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2024年3月30日 (土)

二階元幹事長と大谷選手、好対照な記者会見

前回記事は「不適切にもほどがある政治家の言動」でした。その記事の中で取り上げていたドラマ『不適切にもほどがある!』は昨夜、最終回を迎えていました。「不適切にも」で脚本クドカンが伝えたかった2文字とは…』のとおり「寛容」という言葉が心に刺さっています。

さらに番組の最後に映し出された「この作品は不適切な台詞が多く含まれますが 時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み 2024年当時の表現をあえて使用して放送しました」というテロップの意図する奥深さがネット上で話題になっています。

X(旧ツイッター)に「未来から見れば、私らの時代も不適切になるんだよな。結局、誰かの正しいは誰かの間違いだし、人それぞれって1番難しいもん」という書き込みがあります。だからこそ「寛容が肝要」になるのだろうと思い起こしています。

とは言え、裏金問題に真摯な対応をはかれない政治家の皆さんに対し、生半可に寛容さを発揮できるものではありません。自民党の二階俊博元幹事長が記者会見を開きましたが、二階氏、年齢の質問に不快感「お前もその年が来る」「ばかやろう」』という報道のような傲慢さやお粗末さをアピールしています。

次期衆院選への不出馬を表明した自民党の二階俊博元幹事長(85)が25日の記者会見で、年齢に関する記者の質問に「ばかやろう」などと不快感を示す場面があった。

二階氏は党本部で開いた記者会見で、二階派(志帥会)の元会計責任者が政治資金パーティー収入の虚偽記載で在宅起訴されたことについて「政治不信を招く要因となったことに、深くおわびを申し上げる」と陳謝。次期衆院選に出馬しない意向を表明した。

その後、記者から「不出馬を決めたのは政治資金パーティーの不記載の責任を取られたのか、それともご自身の年齢の問題なのか」と問われると、ぶぜんとした表情で「(出馬について)年齢には制限があるか」と記者を問いただした。

記者は「制限はない」と答えたが、二階氏は怒りが収まらない様子で「お前もその年(が)来るんだよ」「ばかやろう」と続けた。二階氏は当選13回で、現職の国会議員で最高齢。【毎日新聞2024年3月25日

下を向いたまま「政治不信を招く要因となったことに対し、改めて国民と地元の皆様に深くお詫び申し上げる。派閥の会計責任者と私の秘書が刑事処分を受けているが、政治責任は当然、すべて監督責任者の私自身にある」という原稿を棒読みしている姿は、とても本気で謝罪しているようには思えませんでした。

記者との質疑応答も林幹雄元幹事長代理が代わりに回答する場面ばかり目立ち、本人が言葉を発せば「ばかやろう」という暴言、謝罪会見とは程遠い党内処分を回避するためのアリバイ作りの場であることが露見しています。そもそも超高齢議員が次期選挙に出馬しないことを表明しただけで、処分の対象から外れるようでは問題だろうと思っています。

記者会見と言えば、ドジャースの大谷翔平選手も専属通訳を務めていた水原一平氏の違法賭博問題で記者会見を開いています。声明を読み上げる場であり、記者との質疑応答はしないという情報が事前に伝わっていました。二階元幹事長の時のように開くことによって、印象を悪くしてしまわないかどうか危惧していました。

記者会見での発言内容は『【会見全文】大谷翔平選手「僕の口座に勝手にアクセスして、ブックメーカーに送金していた」』のとおりですが、通訳がはさまれますので原稿を読み上げているという印象は薄れていました。

まず皆さん、来ていただいてありがとうございます。僕も話したかったのでうれしく思っています」という感謝の言葉で始まり、全体を通して前を向いて自分の考えに思いを巡らしながら語る姿は誠実さを感じ取れています。

これが今、お話しできるすべてなので、質疑応答はしませんが、これからさらに進んでいくと思います。以上です。ありがとうございました」 という大谷選手の言葉で記者会見は終わっています。質疑応答のない終わり方も紛糾することなく、記者会見前に抱いていた危惧は杞憂だったようです。

ただ大谷選手の口座から450万ドル(約6億8千万円)が、どのように送金されたのかどうか具体的な説明はなく、すべてクリアになった訳ではありません。水原氏が最初に説明した「大谷選手が肩代わりしてくれた」という話のほうこそ事実であり、大谷選手が「一平さんはウソをついている」という指摘がウソである可能性も否めません。

桁違いな大金ですが、大谷選手であれば信頼していた水原氏のために肩代わりしてしまったのではないか、そのように想像してしまいがちです。しかし、純粋な好意から手を染めた行為が、大谷選手に対しても重大な影響を及ぼすことが分かり、水原氏は説明を一変させたのではないかとも考えていました。

