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2023年2月25日 (土)

『安倍晋三 回顧録』と『国策不捜査』 Part2

ロシアがウクライナを侵略し、1年が過ぎました。プーチン大統領は戦争開始後初めての年次教書演説で軍事侵攻の正当性を強調しています。権力者の意思によって止められるはずの戦争も、それを支える国民の多くが支持している限り、たいへん残念ながら出口を見出すことが容易ではありません。

2月6日には人間の意思でコントロールできない大地震がトルコとシリアを襲っていました。ただトルコ・シリア大地震、死者4万人「人災」の指摘 被害拡大の背景に建物の脆弱な耐震性』という報道のとおり自然の脅威に対し、人間の意思や努力によってダメージを減らすことはできたはずです。備えさえあれば救えた数多くの命の無念さにやるせなさを感じています。

さて、前回記事の最後のほうで「今回のブログ記事も長くなるものと思っていました」と記していました。発売日当日に手にした『安倍晋三 回顧録』は予想以上に面白く、興味深い内容が多い書籍だったからです。

それにも関わらず、記事タイトルは「『安倍晋三 回顧録』と『国策不捜査』」としていました。『国策不捜査 「森友事件」の全貌』は副題のとおり森友学園の問題を掘り下げたハードカバーの書籍です。こちらはブックオフで購入し、たまたま『安倍晋三 回顧録』と読み終えた時期が重なっていました。

そのため、森友学園の問題を安倍元総理の言葉で振り返る際、一方の当事者である籠池泰典元理事長の回顧も併せて紹介すべきものと考えました。長い新規記事になっていましたので、途中で一区切り付けて今回、その続きを「Part2」として改めて書き進めていきます。

安倍さん、なぜ『嘘』つくんですか!? 森友事件 籠池泰典氏が、初めて明かす衝撃の事実。500ページに及ぶ独白の記録を2月19日に迫る地裁判決を前に緊急出版!日本中を巻き込み、過去類例を見ない一大疑獄へと発展した「森友事件」。総理夫人との密接な関係、不可解な国有地の割引売却、公文書の改ざん、担当者の自殺――数々の疑惑を残したまま、事件発生から早3年が経とうとしている。

その間、絶えず密着取材を続けてきた赤澤竜也氏は籠池氏の本心を聞き出すことに成功。300日に及ぶ過酷な拘置所生活の実態や、昭恵夫人からかかってきた電話の中身、「身を隠せ」と指示した財務省の思惑、「日本会議」と「生長の家」との因縁、自殺した近畿財務局職員との知られざる交流など、森友事件の数々の「謎」に光を当て、その全貌を明らかにする。

上記はリンク先に掲げられている『国策不捜査』の紹介文です。ブックオフで手に入るとおり3年前に出版された書籍です。地裁判決後も争われていた補助金不正受給事件の上告は棄却され、籠池夫妻の実刑判決が確定しています。

小学校の建設工事や幼稚園の運営を巡り、国、大阪府、大阪市の補助金、合わせて1億7600万円を騙し取ったとして詐欺などの罪に問われた事件でした。籠池夫妻にとって承服できない結果であるようですが、補助金に関する事件は大きな節目を刻んでいました。

この事件で実刑判決に至っている森友学園の籠池元理事長らが責任を問われ、反省すべき点があることは確かだろうと思っています。しかし、いわゆる「森友事件」の全貌からすれば傍流の一事件に対しての結論が出たという話に過ぎません。

『安倍晋三 回顧録』の中で100万円を寄付したことの事実関係などを問われた際、安倍元総理は「理事長夫妻はその後、国や大阪府などの補助金を騙し取ったとして詐欺などの罪に問われました。もう、私と理事長のどちらに問題があるのかは、明白でしょう」と答えています。

このような理屈で自分の言葉の正しさをアピールする安倍元総理は「桜を見る会」前日に催した夕食会を巡り、国会質疑の中で虚偽答弁を118回も繰り返していました。仮に同じ理屈で比べた際、どちらに問題があるのかどうか、あまり明白だとは言い切れなくなります。

私自身、これまで安倍元総理が国益のため、国民のために力を尽くされてきたものと思っています。その上で「批判ありき」ではなく、あくまでも安倍元総理の具体的な言動に対し、いろいろ個人的な思いを当ブログの中で批評してきました。

森友事件に関しては2017年3月に「森友学園の問題から思うことという記事を投稿しています。その中で「森友学園の問題で安倍首相や昭恵夫人が贈収賄につながるような働きかけを関係機関に行なっていないことはその通りだろうと考えています」と記していました。2020年3月には「財務省職員の遺書全文公開」を投稿し、次のような問題意識を訴えていました。

昭恵夫人が森友学園と関わっていたことは事実でした。そのことを把握されていなかったのかも知れませんが、安倍首相が国会で「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁したことも事実です。そして、この答弁が一連の公文書改ざんの問題につながり、赤木さんの自死という悲劇を招いたことも事実だろうと思っています。

