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2023年5月27日 (土)

公開間近な映画『渇水』

このところ前回記事「保守派に配慮しがちな岸田政権 Part2」のような時事の話題を受け、個人的な思いを託した政治的な内容の記事が続いています。久しぶりに今回、政治的な内容から離れ、公開間近な『渇水』という映画について取り上げます。

それでも『生田斗真「渇水」鑑賞前後では「世界が変わって見える」“震える磯村勇斗”の思い出も語る』という報道があるとおり時事の話題の一つでもあります。生田斗真さんが主演を務める映画『渇水』は6月2日から全国公開されます。

生田さんをはじめ、キャストの門脇麦さんや高橋正弥監督らが出席した公開直前ティーチインイベントは5月24日に東京・神楽座で行なわれていました。映画.comに掲げられている解説では次のように『渇水』を紹介しています。

「凶悪」「孤狼の血」などを送り出してきた白石和彌監督が初プロデュースを手がけ、生田斗真を主演に迎えて送る人間ドラマ。作家・河林満の名編「渇水」を原作に、心の渇きにもがく水道局職員の男が幼い姉妹との交流を通して生きる希望を取り戻していく姿を描く。

市の水道局に勤める岩切俊作は、水道料金を滞納している家庭や店舗を回り、料金徴収および水道を停止する「停水執行」の業務に就いていた。日照り続きの夏、市内に給水制限が発令される中、貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われる日々を送る俊作。

妻子との別居生活も長く続き、心の渇きは強くなるばかりだった。そんな折、業務中に育児放棄を受けている幼い姉妹と出会った彼は、その姉妹を自分の子どもと重ね合わせ、救いの手を差し伸べる。

ティーチインイベントで生田さんは「この映画はエンタメ作品ではないし、心を抉られるようなシーンもあると思うのですが、この映画を観る前と観た後では世界が変わって見えると思います。長年かけて完成したこの映画をたくさんの人に見ていただければと思います」と語っています。

『渇水』は、河林満さんが1990年の文學界新人賞を受賞し、第103回芥川賞候補となった同名小説を映画化しています。河林さんは、私が勤める市役所の職員でした。河林さんが市の水道業務を担当していた頃の経験を生かし、『渇水』は「水」と「死」をモチーフに描かれています。

このようなご縁があったため、改めて『渇水』が注目を集めているタイミングで当ブログでも取り上げています。同じような趣旨を踏まえ、私どもの市の中央図書館では、河林さんが生前書いた原稿や創作ノートなど約30点を集めた企画展示会を5月23日から6月11日まで催しています。

この企画展示会については、読売新聞の多摩版で『「渇水」原作者  立川に縁  市中央図書館が企画展』という見出しが付けられて紹介されていました。公開後、映画も観てみようと考えていますが、企画展示会にはさっそく木曜日に足を運んでいました。

私が来館した時、ちょうど教育長が図書館長や担当者から説明を受けていました。読売新聞に紹介された担当者から私も直接いろいろな話を伺うことができました。特に未発表とみられる小説『ヨノモリ』の原稿について詳しく説明していただきました。

『ヨノモリ』は、福島第一原発事故で帰還困難区域となった富岡町にある桜並木の名所「夜の森(よのもり)」が舞台とみられ、死者の魂との触れあいが描かれています。「知り合いの誰がモデルになっていたのか、よく分かりますよ」という説明も受けていました。

当たり前なことでしたが、『ヨノモリ』だけは記憶にありませんでした。一方で『渇水』をはじめ、河林さんの小説の大半は目にしていました。自宅の書棚には当時の文芸誌も並んでいます。ちなみに以前の記事公務員になったイキサツ」の中で、次のような記述があります。

今の市役所へ入り、配属された職場は「水道部業務課」。それまでの公務員のイメージが初日から吹き飛びました。良い意味でのカルチャー・ショックでした。迎えてくれた先輩たち一人ひとりの強烈な個性、そして、何よりも暖かみあふれた職場の雰囲気に驚きました。

当時の市役所の中でも、その課は際立って個性的だったことを後から知ることになりますが、勝手な思い込みがあった分だけ新鮮な感動でした。さらに何とも意志が弱いことになりますが、配属後、数日間で「永久就職でいいかな」と人生設計を変えてしまったほどの素晴らしい職場との出会いでした。