数多くのスポンサーや球団との関係から正直に語れないのかも知れませんが、大谷選手にウソは絶対似合いません。正直に語った上で相応のケジメを付け、プレイに集中して欲しいものと願っていました。

数日前まで、そのように考えていましたが、YouTubeで『水原通訳の妻が大谷へ涙の本音「これだけは伝えたいんです...」夫の違法賭博に何を語るのか』という動画を見て認識が変わっています。動画の中で、水原氏の妻が「本当に申し訳なく、取り返しのつかないことをしてしまいました」と大谷選手に謝罪していることを伝えています。

このことだけで認識が変わった訳ではありません。大谷選手は「ギャンブルに関しての問題を初めて知ったのは、韓国の第1戦が終わった後のチームミーティングの時です」と説明しています。その後、ホテルに帰ってから二人で話し、さらに代理人も加えて聞き取る中で詳細を把握できたという説明です。

韓国での開幕戦まで大谷選手と水原氏の親密な距離感を感じ取れる姿が映し出されていました。詳細を把握した以降、明らかに大谷選手は水原氏と距離を置くようになっています。大谷選手が記者会見で説明した時系列に沿って、そのような距離感の違いを照らし合わせれば説明内容の真偽を裏付けられるように思い始めていました。

つまり大谷選手が事実を語り、水原氏がウソをついているという見方につながっています。このあたりも計算し、大谷選手がチームミーティングの前と後の振る舞い方を変えているとしたら二重の意味で騙されていることになります。しかし、大谷選手がそこまでウソをつける人物ではないものと信じ、これからの活躍ぶりで不信感を拭っていけることを願っています。

実は今回の記事タイトルは最初「二階元幹事長と大谷選手、好対照な記者会見」ではありませんでした。マイナスになるのか、プラスにつながるのか、好対照だった二つの記者会見の話は前振りのつもりでした。いつものことですが、書き進めるうちに思った以上に長くなってしまい、途中で記事タイトルを変えています。

熊本知事選の結果を伝える「保守王国」熊本で薄めた自民色  知事選初当選・木村敬氏の作戦』という報道などを紹介しながら本題に入ろうと考えていましたが、長い記事になっていますので今回の記事はここで区切りを付けます。ちなみに最初に予定しながら先送りしたタイトルは「残念な与党、されど野党」でした。

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2024年3月23日 (土)

不適切にもほどがある政治家の言動

金曜夜のドラマ『不適切にもほどがある!』を毎週見ています。昭和の頃の常識、もしくは問題視されていなかった事例が、今の基準に照らせば「不適切にもほどがある」という図式をモチーフにしたドラマです。

毎回、笑いを交えながら展開するストーリーは、昭和のハラスメントの事例などが「不適切だった」としても、短絡的に現状を肯定して良いのかどうかという問題提起を含ませています。特に昨夜の「ワンチャン」「決めつけないで」「切り取らないで」という訴えは、いろいろ考えさせられています。

1回の過ちによって、取り返しのつかない事態に陥る場合があります。車の運転ミスでの死亡事故、酔っ払い過ぎた結果の違法行為などを思い浮かべています。飲酒運転だった場合の悪質性、犯した結果の重大性などが加味され、それこそ人生を棒に振る事態につながりかねません。

一方で、その1回の過ちが本当に人生を棒に振るわせ、再起に向けてワンチャンスも与えられないほど悪質なものなのかどうか、冷静にジャッジする必要性もあります。『不適切にもほどがある!』は過剰なバッシングや責任の問い方について、ドラマを通して令和の時代を生きる私たちに語りかけてくれているものと思っています。

前回記事は「過ちに対する責任の処し方」でしたが、過ちに対して必要以上に重い責任を問うつもりで綴っていません。過ちを繰り返さないためには事実関係を詳らかにした上で、過ちの度合いに見合った責任の処し方が求められています。最近、そのような認識から程遠い政治家の振る舞いが目に付きがちです。

自民党は22日の参院予算委員会理事懇談会で、露出の多い衣装の女性ダンサーを招いた党和歌山県連主催会合を巡る報告書を提出した。県連青年局長だった川畑哲哉県議(自民離党)が1人で企画し「サプライズにしようと思った」と説明しており、党本部や県連、参加者に事前に周知せず、政党交付金からの支出はなかったとした。

報告書は21日付で、自民組織運動本部が県連関係者や会合参加者に聴取するなどして作成した。会合には約50人が参加し「チップを口にくわえてダンサーに渡す行為や、水着に挟み込む行為があった」と説明。会合費用は参加者1人当たり5千円の会費と県連の一般会計を充てており、政党交付金は含まれないとした。