改ざんの指示が佐川元理財局長だったことも事実認定されています。ただ佐川元理財局長や財務省の判断による「忖度」から始まった問題だったのか、官邸や政治家からの指示があったのかどうかは不明瞭なままだと言えます。安倍首相が公文書の改ざんに直接関わっているとは考えられませんが、財務省だけに責任を負わせる問題だったのかどうかは釈然としません。

上記の問題意識は現在も変わっていません。国側が再調査に消極的で裁判を通しても、核心的な真相が明らかになっていないからだと言えます。『安倍晋三 回顧録』の中で、安倍元総理は昭恵夫人とともに一切関与がなかったことを強調し、「土地交渉は、財務省近畿財務局と国土交通省大阪航空局のミス」だったとしています。

問題の土地で新たに見つかったゴミの処理が不適切で、籠池元理事長に裁判を起こされそうになって慌てた官僚たちが値下げをしたという筋立てを説明しています。公文書の改ざんは佐川元理財局長の国会答弁との整合性を取るために行なわれたと語り、財務省の動き自体を次のように見ていました。

私は密かに疑っているのですが、森友学園の国有地売却問題は、私の足を掬うための財務省の策略の可能性がゼロではない。財務省は当初から森友側の土地取引が深刻な問題だと分かっていたはずなのです。でも、私の元には、土地取引の交渉記録など資料は届けられませんでした。森友問題は、マスコミの報道で初めて知ることが多かったのです。

さらに安倍元総理は「財政をあずかっている自分たちが一番偉いと考え、国が滅びても、財政規律が保たれてさえいれば満足なんです」と財務省を評しています。その章の見出しは「安倍政権を倒そうとした財務省との暗闘」と付けられていましたが、ぜひ、このあたりについては財務省側の言い分も伺いたいものです。

続いて『国策不捜査 「森友事件」の全貌』の内容にも少し触れていきます。前述した書籍の紹介文の冒頭で「安倍さん、なぜ『嘘』つくんですか!?」と問いかけています。籠池元理事長の率直な疑問や理不尽さに対する怒りが書籍全体を通して伝わってきていました。

タイトルの「国策不捜査」という造語には、籠池氏の怒りが込められているようだ。自分は国策によって補助金絡みの詐欺罪に問われ、300日近くも逮捕・勾留されて今も裁判中なのに、公文書改ざんに対しては国策によって捜査が事実上回避され、逮捕も家宅捜索も行われず、財務官僚は全員不起訴となっていることへの怒りだ。

上記はジャーナリストの内田誠さんの書評『公文書改ざん問わぬ怒り』の中の一文です。籠池元理事著は「ボクの事件を先に立件したのは構わない。並行して8億円値引きもちゃんと捜査してくれているのならそれでよかった…」と語っています。今回取り上げている二つの書籍、それぞれ当事者の声が中心となってまとめられています。

したがって、どちらが真実に近いのか、安易に判断してはいけないのだろうと思っています。しかしながら『国策不捜査』のほうで綴られている詳細な内容を読み終えた時、安倍元総理の回顧と事実関係に乖離があるように感じ取っていました。ある意味で籠池元理事長は、国側の交渉過程における方針転換によって翻弄された上、名誉も財産もすべて失うことになった「被害者」だったようにも思えています。

当初、近畿財務局に「安倍晋三記念小学校」という名前で進めるという話を伝えながらも交渉は苦戦していました。しかしながら2014年4月28日、近畿財務局の担当者に籠池元理事長夫妻と昭恵夫人とのスリーショット写真を見せた以降、ギアが3段ぐらい上がったことを書籍の中で伝えています。

森友学園の教育方針に賛同し、名誉校長就任を引き受ける話など昭恵夫人は自らの意思で籠池元理事長らを応援していたことが綴られていました。それにも関わらず、2017年2月17日、安倍元総理は国会で「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁しました。『国策不捜査』の中ではA氏とされている方の自死についても触れられています。

2月24日あるいは25日に籠池氏が近畿財務局に電話を入れると、たまたま電話に出たA氏が「あの、あの」とあせった様子で応じ、「理事長、じつはボクたちは直接お話できないことになりまして…」と苦汁に満ちた声で返答しています。このことから、A氏は口封じにも加担されていたことがわかります。

2月17日の答弁で安倍元総理は「森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしい」と評価していました。それが1週間後の24日には籠池元理事長について「簡単に引き下がらない」「非常にしつこい」と酷評しています。籠池元理事長は安倍元総理の手のひら返しの理由を知りたいと書籍の中で繰り返し訴えていました。

最後に、『国策不捜査』の中で最も印象深かった箇所を紹介します。いつも当ブログの中で訴えている多面的な情報に接していくことの大切さに相通じる籠池元理事長の言葉です。このような意味合いを込め、2週にわたって「『安倍晋三 回顧録』と『国策不捜査』」という記事を綴っていました。