暖かく迎えてくれた先輩の一人が河林さんでした。そのため、個人的にも河林さんとは深いご縁のあった方だったと言えます。河林さんに誘われ、市役所の文芸同好会の一員にもなっていました。その河林さんは2008年に57歳という若さで急逝されました。

ご存命であれば『渇水』以上の作品を世に送り出し続けられていたはずです。2回候補になりながら一歩及ばなかった芥川賞にも手が届いていたかも知れません。それでも今、『渇水』が映画となって注目を浴びていることに河林さんも喜ばれているのではないでしょうか。

河林さんとのご縁を振り返る中で、2008年3月に発行した私どもの組合の機関誌「市職労報」のことも思い出していました。組合の執行委員長である私が「追悼  河林満さんへ」という文章を寄稿していました。今回の記事の最後に、河林さんを偲びながらその時の文章を掲げさせていただきます。

          *         *

1月23日、東京に雪が積もった日でした。河林さんの告別式、悲しい灰色の空が広がっていました。

市役所に入り、水道部業務課に配属された時、職場の先輩職員の一人が河林さんでした。小説家をめざしていた河林さんは、同じく文筆活動に憧れていた私にとって素晴らしく偉大な先輩でした。

その河林さんは、1988年に『ある執行で』の自治労文芸賞受賞を皮切りに『渇水』で文學界新人賞を射止めるなど、着実に作家の道を歩んでいました。『渇水』は第103回芥川賞候補となり、1993年に発表した『穀雨』も第109回芥川賞候補となり、名実ともに小説家になる夢を実現されていました。

その間、「市職労報」にも連載で「感想の泉」という書評を寄せていただきました。1997年には自治労東京文芸集団の代表を務め、私どもの組合の特別執行委員も担われました。1998年、市役所を退職され、文筆活動に専念されていました。

年が明けた1月19日、訃報が発せられました。脳出血、突然訪れた河林さんとの別れの知らせでした。57歳、あまりにも早すぎる残念な知らせでした。

河林さんには、本当にお世話になりました。ありがとうございました。ご冥福をお祈りし、心からお悔やみ申し上げます。

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2023年5月20日 (土)

保守派に配慮しがちな岸田政権 Part2

前回記事「保守派に配慮しがちな岸田政権」を読み返してみると、随分散漫な内容だったものと省みています。特に最後の「軍靴の音が聞こえるよう…ネット騒然!岸田首相表紙の「米タイム誌」と「NATO東京事務所開設」報道』という顛末も、岩盤支持層を配慮した結果だろうと思っています」などは言葉足らずな終わり方でした。

そのため、今週末に投稿する新規記事のタイトルは迷わず「保守派に配慮しがちな岸田政権 Part2」とし、前回記事を通して伝えたかった内容や私自身の問題意識を書き足していこうと考えました。まず上記のリンク先の記事内容を改めて紹介します。

「長年の平和主義を捨て去り、自国を真の軍事大国にすることを望んでいる」 米誌タイム(電子版)が5月22、29日号の表紙を公表。岸田文雄首相(65)とともに「日本の選択」として紹介された一文に衝撃が走っている。

記事は4月28日に首相公邸で単独取材されたもので、岸田首相が「世界第3の経済大国を、それに見合う軍事的影響力を持った大国に戻すことに着手した」と指摘しているが、一体どこの誰が「長年の平和主義を捨て去り」「真の軍事大国」を望んでいるというのか。日本が今でも掲げているのは「専守防衛」だろう。

SNS上でも、《日本国民はそんな選択していません》《軍事大国に突っ走っているのは岸田自民党だけ》《軍事大国化?冗談ではない》と批判的な意見が少なくないが、さらにネット上をざわつかせているのが、NATO(北大西洋条約機構)が東京に連絡事務所をつくる方向で調整している、との報道だ。

ロシア軍のウクライナ侵攻を受け、NATOは2022年6月に「戦略概念」を改定。中国を「体制上の挑戦」と位置づけ、インド太平洋地域で連携する国として、日本との関係強化を模索してきたという。

松野博一官房長官(60)は10日の記者会見で、NATOの連絡事務所開設について、「現時点で設置が決まったとは承知していない」としたものの、「NATOは信頼できる必然のパートナーであり、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分との共通認識の下、協力をさらに強化していく」と発言。

