時事の話題から政治に思うこと
前回記事「ブログで振り返る組合役員時代 Part2」の冒頭に記したとおり組合役員を退任してから必然的に組合活動を題材にした記事は減少しています。以前であれば今年度の賃金改定交渉のことなどを取り上げていた時期です。組合活動の季節感から遠ざかり当ブログの内容は時事の話題を取り上げる時が増えています。
前回記事の冒頭では『『勤労感謝の日に職員3000人を7時間タダ働きさせようとする大阪府・大阪市のヤバさ これが「維新流」?』『「議員の職務が忙しくて」神田財務副大臣、税金滞納問題で答弁』という報道に目を引かれていたことを伝えていました。
前者は労働組合の役員だった立場から、後者は現在の職務である徴税吏員という立場から、それぞれ突っ込み所満載で、たいへん憤りを覚える話だと言えます。単体で新規記事の題材にできる時事の話題ですが、今回は記事タイトルに掲げているとおり「時事の話題から政治に思うこと」として間口を広げた内容を書き進めていきます。
その後、ネット上で目にした前者の問題に関わる記事を紹介します。まず『吉村府知事、阪神とオリックスの優勝パレードで公務員のボランティア動員をネタにし批判殺到「じゃあ万博やめろや」』ですが、吉村知事は「間近で警備ありますし、ジャンパーとかもお渡ししますから」と語り、ボランティアの特典をアピールしています。
『優勝パレードで大阪市の職員に「人数は次の通り」メール連絡…しかし『ボランティアで手当も交通費も無し』に異論の声「ボランティアの域を超えている…事故起きた場合に誰が責任をとるのか」』という記事内容によれば、市税事務所ごとの割り当て人数が明記され、所属ごとに参加者を記載する用紙が業務レベルで配られています。
ここまで職務のライン上での動員を要請していながら「辞退できるからボランティア」という言い分は詭弁の類いです。兵庫県や神戸市は安全対策のためにも職務として行なうべきと判断し、職員1500人を休日出勤扱いにしています。この対比からも大阪府と大阪市の異常さが際立ち、違法性自体問われる大きな問題だと言えます。
このブログでは以前「時間外勤務における移動時間の取扱い」「移動時間の時間外勤務認定基準」という記事を投稿しています。時間外勤務の法的な位置付けなどを掘り下げていましたが、使用者の指揮命令のもとでの勤務かどうかがポイントとなります。いずれにしても今回の問題は議論の余地がないほど吉村知事らの判断の不当性を指摘せざるを得ません。
後者の問題では『「税金滞納」神田財務副大臣が辞任 2カ月で3人辞任「メガネくもりっぱなし」岸田首相の人事にあきれる国民』という報道のとおり神田憲次財務副大臣は辞任に追い込まれています。「職務の話、インデックス」という記事を通し、私自身の徴税吏員としての職務に対する心構えなどを伝えています。
「納めたくても事情があって納められない」という厳しさや苦しさを日々の仕事の中で、多くの方々から相談を受けています。そのような方々ばかりではなく、確かに滞納に至る理由は様々です。しかし「忙しくて滞納した」という理由を国会議員、それも財務副大臣の口から発せられるとは夢にも思いませんでした。
9月の内閣改造以降、買春疑惑が報じられた山田太郎文部科学政務官、有料ネット選挙運動を江東区長選で助言した柿沢未途法務副大臣が辞任していました。 岸田総理は「辞任ドミノ」と批判されることを懸念していたようですが、神田財務副大臣が辞任するまでの遅さはそれ以上の批判の高まりにつながっていました。
それぞれ辞任に追い込まれた問題が、自分自身の就任した省庁の所管する事項に関わる話であり、岸田総理の「適材適所で任命した」という言葉が強烈なブラックジョークとして跳ね返ってきています。直近の世論調査で軒並み内閣支持率は下降線をたどっています。それにも関わらず、大阪万博の問題などで失速している日本維新の会をはじめ、対抗すべき野党側の支持率も低迷したままです。
そのような中で日本保守党に勢いが見られています。とは言え『「日本保守党」の街宣動画がSNSで物議 演説中止訴える店員に野次…「ニヤニヤ」河村たかし名古屋市長の様子に批判』という報道などを目にすると、いろいろな意味で政党としての未熟さが目に付いてしまいます。