森友事件が起こって良かったと思うことは、自分のものの見方や考え方が広がったこと。家内も同じことをよく言っている。野党の先生方や朝日新聞の記者さんなんかと話していると、「違うな」と思うこともある反面、「なるほどこういう考え方もあるんだ」と勉強になることも多い。

リベラルや左派の人の考えは、確かにボクが抱く愛国精神とは違うものの、皆それぞれに国のことを思って行動していると感じるようになった。もちろん、例えば天皇について突っ込んだ議論をすれば衝突するだろう。ただし主義主張や思想は違えど、連携できるところがあるのならしていけばいい。そう考えるようになった。

いかに自分が「産経新聞」と「正論」と「WiLL」が築き上げた世界観のなかに閉じこもって、狭い思考に固執していたか思い知った。先にも少し述べたが、森友事件に際し、野党議員の力を借りたのは自民党がウソをつき続けたから。「籠池が政治的に寝返った」とか「左翼活動家に騙された」などと言う方も多いようだが、お門違いも甚だしい。

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2023年2月18日 (土)

『安倍晋三 回顧録』と『国策不捜査』

コロナ禍が続く中、私どもの市役所では今年も歓送迎会などを催す話を今のところ耳にしていません。それでも最近、少しずつ社会的な雰囲気が変わり始めているため、外で会食する機会が増えつつあります。外で飲んだ時、終バスの時間を逃せばタクシーを利用します。

先日、タクシーで帰宅する際、自宅に近付いたため「ここで止めてください」と告げた瞬間、ワンメーター料金が上がりました。もう1秒、早めに告げれば良かったと省みながら久しぶりに乗ったタクシー料金の高さに驚いていました。

このようなタクシー料金をはじめ、外で飲み会があるたびにかかっていた費用はコロナ禍の3年余り、節約できたことになります。おのずから自宅で過ごす時間も増えているため、コロナ禍での読書量は増えています。以前、千円を超えるハードカバーの書籍は専らブックオフで購入していました。

ここ数年は外食費が節約できている分、興味を持った書籍はハードカバーだったとしても迷わず購入しています。『安倍晋三 回顧録』は2月8日の発売日にすぐ手にしていました。このブログを通して安倍元総理の言動について、いろいろ批評してきているため、たいへん興味深い新刊本でした。

時系列にまとめられた内容であり、当時のブログ記事を思い起こしながら読み進めていました。予想以上に面白く、読みやすい書籍でした。前回の記事は「会計年度任用職員の課題」でしたが、再び今回、『安倍晋三 回顧録』を読み終えた感想をもとに政治的な話を中心に書き進めてみます。

2022年7月8日、選挙演説中に凶弾に倒れ、非業の死を遂げた安倍元首相の肉声。なぜ、憲政史上最長の政権は実現したのか。第1次政権のあっけない崩壊の後に確信したこと、米中露との駆け引き、政権を倒しに来る霞が関、党内外の反対勢力との暗闘……。乱高下する支持率と対峙し、孤独な戦いの中で、逆風を恐れず、解散して勝負に出る。

この繰り返しで形勢を逆転し、回し続けた舞台裏のすべてを自ら総括した歴史的資料。オバマ、トランプ、プーチン、習近平、メルケルら各国要人との秘話も載録。あまりに機微に触れる――として一度は安倍元首相が刊行を見送った、計18回、36時間にわたる未公開インタビューを全て収録。知られざる宰相の「孤独」「決断」「暗闘」が明かされます。

上記はリンク先に掲げられた書籍の紹介文です。読売新聞は「最長政権の軌跡 安倍晋三 回顧録」という連載記事を7回にわたって朝刊の政治面に掲載していました。第1回目の『中曽根康弘・元首相の「教え」、心にきざみ』をはじめ、ネット上からも当該記事の全文を読むことができます。

最終回の『多角的検証 真実迫る 早期の出版「美化」防ぐ』は今のところネット上に掲げられていないようですが、聞き手を務めた読売新聞の橋本五郎特別編集委員のインタビューを通して『安倍晋三 回顧録』を世に出した意義などを伝えています。その中で次のような言葉に目を留めていました。

今回の回顧録は、あくまで安倍氏が自らの目線で振り返ったものだ。別の人には異なる景色が見えていたはずで、当然、反論も出る。多くの関係者が健在なうちに回顧録を「さらす」ことで、その内容を多角的に検証し、重層的に真実に迫る必要があると考えた。

以前のブログ記事「改めて言葉の重さ」の中で、人によってドレスの色が変わるという話を紹介しました。見る人によってドレスの色が白と金に見えたり、黒と青に見えてしまうという不思議さと同様、安倍元総理に対する評価や見方も人によって本当に大きく変わりがちなことを綴っていました。

このような特性があることを前提に橋本さんも「別の人には異なる景色」という言葉を発せられていたはずです。橋本さんは安倍元総理の実績や政治家としての資質を高く評価している立場ですが、インタビューの中で次のような注文や苦言も呈していました。