好意的な受け止めだったが、NATOはれっきとした「軍事同盟」だ。それなのに日本政府がなぜ、「軍事同盟」の窓口を東京に作ることを歓迎しているのか。

《待て待て。日本は将来、NATOに加盟するつもりか?》《NATO東京事務所が攻撃されたら、どうなるの。加盟しなくても反撃するとか》《たとえ日本がNATOに加盟しなくても、ロシアは面白くないよね。これって攻撃の口実になるんじゃないの》

「軍靴の音」が静かに聞こえてきているようで、SNS上で懸念が広がるのも無理はない。【日刊ゲンダイ2023年5月11日

政権批判を専らとしているメディアですが、伝えている内容は事実であり、前回記事の最後に紹介させていただきました。この後、『米タイム誌 岸田首相の「日本を軍事大国に変える」記述を変更』という報道のとおり日本政府の抗議を受けたためなのか、ウェブ版のタイトルだけは「岸田総理大臣は、平和主義だった日本に国際舞台でより積極的な役割を持たせようとしている」と変更されています。

出版される雑誌の表紙には「岸田総理大臣は何十年も続く平和主義を放棄し、自国を真の軍事大国にしたいと望んでいる」と書かれたままであり、こちらの記述は変更されていません。

AERAの記事岸田首相の表紙が“物議”の米タイム誌  メディアは問題の本質を伝えているか?』の中で、そもそも「平和主義を放棄」という記述のほうが「これは日本の安保政策の現状を表した的確な表現」だと感じているという戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんの見方を紹介しています。

インタビュー記事は内容に即したタイトルをつける必要があります。その部分に関しては、岸田首相の言葉に沿ったタイトルに変更するのは妥当です。他方、表紙の文言については、様々な事実を分析し、首相の全体的な姿勢を論評したもの。つまり、アメリカのタイム誌から見て、日本は軍事大国化に舵を切ったと見えるということです。

岸田政権にとって不本意な見られ方かも知れませんが、山崎さんが上記のように解説しているとおり「米タイム誌から見て」という関係性は否めない現状だろうと思っています。

金曜日、G7サミットが広島市で始まりました。岸田総理は核軍縮に焦点をあてたG7初の独立首脳文書「広島ビジョン」を発出することを表明しています。このような試みをはじめ、岸田総理の平和を希求する強い思いは確かなものだろうと受けとめています。

一方で、昨年末には安保関連3文書を閣議決定し、戦後、政府が一貫して「持たない」と判断してきた「反撃能力」の保有を明記しています。さらに2023年度から5年間の防衛費総額を約43兆円とすることを決めたのも岸田政権です。私自身の問題意識は『標的の島』と安保関連3文書」という記事の中で、次のように記していました。

今回の安保関連3文書に示されているような方向性が、国民の生命や暮らしを守ることに直結していくのかどうか、根本的な議論が決定的に不足しているものと思っています。そもそも反撃能力を保有し、43兆円を費やせば実効ある抑止力を担保できるのかどうかも疑問です。 

もちろん中国や北朝鮮こそが軍拡の動きを自制すべきであることは理解しています。しかしながら「安全保障のジレンマ」という言葉があるとおり疑心暗鬼につながる軍拡競争は、かえって戦争のリスクを高めかねません。いずれにしても脅威とは「能力」と「意思」の掛け算で決まると言われています。

自民党の中で「ハト派」と目されている宏池会の岸田総理に対し、安倍元総理の路線とは一線を画していくのではないかと期待する側面もありました。しかし、残念ながら実際は「ハト派」という看板を到底掲げられないような方向性に舵を切り続けています。

その結果、米タイム誌から「長年の平和主義を捨て去り」と見られるような現状につながっていると言えます。現実的で望ましい判断であると評価されている方々も多いのだろうと思っていますが、前述したとおり根本的な議論があまりにも不足していることは否めません。

岸田総理が「タカ派」的な判断を重ねているのも安倍元総理の意志を受け継ぎ、岩盤支持層を配慮した結果だろうと思っていたため、2週にわたって「保守派に配慮しがちな岸田政権」という記事タイトルで書き進めています。すでに岸田総理と安倍元総理の政治信条に大きな差異がなくなっているのかも知れませんが、このような思いを少なからず引きずっていました。

