二階元幹事長と大谷選手、好対照な記者会見
前回記事は「不適切にもほどがある政治家の言動」でした。その記事の中で取り上げていたドラマ『不適切にもほどがある!』は昨夜、最終回を迎えていました。『「不適切にも」で脚本クドカンが伝えたかった2文字とは…』のとおり「寛容」という言葉が心に刺さっています。
さらに番組の最後に映し出された「この作品は不適切な台詞が多く含まれますが 時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み 2024年当時の表現をあえて使用して放送しました」というテロップの意図する奥深さがネット上で話題になっています。
X(旧ツイッター)に「未来から見れば、私らの時代も不適切になるんだよな。結局、誰かの正しいは誰かの間違いだし、人それぞれって1番難しいもん」という書き込みがあります。だからこそ「寛容が肝要」になるのだろうと思い起こしています。
とは言え、裏金問題に真摯な対応をはかれない政治家の皆さんに対し、生半可に寛容さを発揮できるものではありません。自民党の二階俊博元幹事長が記者会見を開きましたが、『二階氏、年齢の質問に不快感「お前もその年が来る」「ばかやろう」』という報道のような傲慢さやお粗末さをアピールしています。
次期衆院選への不出馬を表明した自民党の二階俊博元幹事長(85)が25日の記者会見で、年齢に関する記者の質問に「ばかやろう」などと不快感を示す場面があった。
二階氏は党本部で開いた記者会見で、二階派(志帥会)の元会計責任者が政治資金パーティー収入の虚偽記載で在宅起訴されたことについて「政治不信を招く要因となったことに、深くおわびを申し上げる」と陳謝。次期衆院選に出馬しない意向を表明した。
その後、記者から「不出馬を決めたのは政治資金パーティーの不記載の責任を取られたのか、それともご自身の年齢の問題なのか」と問われると、ぶぜんとした表情で「(出馬について)年齢には制限があるか」と記者を問いただした。
記者は「制限はない」と答えたが、二階氏は怒りが収まらない様子で「お前もその年(が)来るんだよ」「ばかやろう」と続けた。二階氏は当選13回で、現職の国会議員で最高齢。【毎日新聞2024年3月25日】
下を向いたまま「政治不信を招く要因となったことに対し、改めて国民と地元の皆様に深くお詫び申し上げる。派閥の会計責任者と私の秘書が刑事処分を受けているが、政治責任は当然、すべて監督責任者の私自身にある」という原稿を棒読みしている姿は、とても本気で謝罪しているようには思えませんでした。
記者との質疑応答も林幹雄元幹事長代理が代わりに回答する場面ばかり目立ち、本人が言葉を発せば「ばかやろう」という暴言、謝罪会見とは程遠い党内処分を回避するためのアリバイ作りの場であることが露見しています。そもそも超高齢議員が次期選挙に出馬しないことを表明しただけで、処分の対象から外れるようでは問題だろうと思っています。
記者会見と言えば、ドジャースの大谷翔平選手も専属通訳を務めていた水原一平氏の違法賭博問題で記者会見を開いています。声明を読み上げる場であり、記者との質疑応答はしないという情報が事前に伝わっていました。二階元幹事長の時のように開くことによって、印象を悪くしてしまわないかどうか危惧していました。
記者会見での発言内容は『【会見全文】大谷翔平選手「僕の口座に勝手にアクセスして、ブックメーカーに送金していた」』のとおりですが、通訳がはさまれますので原稿を読み上げているという印象は薄れていました。
「まず皆さん、来ていただいてありがとうございます。僕も話したかったのでうれしく思っています」という感謝の言葉で始まり、全体を通して前を向いて自分の考えに思いを巡らしながら語る姿は誠実さを感じ取れています。
「これが今、お話しできるすべてなので、質疑応答はしませんが、これからさらに進んでいくと思います。以上です。ありがとうございました」 という大谷選手の言葉で記者会見は終わっています。質疑応答のない終わり方も紛糾することなく、記者会見前に抱いていた危惧は杞憂だったようです。
ただ大谷選手の口座から450万ドル(約6億8千万円)が、どのように送金されたのかどうか具体的な説明はなく、すべてクリアになった訳ではありません。水原氏が最初に説明した「大谷選手が肩代わりしてくれた」という話のほうこそ事実であり、大谷選手が「一平さんはウソをついている」という指摘がウソである可能性も否めません。
桁違いな大金ですが、大谷選手であれば信頼していた水原氏のために肩代わりしてしまったのではないか、そのように想像してしまいがちです。しかし、純粋な好意から手を染めた行為が、大谷選手に対しても重大な影響を及ぼすことが分かり、水原氏は説明を一変させたのではないかとも考えていました。
数多くのスポンサーや球団との関係から正直に語れないのかも知れませんが、大谷選手にウソは絶対似合いません。正直に語った上で相応のケジメを付け、プレイに集中して欲しいものと願っていました。
数日前まで、そのように考えていましたが、YouTubeで『水原通訳の妻が大谷へ涙の本音「これだけは伝えたいんです...」夫の違法賭博に何を語るのか』という動画を見て認識が変わっています。動画の中で、水原氏の妻が「本当に申し訳なく、取り返しのつかないことをしてしまいました」と大谷選手に謝罪していることを伝えています。
このことだけで認識が変わった訳ではありません。大谷選手は「ギャンブルに関しての問題を初めて知ったのは、韓国の第1戦が終わった後のチームミーティングの時です」と説明しています。その後、ホテルに帰ってから二人で話し、さらに代理人も加えて聞き取る中で詳細を把握できたという説明です。
韓国での開幕戦まで大谷選手と水原氏の親密な距離感を感じ取れる姿が映し出されていました。詳細を把握した以降、明らかに大谷選手は水原氏と距離を置くようになっています。大谷選手が記者会見で説明した時系列に沿って、そのような距離感の違いを照らし合わせれば説明内容の真偽を裏付けられるように思い始めていました。
つまり大谷選手が事実を語り、水原氏がウソをついているという見方につながっています。このあたりも計算し、大谷選手がチームミーティングの前と後の振る舞い方を変えているとしたら二重の意味で騙されていることになります。しかし、大谷選手がそこまでウソをつける人物ではないものと信じ、これからの活躍ぶりで不信感を拭っていけることを願っています。
実は今回の記事タイトルは最初「二階元幹事長と大谷選手、好対照な記者会見」ではありませんでした。マイナスになるのか、プラスにつながるのか、好対照だった二つの記者会見の話は前振りのつもりでした。いつものことですが、書き進めるうちに思った以上に長くなってしまい、途中で記事タイトルを変えています。
熊本知事選の結果を伝える『「保守王国」熊本で薄めた自民色 知事選初当選・木村敬氏の作戦』という報道などを紹介しながら本題に入ろうと考えていましたが、長い記事になっていますので今回の記事はここで区切りを付けます。ちなみに最初に予定しながら先送りしたタイトルは「残念な与党、されど野党」でした。
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