国会審議中に野党にヤジを飛ばすような態度は避けるべきだった。安倍氏は回顧録で「ファイティングポーズを見せなければならない」と説明しているが、対立が激化しても泰然と構え、野党を包容するぐらいの余裕もほしかった。「森友・加計学園」問題は、批判的な意見や報道への過剰反応で複雑化した面がある。

まさしくその通りであり、森友学園の問題は後ほど改めて触れることになります。回顧録には安倍元総理の行動原理の出発点となる逸話が書かれています。中曽根元総理から受けた「自分が正しいと確信がある限り、常に間違っていないという信念でいけ」という助言を心に刻んでいたという話です。

このような助言に対し、私自身は功罪が伴う表裏一体の危うさを感じています。真逆の言葉として「もしかしたら間違っているかも知れない」という謙虚な心構えを持つことで大きな過ちを回避できる場合もあります。もしくは途中で修正をはかることでダメージを減らすこともできるはずです。

「自分が正しいと確信がある限り、常に間違っていないという信念でいけ」という助言を踏まえ、憲法解釈の問題で顕著な事例があったことを安倍元総理は回顧しています。読売新聞の記事『安保法制整備、固い決意…支持率低下「承知の上」』で取り上げている集団的自衛権の行使容認の問題でした。

2013年8月に内閣法制局長官を外務省出身の小松一郎氏に交代させる異例の人事で、憲法解釈の変更に布石を打っていました。「憲法上認められない」とする従来の主張に固執する法制局に対し、安倍元総理は「国滅びて法制局残る、では困るんですよ」と反論したことを語っています。

憲法を改めるほうが遙かにハードルは高いため、国民の生命と財産を守る責任がある政治の責任として押し切ったことを誇らしく伝えていました。このような話も人によって大きく評価が分かれるはずです。集団的自衛権行使そのものの是非とともに「憲法を軽視している姿勢の証し」だと批判することができる事例だと言えます。

長期政権となった第2次以降、安倍元総理は側近の言葉には耳を貸し、硬軟自在のリアリストとして国内外の課題に対処していました。トランプ前大統領との蜜月関係など外交面で存在感を高めてきたことも確かです。ただロシアとの北方領土の問題をはじめ、目に見えた解決がはかられることはありませんでした。

ウクライナでの戦争が始まる数年前に行なったインタビューからは、ロシアによるクリミア半島併合という暴挙に対する怒りがあまり伝わってきません。「国際法上決して許されることではありませんが」という前置きをした上、安倍元総理がプーチン大統領の立場や考え方を淡々と解説する場面を伝えていました。

2019年にフランスで開かれたG7サミットで、ある首脳からの「クリミアを侵略したという一点をもって、ロシアを非難しなければならない」という提案がそのまま受け入れられなかったことも回顧録の中で伝えています。クリミア併合が絶対許されず、国際社会の中での著しい孤立化をロシアに刻み付けていれば、もしかしたら今回の侵略を踏みとどませることができていたのかも知れません。

労働組合の役員だった一人として、気になった場面の回顧がありました。働き方改革実現会議の中で、安倍元総理が連合の神津前会長に「労使で一致しなければ意味がない。労働側が評価しないのであれば、この案はなくなりますよ」と迫ったことを伝えていました。

神津前会長が賛成かどうか明言していなかったことに対し、安倍元総理は「果実だけをいただこうという姿勢は、ご都合主義が過ぎるでしょう」と非難していました。「結局、神津さんが賛成を表明してくれたので、罰則付きの残業時間の上限規制導入が決まりました」と回顧録で語っています。

以前の記事働き方改革の行方働き方改革への労組の対応」を通し、「連合として批判もたくさんあるが、働き方改革の方向性は一致している」という立場で神津前会長が働き方改革実現会議に臨んでいることを伝えていました。このような神津前会長の苦汁さを慮れない安倍元総理の決め付けた言い方に違和感を覚えた箇所でした。

500頁近くのボリュームで興味深い内容が多い書籍であり、今回のブログ記事も長くなるものと思っていました。それにも関わらず、記事タイトルは「『安倍晋三 回顧録』と『国策不捜査』」としています。こちらのハードカバー『国策不捜査 「森友事件」の全貌』はブックオフで購入していました。

たまたま読み終えた時期が重なっていた訳ですが、森友学園の問題を安倍元総理の言葉で振り返る際、一方の当事者である籠池泰典元理事長の回顧も併せて紹介すべきものと考えました。やはり相当な長さの新規記事になっていますので、この続きは次回「Part2」として改めて書き進めてみるつもりです。

予告的な話で言えば、安倍元総理は自分の過ちを一切認めていません。悪いのは籠池元理事長であり、自己の言動をすべて正当化する回顧録となっています。しかしながら『国策不捜査』のほうで綴られている詳細な内容と対比した時、何が問題だったのか、誰が悪かったのか、事実関係は揺れ動いていくことになります。

