期待したい政治のあり方
前回の記事は「マイナカードの混乱と政治の責任 Part2」でした。マイナカードの問題を切り口に信頼できる政治のあり方について話を広げていました。「Part3」としていませんが、前々回記事から続く政治のあり方に対する思いを今回も書き進めていくつもりです。
まず『河野太郎「あまりの叱責の激しさ」で人心が離れつつあるとの噂…「次の総理」の席遠のくか』という報道です。国民的な人気の高い河野大臣ですので、総理大臣候補として適材なのかどうか様々な情報に触れられる機会は歓迎すべきことです。
一昨年8月の記事「信頼できる政治の実現に向けて」の中で、菅元総理は周囲の声に耳を貸さない「裸の王様」であり、自ら「官邸ひとりぼっち」の状況を作り出していることを伝えていました。より望ましい判断を下すためには多面的な情報に接していくことが欠かせないはずです。
そのような意味合いから周囲の関係者と良好な信頼関係を築ける人柄は、トップリーダーが備えるべき資質として重視しています。「信頼できる政治の実現に向けて Part2」では、いみじくも次のような記述を残していました。
週刊文春の最新号で『河野太郎大臣パワハラ音声 官僚に怒鳴り声「日本語わかる奴、出せよ」』という記事が掲げられています。総裁選の出馬に当たって今のところ致命傷にはなっていないようですが、もし河野大臣が総理大臣に就任した場合、菅総理と同様な周囲との関係性を危惧しています。
リーダーのパワハラはどのような組織にとってもチーム力のマイナスにつながり、責任や権力が大きい立場であればあるほど被る損失もはかり知れません。岸田政権が発足した直後、「聞く力」をアピールポイントにしていた岸田総理の政治の進め方に期待していました。
しかしながら今年1月「失望感が募る岸田政権」という記事を投稿しているとおり岸田総理に対する期待は裏切られてきたことになります。マイナカードの問題は『「あると便利」から「ないと大変」に…岸田政権のマイナカードの進め方が「どう考えても不誠実」と言えるワケ』という論評のとおりだと思っています。
政治が何らかの新しい施策を手がける時には、国民の不安を最小化するため、十分な周知期間を設けるなどして、行政の現場の混乱を最小限にとどめるよう目を配るのは当然のことだ。
特に政権を預かり、行政を担っている側は、派手な立ち居振る舞いで自分自身にスポットライトを当てようとする前に、まず「当たり前の地道な仕事を普通にやれる」ことを大切にすべきなのは言うまでもない。「行政能力がある」とはそういうことだ。
上記は紹介した論評の中の一文です。そもそも「突破力」という言葉が肯定的に使われる時も多いようですが、その強引さや拙速さが致命的な問題を引き起こすことも省みなければなりません。
周囲から反対する意見が示される中、現行の健康保険証を2024年秋に原則廃止してマイナ保険証に切り替えることを決めた河野大臣の「突破力」は裏目に出た顕著な事例だったと言えます。
岸田内閣の支持率は下落傾向に転じています。政権与党への批判が強まれば野党の出番であるはずですが、立憲民主党に対する支持率も低迷したままです。そのような中で、日本維新の会が上昇トレンドに入っています。
冒頭で「国民的な人気の高い河野大臣ですので、総理大臣候補として適材なのかどうか様々な情報に触れられる機会は歓迎すべきことです」と記しています。このような問題意識を踏まえ、日本維新の会に関わる様々な情報を提供していく一つの場になれればと考えています。
期待したい政治のあり方として、それぞれ反面教師とすべき事例の数々だろうと思っています。東京新聞の連載記事『維新はこのまま野党第1党になれる? 野心的な「計画」とその達成度 躍進の影に不祥事、問題が続発』で、党のガバナンス(統治)の問題が指摘されています。
政党の看板を頼って当選できた議員の多さは「粗製濫造」という言葉が背中合わせとなりがちです。さらに政党自体が急成長しているため、適格性を問われかねない議員をサポートしていく組織的な体制が追い付いていないという指摘です。
『維新はなぜ改憲にこだわるのか、党綱領にその根源を見た 共感を呼ぶ「身を切る改革」が持つ負の側面』という記事では「自立する国家、小さな政府…新自由主義と親和性」という小見出しがあり、日本維新の会のめざしている社会像の是非を問いかけています。
政策について「納めた税金が必ずしも自分のために使われていないと不満を持ち、 能力主義を支持するような人たちの共感を集める内容が多い」とし、関西学院大学の冨田宏治教授は次のように語っています。
