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2024年2月17日 (土)

もう少し自民党の裏金問題

前回記事「駅頭で訴えた平和への思い、2024年冬」の冒頭でも自民党の裏金問題について触れています。ルールを守れていなかったという過去の問題以上に、現在進行形での今、明らかに嘘だろうという説明や他者に責任転嫁するような姿勢の自民党国会議員の多さに憤りを覚えています。

国民の生命や暮らしに対し、たいへん重い責任を負っている与党政治家の言葉を信じられなくなってしまうようでは大きな問題です。さらに重要な政策が失敗した時に「自分たちの責任ではない、国民が従わなかったからだ」と責任転嫁されるのではないか、このような不信感も生じかねません。

前々回記事「自民党の裏金問題」の最後に「まだまだ書き加えたい内容も思い浮かんでいます」と記していました。今回、記事タイトルに掲げたとおり自民党の裏金問題から広げた論点など、もう少し訴えたかった内容を書き進めていきます。

まず呆れた自民の「裏金」調査報告書…反省ゼロ、中身は安倍派幹部への愚痴だらけ』という見出しの記事のとおり自民党の自浄能力の希薄さが浮き彫りになっています。報告書は事情聴取に同席した弁護士らが作成したようですが、あくまでも自民党内部の調査結果に過ぎません。

ビッグモーター、最近ではダイハツなど民間企業の不祥事に際し、第三者委員会を起ち上げて調査することが通例となっています。その結果、経営者側にとって非常に耳の痛い、隠匿したままにしたかった数々の事例が公表されています。同時に責任の所在も明らかにし、社長らの辞任につながっています。

内部調査にとどまるのか、第三者を中心にした調査とするのかどうかで、やはり導き出される結果は大きく違ってきます。岸田総理が国民からの信頼回復に全力を尽くすと繰り返したとしても、この違いがある限り「どうせお手盛りだろう」「手心を加えているのではないか」という不信感は容易に拭えないはずです。

続いて、安倍派のキックバックの問題です。あまりにも長い間の慣習として続き、先輩や同僚議員らも当たり前のように手を染めてきたため、贖罪の意識の希薄さが目立っています。『西村、萩生田、世耕3氏は早くも“派閥”づくりの囲い込み競争 「もう数に入れたから」と誘われ』という見出しのような記事に触れると呆れてしまいます。

その記事の中で、西村前経産相は「秘書が20人いて、うち3人しか国から給料は出ない。その人件費が年間1億円かかるので、自分で稼ぐために(政治資金)パーティーを開いてきた」などと自身のパーティーについて肯定的に説明し、「派閥幹部だった自分も悪かった」と反省していながらも次のように語っています。

安倍派の裏金づくりについては、「安倍晋三元首相が会長になり、私が事務総長になったときにキックバックの論議があった。しかし、私はすぐに大臣になったので、その後は知らない」と話していた。

西村氏は裏金が100万円あったことを認め、「秘書任せだった」と切り出しながらも、「安倍派のパーティーの収入と書くところを、苦肉の策で自分のパーティーの収入として書いていた」と語った。

政治資金収支報告書への虚偽記載を“自白”した格好だ。自身の責任についても、「党の役職停止か、半年程度でしょう。まさか1年はない。その間だけは謹慎」と「復活」を前提に、反省とはかけ離れた発言をしていた。

金曜から確定申告の受付が始まる中、ますます国民の憤りと上記のような危機意識の乏しさとの落差が顕著になっています。ただ別な視点からも西村前経産相の発言に着目してみるつもりです。「秘書が20人」という言葉についてです。キャリアや選挙区事情によって秘書の人数は大きく異なるのでしょうが、3人のみで対応している国会議員は少ないはずです。

これまで実際お会いしてきた衆院議員の方の事務所スタッフの顔ぶれを思い浮かべると、やはり相応の人数が必要なのだろうと思っています。地元とのつながりや日常的な活動に力を注がず、知名度や党の看板だけで当選を重ねていけるのであれば、3人でも多すぎることになるのかも知れません。

しかし、強力なライバルに負けないためには、選挙区のある地元にも事務所を構え、日頃から地域に密着した活動を重視していかなければなりません。支援者から「選挙の時にしか顔を出さない」と言われるようでは票が逃げていくことになります。