安倍元総理が「常に間違っていないという信念」の真骨頂を発揮したような事例であり、人によって「異なる景色」を見せられていた問題だったように思っています。最後に、同じような信念を持つ政治家の話題として河野大臣、「所管外」12連発に批判殺到 野党が激怒するかつての“特大ブーメラン“質問』という記事を紹介させていただきます。

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2023年2月11日 (土)

会計年度任用職員の課題

最近、ネット上で「ウクライナと台湾を同一視するのは……」 石破茂元自民党幹事長が安易な防衛増税論に異議』という記事に接しています。防衛費をGDP比2%に引き上げる問題について、自民党の石破元幹事長が 「そもそもなぜ2%なのか、なぜ43兆円なのか、その根拠は分かりません」と疑義を呈していました。

本来は、これとあれが必要だからいくら必要だ、といった話になるはずなのですが」と述べていますが、まったくその通りだと思っています。このような論点は機会を見ながら改めて深掘りしたいと考えています。今回は前回記事「政策実現と財源問題」から一転して私どもの組合の切実な課題を取り上げます。

昨年夏に不安定雇用の会計年度任用職員」「会計年度任用職員の雇用継続に向けて」という記事を投稿しています。私自身、執行委員長を退任する前に一定の解決をはかりたいものと考え、ブログ記事で伝えているように市長にも直接働きかけ、私どもの市としての自主的な判断に向けた道筋を見出せるよう力を尽くしました。

残念ながら私の任期中には組合側が納得できる解決をはかれず、会計年度任用職員の雇用継続の課題は新執行部に託しています。ただ私どもの市を含め、都内の自治体の大半は東京都のルールに準じ、公募によらない再度の任用を原則として連続4回としているため、まだ2年ほど猶予があると言えます。

一方で、全国的には『年度末に雇い止め危機の非正規地方公務員、数十万人規模か 「3年目の壁」自動では契約更新されず』という報道のとおり総務省のマニュアルに沿った圧倒多数の自治体は公募によらない再度の任用を連続2回としているため、今年3月末が大きな境目となっています。

公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)のサイトでは会計年度任用職員”3年目公募問題”(2022年度末問題)特集』という記事が掲げられ、はむねっとは冒頭で次のような問題意識を示しています。

今年度(2022年度)は、地方自治体で直接任用されている非正規公務員の多くに関係する「会計年度任用職員制度」がはじまってから3年目の年度です。このままいくと、今年度末には、全国の地方自治体で現職として働いている人が、いったん雇止めとなり、継続を希望する人は、再度の「公募」に応じなければならないという、大量の「雇止め/公募」が実施される見込みです。はむねっとは、継続して必要とされる職に就いて問題なく働いている人を一律に「公募」にかけることは、大きな問題があると考えます。

私どもの組合も同様の考えであり、労使交渉を通して「現職者の培ってきた業務に対する知識や経験を重視し、5回目に際しては引き続き任用を希望する現職者を対象とした選考試験を実施する。選考方法は面接試験とする。欠員が生じる場合などは新規採用希望者を別途募る。その際は広報等を通じて募集する」という対応案を市側に示しています。

市側も培ってきた知識と経験を重視しているため現職者には「アドバンテージがある」という見方を示しています。いずれにしても業務に熟知した職員が継続的安定的に携わっていくことは住民サービスの維持向上に直結していきます。さらに新規採用者に仕事を教えていく負担が軽減されていく利点もあります。

このような経緯や利点を踏まえた際、5年に1回、現職者と新規採用希望者を競合させることが適切なのかどうか組合は疑問視しています。新規採用希望者と現職者が同じスタートラインに着いていないというアンフェアな見られ方もされかねません。

そもそも法改正時の国会の附帯決議では公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求めています。したがって、高年齢者雇用安定法で使用者側に65歳までの安定的な雇用確保を求めている中、会計年度任用職員の皆さんも65歳までの雇用継続が欠かせないものと考えています。

「正職員に嫌われたら終わり」非正規公務員の苦悩 「2023年問題」自治体7割強で雇い止めの可能性』という記事の中で、非正規公務員の問題に詳しい立教大学コミュニティ福祉学部の上林陽治特任教授は次のように訴えています。

既存職員が積み上げてきた経験や知識が、公募のたびに丸ごと職場から失われ、行政サービスの質が低下するというデメリットも招きかねないため、人事評価で職務に見合う能力があると判断した職員については、公募せずに契約を更新するべきだ。

その記事の中では、460の自治体が公募を実施していないことも伝えています。理由について「勤務を通じて能力を実証できる職員を継続任用する」などと回答し、公募でなくとも能力評価は可能だという判断がうかがえています。

直近の動きを探るため、ネット上を検索したところ2月3日に開かれた松本総務大臣の閣議後記者会見の概要が確認できました。会計年度任用職員の再度任用問題について、記者の質問と松本大臣の答えの全文が掲げられていましたので、そのまま紹介します。

