労使の信頼関係について思うこと
前回記事は「解散風が吹く中で政治に望むこと」でしたが、ようやく木曜夜に岸田総理は「今の国会で衆議院の解散はしない」と明言しました。いずれにしても費用が600億円前後かかり、各自治体に過大な負担を強いる衆院解散が総理大臣一人の胸先三寸となる専権事項で良いのかどうか甚だ疑問です。
政治に関わる話は次回以降の記事で改めて取り上げていくつもりです。今回はマイナーでローカルな話題を切り口に労使の信頼関係について思うことを書き進めていきます。
新型コロナウイルスが季節性インフルエンザと同じ5類感染症に位置付けられた以降、徐々に以前と同じような日常の風景に戻りつつあります。外で会食する機会も増えてきました。先々週の日曜、たいへん懐かしい皆さんと集まり、思い出話に花を咲かせました。
私の前任の執行委員長らが揃い、労使交渉の相手方だった元副市長らも交えた懇親の場でした。おのずから組合に関わる昔話で盛り上がっていました。労使交渉の当事者だった現職の時代、このような場を持つことは一切ありません。
お互い立場の違いから厳しい言葉で団体交渉を重ねています。それでも信頼関係だけは維持していたため、長い年月を経て「あの時は本当にたいへんだった」と苦笑いしながらの思い出話につなげることができています。
このような機会を得られたのは私の「スマホデビュー」が切っかけでした。パソコンからインターネットはよく利用していますが、スマホは不要、ガラケーで充分という考えでした。それでも既存の携帯電話自体、利用できなくなる期限が迫る中、とうとう4月に「スマホデビュー」を果たしました。
ラインの設定を自分で行なった際、電話帳に登録していた方々の番号あてに「友だち自動追加」を一斉送信していました。私自身が設定の仕組みを充分理解していない中での一斉送信であり、突然のラインに驚かれた旧知の皆さんも多かったろうと恐縮しています。すぐ何人かの方からラインが届いていましたが、このことを知ったのは翌朝でした。
そのような中、私が組合の委員長に就任した当時、副市長だった方からもラインが届きました。「お久しぶりです!お元気ですか?」というメッセージでした。私自身も戸惑いながら「お久しぶりです。初めてのスマホに四苦八苦中です。すぐ気付かず失礼致しました」と返信し、元副市長とのラインのやり取りが始まりました。
唐突な私からのラインに元副市長も「びっくりしました」と驚かれながら簡単に近況をお伝えいただきました。元副市長から「生きているうちにもう一度お会いできるといいなと願っていますが…」という言葉もあり、「機会がありましたら、ぜひ、お会いしたいと私も願っています」と返信していました。
5月に入り、前任の委員長らとお会いした時、このようなやり取りを伝えていました。すぐ話はまとまり、先々週の日曜午後、8人ほどで旧交を温める機会につなげていました。会食の翌日には元副市長から「昨日はいい日でした。久しぶりに皆さんとお会いできて良かったです。楽しいひとときありがとうございました」というラインをお送りいただいています。
労使交渉の当事者だった現職の頃、このような懇親の場を設けていれば組合員の皆さんから「馴れ合っているのではないか」という疑いの目で見られてしまう恐れもあります。そのような点を踏まえ、前述したとおり私どもの歴代の労使関係は自制的だったと振り返ることができます。
その上で、前述した「お互い立場の違いから厳しい言葉で団体交渉を重ねています。それでも信頼関係だけは維持していたため」という言葉の意味合いを説明させていただきます。
20代で執行委員になってから数多くの団体交渉に臨んできました。労使協議を尽くした結果、直前の事務折衝で合意できる到達点を判断し、妥結するためのセレモニー的な団体交渉も少なくありません。しかし、比率で言えばシナリオなどなく、お互いの主張をぶつけ合うガチンコの団体交渉が圧倒多数を占めています。
全体的には冷静で真摯な議論が中心とは言え、あまりにも要求との乖離が目立った時などに激高する組合役員もいました。委員長になってからは進行役という立場であり、感情が高ぶりすぎた組合役員をなだめる側でしたが、ごく稀に私自身も強い口調で訴える場面もありました。
もちろん誹謗中傷するような言葉は厳禁としていますが、専ら攻められる側に回る歴代の副市長らは可能な限り穏やかな団体交渉の開催を望んでいたはずです。それでも今回お会いした元副市長らは組合側からの団体交渉の開催要求に対し、いつも粛々と応じていただいていました。
