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2023年6月10日 (土)

解散風が吹く中で政治に望むこと

国会閉会中でも衆院解散は理論上可能ということですが、これまで1件も事例がないようです。そのため、国会の会期末が近付くと、どこからともなく解散風が吹きがちです。今国会の会期末は6月21日ですが、「今夏の衆院解散はない」という専門家の見立てが当たるのではないでしょうか。

会期延長の声も聞こえてこない中、重要法案の成立が加速しています。難民認定申請が3回目以降の外国人を送還できるようにする出入国管理・難民認定法改正案が金曜日に成立しています。LGBT法案も与党案を修正した上、来週火曜日には衆院を通過する見通しです。

先月の記事「保守派に配慮しがちな岸田政権 Part2」の最後のほうで「保守の岩盤支持層側から及第点をもらえていない岸田総理ですが、今後、どちらの側に重心を移していくのかどうか興味深いところです」と記していました。それぞれの法案、基本的な立場性の違いから様々な評価が示されています。

夕刊フジのコラムで、ジャーナリストの有本香さんは『LGBT法案成立は日本史上「最大級の暴挙」 岸田首相は安倍元首相の「憂慮」を理解しているのか 「朝敵」の運命いかなるものだったか』と岸田総理を酷評しています。一方で、リベラルな立場からは「性自認」という言葉を使っていないことの不充分さなどが批判されています。

TBS NEWS DIGの『入管法改正案~6つの大きな疑問と「不都合な事実」』を通し、今回の改正案の問題点がよく分かります。「送還されたら殺される」という悲痛な当事者の声をどこまで受けとめた「改正」なのか甚だ疑問です。外国人労働者の問題をはじめ、やはり立場性の違いから賛否や評価が分かれていくようです。

季刊誌「とうきょうの自治」にNPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事の鳥井一平さんをインタビューした「まっとうな移民政策の確立をめざす」というタイトルの記事があり、「安倍元首相のコアな支持者に、イデオロギッシュに移民を認めない人たちが多かったことの反映でしょうか?」という質問に鳥井さんは「それは本当にごく一部の人たちだったと思うんですが、それが全体を抑え込んでいたというのが実情だと思います」と答えています。

安倍政権は外国人嫌いというか、技能実習のローテーションでやるから外国人に定住してもらっては困るという考え方で、技能実習を全面的に使うという政策でした。そして、「外国人労働者」という言葉を禁句にして、「外国人材」という言葉に置き換えてました。

官僚の人たちと議論しているときにも、「外国人ろ…」と言いかけて、「あっ、外国人材」と言い直すという、笑い話のような状態でした。やはり安倍政権が終わってから、まだ残滓はありますが、少しずつ変わってきたと感じています。

鳥井さんは「ごく一部の人たち」と説明していますが、上記のようなエピソードを伝えるインタビュー記事を目にした時、やはり最高権力者の立場性が重要な政策の方向性を左右していくのだろうと感じ取っていました。

昨年の参院選前の6月に「今、政治に対して思うこと」という記事を投稿し、「いっそのこと、自民党が二つに分かれた方が夏の参院選は投票しやすくなるのに」という言葉が、私自身にとって最も共感している見方であることを伝えていました。ただ現実的な見方として、権力という軸を求心力にしている政権与党の自民党が分かれることは考えられません。

それでも岸田政権が岩盤支持層に配慮した政策判断を重ねている中、野党側が明確な対抗軸を打ち出していけば貴重な一票を託す選択の幅も広がっていくはずです。基本的な立場性や理念を軸にした政治の選択肢が明確化されていくことを切望しています。

ジャーナリストの宮原健太さんの立ち位置がブレブレで、何をしたい党なのか見えない…立憲民主党が世論の支持を失った根本原因』の論評のとおり立憲民主党が日本維新の会との選挙協力まで望んでいたのであれば、自民党との対抗軸を曖昧にしていく愚行だったと言わざるを得ません。

週刊FLASHの記事『維新・馬場伸幸代表“政権奪取計画”を独占告白「組むなら菅さん&萩生田さん」「岸田さんはアカンなあ」』『維新・馬場代表「立憲をたたきつぶす」発言の衝撃  本誌にも語っていた痛烈批判、「予備選」構想も道険し』が伝えているような日本維新の会と立憲民主党との対立は分かりやすい政治に向け、歓迎すべき動きだと思っています。

自民党、日本維新の会、立憲民主党、それぞれが候補者を立てた千葉5区の衆院補選では、立憲民主党の候補者が次点に入り、維新の会は4位にとどまっています。大田区の都議補選では立憲民主党の推薦候補が自民党候補の得票を上回り、維新の会は議席に届いていません。このような結果に対し、自民党の支持層から維新の会に票が流れていく傾向を感じ取っています。

そもそも議員一人一人の資質の問題として『「決して調子に乗らないように」維新が新人議員に研修でクギも、センパイ議員は“やらかし祭り”。府議団代表がストーカー報道、梅村みずほ氏はハンスト発言で大炎上!』の記事のようなアキレス腱が維新の会にはあることも見過ごせません。

自民党に関しては、前回記事「平和運動センター総会で発言」の中で触れた『解散はいつ? 首相長男更迭、自民からも「最低最悪の子育て」と批判』という岸田総理の脇の甘さが見受けられています。『やっぱりあった!岸田首相が「息子大ハシャギ公邸忘年会」に寝間着&裸足で「ご満悦参加写真」独占入手』のとおり長男だけを責められないため、頑なに「更迭ではない」という言葉遊びにこだわっていたのかも知れません。

マイナ「家族名義の口座に紐づけ」13万件  河野デジタル相の登録者への責任なすりつけ姿勢に「本当に不快」批判殺到』という報道のとおりマイナンバーカードの問題も自民党にとって逆風の一つになりかねません。このような現状から冒頭で紹介した「今夏の衆院解散はない」という専門家の見立てにつながっていくのだろうと思っています。

とは言え、いつ解散、総選挙に突入したとしても前述したとおり基本的な立場性や理念を軸にした政治の選択肢が明確化されていくことを望んでいます。そのためにも自民党の対抗軸として、維新の会とは明確な違いを際立たせた立憲民主党の奮起に期待したいところです。

最後に、そもそも衆院議員の任期は4年です。任期が2025年10月まであるのにも関わらず、解散風が吹くことに強い違和感を覚えています。さらに岸田総理自身や与党側にとって有利なのかどうかという思惑で、解散時期が判断されてしまうのであれば非常に憂慮すべきことです。そのような悪習を断ち切る政治のあり方を切に望んでいます。

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