問:自治体で働く会計年度任用職員についてお伺いします。再度の任用について、制度開始から3年となる今年度末に多くの自治体でいわゆる公募による試験が予定されていて、雇い止めにつながるのではないかという指摘があります。労働組合や支援団体はじめ当事者からは不安の声が上がっていますが、総務省としての見解を教えてください。

答:ご承知のとおり、会計年度任用職員は一会計年度を超えない範囲で任用されるものであります。その中で、前年度の職員を再度任用することは可能であることもご案内のとおりでありますが、そもそもその任用に当たっては、地方公務員法に定める平等取扱いの原則、成績主義の原則を踏まえて、できる限り広く募集を行うことが望ましいと考えております。実際に具体的な任用の方法については、各自治体において、地域の実情などに応じて適切に対応いただくべきものであると考えているところであります。

昨年12月には、この旨を通知するとともに、公募を行う場合であっても、客観的な能力の実証を経て再度任用されることがあり得ること、選考において前の任期における勤務実績を考慮することも可能であることなどの考え方を併せてお示ししております。会計年度任用職員に関しては、今申し上げたような丁寧な情報提供を行うとともに、勤勉手当の支給など処遇改善にも取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

「地方公務員法に定める平等取扱いの原則、成績主義の原則を踏まえて、できる限り広く募集を行うことが望ましい」という言葉を重視した場合、既定方針通りの自治体が多くなってしまうのかも知れません。一方で「前の任期における勤務実績を考慮することも可能」という言葉に重きを置けば、理不尽で不合理な雇い止めを防いでいけるはずです。

ちなみに組合の委員長時代、自治労や連合等から組合に送られてくる情報は決裁の一つとして紙ベースで毎日チェックしていました。退任後は自ら入手する努力を怠れば余程大きなニュースでない限り、知らないままとなります。自宅に配達される読売新聞、もしくはヤフーのトップ画面等に掲げられるニュースでないと知らないままとなりかねません。

先日、同じ職場の会計年度任用職員の方から「ネットニュースを見たんですが、私たちにも勤勉手当が出るようになるんですか?」と問いかけられました。自治労は署名活動に取り組み、組織内参院議員の岸まき子さんらが総務省と交渉していましたが、そこまで確定的な動きがあることは知りませんでした。

この問いかけを受けた後にネットを検索し、共同通信が1月22日に『非正規公務員のボーナス拡充 格差是正に向け総務省法改正へ』という見出しの記事を配信していることを知りました。その時点で読売新聞の紙面では見かけていなかったニュースでしたので、共同通信のスクープだったようです。

総務省は、自治体で働く単年度契約の非正規職員(会計年度任用職員)のボーナスを拡充する方針を固めた。公務員のボーナスは期末手当と勤勉手当で構成。会計年度任用職員には期末手当しか支給できないが、正規職員や国の非正規職員と同じく両方を支給できるようにする。格差是正が狙い。地方自治法改正案を通常国会に提出、早ければ2024年度から適用する。関係者が22日明らかにした。会計年度任用職員は20年4月時点で約62万人。業務は新型コロナウイルス対応など多岐にわたり、自治体運営に欠かせない。【共同通信2023年1月22日

雇用継続の課題は、まだまだ楽観視できない現況です。それに対し、勤勉手当支給に関しては上記のような報道に至っているのであれば、ほぼ間違いなく実現できるはずです。さらに安心できる材料として、1月28日に時事通信も『自治体非常勤職員に勤勉手当 24年度にも支給可能に―総務省』という後追いの記事を配信していました。

総務省は、地方自治体が非常勤の「会計年度任用職員」に対し、勤勉手当を支給できるようにする方針だ。公務員のボーナスは期末手当と勤勉手当で構成するが、現在は期末手当しか支給できない。勤勉手当も支給可能にすることで国の非常勤職員と待遇をそろえる狙いで、関連規定を盛り込んだ地方自治法改正案を今通常国会に提出する。早ければ2024年4月の施行を目指す。

勤務成績を反映する勤勉手当は、会計年度任用職員の約9割を占めるパートタイムについては自治法で支給が認められておらず、フルタイムは法律上可能だが、総務省の通知で「支給しないことを基本とする」とされている。ただ、内閣人事局によると、21年度時点で国家公務員の非常勤職員には、対象者全員に勤勉手当が支給されており、自治体から国に合わせ支給可能にすべきだとの要望が出ていた。

これを踏まえ、総務省は法改正により、パートタイムについて勤勉手当の支給を可能にする方針。フルタイムも通知の改正で対応する。期末手当は、20年度に会計年度任用職員制度が創設された時点から支給できる仕組みとなっており、法改正に伴いボーナスの増額につながる見込み。待遇改善により、会計年度任用職員の業務意欲の向上などにつながることが期待される。自治体側が勤勉手当を支給するに当たっては、条例改正などの対応も必要。支給額は、それぞれの職員の職務内容や勤務時間などに応じて、各自治体が決めることになる。【JIJI. COM 2023年1月28日