「関係ない一般の人も通行できないほどの人混みでかなり危険な状態になってるにも関わらず、演説を始めるの信じられない」「15分くらい動けなかったです。警察来たから助かったけど、もし昨年の梨泰院みたいになってたらと思うと」などの声が上がり、このような事態に対する初動の遅さや緊張感のなさが批判されていました。
前々回記事「善悪二元論から思うこと」の中でも日本保守党について触れていましたが、レイシズムの問題と結び付けて政党批判するつもりはありません。それでもLGBT法への反対が新党結成の直接的動機となっているとおり価値観を画一化し、多様性に対する不寛容さが目立ちがちな点について危惧しています。
『「心が女」主張して「女湯侵入男」逮捕…SNSで吹き荒れる「稲田朋美の責任を問え」に稲田氏が回答』という報道で、百田代表が「腹が立つのは稲田朋美や」とLGBT法を推進した稲田衆院議員を強く批判していることを伝えていました。この批判に対し、稲田議員は次のように答えています。
公衆浴場や温泉施設の利用に関して厚労省が管理要領を定めており、男女の判断基準は身体的特徴によるものとすることになっています。これは理解増進法が制定される前後で全く変更はありませんし、法制定前も後も犯罪であるということをX(旧Twitter)上などで繰り返し申し上げてきました。
この問題では、稲田議員が冷静で理性的な対応をはかられているものと思っています。自分勝手に法律を解釈し、悪用する一部の不届き者の存在を盾にして、国際的な潮流に逆らいながらLGBT法の理念そのものに反対していく姿勢には到底賛同できません。
日本保守党に限らず、政権の一翼を担う政党をめざしていくのであれば、ぜひ、多様性を尊重していく政策も柱に掲げて欲しいものと願っています。基本的な問題意識の近さから立憲民主党の奮起を期待しているところですが、政党支持率は伸び悩み、日本維新の会よりも下位にランクされている調査結果が目立っています。
少し前の記事「連合と政党との関係性」の中で「より望ましい政治に近付けていくためにも、連合全体として応援できる政権の受け皿となり得る野党が存在感を発揮していくことを願っています。複数の政党が連携する場合は、野合と批判されないような旗印を掲げた政治的な勢力であることを期待しています」と記していました。
最近『共産から支援受ければ「推薦できない」 連合が衆院選基本方針、立民に圧力』という報道を目にしています。見出しは端的な言葉で掲げられていますが、基本方針は「(連合の理想とは)異なる社会の実現を目的に掲げる政党から支援を受ける候補者は推薦できない」という文言となっています。
共産党を念頭に置いていることは明らかなようですが、連合のめざしている社会像が国民の多くから支持され、その目標に向かって共同歩調を取れる政党であることが確認できるのであれば、状況に応じて柔軟な対応が求められているように感じつつあります。
今後、最も大きな問題として消費税に対する向き合い方が焦点化されていくように思っています。私自身は「消費税引き上げの問題」「政策実現と財源問題」 「ベーシックサービスと財源論」「ベーシックサービスと財源論 Part2」 「枝野前代表の問題意識」という記事に託しているとおり消費税の引き下げに懐疑的な立場です。
そのため『『立民の「消費減税見送り」方針、党内政局の火種に』という報道に接し、泉代表の示した考え方で党内が結束されていくことを切望しています。減税を公約に掲げたほうが選挙で票は得やすいのかも知れませんが、「政治の力で公共サービスを充実させ、社会全体で互いに支え合う」ために消費税は重要な財源だろうと思っています。
最後に、組合活動の季節感から遠ざかっていると記していましたが、季刊誌『とうきょうの自治』の秋号が届きました。担当している連載記事で慶応大学の井手英策教授の著書『どうせ社会は変えられないなんてだれが言った? ベーシックサービスという革命』を紹介しています。その記事の最後に紹介した井手教授の明解な言葉をここでも掲げさせていただきます。
増税に反対する人たちがいます。たしかに増税がなければ、取られる分は少なくてすみますよね。だけど、それはマイナスがゼロになるということであって、増税がなくなることで、よりよい社会に変わるわけじゃありません。
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