戦火が消えない悲しさ
昨年2月24日にロシアがウクライナに軍事進攻し、未だ戦火の消える兆しが見出せない中、パレスチナの地で新たな戦火が上がっています。10月7日、イスラム組織ハマスが突如、イスラエルへ大規模な攻撃を開始しました。
これに対し、イスラエル側も激しい空爆で応酬しています。今後、イスラエル軍の地上侵攻も秒読みとされ、ますます戦闘の激化が危惧されています。子どもたちを含め、すでに千人単位の多くの住民が双方の戦闘の犠牲になっています。たいへん悲しむべきことです。
NHKの解説『イスラエルにイスラム組織「ハマス」が大規模攻撃 何が起きた?』によると、1948年にイスラエルが建国されてからの中東戦争の後、内部の対立を経てパレスチナ自治政府はヨルダン川西岸地区とガザ地区に分断されてきました。
地中海に沿ったガザ地区は、鹿児島県の種子島ほどの広さの土地に220万人以上が暮らしています。ハマスによって実効支配され、ハマスを敵視するイスラエルによる経済封鎖が続き、これまでも軍事衝突で多くの民間人が犠牲となってきました。ガザ地区の周囲には壁やフェンスが張り巡らされ、移動の自由も制限されているため「天井のない監獄」と呼ばれています。
ハマスの正式名称は「イスラム抵抗運動」です。ハマスは、そのアラビア語の頭文字などをとったもので「情熱」という意味の単語になります。1987年に発足したハマスは国家としてのイスラエルを一切認めない強硬な立場をとり、武力闘争を掲げて自爆テロなどを重ねています。
その一方で、市民に対する福祉活動にも力を注ぎ、市民からの支持を得ていました。パレスチナの穏健派の政治勢力ファタハとの武力闘争を経て、2007年からガザ地区を実効支配しています。
ハマスは、アメリカやEUなどからテロ組織に指定されていますが、イスラエルによる厳しい経済封鎖にさらされる中でも武器などを調達しています。イランからの支援を受けているとも指摘されています。
今回のハマスの攻撃は、50年前の第4次中東戦争以降で最大規模とされています。これに対し、イスラエル軍は「鉄の剣」と名付けた報復作戦を実施し、ガザ地区のハマスの拠点などへの大規模な空爆を続けていました。今回の軍事衝突について、防衛大学校の立山良司名誉教授は次のように語っています。
やはり16年間の封鎖があって、ガザ地区の社会・経済はひどい状況です。そうした中で、封鎖に対するパレスチナ住民の怒りというのはイスラエルに向くのと同時に、ガザを実効支配しているハマスにも向いているわけです。不満がうっせきしている状態で、それがいつハマスに本当に向かってくるかということを恐れて、何かしなければいけないという気持ちがあったと思います。
もう一つはイスラエルとサウジアラビアの関係正常化という話が進んでいます。パレスチナ自治政府のほうは自治権限を拡大する、ある種の条件闘争で、正常化に対応しようとしています。一方で、ガザの問題は一切、その条件には出てきていません。
つまり、ガザの問題は見捨てられていく可能性がある。見捨てられることの恐怖をハマスは感じていたし、ガザの住民も感じたんだろうと思います。 ここで何か大きな軍事作戦をやれば、そうした流れを食い止める、あるいは少なくとも大きな妨げになるというふうに考えたのだと思います。
アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアの5か国は、イスラエルへの支持とテロ行為を非難する共同声明を発表しています。 一方で、アラブ連盟のアブルゲイト事務局長は「ガザでは、これまでも多くの人々が殺害され、流血の事態が起きてきた。イスラエルはこうした行為を繰り返してきた」と述べ、逆にイスラエル側を批判していました。
ハマスによる攻撃は絶対容認できません。同時に住民の犠牲が伴うイスラエルの過剰な報復攻撃も自制させなければなりません。人道支援のための人道回廊の設置や検問所を開くなどの対応策が協議されています。しかし、犠牲を防ぐための最大の解決策は即時に停戦を実現させることです。
たいへん残念ながら『ガザ地区の停戦実現せず 国連安保理の決議案、米国が拒否権を行使』という報道を目にしています。15か国中、日本も含む12か国が賛成し、採択に必要な賛成9票以上に届きながら常任理事国のアメリカが拒否権を行使したため決議案は否決されました。
アメリカは「決議案にはイスラエルの自衛権についての言及がない。この表現も入るべきだった。だから我々は決議を支持できなかった」と述べていますが、切実な大義から離れた反対のための理由であるように見受けられてしまいます。
ウクライナ戦争における国連決議に際し、拒否権を発動するロシアを批判していたアメリカの信頼が失墜する残念な判断だったように思っています。加えて、国連の立場や役割を改めて低下させる事態であり、ますます国連不要論という声が高まらないかどうか懸念しています。
自分自身の知識や頭の中を整理する機会として、NHKの解説を切り口に今回のブログ記事を書き進めています。いつものことですが、長い記事となっています。前回記事「連合と政党との関係性」の冒頭で「この話までつなげようと考えながらも、長くなってきたため次回に送る時が増えています」と記していました。
今回も同様なパターンとなりますが、金曜夜に協力委員の一人として参加した三多摩平和運動センター主催の「CV22オスプレイの横田基地配備に反対する10.21三多摩集会」に関しては少し取り上げてみます。全体で190名が参加し、会場内での集会後、2.3キロほどデモ行進しています。
騒音や墜落の危険性の高いオスプレイの配備に反対する集会ですが、ガザ地区での武力衝突の問題も何人かの挨拶の中で触れられていました。武力で平和はつくれない、憎しみや暴力の連鎖がテロや戦争につながる、まったくその通りだと思っています。
金曜の集会の中では横田基地の撤去をはじめ、防衛費の増大や改憲に反対する訴えが相次いでいます。そのような訴えも賛同している立場ですが、「なぜ、反対するのか」という文脈も欠かせないものと考えています。
特に基本的な立場や考え方が異なる方々に訴えていく場合、そのような一言二言がなければ運動の広がりは期待できません。平和運動センター総会で発言していますが、憲法9条を守ることが「なぜ、平和につながることなのか」など丁寧な情報発信や訴え方の必要性を認識しているところです。
ハマスに対し、圧倒的に軍事力で優位だったイスラエル、抑止力は万全だったはずですが、今回のような攻撃を受けています。その攻撃で失われた命はかけがえのないものであり、為政者はそのような事態を絶対生じさせないことを念頭に置いて欲しいものと切に願っています。
このような問題意識のもと当ブログを通し、一人でも多くの方に共感を得られるような言葉を探し続けています。戦火が消えない悲しさ、テロや戦争をなくしたいという共通の思いを一つにできる「答え」を探しています。この先の話は次回以降の記事に送りますが、ぜひ、引き続きご注目いただければ幸いです。
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