立て続くパワハラに関する報道
組合の執行委員長を退任してから前回記事「時事の話題から政治に思うこと Part2」のようにYahoo!のトップ画面等で見かけたニュースを取り上げる時が増えています。ここ最近はパワハラに関する報道を頻繁に目にするようになっています。
労働組合の役員だった時、組合員の皆さんからパワハラに当たるような様々な相談を数多く受けてきました。このブログでも「パワハラ防止に向けて」「ハラスメントのない職場の確立に向けて」など、パワハラを題材にした記事を投稿しています。
仮に使用者側の思惑だけで労働条件が決められていった場合、昨今、問題視されている「ブラック」を生み出す土壌につながりかねません。パワハラや違法な長時間労働を常態化させるような職場は労働組合がない、もしくは組合の存在感が希薄な場合に生じがちです。
公務員の職場だから心配ないと考えている方々も多いのかも知れませんが、公立学校の職場で教員間でのパワハラが大きな問題となりました。職務上の縦の関係だけでは改められなかった事例だと見ています。もし労働組合があり、影響力を発揮していれば陰湿なパワハラも未然に防げたのではないでしょうか。
上記は以前の記事の中の一文です。もちろん労働組合がしっかりしていればパワハラは発生しない、そのような単純な問題ではないことも理解しています。このあたりについて、いくつか時事の話題を紹介しながら少し掘り下げていく機会としていきます。
まず『「すみませんで済むかっ!」福岡・宮若市長にパワハラ疑惑…直撃に「謝罪のしようがない」 夫婦の育休に“必要ある?”発言も』 『パワハラ・セクハラ疑惑の愛知・東郷町長、議会は不信任案「否決」…32席の傍聴席に町民ら60人超』という報道にある自治体の首長のパワハラです。
福岡県宮若市の塩川秀敏市長は「本人との仲でね。信頼関係の中で、私が言った相手がどう取ったかというのを一番大事にしたい」とし、あくまでも相手への激励の意味だったと主張していました。さらに「職員の幸せなくして市民の幸せなし。職員が働きやすい幸せな職場を作る」ということを第一条件にしていると付け加えています。
紹介したニュースのサイトで伝えている塩川市長と部下とのやり取りが、とても信頼関係や激励という言葉で語れるような類いのものではありません。塩川市長も「相手がどう取ったか」と話していますが、テレビ画面で見た姿からは真摯に反省しているように到底感じられません。
ハラスメントとは「他人に対する発言や行動などが、本人の意図には関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えることをいう」とされ、行為者が無自覚であることが多く、受けとめる側に個人差があることも特徴です。
今の時代、このような説明を首長であれば何回も耳にしていたはずです。それでもパワハラと断定されるような事例が後を断ちません。行為者の無自覚さでは、上記の報道のとおり愛知県東郷町の井俣憲治町長が際立ち、釈明の仕方も稚拙なものでした。
「殺すぞ。死ね。バカ」などという暴言も「話の流れで不用意に使ってしまった。漫才の突っ込みのようなつもりだった」と釈明していますが、東郷町の職員全体が井俣町長に嫌悪し、ただちに辞職して欲しいものと願っているようです。その象徴的な出来事がリンク先のニュースの中で伝えられています。
24日朝、机上にハラスメントの事案を明記した封書が置かれていたことを明らかにした。独自にアンケートを行った町幹部の名前で、「24日中に辞職しなければ、表に出す」という内容だったため、27日、愛知署に対応を相談したという。
井俣町長が警察に相談したことを伝えていますが、そのような判断にも違和感があります。堂々と自分の名前を明記した文書であり、これまでの関係性から面と向かって直訴できず、やむを得ず手紙に託したような意図を感じています。
この警告に井俣町長は恐怖感を覚えたような話しぶりでしたが、それまで部下に与えてきた自分自身の振る舞いを考えれば、警察に相談するよりも訴えた職員の切実な心情をくみ取ることが先だったように思っています。
二人の首長のパワハラが報道されていますが、残念ながら氷山の一角なのかも知れません。首長に限らず、権力の大きさに比例し、無自覚なパラハラの生じる可能性が高まります。このような報道に接した際、他人事とせず、常に自分自身はどうなのか、見つめ直す機会にしていくことが重要です。
パワハラをなくしていくためには、発生した事実関係を認め、関係者が適切な責任を取った上で、今後の防止策を講じていくことが欠かせません。明らかなパワハラ事案に対して「パワハラはなかった」というような姿勢だった場合、再発防止の道のりから遠ざかっていくのではないでしょうか。
そのような意味合いから『宝塚歌劇団 遺族側 “パワハラ否定のまま解決はありえない”』という報道にあるような宝塚歌劇団側の「いじめやパワハラは確認できなかった」という調査結果には大きな疑問が残ります。25歳の劇団員を自死に追い込んだ重大な事実に対し、遺族側が憤るとおり真摯な対応だとは思えません。
『楽天・安楽投手を自由契約に 暴言、罰金など10人がパワハラ被害』の報道は、球団側が事実関係を全面的に認めなくてはならないほど「周知の事実」だったと言えます。パワハラに対する楽天の安楽智大投手の無自覚さは論外なレベルですが、ここで留意しなければならない光景や関係性があります。
『田中将大「注意すべきだった」 楽天・安楽投手パワハラ問題受け』という報道のとおり楽天の田中将大投手が自身のSNSを通じて「自分もチームの年長者としてもっと後輩たちの様子に気を配り、気軽に相談され、問題があれば率先して注意すべきであった。意識が甘かったと反省しています」とコメントしています。
安楽投手がロッカールーム内で若手選手の下半身を露出させたりした行為を田中投手をはじめ、多くの選手や楽天の関係者が見ていたように伝わっています。同様な行為は複数回あったようです。結局、目撃しながらもパワハラという認識に至らなかったのか、上下関係の歪さから我慢を強いられていたような光景を想像しています。
田中投手のコメントは安楽投手の行為を目の当たりにしながらも、お互い納得している冗談やふざけ合いだと認識してきたため、注意できなかったことを省みるものだと受けとめています。このような場面に際して軽微さの違いはあったとしても、前述したとおり他人事とせず、常に自分自身はどうなのか、見つめ直す機会にしていくことが欠かせません。
苦い思い出があります。青年婦人部スキーの宿泊先での夜、20人近くが一部屋に集まって飲んでいました。その場にいた参加者の一人が話題の中心となって、皆で笑い合っていました。いわゆる「いじられキャラ」として本人も一緒に楽しんでいるものと思っていました。
それが何日も経った後、私に対して「あの時、話の流れを変えてくれることを願っていました」と告げられ、たいへん驚きました。自分自身の認識の甘さから力になれなかったことを即座にお詫びしていました。30年以上前の戒めですが、それ以降、同じような至らなさを繰り返していなかったかどうか省みています。
最後に『日大アメフト部員、初公判で沢田康広副学長に「もみ消してもらえると…」、大麻使用は「10人程度」』という報道です。リンク先の記事内容のとおりであれば日大アメフト部の監督も含め、よりいっそう日大側の組織としてガバナンスの問題が問われていきます。いろいろ話を広げられる報道ですが、今回の記事ではパワハラを軸にした話題を紹介します。
検事だった沢田康広副学長が林真理子理事長をパワハラ提訴しています。リンク先の記事で菊地幸夫弁護士が「この2人で争っている場合ではないという日大の状況が、よく理解できていないんじゃないか。理屈よりもメンツの争いになってきて、泥沼に入ってきたという印象です」と苦言を呈していますが、学生たちのことを考えれば本当にそのとおりだと思います。
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