党本部からは青年局の役職を辞任した藤原崇、中曽根康隆両衆院議員が出席した。会合の際、参加者から「会の趣旨にそぐわない余興だ」との苦言があり、余興の撮影は削除するようアナウンスしたという。会合後、県連役員が川畑氏を注意し、青年局長の辞任を求めたが、川畑氏は拒否したとの経緯も報告された。【KYODO 2024年3月22日

上記は共同通信が配信した記事ですが、「自民、ダンサー会合の報告書提出  県議が企画、事前周知せず」という見出しが付けられています。昭和の時代であれば許されていた、私的な懇親会であれば問題なかった、そのような見方も当てはまらないような「不適切さ」も散見していた場だったようです。

川畑県議が中心になって企画したことは間違いないのかも知れません。しかしながら離党した川畑県議一人に責任を押し付け、自民党全体としてのダメージを緩和させたい意図が随所に目立った報告書であるように思えてなりません。本当に事実関係に基づいた報告書なのかどうかという疑念です。

めざまし8の取材で、パーティー翌日の川畑県議のFacebookに「今回、『新感覚のおもてなし』というテーマのもと、『ダイヴァーシティ(多様性)』をコンセプトにして日程を構築させていただきました」と誇らしげに報告していたことが分かっています。

自民党青年局近畿ブロックの会合が開かれた昨年11月以降、3月に入って産経新聞の『自民党青年局近畿ブロック会議後の会合で過激ダンスショー  口移しでチップ渡す姿も  費用は党が支出』というスクープがなければ、関係者の大半は問題性を深刻に受けとめていなかったように見受けられています。

昨夜のnews23では、笑顔で拍手を送っていた市議の一人が「不適切だと感じていたが、盛り上げなければとの思いで拍手してしまった」と釈明していることを報じています。自己保身がにじみ出た釈明に聞こえてしまい、「その場の雰囲気に流され、その時は不適切だとは思っていなかった」と言ってもらえたほうが腑に落ちるように感じています。

「政党交付金は含まれていない」という報告にも違和感があります。税金を原資とした政党交付金を受けている団体が、そのような会合に対して資金面で助成しているのであれば不適切さは免れません。再発防止に向けて事実関係に対して謙虚に向き合うとい姿勢よりも、前述したとおりダメージの緩和を優先した報告の仕方に落胆しています。

問題が取り沙汰された以降の責任の処し方として、党本部の藤原青年局長と中曽根局長代理の辞任、川畑県議の離党という判断は素早かったものと思っています。冒頭に綴ったとおり過ちの度合いに際し、議員辞職まで求めてしまっては行き過ぎだろうと理解しています。議員を続けられるのかどうかは有権者の今後の判断に委ねられているのではないでしょうか。

過激ダンスショーの話だけで長くなっていますが、ディリー新潮の『自民青年局「セクシーダンス懇親会」問題でダンマリを決め込む“もう一人のキーマン”  「地方議員のドン」が果たした役割と取材に対する呆れた“弁明”』という見出しの記事も気になっていました。

早々に辞任を表明した青年局長らと「同格のポジションにいる人物」として、埼玉県議である中央常任委員会の細田善則議長の存在を取り上げています。より重い監督責任を問われる立場でありながら常任委員会議長の権限や地位について正確に理解している者が少ないため、細田議長は「懇親会など知らない」と吹聴していることを伝えています。

責任の問われ方に対し、組織としての公正さや納得感が得られなければ問題です。安倍派を中心にした裏金問題に対する処分のあり方を巡り、今後の自民党内の判断が注目されています。このあたりについては次回以降の記事で掘り下げていくつもりです。

今回の記事タイトルに掲げた「不適切にもほどがある政治家の言動」として、もう一つ『吉幾三、動画で機内の国会議員「非常に横柄」、CAから「自民長谷川岳氏では」手紙もらう』という話題についても取り上げようと考えていました。こちらは一言だけにとどめることになりますが、政治家の言動は常に注視され、重いものであることをご理解願えればと思っています。

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2024年3月16日 (土)

過ちに対する責任の処し方

最近、よく閲覧しているFacebookに「いいね!」をクリックすることが多くなっています。少し前までは閲覧だけにとどめていました。そもそも自分のFacebookを開設したのは他のサイトを閲覧するためのもので、まったく手を加えることなく、放置したままです。

自己紹介にブログ「公務員のためいき」のURLを掲げ、投稿画面のトップに「閲覧用にFacebookを開設しています。日々、私自身の思うことはブログに綴っています。毎週1回、土曜か日曜に更新していますのでご覧いただければ幸いです」と案内しているだけでした。

まだまだFacebook初心者ですが、少し前から知り合いの方のFacebookに「友達リクエスト」を始めています。さっそく多くの方に承認いただき、中にはメッセージをお寄せくださった方もいらっしゃいました。お忙しい中、ご対応いただいた皆さん、ありがとうございました。

