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2023年4月15日 (土)

多面的な情報を提供する場として 2023年春

前回記事「岩盤支持層という言葉から思うこと」の最後に、当ブログは多面的な情報を提供する場として、 基本的な立場が異なる方々にも届く言葉の発信を意識していることを記していました。そのため、岩盤支持層というレッテルを貼ることで、高市大臣の言動を支持されている方々を一括りに批判してしまう記事内容にならないように心がけていました。

このブログでは「多面的」という言葉を多用しています。同じモノを見ていても、見る角度や位置によって得られる内容が極端に違ってきます。一つの角度から得られた情報から判断すれば明らかにクロとされたケースも、異なる角度から得られる情報を加味した時、クロとは言い切れなくなる場合も少なくありません。

クロかシロか、真実は一つなのでしょうが、シロをクロと見誤らないためには多面的な情報をもとに判断していくことが非常に重要です。このような傾向があることを認識しているため、私自身、いわゆる左や右の主張を問わず、なるべく幅広い情報や考え方に接するように努めています。

個々人が積み重ねてきた知識や経験から基本的な考え方が培われ、その違いによって物事の見方や評価が大きく分かれがちとなります。信じている「答え」が必ずしも絶対的な「正解」とは限らない、この論点は「完璧な人間はいない」「人は過ちを犯す」という見方につながります。特に物事を判断する際の情報が少なかったり、偏っていた場合、より正確な「答え」を導き出せなくなるはずです。

そのような意味合いで言えば、たいへん便利な時代になっています。インターネットさえ利用できれば、幅広く詳しい情報を手軽に素早くコストをかけずに入手できます。ただ自分と同じ意見のサイトにしかアクセスしなければ、ますます極端な考え方に固まってしまう恐れがあります。

そのため、より望ましい「答え」を見出すためには多面的な情報に触れていくことが欠かせないものと考えています。このような意義を踏まえ、多面的な情報を提供する一つのサイトとして当ブログもインターネット上の片隅に加わり、公務員やその組合側の言い分を発信してきました。

昨年11月に組合の執行委員長を退任した後は、時事の話題を中心にその時々で個人的に思うことを気ままに投稿しています。今回も前回記事までの続きにあたるような内容を取り上げることになります。ここ最近、ヤフーのトップ画面に掲げられたニュースを閲覧した時、その記事に対するコメントに目を通すことも多くなっています。

放送法を巡る総務省の行政文書の問題で、ヤフーのコメント欄に寄せられる声は圧倒多数が高市大臣を擁護するものでした。自分にとって意外な傾向だったため、安倍元総理の岩盤支持層が高市大臣の言動を全面的に支持しているという関係性を連想していました。

このブログを毎回閲覧されている方からコメントもいただきましたが、そのような連想の不適切さを前回記事を投稿する際には改めていました。物事に対して「是々非々」で臨まれている方々も含め、一括りに安倍元総理の岩盤支持層という決め付けた言い方を避けるようにしています。

それでも保守タカ派、安倍元総理の信奉者、高市大臣の言動を支持する方々、このようなイコール関係での岩盤支持層が存在していることも間違いないようです。産経新聞は『高市氏「責任痛感」も森山氏に〝恨み節〟自民党内に波紋も 奈良県知事選』という見出しを付けて次のような内容を伝えています。

高市経済安全保障担当相は11日の記者会見で、自らが会長を務める自民党奈良県連が推薦した元総務官僚が日本維新の会の公認候補に敗れた奈良県知事選について「維新の躍進に至った責任は痛感している」と述べた。

その上で「党本部が県連推薦以外の人を応援したのではないかという疑問の声が上がっている。きちんと検証することが大切だ」と述べた。高市氏の党本部に対する異例の〝恨み節〟は森山裕選対委員長らを念頭に置いたもので、今後党内で波紋を呼ぶ可能性がある。

その記事のコメント欄では、奈良県知事選の敗北の責任は自民党本部にあるという声が圧倒対数です。さらに「高市には保守タカ派の岩盤的支持層がいる。自民はこの層をないがしろにできない。現執行部が媚中であるなら、なおさら彼らは強行できないだろう」という意見も目にしています。

週刊現代の記事高市早苗、もはやこれまでか…奈良県知事選「ヤバすぎる惨敗の戦犯」と化した大臣に、自民党議員から上がる「次は無役だ」の声』の後編には、高市大臣自身「私こそが、安倍元総理の岩盤支持層を引き継いでいる」という自負があると語っていることを伝えています。

岩盤支持層という言葉にはネガティブな意味合いもあるように考えていましたが、高市大臣や支持者の方々からすれば誇示すべきカテゴリーであることを改めて理解しています。ただ奈良県知事選の問題も自民内の軋轢に怒り 県連と党本部が別々の候補を応援か』という事態に至った背景を多面的に見る必要があります。

