『国防』から思うこと Part2
自民党の裏金問題で最も憤りを覚えるのは『「秘書がやった」と言えば政治家は罪を許される…自民党裏金問題が明らかにした「検察と自民党」の異常な関係』という記事のとおりだろうと思っています。特に『「秘書に質問しながらじっくり確認」世耕弘成 裏金事件で「秘書任せ」も14年前にしていた“真逆の民主批判”』という記事に触れると、ますます国会議員としての矜持を疑わざるを得ません。
この問題は来週以降、改めて取り上げる予定です。今週末は前回記事「『国防』から思うこと」の続きとしてタイトルに「Part2」を付けて書き進めていきます。昨年末の記事「今年も不戦を誓う集会に参加」の最後のほうで「どうすれば戦争を防ぐことができるのかどうか」という宿題を課していました。
その「どうすれば」は以前の記事「平和の話、インデックスⅣ」や「戦火が消えない悲しさ Part2」などを通し、私自身の思いや問題意識を綴ってきています。今回の記事でも防衛庁長官を歴代2位に及ぶ期間務めた自民党国会議員の石破茂さんの著書『国防』の中で、興味深かった箇所を紹介しながら「どうすれば」という思いを深掘りしてみるつもりです。
書籍を読み進める中で付箋を添えていた箇所があります。2003年に北朝鮮が日本海に向けて地対艦ミサイルを発射しました。当時の石破さんは、農閑期に行なう恒例行事としての訓練であり、その情報に全然驚かず、公表するものではないという認識でした。海上保安庁から国土交通省に上がった情報にマスコミが飛びつき、大騒ぎになってしまったと書かれています。
マスコミが脅威を煽り、「敵対行為である」と騒ぎ始めることの危うさを石破さんは指摘しています。相手国からすれば「いつもの訓練をしているだけで、そんなに騒ぐとは、わが国をそんなに敵視しているのか」と緊張関係を高める結果につながりかねないことを危惧されていました。
日頃から万が一に備えることや国民に向けた情報開示も必要なのかも知れませんが、私自身、北朝鮮のミサイル発射を必要以上に騒ぎ過ぎているのではないか、そのような疑問を抱いています。人間の意思によって引き起こされるのが戦争です。敵対視し合っていくことよりも、お互い対話の窓を開いていく道筋こそ「どうすれば」の答えの一つだろうと思っています。
戦争を防ぐため、一定の抑止力が必要であることも理解しています。石破さんの『国防』の中ではイージス艦や戦闘機などの性能や能力について解説しています。同時に石破さんは「軍備なんて何も生まないのですから、もし世界が平和であればどんどん軍縮すべきです」という言葉も書きしるしています。
このような知見のもとに「戦車を持つ意味は何だろうか」というゼロからの議論を提起し、防衛庁の長官だった当時、いかに合理的に予算を使うかを考え直す作業に取り組まれていました。その結果、2004年度の防衛費はトータルで見れば1%減らしたと記しています。
安全保障のジレンマのもと軍備を拡張していく路線は国家財政を逼迫させ、国民生活にも影響を及ぼしていくことになります。以前の記事「『ロンドン狂瀾』を読み終えて」に綴っているとおり軍縮交渉は戦争を回避する目的とともに国家予算を疲弊させず、経済を建て直すことも念頭に置かれています。
いずれにしても武力衝突を避けるためには常に外交交渉の扉を開いていくことが最も重要です。北方領土の問題がありながらも首脳間での対話を重ねていたことで、数年前までロシアに対する脅威が薄れていたことは一例だと言えます。
前々回記事「もう少し田中角栄元総理の言葉」で紹介した「総理大臣の仕事は、絶対に戦争をしない」という言葉を出発点として、為政者は外交力を高めることに力を注いで欲しいものと願っています。
脅威を必要以上に煽り、実効性の検証等が不確かなまま防衛費の数字だけ大幅に増やしていくという発想であれば懸念すべきことだと思っています。そもそも本当に欠かせない防衛力の増強だった場合、基幹的な税の引き上げなど恒常的な財源確保が必要とされていくのではないでしょうか。
昨年11月の参院予算委員会で立憲民主党の辻元清美さんの防衛費の増額に関わる質問に対し、岸田総理は「円安でも範囲内に収める」と答弁しています。辻元さんは「去年、5年間の防衛費を43兆円に増額すると決めた時、為替レートを1ドル108円で試算している。今の為替レートでは43兆円をはるかに突破するのではないか」と指摘しました。
これに対し、岸田総理は「43兆円という金額は必要な防衛力を用意するために検討し、吟味して積み上げた数字だ。閣議決定した数字なので、この範囲内で防衛力を強化していく方針に変わりはない。為替の動向も見ながら効率化や合理化を徹底し、現実的にどういった効果的な防衛力の強化ができるか、財源の確保と合わせて具体化していきたい」と述べています。
このようなやり取りは「43兆円という数字ありき」で、どのような装備をどれほど必要なのかという緻密な検討の不充分さを露呈させています。同日の参院予算委員会では大阪・関西万博についても議論されています。こちらは当初決めた数字を青天井に膨らませています。
いずれにしても戦争を防ぐために本当に必要な防衛予算だとすれば「数字ありき」という発想ではなく、さらなる増額などについて真摯に国民への理解を求めていくべきだろうと思っています。『国防』から今後の防衛費の話に広げてみましたが、最後に念のため、私自身は43兆円という増額そのものに懐疑的な立場であることを申し添えなければなりません。
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