ここで省みるべき話として、少し前までは私のFacebookに「友達リクエスト」が届いていたとしても、まったく反応していませんでした。前述したような経緯で開設した「休眠」サイトとは言え、ずっと無視してきたことになり、その節はたいへん失礼致しました。

このように本人の意に反し、相手方に対して礼を失してしまう場合があります。上記の場合、仕組みに対する理解不足、届いていること自体を把握していなかったという理由があげられます。承認しなかったからと言って、ただちに「友達」関係が険悪になるものではなく、それほど深刻に考えている訳ではありません。

しかし、ルールに対する理解不足や問題を把握していなかったことで、取り返しのつかない大きな過ちにつながる場合もあります。前回記事「会計年度任用職員制度の課題」の中で、季刊誌「とうきょうの自治」の連載記事「新着資料紹介」 を引き受けた際、人事課に兼業許可申請書を提出したことを伝え、次のように記していました。

1回あたり6千円ほどの報酬を継続的に得るため、必要な手続きでした。この手続きを怠ったり、もしくは制度に対する理解不足から対応していなかった場合、後々大きなペナルティを課せられる恐れがあります。定められたルールへの違反に「この程度であれば問題ないと思っていた」「許可が必要だったとは知らなかった」などという言い訳は通用しません。

公務員は兼業が原則として禁止されています。ただ上記のとおり申請し、許可を得ることで一定の範囲内で認められることになります。同じような構図として、安倍派を中心にした政治資金パーティーを巡る問題を思い浮かべています。キックバック分を収支報告書に記載しておけば違法性は問われず「裏金」批判も受けなかったはずです。

木曜日、初めて参議院で政治倫理審査会が開かれています。真相解明が進むとは思われていませんでしたが、自民党参院幹事長だった世耕弘成参院議員の説明ぶりが猛批判されています。毎日新聞は『世耕氏に与党からブーメラン  野党時代のX投稿を公明議員が追及』という見出しを付け、次のように報じています。

14日の参院政治倫理審査会(政倫審)で、世耕弘成・前自民党参院幹事長はパーティー券収入のキックバック(還流)について「秘書に任せていたので知らなかった」などと、あいまいな説明に終始した。これに対し、公明党議員は過去のX(ツイッター)での投稿を取り上げて矛盾を追及。連立政権を組む与党から「ブーメラン」が飛んできた形だ。

世耕氏は自民党が野党だった2010年1月、当時民主党の幹事長だった小沢一郎氏の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件に関連し、Xで「私の事務所は初当選以来、1円単位できちんと記帳しています」とアピール。2月には「収支報告時には、貴重な限られた時間を犠牲にして、担当秘書にひとつひとつ質問しながらじっくりと確認した上で書類を提出している」と投稿した。

この日の政倫審で、公明党の竹谷とし子氏はこれらの投稿を引用。「(収支報告時の確認を)途中でやめたということか」と問い詰めた。これに対し、世耕氏は「それは今も続けている。(還流されたパーティー券収入が)帳簿に出てこなかったということだ。私の管理監督不行き届きに尽きる」と答えるしかなかった。

世耕氏は10年2月には「証人喚問は当然。このような疑惑に関して自民党は過去ある程度証人喚問に応じてきましたよ」と投稿したこともある。証人喚問は政倫審と異なり、虚偽の発言をすれば偽証罪に問われるため、真相解明に有効とされる。 立憲民主党の蓮舫氏は、政倫審で「(世耕氏は)何の弁明に来たのか分からない。政倫審の限界を感じた」と述べ、証人喚問の要求を示唆した。【毎日新聞2024年3月14日

日刊ゲンダイは、もっと辛辣に『世耕弘成氏は政倫審でも他人に激辛、自分に大甘…“ウソつき見本市”の特大ブーメラン語録』という見出しのもとに世耕参院議員のダブルスタンダードぶりや不誠実な姿勢を批判しています。自分自身が起訴されなかったら潔白という問題ではなく、明らかにルールに違反していたという自覚の薄さに驚いています。

公務員であれば公金を自宅に持ち帰り、すぐ全額を戻していたとしても処罰され、懲戒免職まで至ります。上司である課長や係長らも管理監督責任を問われ、減給等の懲戒処分を下される場合があります。民間の会社でも同様です。金銭に絡むルール違反に対し、世間一般の常識から比べ、あまりにも不明確な責任の処し方に国民の怒りが高まっています。

定期代等の通勤手当の支給を受けながら、配偶者の車に同乗していた場合、やはり懲戒処分の対象になります。全額弁済したとしても減給等のペナルティが課せられます。制度に対する理解不足から「このような場合は問題ない」という認識だったかも知れません。しかしながらルール違反という認識の有無に関わらず、過ちはその度合いに対して責任を問われていくことになります。