会計年度任用職員の一時金は期末手当のみの支給に限られ、勤勉手当が支給されていません。そのため、年間一時金の支給月数は常勤職員の半分ほどにとどまっています。さらに人事院や人事委員会の勧告で、2年続けて公務員全体の期末手当が引き下げられていました。

しかしながら今年度、久しぶりの引き上げ勧告は勤勉手当に絞られ、会計年度任用職員の皆さんにとって理不尽な事態が続いていました。今後、勤勉手当が支給されるようになれば年収増とともに、そのような理不尽さも解消できます。何としても法改正の動きが確実なものになることを願っています。

会計年度任用職員の皆さんに関わる様々な課題に対し、私自身、直接的な労使交渉の場に立てません。それでも一組合員、一協力委員として、現執行部を応援していければと考えています。そのような意味合いから今後も当ブログの中で、会計年度任用職員の課題を逐次取り上げていくつもりです。

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2023年2月 4日 (土)

政策実現と財源問題

前回記事「ウクライナでの戦争を受け」の中で、自民党の二階元幹事長に対する評価が人によって大きく分かれていることを記していました。すると最近、ネット上で『重鎮・二階俊博に田原総一朗がホンネ直撃!「勝手なことをするんじゃない!」 自民党が大揺れ!岸田首相軍拡路線に痛烈警告』という記事を見かけていました。

作家の百田尚樹さんは二階さんのことを「売国奴」と罵っていますが、その記事からは二階さんなりの政治家としての矜持や気概を感じ取れます。様々な問題で絶対的な「正解」が見出しづらくても、より望ましい「答え」に近付くためには多面的な情報に接していくことが重要です。

そのような意味で私自身、いつも幅広い情報や主張に触れていくように心がけています。つい最近では『両親が覚悟の独占告白「小川さゆり」の真実』という記事が目に留まり、月刊Hanada3月号を購入していました。記事内容の真偽について定かではありませんが、多面的な情報の一つであることは確かでした。

今回のブログ記事のタイトルは「政策実現と財源問題」としています。ネット上からの情報はコストをかけず、手軽に入手できます。興味深いサイトはブックマークし、頻繁に訪問させていただいています。今回の主題に沿いながらブックマークしているサイトの内容をいくつか紹介していきます。

まず朝日新聞の記者だった鮫島浩さんの『子ども支援よりも財政規律を重視する立憲民主党は岸田政権と同じ穴のムジナ〜民主党政権の子ども手当は財務省の緊縮財政の前に崩れ去った。国債発行しても子ども支援をやり抜くと宣言してこそ本物だ!』からの一文を紹介します。

自民党安倍派が主張するように軍事費増大のために国債を大量発行してはいけない。それは「財政が破綻するから」ではなく「軍事的緊張を高めて戦争を誘発するから」である。しかし国民生活を守るために本当に必要な政策には惜しむことなく大胆に国債発行すればいい。それが積極財政論である。

積極財政に反対するのは、緊縮財政によって優位に立つ既得権益者たち(すでに豊かな者たちはデフレのほうが経済的優位を維持できる!)であり、予算配分権によって政治的影響力を維持している財務省である。

いまの岸田政権も立憲民主党も財務省に同調し、子ども支援をはじめ庶民の暮らしを下支えする財政出動よりも、財政規律を守って富裕層の既得権益と経済的優位を保護する緊縮政策を優先している点において変わりはない。

鮫島さんの著書を読み、昨年7月に朝日新聞政治部』から思うこと」という記事を投稿していました。それ以降、鮫島さんのサイトの内容を当ブログの中で時々紹介しています。軍事費増大は「軍事的緊張を高めて戦争を誘発する」という見方は前々回記事「抑止力と安心供与のバランス」で訴えている私自身の問題意識と同様です。

ただ積極財政に反対するのは既得権益者たちという見方には違和感があります。これまでも鮫島さんの主張に強く賛同できる内容が多くある中で、若干穿ちすぎな見方ではないかと思える時がありました。昨年の参院選挙の後の記事『安倍なき日本に増税がやってくる!麻生一強、大宏池会で「憲法より消費税」山本太郎は立ちはだかれるのか?』などを通し、鮫島さんは次のような見方を示しています。

財務省には「消費税増税を前に進めることが最も評価される」というDNAが色濃く受け継がれ、そのために政界工作を尽くしてきた。安倍氏という巨魁が突如として姿を消し、麻生氏と財務省の権力基盤が突出した今、千載一遇の好機だとして消費税増税を推し進める可能性は少なくない。

以前の記事「消費税引き上げの問題」に記したとおり私自身は消費税の引き上げの必要性を認めていました。国債の信用を落とさないためには財政の健全化が欠かせず、社会保障財源の確保のためにも消費税の引き上げは必要に応じて避けられない選択肢だと考えています。