ちなみに配慮されているはずの岩盤支持層側からすれば『LGBT法案、自公が週内提出へ 立民は修正前の法案提出か 林外相、米大使の動画「コメント控える」 岩田温氏「安倍氏死後、保守政党の軸が溶解」』という記事が伝えているような不満も高まっているようです。

その記事の中で、政治学者の岩田温さんは「安倍氏が死去してから、『自民党は本当に保守政党なのか』と、首をひねる出来事が続いている。保守の岩盤支持層は、岸田政権に失望感を募らせている。今回の対応は、保守政党の軸が〝溶解〟した印象だ」と語っています。保守の岩盤支持層側から及第点をもらえていない岸田総理ですが、今後、どちらの側に重心を移していくのかどうか興味深いところです。 

昨年の参院選前の6月に「今、政治に対して思うこと」という記事を投稿し、「いっそのこと、自民党が二つに分かれた方が夏の参院選は投票しやすくなるのに」という言葉が、私自身にとって最も共感している見方であることを伝えていました。ただ現実的な見方として、権力という軸を求心力にしている政権与党の自民党が分かれることは考えられません。

その中で、岸田政権が岩盤支持層に配慮した政策判断を重ねていくのであれば、明確な対抗軸を打ち出した野党の存在が欠かせないものと考えています。このあたりについては次回以降の記事で改めて取り上げてみるつもりです。今回の記事も散漫な終わり方になって恐縮ですが、前回の続きにあたる内容はここで一区切り付けさせていただきます。

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2023年5月13日 (土)

保守派に配慮しがちな岸田政権

自宅に届く読売新聞に『時代の証言者』という連載記事があります。漫画家の楳図かずおさんの時は毎朝、欠かさず目を通していました。その連載記事に触れることで、子どもの頃に読んでいた『漂流教室』など懐かしい漫画の数々を思い出していました。

楳図さんの後、現在連載中の証言者は衆院議長だった伊吹文明さんです。第1回目のサブタイトルは「政治家37年 良識大事に」でした。その記事の中で、たいへん共感できる記述に目を留めていました。

政治家として保守の理念を大切に、判断、行動してきました。保守とは謙虚な思想だと思っています。自分自身を含め、人間は判断を間違えるものです。だから、個人や一党の独裁、統制や計画経済ではなく、多くの人が参加する民主制、自由や市場経済を、私たちは大切にしている。

独裁政治の怖さ、誤りはロシアのウクライナ侵略で明らかでしょう。どんな思想、制度にも長所と短所はあり、民主制は人気取りのポピュリズム(大衆迎合主義)、自由や市場経済も行き過ぎ取ると「わがまま」や「もうけ至上」になる恐れがある。

この後、伊吹さんは「良識」と言える理性や矜持が大切であり、祖先から醸成してきた生き方、伝統などを大事にし、時代に合わせて更新していくことが保守の本質であることなどを語っています。

安倍元総理が「保守派のスター」と呼んだ高市早苗大臣に関わる話題を頻繁に取り上げていましたので、最近、保守という言葉に目が留まるようになっています。そのような最中、ネット上で『LGBT法修正案を自民が了承  保守派に配慮、G7前に国会提出へ』という見出しの記事が目に入りました。

自民党は12日、性的マイノリティに関する特命委員会などの合同会議を党本部で開き、LGBTQなど性的少数者への理解増進を目的とする議員立法「LGBT理解増進法案」の修正案を了承し、森屋宏・内閣第1部会長に対応を一任した。党内手続きや公明党との協議を経て、来週にも「与党案」として国会提出する方針。

野党を含む超党派の議員連盟を中心に議論してきた法案を修正。2021年に議連がまとめた法案では、性的指向などを理由とした「差別は許されない」としていた文言を、修正案では「不当な差別はあってはならない」と変更した。「性自認」についても「性同一性」と表現を改め、性別の決定を自らの判断に委ねる傾向にある「性自認」という言葉に抵抗感が強い党内保守派の一部に配慮した。

出席議員によると、12日の合同会議では、性的指向などの多様性に関する教育環境の整備や相談機会の確保などに学校が努めるよう求める規定や、民間団体などが自発的に行う理解増進活動を促進するよう国や自治体に求める規定について、条文構成を修正するなどした。