かなり前の記事「責任の処し方、あれこれ」の最後のほうで「自治体の例で考えれば、大多数の住民から納得を得られる責任の処し方なのかどうか、その思いを感知することが重要である」と記しています。今の自民党や岸田総理らの感知力の低さに国民の多くが失望しているはずです。

さらに「説明責任」という言葉が、これほど軽いものだったのかと嘆く声が巷に溢れています。過ちに対する責任の処し方、このあたりの納得感が得られない限り、信頼感が高まることはあり得ません。ルールに違反しながら国会議員は大きなペナルティを課せられないまま許されてしまうようでは大きな問題であり、真相を解明し、過ちに対する責任の所在が明らかにされていくことを切望しています。

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2024年3月 9日 (土)

会計年度任用職員制度の課題

前回の記事「進めなければならないカスハラ対策」は久しぶりに組合が取り組んでいる課題を中心にまとめていました。今回も「会計年度任用職員制度の課題」というタイトルを付け、継続的に組合が力を注いでいる課題について取り上げます。

これまで当ブログでは「会計年度任用職員」「会計年度任用職員制度の労使協議を推進」「会計年度任用職員制度、労使協議の現況」「会計年度任用職員制度、労使合意」「会計年度任用職員制度の組合説明会」など、会計年度任用職員制度に関わる記事を数多く投稿しています。

2年前には「不安定雇用の会計年度任用職員」「会計年度任用職員の雇用継続に向けて」という記事があり、この内容をもとにまとめた参考資料「会計年度任用職員の雇用継続に向けた組合の考え方」という文書を執行委員会で確認しています。この文書は団体交渉における市側の責任者である副市長をはじめ、当時の市長にも直接手渡していました。

昨年9月の記事「身近な政治、市長選の話」の中で伝えているとおり新市長とは、都議時代から私どもの組合と推薦関係があり、20年以上前から顔見知りの方です。組合の委員長は退いていましたが、このような関係性があったため、前市長に渡した資料を参考までに新市長にもお渡ししています。

やはり昔から顔馴染みの先輩が新市長の政策ブレーンとして参与に就任していたため、この参考資料「会計年度任用職員の雇用継続に向けた組合の考え方」を渡しています。現職の時、詰め切れなかった課題だったという意識があり、現委員長らに報告しながら独自の判断で動いていました。

課題に対する詳しい経緯等はリンク先の記事で詳述していますが、要約すると次のとおりです。かなり前から私どもの組合は、保育園、学童保育所、学校事務職場などで働く嘱託職員の皆さんの組合加入を進めてきています。そして、労使交渉の積み重ねによって65歳までの雇用継続を確認してきました。

それが会計年度任用職員制度が始まり、5年で雇止めされるかも知れないという不安定な雇用に後戻りしています。このような理不尽さを何としても解消したいため、現職の組合役員を離れていますが、労使交渉を側面支援できるような機会を常々探っていました。

新市長らに参考資料を渡したこと以外、もう一つ貴重な機会に恵まれていました。昨年8月の記事「ベーシックサービスと財源論 Part2」の中で、季刊誌「とうきょうの自治」の連載記事「新着資料紹介」を担当することになったという話を伝えています。

担当してから3回目となる最近発行された冬号で、自治労総合組織局が編著した『会計年度任用職員の手引き』を紹介しています。私自身の寄稿した内容ですが、許可を得ず、このブログに転載することは控えなければなりません。したがって、そのまま利用するものではなく、連載記事の内容に沿って私自身の問題意識を改めて示していくつもりです。

前述したとおり組合役員を長く務めてきたため、連載記事の中で会計年度任用職員のことを取り上げられればと考えていました。今回、まさしく発行されたばかりの新着資料として『会計年度任用職員制度の手引き』を紹介できる機会を得ていました。

表紙には「法律から組織化までのすべてを解説!~この労働条件は当たり前?その疑問に答えます~」という副題が添えられています。会計年度任用職員制度に関わる方々、関心を寄せられている方々、すべての方に手にしてもらいたい貴重な資料としての手引きだと言えます。

先日『自治体の非正規職員、6.9%増  74万人、財政難で正規増えず』という報道に接しています。自治体職員の4人に1人が会計年度任用職員であり、常勤職員とともに地方行政の重要な担い手となっています。このような現況を受け、地方自治法、地方公務員法の一部が改正され、2020年4月から会計年度任用職員制度がスタートしています。

それまで自治体ごとに曖昧だった任用の明確化や期末手当の支給等が可能になりました。「官製ワーキングプア」と揶揄される賃金労働条件の改善が一歩前進したことも事実ですが、まだまだ同一労働同一賃金の趣旨から程遠い現況です。

