« 多面的な情報によって変わる評価 | トップページ | 会計年度任用職員制度の課題 »

2024年3月 2日 (土)

進めなければならないカスハラ対策

前回の記事は「多面的な情報によって変わる評価」でしたが、自民党の裏金問題に関わる政治倫理審査会を巡る一連の動きは、まさしく多面的な情報に連日触れられる機会でした。突然、岸田総理が出席することになり、完全公開での開催となりました。このような自民党の迷走が今後、どのように評価されていくのか興味深いところです。

一昨年11月に組合の執行委員長を退任した以降、このブログの題材は必然的に時事の話題が中心となっています。組合に関わる話は減っていましたが、久しぶりに今回「進めなければならないカスハラ対策」という記事タイトルのもと組合が取り組んでいる課題について書き進めていきます。

現職の時だった2022年6月にカスハラに対する考え方」という記事を投稿していました。ココログのアクセス解析「リアルタイム足あと」を確認すると、毎日のように検索キーワードからその記事に訪れてくださる方を見かけています。それほどカスタマーハラスメント、略してカスハラという言葉が注目を集めているのだろうと思っています。

つい最近“カスハラ防止条例” 東京都が全国初の制定目指す』『東京都が「カスハラ防止条例」制定へ 「東京ならではのルールが強く求められている」と小池百合子知事』という新たな動きにも接しています。少し長くなりますが、東京新聞の記事内容をそのまま紹介します。

東京都は、顧客による暴言や理不尽な要求などの迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の防止条例を制定する方針を固めた。都によると、カスハラ防止に特化した条例は全国初となる。民間だけでなく、公務員へのカスハラも後を絶たず、条例を法的根拠に、カスハラ防止の周知啓発を進めたい考えだ。

小池百合子知事は20日開会した都議会定例会の施政方針演説で、カスハラ被害が都内の企業で深刻化しているとして「東京ならではのルール作りが強く求められている」と強調した。条例案の提出時期については閉会後、記者団に「早期になることを期待している」と述べた。

都は昨年10月、東京商工会議所や連合東京など経営者・労働者団体の代表、学識経験者らによるカスハラ対策検討部会を設置。条例制定が有効とする意見が多数を占める一方、罰則規定については消極的な声が大半だった。都は部会での議論を踏まえ、今後条例案の具体内容を詰める。

日本最大の産業別労働組合「UAゼンセン」が2020年、サービス業に従事する233組合の組合員を対象に実施した調査では、過去2年で顧客から悪質なクレームなどの行為を受けた人は56.7%。具体例には「レジの接客態度が悪いと呼ばれて、到着すると胸ぐらをつかまれ、引きずられた」「『おまえはカスだ』と威圧的な言葉で言われ続けた」などがあった。

被害は公務員にも及ぶ。全日本自治団体労働組合(自治労)が20年、自治体の職員約1万4000人を対象に実施した調査では「過去3年間で迷惑行為や悪質クレームを受けた」は46%に上った。

秋田県は、22年4月施行の「県多様性に満ちた社会づくり基本条例」で、他人への優越的な関係を背景とした不当な要求などの禁止を明記。条例に伴う指針では、カスハラの具体例や判断の際に配慮するべき点を示している。【東京新聞2024年2月20日

NHKの報道では、連合のアンケート調査によるカスハラが増加した理由を紹介しています。「格差、コロナ禍などの社会の閉塞感などによるストレス」が最も多く、次いで「過剰な顧客第一主義の広がり」「人手不足によるサービスの低下」「SNSなどの匿名性の高い情報発信ツールの普及」などとなっています。

カスハラを受けたことの影響として、最も多かったのは「出勤が憂鬱になった」で、次いで「心身に不調をきたした」「仕事に集中できなくなった」「眠れなくなった」などとなっていました。このような現況を踏まえ、連合は「企業・業界が自ら職場の状況に応じたガイドラインなどを策定し、ハラスメントが起きない環境を作ることが重要だ」と訴えています。

カスハラ問題に詳しい関西大学の池内裕美教授は「お客様第一主義を経営理念として掲げる企業が多いが、サービス水準がどんどん上がり、客が求める水準に企業側が応え続けるのが難しくなっていて、そのギャップが大きな不満につながる。その前提として格差社会や少し前にはコロナ禍などによるストレスもあって感情を抑えられず、弱い者いじめのように店員などを攻撃し、カスハラに発展する」と分析しています。

池内教授は今回、東京都がカスハラを防ぐための条例の制定に向けた検討を進めることについて「条例ができれば、企業はカスハラへの対策をより打ち出しやすくなるので、都以外の自治体でも条例の制定の動きが広まって欲しい」とNHKの報道の中で語っています。

先週月曜に開かれた連合三多摩「2024春季生活闘争を成功させる連合三多摩の集い」の記念講演も「カスタマーハラスメントをなくす社会をつくるために」というテーマでした。組合役員時代、ほぼ毎年、参加していた集会です。昨年3月は退任していましたが、協力委員の一人として会場に足を運んでいました。

