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2023年5月13日 (土)

保守派に配慮しがちな岸田政権

自宅に届く読売新聞に『時代の証言者』という連載記事があります。漫画家の楳図かずおさんの時は毎朝、欠かさず目を通していました。その連載記事に触れることで、子どもの頃に読んでいた『漂流教室』など懐かしい漫画の数々を思い出していました。

楳図さんの後、現在連載中の証言者は衆院議長だった伊吹文明さんです。第1回目のサブタイトルは「政治家37年 良識大事に」でした。その記事の中で、たいへん共感できる記述に目を留めていました。

政治家として保守の理念を大切に、判断、行動してきました。保守とは謙虚な思想だと思っています。自分自身を含め、人間は判断を間違えるものです。だから、個人や一党の独裁、統制や計画経済ではなく、多くの人が参加する民主制、自由や市場経済を、私たちは大切にしている。

独裁政治の怖さ、誤りはロシアのウクライナ侵略で明らかでしょう。どんな思想、制度にも長所と短所はあり、民主制は人気取りのポピュリズム(大衆迎合主義)、自由や市場経済も行き過ぎ取ると「わがまま」や「もうけ至上」になる恐れがある。

この後、伊吹さんは「良識」と言える理性や矜持が大切であり、祖先から醸成してきた生き方、伝統などを大事にし、時代に合わせて更新していくことが保守の本質であることなどを語っています。

安倍元総理が「保守派のスター」と呼んだ高市早苗大臣に関わる話題を頻繁に取り上げていましたので、最近、保守という言葉に目が留まるようになっています。そのような最中、ネット上で『LGBT法修正案を自民が了承  保守派に配慮、G7前に国会提出へ』という見出しの記事が目に入りました。

自民党は12日、性的マイノリティに関する特命委員会などの合同会議を党本部で開き、LGBTQなど性的少数者への理解増進を目的とする議員立法「LGBT理解増進法案」の修正案を了承し、森屋宏・内閣第1部会長に対応を一任した。党内手続きや公明党との協議を経て、来週にも「与党案」として国会提出する方針。

野党を含む超党派の議員連盟を中心に議論してきた法案を修正。2021年に議連がまとめた法案では、性的指向などを理由とした「差別は許されない」としていた文言を、修正案では「不当な差別はあってはならない」と変更した。「性自認」についても「性同一性」と表現を改め、性別の決定を自らの判断に委ねる傾向にある「性自認」という言葉に抵抗感が強い党内保守派の一部に配慮した。

出席議員によると、12日の合同会議では、性的指向などの多様性に関する教育環境の整備や相談機会の確保などに学校が努めるよう求める規定や、民間団体などが自発的に行う理解増進活動を促進するよう国や自治体に求める規定について、条文構成を修正するなどした。

日本は主要7カ国(G7)で最も性的少数者に関する法整備が遅れていると指摘されている。岸田文雄首相は19日から広島で開かれるG7サミットを見据え、理解増進法案の成立に向けて調整するよう自民党に指示していた経緯があり、G7サミット前の国会提出を優先して合意形成を図った形だ。超党派議連がまとめた法案の成立を求めていた野党の一部は反発している。

会合後、自民保守派の西田昌司政調会長代理は「法案が提出されれば、衆参両院の委員会でいかなる目的のためにやっているのかをしっかり議論して議事録に残すことが、法の運用を誤らせない一番のもとだ。今回の一任はそういうことをやってもらうことを条件に認めた」。

超党派の「LGBTに関する課題を考える議連」の会長を務める自民の岩屋毅元防衛相は「小異を捨てて大同について、性的マイノリティーの方も含めた共生社会を作っていく大目的のために心を一つにしなければいけない」と記者団に語った。

森屋部会長は「修正案にさらに修正を加えることはないと思う。国会審議の中で国民に理解をいただくための努力をしていかなければならない」と強調した。【毎日新聞2023年5月12日

保守やリベラルなど立場性に限らず、「人間は判断を間違える」という謙虚さは大切だろうと考えています。さらに「時代に合わせて更新していく」という考え方も立場性を問わず、求められている柔軟さだと思っています。