背景の一つとして、法改正の趣旨がいまだ全国の自治体当局に浸透していない実態もあり、会計年度任用職員が不安定な雇用にとどめられています。さらなる法改正が必要な課題だった勤勉手当の支給は、自治労の粘り強い取り組みによって今年4月から会計年度任用職員にも支給できるようになっています。

一方で、法改正の必要はなく、現行制度によって対応できるはずの課題も不充分なままであることが目立っています。当事者や組合の最も切実な訴えは雇用継続の課題です。総務省がまとめた事務処理マニュアルでは「公募によらない再度の任用は連続2回を限度」とし、東京都は連続4回を原則としているため、多くの会計年度任用職員が雇止めの不安にさらされています。

しかしながら法律上、同一の会計年度任用職員が再度任用される回数に上限は定められていません。さらに「上限を設けることが地公法第13条の平等取扱いの原則に違反する可能性を指摘し、上限を撤廃させる必要があります」と紹介した手引きの中には記されています。

法的に会計年度任用職員の任期は一会計年度内であり、任用を自動的に更新することはできません。このような制約があることを受けとめながら再度の任用において、客観的な能力の実証を日常的な人事評価によって対応している自治体が多いのではないでしょうか。

手引きには「選考においては公募を行うことが法律上必須ではない」とも記されています。どうしても再度の任用回数の上限を撤廃できなかった場合、競争試験だけは避け、引き続き任用を希望する現職者を対象とした選考試験での対応が望ましいのではないか、このように私自身や私どもの組合は考え、市側に訴え続けています。

雇止めの不安をなくし、現職者の培ってきた業務に対する知識や経験を活かしていくことが住民サービスの質の維持向上につながっていくものと確信しています。『会計年度任用職員制度の手引き』を通読することで、このことを改めて認識する機会となっていました。

以上が「新着資料紹介」に綴った内容となりますが、文体は「である調」です。「ですます調」に変えながら必要な文章整理や新たな情報なども加えています。ちなみに許可を求めれば、このブログで全文をそのまま転載することの了解は得られるのだろうと思っています。

少し話は横道にそれますが、連載記事を引き受けた際、人事課に兼業許可申請書を提出しています。1回あたり6千円ほどの報酬を継続的に得るため、必要な手続きでした。この手続きを怠ったり、もしくは制度に対する理解不足から対応していなかった場合、後々大きなペナルティを課せられる恐れがあります。

定められたルールへの違反に「この程度であれば問題ないと思っていた」「許可が必要だったとは知らなかった」などという言い訳は通用しません。しかしながら安倍派を中心にした多くの国会議員は、ルールに違反しながら大きなペナルティを課せられないまま逃げ切ってしまうようであり、このような違いの理不尽さに憤りを覚えがちです。

会計年度任用職員制度の話に戻し、私どもの組合の最近の動きにも少し触れていきます。1月末の団体交渉で会計年度任用職員の勤勉手当の支給月数を年間0.3月という提案があったことに驚きました。東京都に準拠するのであれば年間2.25月でなければ問題です。

現職の時は朝、昼、夜と組合事務所に足を運んでいました。今は昼休みに顔を出す程度です。その交渉の数日前、たまたま委員長と書記長の「再任用職員の賃金水準との逆転現象をどうするべきか」という話を耳にしました。

普段、聞こえていてもスルーするようにしていますが、その時だけは、やぶ蛇になることが心配だったため「あまり持ち出さないほうが良いのでは」と一言添えていました。このタイミングで組合が同時解決を強く要求していた訳ではなかったようですが、0.3月という市側の提案は再任用職員と逆転しないように試算したものだったという話でした。

組合は猛反発し、推薦市議とも連携をはかった後、2月に入ってからの交渉で都準拠の水準に改めさせることができています。再任用職員の賃金水準の問題は切り離し、今後の課題として先送りしたことで労使合意に至りました。財源の問題もあったはずですが、短期間で修正をはかれたことは推薦市議や新市長らの動きも大きかったのかも知れません。

切実な雇用継続の課題に関しても動きがありました。現職者は書類・筆記等による選考(1次試験)を免除し、面接試験(2次試験)のみを受けることになります。一歩前進したとも言えますが、新規採用希望者と競い合わせることの問題は解消できていません。

公私で忙しい中、いろいろ現職の皆さんは、たいへんだと思います。それでも会計年度任用職員制度の課題に対しては、昨年6月の記事「労使の信頼関係について思うこと」に託したとおり労使対等原則のもとに交渉を重ね、ぜひとも、より望ましい制度の運用に向けて力を尽くされていくことを期待しています。

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2024年3月 2日 (土)