日本は主要7カ国(G7)で最も性的少数者に関する法整備が遅れていると指摘されている。岸田文雄首相は19日から広島で開かれるG7サミットを見据え、理解増進法案の成立に向けて調整するよう自民党に指示していた経緯があり、G7サミット前の国会提出を優先して合意形成を図った形だ。超党派議連がまとめた法案の成立を求めていた野党の一部は反発している。

会合後、自民保守派の西田昌司政調会長代理は「法案が提出されれば、衆参両院の委員会でいかなる目的のためにやっているのかをしっかり議論して議事録に残すことが、法の運用を誤らせない一番のもとだ。今回の一任はそういうことをやってもらうことを条件に認めた」。

超党派の「LGBTに関する課題を考える議連」の会長を務める自民の岩屋毅元防衛相は「小異を捨てて大同について、性的マイノリティーの方も含めた共生社会を作っていく大目的のために心を一つにしなければいけない」と記者団に語った。

森屋部会長は「修正案にさらに修正を加えることはないと思う。国会審議の中で国民に理解をいただくための努力をしていかなければならない」と強調した。【毎日新聞2023年5月12日

保守やリベラルなど立場性に限らず、「人間は判断を間違える」という謙虚さは大切だろうと考えています。さらに「時代に合わせて更新していく」という考え方も立場性を問わず、求められている柔軟さだと思っています。

今回修正されたLGBT理解増進法案は、日本以外のG7各国の法律と比較すれば後退した中味だと言われています。それにも関わらず、フジテレビ上席解説委員の平井文夫さんは自民党による拙速なLGBT法案推進は保守票の自民離れを加速させるのではないか』という消極的な姿勢で論評しています。

このような動きをLITERAは『「LGBT法案」で自民党が「差別」許容の改悪! 政調会長代理が「(LGBT権利は)共産主義思想の延長」と統一教会と同じ主張』という見出しを付けた記事で痛烈に批判しています。

前回記事「Hanadaの記事から願うこと」の最後に「世論とのギャップが政治と宗教の歪な関係性の影響を受けているものではないことを願っています」と記していました。旧統一教会から直接的な指示があって、LGBT法案に反対している国会議員は皆無に近いのだろうと受けとめています。

しかし、旧統一教会の教義や主張と同じ方向性を政治信条とした自民党の国会議員が多いことも確かだろうと思っています。そのような国会議員を毎日新聞は保守派と括り、法案の提出に向けて自民党執行部が配慮したと伝えていました。

このあたりの関係性について、性的マイノリティに関する情報を発信する一般社団法人Fair代表理事の松岡宗嗣さんが明白な「LGBT法案」賛否の構図。国内外から成立求める声、反発する宗教右派と保守派議員』という記事を通して解説しています。

そもそも自民党は保守政党ですので保守派という括りでは、とらえ切れない側面があります。その上で、冒頭で紹介した伊吹さんの考えている「保守」という理念に照らした時、LGBT法案に反対している国会議員の政治信条は合致していくものなのでしょうか。

このような疑問を巡らした際、作家の古谷経衡さんの記事『自民党支持者が自民党候補の落選運動を展開―右派が英利アルフィヤ氏(千葉5区)を大批判した理由の中に出てくる「二つの自民党」という興味深い関係性に目を留めています。

LGBTQへの権利擁護に肯定的な姿勢を示した場合、保守層の中でも右寄りな人たちから「反日的だ」と批判されがちであることを古谷さんは伝えています。このような傾向が見受けられる中、古谷さんは次のように自民党内の構図を説明しています。

右派の世界観には、「二つの自民党」という理屈が存在する。自民党の中には様々な派閥が存在するものの、大きく分けると「親日自民党」と「反日自民党」に二分できるという考え方である。

ここでいう「親日自民党」というのは、「真に日本を憂い、国を愛し、反日的なメディアや野党に毅然として反撃し、アメリカと協力して外国勢力(中国、韓国、北朝鮮など)と対決する国防体制を構築する」のことだという。

一方「反日自民党」というのはこれとは逆で、「日本を憂うフリをして外国に媚び、反日的なメディアに秋波を送り、アメリカとは一応協力するものの、結局は中国や韓国に媚びへつらい、それにより利権をむさぼっている」のことだという。

日本国の未来のためには、自民党の中の「反日自民党」は極力排除して「親日自民党」による内閣の組閣が急務である―。これが「二つの自民党」論という、右派特有の世界観の実相だ。