昨年の記念講演は慶応大学の井手英策教授の「ベーシックサービス宣言~分かち合いが変える日本社会~」でした。たいへん興味深い内容だったため、このブログでベーシックサービス宣言」という記事を投稿しています。さらに8月には「ベーシックサービスと財源論」 「ベーシックサービスと財源論 Part2」という記事まで投稿していました。

カスハラの話に戻しますが、私どもの組合も2月1日にカスハラに関する意見交換会を催しています。現委員長に誘われ、関心のあるテーマでしたので私も参加した意見交換会です。最初に自治労の動画「カスタマーハラスメントのない良好な職場をめざして」を見た後、参加者で意見を交わしています。

人数は少なかった会でしたが、子育てや福祉職場の組合員が参加し、それぞれの職場特有の悩みなどを伺う機会となっていました。私からは委員長だった時、安全衛生委員会を通して労使で確認した内容をはじめ、徴収職員という立場で実際に対応した特定案件について報告しています。

① 間違ったクレーマー対応の典型例は、クレーマーが不合理な要求をしている場面でも、謝罪し、なだめ、譲歩して、何とか穏便に収めようとするケースです。このような対応は、クレーマーの「納得・了解」を得ることをめざすものです。しかし、一般の顧客や住民の苦情への対応であればともかく、理不尽なクレーマーの「納得・了解」を得ようとすればクレーマーの言いなりになるしかありません。理不尽なクレーマーへの対応では「納得・了解」をめざすのではなく、「要求を断り、あきらめさせる」ことがゴールになることが最も重要なポイントです。

② 要求を断るのを難しくしている大きな原因は、相手は顧客や住民だからという関係性があるからです。しかし、不合理な要求を繰り返している人は顧客や住民という意識を捨てて、「対等・公平」の関係で話をすることが必要です。対応を変えることで激昂するケースもあるかも知れませんが、理不尽なクレーマーに対し、要求が通らないことを理解させ、あきらめさせるための重要な第一歩になります。

③ 上記のような峻別について組織的に合意形成をはかることが重要です。電話も含め、直接話した相手の対応ぶりが批判されたとしても、理不尽なクレーマー側の言い分を真に受けないという組織的な意思統一が欠かせません。

④ 一般の顧客や住民とは異なる理不尽なクレーマーであると認定するにあたり、組織的な手順を整理し、認定した場合の必要な周知をあらかじめまとめておく必要があります。

⑤ 上記のような総論的な位置付けを確認した上、個別のケースに対応する手順等を検討していくべきものと考えています。

上記は組合が安全衛生委員会に提出した資料の中の一文です。理不尽なクレーム対応に精通されている弁護士らの意見を参考にまとめています。このような考え方や対応について、当日の安全衛生委員会の場で基本的な方向性を一致させています。

民間の顧客対応との違いが市側から言及された際、組合からは理不尽なクレーマーと認定していた場合も、まず話は伺わなければならないという民間とは異なる意味合いでの難しさがあることを指摘していました。

個別ケースに対応する手順等は職場ごとにまとめる必要があります。私自身が所属する部署に関しては、組合役員の立場からも職員全体の「安心」につながるような方策を検討し、実際にその方針で対応をはかっていきました。

相手側の厳しい言葉で自分自身の心を痛めないための割り切りが必要です。とは言え、ある程度「免疫力」がなければ上記のような対応を実践することも難しいはずです。そのため特定案件の対応者をあらかじめ絞り込み、長年、この職務に携わってきた私自身が担当することになりました。

その際、最も重視した心構えとして、あくまでも理不尽な苦情等が問題視すべき点であり、そのような言動が見られない限り、他の案件の方々と同様、懇切丁寧な対応に努めました。苦情を申し立てるから「厚遇する」という立場では臨まず、運用上の措置として受け入れられる範囲内で相手方の言い分にも、しっかり耳を傾けてきました。

私の報告の後、誰も矢面に立ちたくない場合はどうするのか、対話と滞納処分という圧力を持ち得る職場との違いもあるのではないか、このような意見が示されています。前者に関しては、そのような場合、役職者が前に出ざるを得ないのではないかと答えています。過去、課長が個別案件を担当したケースがあったことも補足していました。

確かに個々の職場特有の悩ましさがあり、各論としてのマニュアルは一律化できないものと考えています。それでも前述したとおり官民問わず、カスハラ対策は進めなければならない喫緊の課題です。誰一人、メンタル不調を来すことのない職場をめざし、総論的な考え方を共有化し、組織的な体制を整えていくことが重要であるはずです。

|

« 多面的な情報によって変わる評価 | トップページ | 会計年度任用職員制度の課題 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 多面的な情報によって変わる評価 | トップページ | 会計年度任用職員制度の課題 »