載記事を引き受けた際、人事課に兼業許可申請書を提出しています。1回あたり6千円ほどの報酬を継続的に得るため、必要な手続きでした。この手続きを怠ったり、もしくは制度に対する理解不足から対応していなかった場合、後々大きなペナルティを課せられる恐れがあります。
定められたルールへの違反に「この程度であれば問題ないと思っていた」「許可が必要だったとは知らなかった」などという言い訳は通用しません。しかしながら安倍派を中心にした多くの国会議員は、ルールに違反しながら大きなペナルティを課せられないまま逃げ切ってしまうようであり、このような違いの理不尽さに憤りを覚えがちです。
会計年度任用職員制度の話に戻し、私どもの組合の最近の動きにも少し触れていきます。1月末の団体交渉で会計年度任用職員の勤勉手当の支給月数を年間0.3月という提案があったことに驚きました。東京都に準拠するのであれば年間2.25月でなければ問題です。
現職の時は朝、昼、夜と組合事務所に足を運んでいました。今は昼休みに顔を出す程度です。その交渉の数日前、たまたま委員長と書記長の「再任用職員の賃金水準との逆転現象をどうするべきか」という話を耳にしました。
普段、聞こえていてもスルーするようにしていますが、その時だけは、やぶ蛇になることが心配だったため「あまり持ち出さないほうが良いのでは」と一言添えていました。このタイミングで組合が同時解決を強く要求していた訳ではなかったようですが、0.3月という市側の提案は再任用職員と逆転しないように試算したものだったという話でした。
組合は猛反発し、推薦市議とも連携をはかった後、2月に入ってからの交渉で都準拠の水準に改めさせることができています。再任用職員の賃金水準の問題は切り離し、今後の課題として先送りしたことで労使合意に至りました。財源の問題もあったはずですが、短期間で修正をはかれたことは推薦市議や新市長らの動きも大きかったのかも知れません。
切実な雇用継続の課題に関しても動きがありました。現職者は書類・筆記等による選考(1次試験)を免除し、面接試験(2次試験)のみを受けることになります。一歩前進したとも言えますが、新規採用希望者と競い合わせることの問題は解消できていません。
公私で忙しい中、いろいろ現職の皆さんは、たいへんだと思います。それでも会計年度任用職員制度の課題に対しては、昨年6月の記事「労使の信頼関係について思うこと」に託したとおり労使対等原則のもとに交渉を重ね、ぜひとも、より望ましい制度の運用に向けて力を尽くされていくことを期待しています。
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コメント
この様な書込大変失礼致します。日本も当事国となる台湾有事を前に 日本の国防を妨げる国内の反日の危険性が共有される事を願い書込ませて頂きます。
今や報道は無法国の代弁者となり、日本の国益は悪に印象操作、反日帰化の多い野党や中韓の悪事は報じない自由で日本人の知る権利を阻む異常な状態です。
世論誘導が生んだ民主党政権、中韓を利す為の超円高誘導で日本企業や経済は衰退する中、技術を韓国に渡さぬJAXAを恫喝し予算削減、3万もの機密漏洩など数知れぬ韓国への利益誘導の為に働きました。
当時の売国法に未だ後遺症を残し、今も内から中韓化侵略が進む中、再びメディアに踊らされ国を失わぬ為に、各党の方向性を見極め、改憲始め国の強化と成長が不可欠です。
しかし必要なのは、日本人として誇りを取り戻し 掛替えない自国を守る意識だと多くの方に伝わる事を願います。
投稿: aki | 2024年3月10日 (日) 01時35分
akiさん、コメントありがとうございました。
最近は閑古鳥が鳴いている場となっていますが、以前は幅広いご意見を交わせる貴重な場でした。管理人である私自身のスタンスは多様な考え方を認め合いながら、自分の「答え」を押し付けないというものです。
akiさんの主張のされ方も、そのような抑制的な姿勢を受けとめさせていただいています。参考までに昨年11月に次のような記事を投稿しています。お時間等が許される際、ご覧いただければ幸いです。
2023年11月 4日(土) 善悪二元論から思うこと
http://otsu.cocolog-nifty.com/tameiki/2023/11/post-d224a0.html
投稿: OTSU | 2024年3月10日 (日) 07時02分