団体交渉は憲法第28条及び労働組合法第6条に定められた労働組合の権利であり、正当な団体交渉の要求を使用者側は拒否できません。私どもの組合は厳密にとらえれば職員団体で、協約締結権が認められていません。
労組法に照らして一定の制約のある組合ですが、これまで労働組合としての正当性について市側から疑義を示されたことはありません。このような労使関係の出発点となる信頼関係があり、そのことから派生する重要な確認事項がいくつかあります。
労働条件の問題は労使対等な立場で協議し、合意に至らなければ一方的に実施しないという原則です。このことについてはブログを開設した頃の記事「なぜ、労使対等なのか?」をはじめ、「労使交渉への思い」や「組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」などを通して詳述しています。
事前協議の原則は、民間委託や指定管理者制度など行政のアウトソーシングに関しても同じように対応しています。5年前には組合からの要請書に対する文書回答で、行革計画の中で「労働条件の変更を伴う事項については、従前と変わらず事前協議していく」「労使の信頼関係を損ねないように取り組んでいく」ことを改めて確認していました。
かつて市議会の委員会で「行革課題を進める上で組合との協議が必要なのか?」という質問がありました。このような質問に対し、当時の副市長は「労働条件の変更が伴う場合、労使協議は必要」と答弁しています。その時の副市長が今回の会食に参加された懐かしいメンバーのお一人でした。
労使関係に関わらず、信頼関係を維持するためには「約束したことは守る」という土台が欠かせません。約束が守れない場合、変更しなければならない場合、相手方に事情を丁寧に説明し、納得を得られるように努力しなければなりません。
労使協議の対象とすべきかどうかなど、もしかすると情勢の変化によって変わる場合もあり得るのかも知れません。しかし、これまで労使協議の対象だった事項の取扱いを変えるのであれば、対象としないという事情や理由を組合側に理解を求め、同意を得ることから始める必要があります。
今回、お会いした元副市長のお二人や部長の皆さんは、このような点について充分ご理解いただいていた方々であり、交渉の当事者だった頃、たいへん感謝していました。立場の違いから厳しく対峙した場面がありながらも、お互いの信頼関係の土台があるからこそ、このような場を得られているものと喜ばしく思っています。
実は会食した日、思い出話ばかりではなく、9月3日に投開票される市長選も話題に上がっていました。現職の市長が退任されるため、新人同士の選挙戦となります。現職に257票という僅差に迫った都議が再び市長選に挑むことを表明しています。自民党側は現職の都議を候補者に一本化としたという話を耳にしています。
これまで当ブログでは4年ごとに「市長選に向けた組合の対応」 「過ぎ去る夏に市長選」 「8月9日に市長選と市議補選」「2019年夏の市長選」という記事を投稿しています。立場上、選挙戦とは適切な距離感が必要ですが、重大な関心事であることには間違いありません。
前回僅差だった都議は私どもの組合と推薦関係のある方です。携帯電話の番号を知っていたため、もしご都合が良ければ会食の場にご一緒できないか連絡させていただきました。着信を受け、すぐ折り返しの電話をいただきましたが、その日は都合がつかずお会いできませんでした。
翌朝、私から「昨日は突然のお電話失礼致しました」と不躾なお誘いをお詫びするメールを送っています。こちらも「また機会があれば、お声がけください」とすぐ返信いただいていました。重ねてお忙しい中、いろいろお気遣いいただき、ありがとうございました。
会食が終わり、お店の前で撮った集合写真、私だけ正面を向いていません。コロナ禍が続いた中、以前に比べてお酒に弱くなったような気がしています。ペース配分を忘れているのか、加齢(💧)なのかも知れませんが…。
最後に、当日は私自身も本当に懐かしく、楽しい時間を過ごさせていただきました。参加くださった皆さん、改めてありがとうございました。また機会がありましたら、お会いできることを楽しみにしています。
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