政権与党に問われている重い責任
明日から10月だと言うのに蒸し暑い日が続き、なかなか秋の気配は感じられません。それでも暦の上では今年も残り3か月です。役所の年度で言えば10月1日は半年が過ぎた折り返し地点であり、今年も様々な法律の施行日に定められています。
酒税法の改正でビールは値下げ、発泡酒据え置き、第3のビールが値上げされます。最低賃金の全国平均は前年度比43円増の1004円となります。最も大きな変化は消費税のインボイス制度が始まることです。
2015年に消費税の軽減税率とセットでインボイスの導入が決まりました。2019年に10%と8%と複数税率に分かれた時点でインボイスを導入する必要がありましたが、混乱を避けて4年間の準備期間が設けられていました。
インボイスの導入は、フリーや零細企業などで働いている人の負担があまりにも大きく、アニメ、声優業界などフリーランスの多い各種団体が相次いで反対を表明してきました。施行日を目前に控え、50万筆を超えた導入に反対するオンライン署名は9月29日に岸田総理の秘書官に手渡されています。
署名が提出された同じ日、岸田総理はインボイスの円滑な導入に向けて関係閣僚に細やかな対応を求めていますが、泥縄感が否めません。導入を決め、実施時期の先送りを決めたのは安倍政権ですが、今後、生じる可能性のある混乱の責任は現政権が負っていかなければなりません。
既視感のある事例として、福島第一原発の処理水を海洋放出した問題が重なり合います。安倍政権時代に決まった方針に沿って、あらかじめ定められていた時期に実施に移す、岸田総理にとって宿題を粛々とこなしていくという受け身の姿勢だったように思います。
とは言え、待ったなしの現在進行形の諸問題と将来にわたる責任は現政権のトップである岸田総理自身に問われていきます。前回記事「時事の話題、国政の話 Part2」の中で紹介した『防衛予算「後年度負担」の罠…支払いは政権交代があっても将来まで続く』という報道にあるとおりです。
右に行くのか、左に行くのか、もしくは進むのか、退くのか、組織のトップに対して難しい選択が迫られる場面は多いはずです。その中でも、総理大臣の職責に対するプレッシャーは想像を絶するものだろうと思っています。
国民の生命や暮らしに直結する総理大臣の判断が、大きな間違いとならないように周囲の適確なサポートも欠かせません。それでも様々な問題に素早く対処していくためには総理自身の個人的な能力や資質が問われていくことも確かです。
このような選択をした場合、どのような反応や影響があるのか、予見力や想像力が問われていきます。そのような意味合いから気になった報道に接していました。それほど注目を集めている話題ではありませんが、『岸田首相「幹部は役職兼務回避を」自民』という報道です。
岸田文雄首相(自民党総裁)は26日の党役員会で、茂木敏充幹事長ら幹部に対し、党内の他の役職を兼ねることを原則避けるよう指示した。憲法改正実現本部をはじめとした総裁直属機関の人事などが調整中であることに触れ、「幅広い方に役員になってもらいたい。原則、兼務を避けてほしい」と語った。【時事通信社2023年9月26日】
上記の報道に対し、ヤフコメには「さすが身内に甘いな」「言行不一致じゃないか!」という批判の声が寄せられています。『木原誠二氏 自民 幹事長代理に 政調会長特別補佐も兼務』という報道のとおり側近の木原前官房副長官は異例の厚遇といえる役職を兼務させています。
週刊文春に追及されている疑惑に対する説明も不充分なまま官邸から退き、党の要職に栄転させた人事だと見られています。このような人事だけでも批判を受けがちだったのにも関わらず、他の議員には兼務を避けてほしいと指示したという報道に接し、岸田総理の感度の鈍さに驚いていました。
岸田総理に限らず、感度の鈍さは自民党全体の問題なのかも知れません。『「ドン引き」「絶望的な人事」エッフェル松川議員の副幹事長“栄転”に世論の怒り爆発』という報道も一つですが、『“人権侵犯認定”杉田水脈議員を要職起用…自民党の“恥知らず人事”に非難殺到』のほうはもっと深刻な話だと思っています。
今回の記事タイトルを「政権与党に問われている重い責任」としているのは、このような自民党全体に対する懸念があるからでした。極めつけは『安保文書めぐり麻生氏「“がん”だったいわゆる山口代表」と批判 公明・山口代表は「評価控える」も、公明党内からは「言われっぱなしでいいのか」』という報道です。
自民党の麻生副総裁は、昨年12月に岸田政権が閣議決定した安全保障関連3文書の改定に際し、公明党の山口代表らが反撃能力の保有に慎重な姿勢を見せてきたことなどについて名指しで批判していました。
「公明党の一番動かなかった“がん”だった、いわゆる山口(代表)、石井(幹事長)、北側(副代表)等々の一番上の人たち、その裏にいる創価学会」とし、呼び捨てで批判しています。それも公の場である講演会での発言だったことに物凄く驚いています。
麻生副総裁にとって失言ではなく、あえて公明党との関係を悪化させたいという思惑があったのかも知れません。どのような波紋を広げるのか想像力を働かせ、大きく取り上げられることを予見した上での発言だったのであれば畏怖すべきことです。それにしても友党の幹部らに対し、敬意を逸した非常識な言葉遣いに対する品位は疑うことになります。
そもそも当ブログでも昨年末に「『標的の島』と安保関連3文書」という記事を投稿していますが、反撃能力の保有などが実効ある平和に寄与することなのか疑問視する国民の声も少数ではありません。麻生副総裁の「がん」発言は、そのような問題意識を持つ国民の多くも「がん」だと決め付けているようなものだと言えます。
平和で暮らしやすい社会に向けて、現在の政権与党に重い責任と役割が託されています。現政権の至らなさが見受けられるのであれば、次の総選挙戦で政権交代もあり得るという関係性が重要です。このような緊張感があることで、政権与党は懸命に国民の声に耳を傾け、より公正な政治をめざしていくことになるはずです。
このあたりについては次回以降の記事を通し、いろいろな思いや願いを書き進めていければと考えています。その際『なぜ「政権交代」は響かない言葉になったのか…枝野幸男が考える「立憲民主党と旧民主党の決定的な違い」』という記事に綴られている立憲民主党の枝野前代表の問題意識も参考にしてみるつもりです。
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