政治家の身分保障すら既得権とみなすことで、議員の「特権」に批判的な国民と同じ目線だとアピールできているとも分析する。例えば議員定数の削減なら、有権者の代表として行政監視や政策立案に取り組む人数が少なくなるのと同義だ。どれだけ聞こえが良くても、負の影響が生じる可能性も含めて慎重に見極める必要がある。
『維新が叫ぶ「改革」に騙されるな! カジノ、万博もすべてが“昭和”の遺物である 古賀茂明〈dot.〉』という見出しの記事では、率直な言葉で日本維新の会の欺瞞性を厳しく批判しています。「誰が」語っているのかどうかは問わず、次のような見方が正しいのかどうかという論点に注目しています。
規制を緩和するとさまざまな副作用が出る。それを防ぐには新たな規制強化が必要だし、セーフティネットを強化するために、政府の役割も分野によって強化すべきだとなる。小さい政府が良いのではなく、賢い政府が必要だという流れも同じだ。だから今時、単純に規制緩和せよなどと叫ぶことは欧米ではなくなっている。
しかし、維新は、そういうことを知らないから、40年前と同じように古い改革を唱えている。規制をなくせ、官僚を叩け、議員を減らせというポピュリズムに浸っているのだ。世界標準では、維新の改革は古い改革、昭和の改革なのだ。
先週水曜日、日本維新の会は重点政策を見直す方針を発表しました。重点政策であるベーシックインカムの導入に向けて年間100兆円と試算される財源の確保が欠かせないため、下記の報道のとおり段階的なプランを明記するという見直しです。
日本維新の会は、次期衆院選に向け、重点政策「日本大改革プラン」を見直す方針を固めた。国民に一定の現金を支給する「ベーシックインカム」(最低生活保障)は「段階的に導入」と明記する方向だ。具体的な導入方法や財源論に関する記述を前回よりも増やす予定で、「責任政党」としての存在をアピールする狙いがある。
藤田幹事長は12日の記者会見で、今後の公約作りに関して、「政権構想として政策パッケージを煮詰めていきたい」と強調した。今秋までの取りまとめを目指す予定だ。同プランは選挙公約の土台となるもので、最新版は2021年9月にまとめられた。
税制改革、社会保障改革、成長戦略の3本柱で構成され、ベーシックインカムの導入が目玉だ。1人あたり月6万〜10万円を給付することで、経済成長と格差是正の両立を目指すとしている。焦点は年間100兆円と試算される財源の確保だった。
新たなプランでは、ベーシックインカムについて、実現可能な計画とすることを意識し、段階的な導入策を示す考えだ。当初は低所得者や非年金受給者だけに対象を絞る案のほか、支給額を1万円、3万円、7万円とする三つの案を検討し、必要な予算額と財源も盛り込む見通しだ。財源捻出策として、デジタル化の推進を掲げる方向で調整する。
維新は、次期衆院選での野党第1党奪取が目標で、実現可能な政策を打ち出すことで、将来的な政権担当能力を示す狙いがある。財源論で迷走し、「バラマキ」と批判された民主党政権を反面教師としている面もある。維新幹部は「4月の統一地方選での躍進もあり、有権者に納得してもらえる実現可能な政策を提示したい」と強調する。【読売新聞2013年7月13日】
この新聞記事を目にした時、慶応義塾大学経済学部の井手英策教授のことを思い浮かべていました。井手教授の講演内容をもとに今年3月「ベーシックサービス宣言」という記事を投稿していました。その中で、ベーシックインカムとベーシックサービスの違いについて触れています。
今回の記事「期待したい政治のあり方」を通し、めざすべき社会像の話としてベーシックサービスや財源論についても取り上げてみるつもりでした。いつものことですが、たいへん長い記事となっているため機会を見ながら次回以降の題材として取り上げさせていただきます。
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コメント
庶民増税と法人減税を礼賛し、消費税率20%を画策する井手英策を持ち上げるばかりか生保の水際作戦を主導する卑劣な自治労め、恥を知れ。
投稿: れなぞ | 2023年8月 2日 (水) 21時10分
れなぞさん、コメントありがとうございました。
今週末投稿する新規記事は井手教授の訴えるベーシックサービスの話などを改めて取り上げるつもりです。ぜひ、自治労云々という先入観を外してご覧いただければ幸いです。
投稿: OTSU | 2023年8月 5日 (土) 06時17分