自民党の裏金問題
政治資金パーティーを巡る問題で、自民党は裏金と言われることに抵抗感を示しています。そのような訴えを意識しているメディアは政治資金規正法違反事件という言葉を使い、カギ括弧を付けて「裏金」問題と呼称している記事もあります。このブログではカギ括弧も付けず、今回の記事タイトルを「自民党の裏金問題」として書き始めています。
自民党の裏金問題に初めて触れたのが昨年末12月9日に投稿した記事「旧統一教会と自民党、2023年冬」でした。その記事を投稿した以降、直接的な題材にしなくても何かしら一言二言触れてきています。それだけ関心を高めていた問題であり、12月9日の記事の冒頭では次のように書きしるしていました。
この程度の範囲内であれば大丈夫、今まで問題視されていなかった、自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る問題も、そのような安易な思い込みがあったのかも知れません。今後、明らかなルール違反が詳らかにされていくのであれば「トカゲの尻尾切り」のような責任の処し方にとどまるようでは大きな問題です。
あれから2か月近く経ち、しっかりとした責任の処し方が見られているかどうかで言えば明らかに「否」です。逮捕者は秘書である会計責任者を中心にした顔ぶれにとどまり、ものすごい消化不良のまま通常国会を迎えていました。前回記事「『国防』から思うこと Part2」の冒頭には次のような憤りを書き添えています。
自民党の裏金問題で最も憤りを覚えるのは『「秘書がやった」と言えば政治家は罪を許される…自民党裏金問題が明らかにした「検察と自民党」の異常な関係』という記事のとおりだろうと思っています。特に『「秘書に質問しながらじっくり確認」世耕弘成 裏金事件で「秘書任せ」も14年前にしていた“真逆の民主批判”』という記事に触れると、ますます国会議員としての矜持を疑わざるを得ません。
秘書だけが刑事責任を問われていく理不尽さに憤りを覚えます。キックバックや不記載の経緯について、派閥からの指示があったことを認めている安倍派の国会議員も何人か現われています。そのような点も含め、世耕参院議員らの「知らなかった」という釈明が真っ赤な嘘だろうと思わざるを得ません。
特に野党時代、このような政治資金を巡る問題で「秘書に任せていた」という釈明を猛批判していた世耕参院議員は、どのような折り合いを付けているのか非常に興味があります。そもそも本当に知らなかったとしても、雇用主である国会議員の管理監督責任も厳しく問われなければならないはずです。
公務員であれば公金を自宅に持ち帰り、すぐ全額を戻していたとしても処罰され、懲戒免職まで至ります。上司である課長や係長らも管理監督責任を問われ、減給等の懲戒処分を下される場合があります。民間の会社でも同様です。金銭に絡むルール違反に対し、世間一般の常識から比べ、あまりにも不明確な責任の処し方に国民の怒りが高まっています。
前々回記事「『国防』から思うこと」では岸田総理が宏池会の解散を決めたという発表に対し、「本質的な問題や病巣に切り込まないまま論点そらしのための大胆なパフォーマンスに打って出たようにしか思えてなりません。このことで仮に内閣支持率が上がり、自民党の裏金問題が収束していくようであれば残念な話だと言えます」と記していました。
そのように懸念していましたが、先週の各メディアの世論調査で岸田内閣の支持率は少し上昇しています。毎日新聞の世論調査(1月27〜28日実施)では5ポイント増の21%、日経新聞の世論調査(1月26〜28日実施)では1ポイント増の27%でした。
能登半島地震への対応の遅れが批判されているにも関わらず、支持率続落に歯止めがかかり、わずかながら上昇に転じたのは自らが率いてきた岸田派(宏池会)を解散して派閥解消を打ち出したことが最大の要因であろうと見られています。
岸田派に続いて二階派、安倍派、森山派も解散することになりました。それに対し、岸田政権を支えてきた主流派である麻生派と茂木派は政策集団としての存続を決めています。岸田総理がキングメーカーの麻生副総裁と一線を画したことも世論から好意的に受けとめられているようです。
さらに裏金事件で立件を免れた安倍派幹部に自発的離党を迫ったこともプラス要因につながったのではないか、そのように世論調査を実施したメディアは分析していました。ただ岸田総理から明確な指示を受けたものではなく、茂木幹事長の先走りだったという内幕も耳にしています。
その後の顛末も『安倍派5人衆の政治責任は塩谷座長を“生贄”で幕引きか…森元首相の介入で茂木幹事長が腰砕け』『5人衆は自分を助けてと老人ホームの「森喜朗」に嘆願《安倍派ではなく森派と呼ばれる派閥の末路》』という記事のとおりですが、組織体質を刷新しなければならない党として重要な岐路にも関わらず、森元総理の影響力が色濃く出てきた話に驚いています。
『還流不記載の議員ら、核心語らず釈明に追われる… 専門家「説明したとは言えない」』という見出しの記事で、安倍派事務総長だった高木毅衆院議員が地元の福井県敦賀市内で記者会見を開き、議員辞職や離党を否定し、次期衆院選にも立候補の意思を示していることを伝えています。
高木衆院議員は収支報告書に未記載だった計1019万円について、主に飲食費として「議員や有識者との意見交換の場である政治活動に使った」と正当性を主張しています。
ただ領収書や記録はないという説明だったため「確認したことにならない」と指摘され、「言われてみるとそうだが、記載できない使い方はしておらず、そう申し上げている」と曖昧な回答に終始していたようです。
今回の裏金問題は自民党にとって「藪から蛇」という様相を示し始めています。『茂木幹事長10億円、二階氏は5年で50億円! 使途公開不要「政策活動費」に批判集中「自民こそインボイス導入しろ」』という記事のとおり桁違いな政策活動費の問題が浮かび上がってきました。
週刊誌記者は「政策活動費とは、政党から政治家個人に支出される政治資金です。このお金については使途の公表義務がないため『抜け穴』『裏金の温床』とも指摘されてきました」とし、「これまで政策活動費の使途公開について後ろ向きだった維新ですが、一転して推進に転じるのでは」と解説しています。
党から支給される政策活動費と派閥からのキックバックとの線引きに対する認識が不充分だったため、違法性が希薄なまま政治資金収支報告書に不記載となったという実情も耳にしています。そのような意味合いからすると、この機会に政策活動費の使途を公開していく道筋こそ、派閥の解散問題よりも重要な責務であるように思っています。
自民党の裏金問題に対する論評として、いくつかネット上で興味深い記事を目にしています。青山社中筆頭代表の朝比奈一郎さんの『メディアとネットによる過剰なバッシング、叩いて壊した結果なにか残るのか』は派閥の功罪を綴っています。ただ「安倍派解散」は中国を喜ばせているという見方など独特な立場からの論評です。
宏池会所属の参議院議員だった大正大学准教授の大沼みずほさんの『「俺のところに来なきゃ干すぞ」 新人議員へ恫喝横行… 自民党の派閥解消歓迎の一方で元議員が惜しむ派閥の効能』という記事からは、やはり派閥の功罪とともに政治活動に必要な資金の現状を分かりやすく知ることができます。
今回「自民党の裏金問題」というタイトルを付け、いろいろ思うことを書き進めてきました。朝比奈さんと大沼さんの記事内容から広げた論点など、まだまだ書き加えたい内容も思い浮かんでいますが、たいへん長い記事となっていますので、ここで一区切り付けさせていただきます。
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