事務所を維持するために一定の人数が必要となり、同じような役割を担うのであれば公設秘書らに準じた勤務条件にしていく必要があります。国から支給される公設秘書給与の一部でも事務所全体で分かち合った場合、以前の記事「ブログで振り返る組合役員時代 Part2で紹介した山本譲司さんのように違法性を問われてしまいます。

前々回記事で、宏池会所属の参院議員だった大正大学准教授の大沼みずほさんの『「俺のところに来なきゃ干すぞ」  新人議員へ恫喝横行…  自民党の派閥解消歓迎の一方で元議員が惜しむ派閥の効能』という記事を紹介していました。その記事の中で、大沼さんは国会議員の活動に必要な資金の現状について次のように伝えています。

政治にはお金がかかる。これはウソではない。実際に政治活動をした私も痛感したことでもある。秘書などを雇う人件費、事務所費、コピー機、ガソリン代、通信費、さまざまな会合への会合費、国政報告などのチラシやパンフレット、ポスター作り……。

事務所を運営していくのは小さな中小企業を経営しているのと同じだ。国会議員は、個人商店の店主なのだ。国会議員の歳費は月額129万円あまり。年約1552万8000円で、期末手当(賞与)として年額635万円を加算すると総額2187万円超となる。それだけの高額報酬を得ているのに足りないはずがない……と思っている国民は多いが、実際は火の車だ。

事務所を運営していくには年4000万~4500万円ほどかかる。政治活動は政党助成金(自民党では年間1人1200万円)や文書交通費(現在は「調査研究広報滞在費」、各議員に年1200万円)だけではまかなえず、後援会費や国政報告会などで政治資金を集めなければ政治活動を行うことは難しい。加えて、次の選挙の際にかかる費用も貯めていかなければならない。私の場合、最初の選挙で借金として負っていた印刷代を年150万円ずつ返済しながら、月100万円ほど積み立てていた。

そうした意味で、派閥から年に2回支給される「氷代・餅代」は正直ありがたかった。宏池会への会費月5万円を差し引くと1回およそ70万円となる。これらは、5人いた私設秘書たち(公設秘書3人のほかに)のボーナスですぐになくなるのだが、国からボーナスの出る公設秘書と私的に雇う私設秘書との給与格差をいかに縮めるかはどの議員にとっても悩ましい問題であるはずだ。時期的にも私設秘書のボーナスに使っていた議員は多いのではないかと推察する。

派閥解消でこの「氷代・餅代」も消えるわけで、秘書を雇えなくなったり、よほど経費を節減しなければ議員の事務所家計が破綻したりするケースが続出するかもしれない。

上記のような現状から国会議員の資金の余裕のなさを知ることができます。個人差は大きく、前述したとおり地元に関わらず、割り切って必要最低限度の支出に抑えれば、任期中に個人的な預金残高は膨らんでいくのかも知れません。

お金のかからない政治活動に向け、選挙区内での寄附行為が禁止されてきました。それでも飲食の伴う新年会などに招待され、少しでも懇談していく場合、必要な会費だけは支払うことになります。法的に問題のないケースですが、寄附行為に当たりかねないとし、支払わないと主張する政治家は極めて稀なはずです。

そのため、国会議員に対して過度な「身を切る改革」を求めることで、自己資金に余裕がなければ政治家になれないような社会にしてしまっては問題だと思っています。選挙時も含め、どこまで公費を支出すべきなのか、簡単に結論を出せないかも知れませんが、削る方向性だけの議論にすべきではありません。

今回の自民党の裏金問題を通し、最も批判しなければならない点は定められたルールを守れなかった国会議員の多さです。その上で、政治資金収支報告書には記載できなかった使途の全容です。もし私的な流用がまかり通っていたのであれば、たいへん悪質な問題だと言えます。

今後、検討すべき論点は、党から支給される政策活動費も含めた使途の透明性が一つだろうと考えています。もう一つは、事務所の会計責任者が法的な責任を問われた場合、「秘書任せだった。自分は知らなかった」という言い訳が通用しなくなる政治家本人の責任を問う連座制の導入ではないでしょうか。

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