これに従えば「親日自民党」の筆頭は、先般不幸にして亡くなられた安倍元総理であり、またその遺志を継ぐとみられる高市早苗氏や杉田水脈氏などの自民党清和会やその系統の議員が該当するのだという。

これに対し「反日自民党」の筆頭は、岸田首相、河野太郎氏、茂木敏充氏、林芳正氏、石破茂氏、二階俊博氏などの「旧経世会」「宏池会」やその系統の議員で、ここには稲田朋美氏なども追加される訳だが、ことに二階氏は日中友好議連会長を務めるなどの経歴から、「媚中派」などと蔑称の意味を込めて形容されている状況なのである。

この後に「右派は岸田政権に対して大きく否定的だ」とも記されています。あくまでも一つの見方であり、実際はそのような単純な構図で括れないものと考えています。それでも最近、保守タカ派(右派)、安倍元総理の信奉者、高市大臣の支持者というイコール関係での岩盤支持層の存在を強く意識するようになっています。

そのような岩盤支持層に岸田政権は配慮し、LGBT法案にも対応していることになります。端的な言い方になってしまいますが、軍靴の音が聞こえるよう…ネット騒然!岸田首相表紙の「米タイム誌」と「NATO東京事務所開設」報道』という顛末も、岩盤支持層を配慮した結果だろうと思っています。

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2023年5月 6日 (土)

Hanadaの記事から願うこと

ゴールデンウイークも明日までです。週明けから新型コロナウイルスは、季節性インフルエンザと同じ5類感染症に位置付けられます。2年前の記事「もう少し新型コロナについて」の中で伝えていましたが、早い段階から2類相当であることの問題性も指摘されていました。その方々からすれば「ようやく」という思いではないでしょうか。

5月3日の憲法記念日、今年はリアルタイムでの集会等に参加できていません。昨年は有明防災公園で開かれた集会をオンラインで視聴し、このブログで日本国憲法施行から75年」という記事を投稿していました。

その記事の中で「伝える言葉や問いかけ方によって、憲法9条の行方は大きく変わりそうな現状だと言えます。だからこそ憲法9条の効用を支持している側は不特定多数の皆さんに届く言葉や共感を得られる言葉を探し続けなければなりません」と記しています。

このような問題意識は、ますます強めていかなければならない昨今だと思っています。読売新聞は『憲法改正「賛成」が61%、コロナ禍やウクライナ侵略影響で高水準に…』という見出しを付け、下記のような世論調査の結果を伝えています。

読売新聞社は憲法に関する全国世論調査(郵送方式)を実施し、憲法を「改正する方がよい」は61%(前回昨年3~4月調査60%)と、2年連続で6割台の高い水準となった。コロナ禍やロシアによるウクライナ侵略など、憲法のあり方を問う世界規模の出来事が相次いだことが影響したとみられる。

一方で、共同通信は『改憲機運は高まらず71% 同性婚71%容認』という見出しを付けた下記のような世論調査の結果を配信していました。改憲すべきという機運が高まっていないのにも関わらず、問われ方によって「改正する」ことに賛意を示す割合が多くなる傾向に問題意識を強めています。

改憲機運が「高まっている」は「どちらかといえば」も含め計28%。改憲に前向きな自民や日本維新の会を支持する層でも3割台にとどまる。昨年同時期の郵送調査は「高まっていない」が計70%、「高まっている」は計29%で同水準だった。国会では衆院憲法審査会のほぼ毎週開催が定着したものの、論議の活発化が機運上昇に結びついていない実態が明らかになった。

日本の安全保障はどのようなあり方が望ましいのか、憲法9条の文言を変える必要性があるのかどうか、まぎれのない選択肢の設定が重要です。いずれにしても改正条項の96条に沿って国民投票が実施される時は、国民一人一人の共通理解と覚悟のもとに日本の進むべき道が決められる投票であることを願っています。

上記は3年前の記事「憲法9条の論点について」の結びに託した言葉です。その記事の中では「護憲派は平和主義者で、改憲派は戦争を肯定しているというような短絡的な二項対立の構図を問題視している」という自分なりの心構えも書き添えています。