そのような意味合いで言えば前々回記事の最後のほうで「そもそも反撃能力の保有や防衛費の倍増が、戦争を防ぐための欠かせない道筋なのであれば増税も含めて覚悟を決めていかなければなりません」とまで記しています。

やはりブックマークしている労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎さんのブログ記事岸田首相の深慮遠謀?』の内容が興味深く、機会を見て当ブログの中で紹介してみようと考えていました。抜粋となりますが、濱口さんは次のようにハト派とタカ派との関係性の中で論評されていました。

国家を守ることこそが何よりも大事で、そのためにはいろんな物事を犠牲にするのもやむを得ない、キリッ、というのが右派、タカ派というものの存在意義だったのではないか、そしていやいや国防ばかりが大事じゃないよ、社会経済のあれやこれやも大事だからちゃんとそっちにもお金を回してね、というのが左派、ハト派というものだったのではないか、と、まあ、すごく単純に考えていたのですが、今回、まるっきり話が逆転してしまったように見えます。

党内の右派、タカ派だと自認していたような人々が揃いもそろって、国防といえども増税は許さないぞ!断固反対とばかり騒いでいて、首相官邸前で騒いでいる昔ながらの伝統的平和主義者の皆様と共闘でもしているかの如くです。逆に、国防をないがしろにするハト派じゃないかと猜疑心でもってみられていた岸田首相が、なんと国防費突出、それも国民の血税で断固やり抜くという立派なタカ派ぶりをアピールしているわけで

言うまでもありませんが、恒久的な政策の実現のためには恒久的な財源の確保が欠かせません。青天井に赤字国債を発行していけるものでもないはずです。埋蔵金の信憑性の薄さも立証済みです。「身を切る改革」は国会議員の姿勢の問題として問われるのかも知れませんが、兆円単位の財源を賄うためには桁が大きく乖離しています。

さらに「身を切る改革」が公共サービスの劣化や社会全体の賃金水準を負のベクトルに招きがちだったことにも留意しなければなりません。防衛費の問題に限らず、次元の異なる少子化対策の実現のためには、恒久的な財源の確保に向けて明確で現実的な「答え」が求められていきます。

朝霞市議の黒川滋さんのブログ「きょうも歩く」は、かなり前からブックマークしています。最近の記事『年収1000万円の人に月5000円出すか出さないかにだけ盛り上がる国会』の次のような内容からは、大きくうなづける論点を受けとめることができます。

もちろんお金がたんまりあれば、月5000円程度を出し渋る話は、システムを複雑化させるだけですから、取っ払ったらいいとは思いますが、優先課題があって、財源がなくて、というなかで、手柄合戦にそんなに盛り上がることなんですか、と思うばかりです。少子化対策のために、子どもたちの払う税金の大半が借金返済になってしまった、なんて笑える話ではありません。

緊張感ある政治の実現のためには野党第一党である立憲民主党の奮起に期待しています。しかし、あまりにも政策理念の異なる日本維新の会との接近には物凄い違和感があります。『内閣支持最低26.5% =4カ月連続で「危険水域」ー 立民も下落・時事世論調査』という報道のような動きが加速しないかどうか危惧しています。

最後に『「消費税減税は間違いだった」立民・枝野前代表の発言に「また有権者を裏切るの?」「支え合う社会に税は必要」賛否渦巻く』という報道内容も紹介します。立憲民主党の枝野前代表が消費減税の訴えは「間違いだった」と言及したニュースです。下記のような内容ですが、私自身は賛意を示せる発言であり、ぜひ、立憲民主党の立ち位置として確立できるよう願っています。

立憲民主党の枝野幸男前代表は12日、さいたま市内で講演し、昨年10月の衆院選で当時代表として消費税率の引き下げを訴えたことについて「政治的に間違いだったと反省している」と述べた。立憲は今夏の参院選でも消費減税をかかげていたが、次期衆院選の選挙公約では「見直すべきだと思っている」との見解を示した。

枝野氏は、衆院選を振り返り、「敗軍の将として、あれ(消費減税を訴えたこと)が敗因の大きな一つだ」と述べた。立憲が医療・介護や子育てなど社会保障の充実を主張していたことに触れ、「そこにお金をかけると言いながら、時限的とはいえ減税と言ったら、聞いている方はどっちを目指すのか分からなくなる。有権者を混乱させてしまった」と述べた。

また、枝野氏は「消費税減税で(選挙に)勝てるんだったら、とっくの昔に社民党政権ができている」と述べ、消費減税の訴えだけでは選挙での支持拡大にはつながらないとの見方を示した。

昨年10月の衆院選で立憲は、枝野氏を代表として消費減税策を共産党などと共通政策として合意。5%の時限的な消費減税を掲げて戦った。だが、議席を公示前の109から13減らし、枝野氏は責任をとって代表を辞任した。【朝日新聞2022年11月13日

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