進めなければならないカスハラ対策

前回の記事は「多面的な情報によって変わる評価」でしたが、自民党の裏金問題に関わる政治倫理審査会を巡る一連の動きは、まさしく多面的な情報に連日触れられる機会でした。突然、岸田総理が出席することになり、完全公開での開催となりました。このような自民党の迷走が今後、どのように評価されていくのか興味深いところです。

一昨年11月に組合の執行委員長を退任した以降、このブログの題材は必然的に時事の話題が中心となっています。組合に関わる話は減っていましたが、久しぶりに今回「進めなければならないカスハラ対策」という記事タイトルのもと組合が取り組んでいる課題について書き進めていきます。

現職の時だった2022年6月にカスハラに対する考え方」という記事を投稿していました。ココログのアクセス解析「リアルタイム足あと」を確認すると、毎日のように検索キーワードからその記事に訪れてくださる方を見かけています。それほどカスタマーハラスメント、略してカスハラという言葉が注目を集めているのだろうと思っています。

つい最近“カスハラ防止条例” 東京都が全国初の制定目指す』『東京都が「カスハラ防止条例」制定へ 「東京ならではのルールが強く求められている」と小池百合子知事』という新たな動きにも接しています。少し長くなりますが、東京新聞の記事内容をそのまま紹介します。

東京都は、顧客による暴言や理不尽な要求などの迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の防止条例を制定する方針を固めた。都によると、カスハラ防止に特化した条例は全国初となる。民間だけでなく、公務員へのカスハラも後を絶たず、条例を法的根拠に、カスハラ防止の周知啓発を進めたい考えだ。

小池百合子知事は20日開会した都議会定例会の施政方針演説で、カスハラ被害が都内の企業で深刻化しているとして「東京ならではのルール作りが強く求められている」と強調した。条例案の提出時期については閉会後、記者団に「早期になることを期待している」と述べた。

都は昨年10月、東京商工会議所や連合東京など経営者・労働者団体の代表、学識経験者らによるカスハラ対策検討部会を設置。条例制定が有効とする意見が多数を占める一方、罰則規定については消極的な声が大半だった。都は部会での議論を踏まえ、今後条例案の具体内容を詰める。

日本最大の産業別労働組合「UAゼンセン」が2020年、サービス業に従事する233組合の組合員を対象に実施した調査では、過去2年で顧客から悪質なクレームなどの行為を受けた人は56.7%。具体例には「レジの接客態度が悪いと呼ばれて、到着すると胸ぐらをつかまれ、引きずられた」「『おまえはカスだ』と威圧的な言葉で言われ続けた」などがあった。

被害は公務員にも及ぶ。全日本自治団体労働組合(自治労)が20年、自治体の職員約1万4000人を対象に実施した調査では「過去3年間で迷惑行為や悪質クレームを受けた」は46%に上った。

秋田県は、22年4月施行の「県多様性に満ちた社会づくり基本条例」で、他人への優越的な関係を背景とした不当な要求などの禁止を明記。条例に伴う指針では、カスハラの具体例や判断の際に配慮するべき点を示している。【東京新聞2024年2月20日

NHKの報道では、連合のアンケート調査によるカスハラが増加した理由を紹介しています。「格差、コロナ禍などの社会の閉塞感などによるストレス」が最も多く、次いで「過剰な顧客第一主義の広がり」「人手不足によるサービスの低下」「SNSなどの匿名性の高い情報発信ツールの普及」などとなっています。

カスハラを受けたことの影響として、最も多かったのは「出勤が憂鬱になった」で、次いで「心身に不調をきたした」「仕事に集中できなくなった」「眠れなくなった」などとなっていました。このような現況を踏まえ、連合は「企業・業界が自ら職場の状況に応じたガイドラインなどを策定し、ハラスメントが起きない環境を作ることが重要だ」と訴えています。

カスハラ問題に詳しい関西大学の池内裕美教授は「お客様第一主義を経営理念として掲げる企業が多いが、サービス水準がどんどん上がり、客が求める水準に企業側が応え続けるのが難しくなっていて、そのギャップが大きな不満につながる。その前提として格差社会や少し前にはコロナ禍などによるストレスもあって感情を抑えられず、弱い者いじめのように店員などを攻撃し、カスハラに発展する」と分析しています。

池内教授は今回、東京都がカスハラを防ぐための条例の制定に向けた検討を進めることについて「条例ができれば、企業はカスハラへの対策をより打ち出しやすくなるので、都以外の自治体でも条例の制定の動きが広まって欲しい」とNHKの報道の中で語っています。