今回修正されたLGBT理解増進法案は、日本以外のG7各国の法律と比較すれば後退した中味だと言われています。それにも関わらず、フジテレビ上席解説委員の平井文夫さんは自民党による拙速なLGBT法案推進は保守票の自民離れを加速させるのではないか』という消極的な姿勢で論評しています。

このような動きをLITERAは『「LGBT法案」で自民党が「差別」許容の改悪! 政調会長代理が「(LGBT権利は)共産主義思想の延長」と統一教会と同じ主張』という見出しを付けた記事で痛烈に批判しています。

前回記事「Hanadaの記事から願うこと」の最後に「世論とのギャップが政治と宗教の歪な関係性の影響を受けているものではないことを願っています」と記していました。旧統一教会から直接的な指示があって、LGBT法案に反対している国会議員は皆無に近いのだろうと受けとめています。

しかし、旧統一教会の教義や主張と同じ方向性を政治信条とした自民党の国会議員が多いことも確かだろうと思っています。そのような国会議員を毎日新聞は保守派と括り、法案の提出に向けて自民党執行部が配慮したと伝えていました。

このあたりの関係性について、性的マイノリティに関する情報を発信する一般社団法人Fair代表理事の松岡宗嗣さんが明白な「LGBT法案」賛否の構図。国内外から成立求める声、反発する宗教右派と保守派議員』という記事を通して解説しています。

そもそも自民党は保守政党ですので保守派という括りでは、とらえ切れない側面があります。その上で、冒頭で紹介した伊吹さんの考えている「保守」という理念に照らした時、LGBT法案に反対している国会議員の政治信条は合致していくものなのでしょうか。

このような疑問を巡らした際、作家の古谷経衡さんの記事『自民党支持者が自民党候補の落選運動を展開―右派が英利アルフィヤ氏(千葉5区)を大批判した理由の中に出てくる「二つの自民党」という興味深い関係性に目を留めています。

LGBTQへの権利擁護に肯定的な姿勢を示した場合、保守層の中でも右寄りな人たちから「反日的だ」と批判されがちであることを古谷さんは伝えています。このような傾向が見受けられる中、古谷さんは次のように自民党内の構図を説明しています。

右派の世界観には、「二つの自民党」という理屈が存在する。自民党の中には様々な派閥が存在するものの、大きく分けると「親日自民党」と「反日自民党」に二分できるという考え方である。

ここでいう「親日自民党」というのは、「真に日本を憂い、国を愛し、反日的なメディアや野党に毅然として反撃し、アメリカと協力して外国勢力(中国、韓国、北朝鮮など)と対決する国防体制を構築する」のことだという。

一方「反日自民党」というのはこれとは逆で、「日本を憂うフリをして外国に媚び、反日的なメディアに秋波を送り、アメリカとは一応協力するものの、結局は中国や韓国に媚びへつらい、それにより利権をむさぼっている」のことだという。

日本国の未来のためには、自民党の中の「反日自民党」は極力排除して「親日自民党」による内閣の組閣が急務である―。これが「二つの自民党」論という、右派特有の世界観の実相だ。

これに従えば「親日自民党」の筆頭は、先般不幸にして亡くなられた安倍元総理であり、またその遺志を継ぐとみられる高市早苗氏や杉田水脈氏などの自民党清和会やその系統の議員が該当するのだという。

これに対し「反日自民党」の筆頭は、岸田首相、河野太郎氏、茂木敏充氏、林芳正氏、石破茂氏、二階俊博氏などの「旧経世会」「宏池会」やその系統の議員で、ここには稲田朋美氏なども追加される訳だが、ことに二階氏は日中友好議連会長を務めるなどの経歴から、「媚中派」などと蔑称の意味を込めて形容されている状況なのである。

この後に「右派は岸田政権に対して大きく否定的だ」とも記されています。あくまでも一つの見方であり、実際はそのような単純な構図で括れないものと考えています。それでも最近、保守タカ派(右派)、安倍元総理の信奉者、高市大臣の支持者というイコール関係での岩盤支持層の存在を強く意識するようになっています。

そのような岩盤支持層に岸田政権は配慮し、LGBT法案にも対応していることになります。端的な言い方になってしまいますが、軍靴の音が聞こえるよう…ネット騒然!岸田首相表紙の「米タイム誌」と「NATO東京事務所開設」報道』という顛末も、岩盤支持層を配慮した結果だろうと思っています。

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