このような心構えのもとで、自分自身の基本的な立ち位置から程遠い主張や考え方にも積極的に触れていくように努めています。今年2月に投稿した記事「『安倍晋三 回顧録』と『国策不捜査』 Part2」の最後に森友学園の籠池泰典元理事長の次のような言葉を紹介していました。

野党の先生方や朝日新聞の記者さんなんかと話していると、「違うな」と思うこともある反面、「なるほどこういう考え方もあるんだ」と勉強になることも多い。リベラルや左派の人の考えは、確かにボクが抱く愛国精神とは違うものの、皆それぞれに国のことを思って行動していると感じるようになった。

もちろん、例えば天皇について突っ込んだ議論をすれば衝突するだろう。ただし主義主張や思想は違えど、連携できるところがあるのならしていけばいい。そう考えるようになった。いかに自分が「産経新聞」と「正論」と「WiLL」が築き上げた世界観のなかに閉じこもって、狭い思考に固執していたか思い知った。

籠池元理事長とは、ある意味で真逆の立ち位置から私自身は産経新聞やWiLLなどに掲げられた情報に接しています。さすがに書籍を実際に購入する機会は多くありませんが、最近ではHanada3月号を手に入れていました。『両親が覚悟の独占告白25ページ「小川さゆり」の真実』という見出しの記事に目を引かれたからです。

見出しにはったリンク先に当該記事の冒頭の内容が掲げられています。記事全体を通し、小川さんが病気の影響から事実無根の証言を繰り返し、両親は心を痛めながら娘のことを心配しているという事実関係を伝えています。両親や教団側が被害者であるという構図のもとに小川さんや全国弁連、立憲民主党、検証不充分なまま報道しているマスメディアの問題性を批判しています。

この記事に綴られている内容が事実なのであれば、小川さんに対する評価は大きく変わります。ただ高額献金や宗教2世の問題をはじめ、 前回記事「選挙戦が終わり、改めて旧統一教会の問題」で取り上げたような「政治と宗教」の歪な関係性の疑惑までを一切打ち消せる記事内容ではありません。

Hanada最新号にも『「小川さゆり」証言がコロコロ変わる』という見出しの記事が掲げられています。今回は購入していませんが、小川さんに絡んだ記事内容の信憑性は高いのかも知れません。しかし、だからと言って旧統一教会の問題をすべて不問にできるものではないはずです。

HanadaとWiLLは同じ日に発売されています。それぞれ『高市早苗は日本に必要』『仕組まれたか“高市つぶし”』という高市大臣を応援する見出しが目を引きます。高市大臣の言動を支持されている方々を一括りに評することは控えつつも、保守タカ派、安倍元総理の信奉者というイコール関係での岩盤支持層が存在していることも確かだろうと思っています。

このあたりについては最近の記事「岩盤支持層という言葉から思うこと」「多面的な情報を提供する場として 2023年春」を通して触れてきた見方です。このような岩盤支持層を意識し、HanadaとWiLLが誌面の内容を組み立てていることは間違いないはずです。一定の販売部数を確保するためには必要な戦略だと言えます。

その上で杞憂なのかも知れませんが、旧統一教会の問題に際し、編集面で過度な忖度等が働いていないことを願っています。同様に保守タカ派と目されている政治家の皆さんにもお願いしなければなりません。前掲した共同通信の世論調査では「同性婚71%容認」という結果を示しています。

時事通信の世論調査でLGBT理解増進法案については今国会で「成立させるべきだ」が50.8%と過半数を超え、「成立させるべきだと思わない」の16.9%を大幅に上回っています。しかし、安倍派の国会議員を中心にそのような動きや法案に真っ向から反対している姿が目立っています。

旧統一教会創設者の文鮮明氏の発言録には「同性愛は罪だ。罰を受けなければならない」といった内容が掲載されている。報道によると、2002年に発言録が日本語訳され、この頃から教団の反LGBTの動きが日本国内で活発化していったという。昨年7月、自民党LGBT特命委員会は、旧統一教会系の媒体などで「同性愛の多くは治癒可能」などと発信している八木秀次氏を講師として招いている。

上記は一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣さんの『明白な「LGBT法案」賛否の構図。国内外から成立求める声、反発する宗教右派と保守派議員』という記事の中の一節です。こちらも杞憂なのかも知れませんが、世論とのギャップが「政治と宗教」の歪な関係性の影響を受けているものではないことを願っています。

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