先週月曜に開かれた連合三多摩「2024春季生活闘争を成功させる連合三多摩の集い」の記念講演も「カスタマーハラスメントをなくす社会をつくるために」というテーマでした。組合役員時代、ほぼ毎年、参加していた集会です。昨年3月は退任していましたが、協力委員の一人として会場に足を運んでいました。

昨年の記念講演は慶応大学の井手英策教授の「ベーシックサービス宣言~分かち合いが変える日本社会~」でした。たいへん興味深い内容だったため、このブログでベーシックサービス宣言」という記事を投稿しています。さらに8月には「ベーシックサービスと財源論」 「ベーシックサービスと財源論 Part2」という記事まで投稿していました。

カスハラの話に戻しますが、私どもの組合も2月1日にカスハラに関する意見交換会を催しています。現委員長に誘われ、関心のあるテーマでしたので私も参加した意見交換会です。最初に自治労の動画「カスタマーハラスメントのない良好な職場をめざして」を見た後、参加者で意見を交わしています。

人数は少なかった会でしたが、子育てや福祉職場の組合員が参加し、それぞれの職場特有の悩みなどを伺う機会となっていました。私からは委員長だった時、安全衛生委員会を通して労使で確認した内容をはじめ、徴収職員という立場で実際に対応した特定案件について報告しています。

① 間違ったクレーマー対応の典型例は、クレーマーが不合理な要求をしている場面でも、謝罪し、なだめ、譲歩して、何とか穏便に収めようとするケースです。このような対応は、クレーマーの「納得・了解」を得ることをめざすものです。しかし、一般の顧客や住民の苦情への対応であればともかく、理不尽なクレーマーの「納得・了解」を得ようとすればクレーマーの言いなりになるしかありません。理不尽なクレーマーへの対応では「納得・了解」をめざすのではなく、「要求を断り、あきらめさせる」ことがゴールになることが最も重要なポイントです。

② 要求を断るのを難しくしている大きな原因は、相手は顧客や住民だからという関係性があるからです。しかし、不合理な要求を繰り返している人は顧客や住民という意識を捨てて、「対等・公平」の関係で話をすることが必要です。対応を変えることで激昂するケースもあるかも知れませんが、理不尽なクレーマーに対し、要求が通らないことを理解させ、あきらめさせるための重要な第一歩になります。

③ 上記のような峻別について組織的に合意形成をはかることが重要です。電話も含め、直接話した相手の対応ぶりが批判されたとしても、理不尽なクレーマー側の言い分を真に受けないという組織的な意思統一が欠かせません。

④ 一般の顧客や住民とは異なる理不尽なクレーマーであると認定するにあたり、組織的な手順を整理し、認定した場合の必要な周知をあらかじめまとめておく必要があります。

⑤ 上記のような総論的な位置付けを確認した上、個別のケースに対応する手順等を検討していくべきものと考えています。

上記は組合が安全衛生委員会に提出した資料の中の一文です。理不尽なクレーム対応に精通されている弁護士らの意見を参考にまとめています。このような考え方や対応について、当日の安全衛生委員会の場で基本的な方向性を一致させています。

民間の顧客対応との違いが市側から言及された際、組合からは理不尽なクレーマーと認定していた場合も、まず話は伺わなければならないという民間とは異なる意味合いでの難しさがあることを指摘していました。

個別ケースに対応する手順等は職場ごとにまとめる必要があります。私自身が所属する部署に関しては、組合役員の立場からも職員全体の「安心」につながるような方策を検討し、実際にその方針で対応をはかっていきました。

相手側の厳しい言葉で自分自身の心を痛めないための割り切りが必要です。とは言え、ある程度「免疫力」がなければ上記のような対応を実践することも難しいはずです。そのため特定案件の対応者をあらかじめ絞り込み、長年、この職務に携わってきた私自身が担当することになりました。

その際、最も重視した心構えとして、あくまでも理不尽な苦情等が問題視すべき点であり、そのような言動が見られない限り、他の案件の方々と同様、懇切丁寧な対応に努めました。苦情を申し立てるから「厚遇する」という立場では臨まず、運用上の措置として受け入れられる範囲内で相手方の言い分にも、しっかり耳を傾けてきました。

私の報告の後、誰も矢面に立ちたくない場合はどうするのか、対話と滞納処分という圧力を持ち得る職場との違いもあるのではないか、このような意見が示されています。前者に関しては、そのような場合、役職者が前に出ざるを得ないのではないかと答えています。過去、課長が個別案件を担当したケースがあったことも補足していました。

確かに個々の職場特有の悩ましさがあり、各論としてのマニュアルは一律化できないものと考えています。それでも前述したとおり官民問わず、カスハラ対策は進めなければならない喫緊の課題です。誰一人、メンタル不調を来すことのない職場をめざし、総論的な考え方を共有化し、組織的な体制を整えていくことが重要であるはずです。

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