高市大臣を擁護する岩盤支持層の方々は週刊現代が伝えるような情報には接していないのかも知れません。接していたとしても捏造だと決め付け、高市大臣に一切非はないと考えているのでしょうか。自民党奈良県連関係者の次のような声、確かに真偽は分かりませんが、高市大臣に対する評価を左右する情報の一つだと言えます。

高市さんのせいですよ。高市さんは、荒井知事が県知事を4期務めていることから『有権者には多選批判の声が多い』と言って、自分の子飼いである平木さんを立てることにした。荒井さんは以前から『次も出る』と意欲を示していたし、9月の県連会長就任時には荒井さんを支援すると約束していたのに、その約束を反故にしてしまったのです。

ちゃんと荒井さんを説得しなければいけなかったにもかかわらず、高市さんは『空気を読んで、自分から不出馬を決めるだろう』と甘い考えでした。一方の荒井さんは『高市は直接会いにも来ない』と憤って、ますます頑なになっていった。

今回の記事タイトルは「多面的な情報を提供する場として」としています。そのため、もう一つ別な話題も紹介します。今年2月の記事「『安倍晋三 回顧録』と『国策不捜査』 Part2」の中で、安倍元総理が財務省を酷評していたため「ぜひ、このあたりについては財務省側の言い分も伺いたいものです」と記していました。

このように考えていたところ最近、NEWSWEEKの『最後の大物次官・齋藤次郎氏が『安倍晋三 回顧録』に反論』という記事を目にしました。岩盤支持層の方々がよく口にする「自民党の現執行部は媚中」という見方はじめ、偏った認識だった場合、より正確な「答え」を導き出せません。そのような意味合いから多面的な情報の一つとして、最後に財務省側の言い分も紹介させていただきます。

2月に発売された『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)は、故安倍元首相が財務省を目の敵にして、厳しく批判していることでも話題を呼んでいる。多くの読者を獲得しているがゆえに、その影響について懸念するのは、元大蔵事務次官の齋藤次郎氏(87)だ。

「私が危惧しているのは、財務省の一連の不祥事や『安倍晋三 回顧録』の内容を受けて、『財務省悪玉論』が世間に広がっていくことです。官僚志望者が年々減少するなか、優秀な人材が財務省を避けるようなことになれば、最終的には日本の国益が揺らぐ事態になりかねません」

齋藤氏は1993年から95年まで大蔵事務次官を務め、細川政権では「国民福祉税」の導入を試みるなど、財政健全化を追求した“最後の大物次官”として知られる。退官から約30年、メディアに出ることは一貫して避けてきたが、今回初めて月刊「文藝春秋」のインタビューに答えた。

本人は「恐らく、最初で最後のインタビューになるかと思います(笑)」という。安倍氏の『回顧録』では、消費増税を巡る財務省との攻防について、次のように触れられている。

〈この時(編集部注:増税見送りをする直前の2014年11月)、財務官僚は、麻生さんによる説得という手段に加えて、谷垣禎一幹事長を担いで安倍政権批判を展開し、私を引きずり下ろそうと画策したのです。前述しましたが、彼らは省益のためなら政権を倒すことも辞さない〉(p.311)

〈内閣支持率が落ちると、財務官僚は、自分たちが主導する新政権の準備を始めるわけです。「目先の政権維持しか興味がない政治家は愚かだ。やはり国の財政をあずかっている自分たちが、一番偉い」という考え方なのでしょうね。国が滅びても、財政規律が保たれてさえいれば、満足なんです〉(p.312-313)

こうしたくだりを読んだ齋藤氏は、「正直、ここまで嫌われていたとは思っていなかった」として、安倍氏の言う“省益”という言葉に疑問を呈した。「私がどうしても理解できなかったのは、財務省は〈省益のためなら政権を倒すことも辞さない〉と断じた部分です。安倍さんがいらしたらお聞きしたいのですが、“省益”とは一体何を指すのでしょう? この言葉の意味するところが、さっぱり分かりませんでした。

財務省の最も重要な仕事は、国家の経済が破綻しないよう、財政規律を維持することです。『回顧録』のなかで、安倍さんは財務省のことを〈国が滅びても、財政規律が保たれてさえいれば、満足なんです〉とおっしゃっていますが、財政規律が崩壊すれば、国は本当に崩壊してしまいます。大幅な赤字財政が続いている日本では、財政健全化のために増税は避けられず、そのため財務省はことあるごとに政治に対して増税を求めてきました。

それは国家の将来を思えばこその行動です。税収を増やしても、歳出をカットしても、財務省は何一つ得をしない。むしろ増税を強く訴えれば国民に叩かれるわけですから、“省損”になることのほうが多い。国のために一生懸命働いているのに、それを『省益』と一言でバッサリ言われてしまっては……現場の官僚たちはさぞ心外だろうと思います」(齋藤氏)

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