旧統一教会と自民党
ウクライナでの戦争が続いています。日常が一転して生命の危機を脅かす非日常に追いやられたウクライナの人々の恐怖と絶望は想像を絶するものだろうと思います。最近『ウクライナにいたら戦争が始まった』を読み終え、そのような恐怖をわずかでも追体験しています。機会を見て「『ウクライナにいたら戦争が始まった』を読み終えて」という記事を投稿できればと考えています。
前回記事「時事の話題から思うこと、2022年秋」の中で、軍事進攻したロシアの言い分には耳を貸すことが難しくなっていると記していました。『「国連総会、ロシアの「併合」非難決議を採択 賛成は143カ国に』という報道のとおりロシアの暴挙は国際社会の中で大きな批判に包まれています。
それでもロシアの他にベラルーシ、北朝鮮、ニカラグア、シリアが反対し、中国やインドなど35カ国が棄権しています。残念ながら軍事力による領土の変更は絶対容認しないという国際社会の図式になり得ていませんが、2014年3月のクリミア半島の併合を認めない決議の賛成は100か国だったため、当時よりもロシアの孤立化が顕著になっていることも確かなようです。
私どもの組合の話に引き付ければ火曜日に役員選挙が告示され、来週中には立候補する新執行部体制の顔ぶれが決まります。昨年の今頃には「組合役員の改選期、インデックスⅢ」という記事を投稿していました。私自身、長年務めた組合役員を退任するタイミングであり、関連した内容の新規記事は必ずまとめてみるつもりです。
今週末に投稿するブログの記事は「旧統一教会と自民党」というタイトルを付けています。こちらの話もタイミングを見て掘り下げてみようと考えていた題材です。いつものことですが、ネット上で目にした興味深い報道等を紹介しながら私自身の問題意識を書き添えていきます。
まず『旧統一教会修練会でセクハラ「宗教名乗るカルト」元信者告発 教団施設に精神崩壊した信者多数』という見出しの記事です。2世信者だった方の苦しかった生い立ちが語られ、旧統一教会の問題性を切実に訴えた記事内容であり、全文をそのまま紹介します。
立憲民主党は23日、国会内で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題について元信者からヒアリングを行った。脱会した小川さゆり氏(仮名)は、夫と子どもとともに出席した。小川氏の両親は現在も熱心な信者で父は元教会長を務め、2世信者として生まれ育った。
小川氏は特定の支持政党がないことを重ねて強調した上で「母は婦人部長などを請け負い、政治の面でも選挙活動を手伝ったり、ウグイス嬢をしたりしていた」と選挙で支援を行っていたとした。両親が高額な献金をしたせいで貧しい家庭環境で、それが原因でいじめを受け、高校生からアルバイトを始めるが、200万円あまりの給与は献金のため、すべて両親に没収されたという。
小川氏は結婚前に参加が義務付けられている修練会で公職者からセクハラを受け、韓国内の教団施設では精神が崩壊した信者たちを数多く目の当たりにするなどし、2016年ごろに脱会したという。献金の実態について「日本人というのは完全に罪の国だと教え込まれている。韓国の本部から指示が来て、毎月のノルマが発表され、この教会では何百万頑張って下さい、と指示がある」などと告発した。
小川氏は「統一教会は宗教を名乗ったカルトであり、信者家庭を崩壊に追い込む、反社会的団体。被害者を救い、新しい被害者が出ない法律や制度を作っていただきたい」と、早急な法規制の必要性を訴えた。
小川さゆりさん(仮名)は10月8日、日本外国人特派員協会で行なわれた会見にも出席して「生まれた頃から自分の意思に関係なく礼拝参加や教義本訓読の強制、恋愛禁止などを教えられ、それらを破った場合、“地獄に落ちる”などと脅す教育を受けてきました」と語っていました。
すると会見中に旧統一教会側から「彼女は精神に異常をきたしており、安倍元首相の銃撃事件以降、その症状がひどくなってしまっていて、多くの嘘を言ってしまうようになっている」というファックスが送られてきました。『元2世信者、旧統一教会の会見中止要求に耐えて涙の訴え「どちらが悪なのか分かって」』のとおり衝撃的な場面でした。
小川さんは心身の症状について「4年前に治っている」と反論し、少し動揺した様子を見せながらも「大丈夫です」と会見を続けていました。「お金を返さず自分たちの主張を続けるのと、私とどちらが悪なのか。これを見てくださる多くの方は分かってくれると信じています。私を正しいと思ってくれるなら、この教団を解散させてください」と涙を流しながら訴えています。
『旧統一教会による元2世信者会見の中止要求に憤り「親御さんにしろ教団側にしろ論外」』という記事では、読売テレビの高岡達之解説委員長の「親御さんが書かれたにしろ、教団側が書かれたにしろ、論外だと思います」という憤りを伝えています。
「いかなるお立場であっても、ご自分が抱えている心身のことについて、人様に話す権利はご本人だけだと思う。そこに思いが至らない時点で、私はお目にかかったこともないけど、彼女のご両親にも“本当にお嬢さんのことを思っていらっしゃいますか?”と申し上げたい」と両親や教団側の配慮のなさに疑問を呈しています。
旧統一教会の問題を20年以上取材を続けているジャーナリストの鈴木エイトさんが「ミヤネ屋」に出演した時、『鈴木エイト氏 旧統一教会への解散命令めぐる岸田首相の慎重論に疑問「今の姿勢で本当に救えるのか」』という記事のとおり宗教法人法を巡る岸田総理の見解に疑問を示していました。
岸田総理は10月6日の参院本会議で、教団の問題について宗教法人法に基づく解散命令請求について問われ、「信教の自由を保障する観点から、判例も踏まえて慎重に判断する必要がある」とし、「宗教団体に法令からの逸脱行為があれば厳正に対処する」と述べています。
この答弁について鈴木さんは、元2世信者の小川さんの理路整然とした訴えと比較しながら「岸田総理は信教の自由は保障すると。実際、解散命令が出てたとしても、信教の自由は侵害されないんですよ。そのあたりも含めて、岸田さんの答弁がかなり煮え切らない感じで。困っている人、現在苦しんでいる人を岸田さんの今の姿勢で本当に救えるのかな?というのは、国民みんなが思っていると思います」と指摘しています。
『旧統一教会の解散請求 全国弁連の要請への対応は明言避ける 文科相』の報道のとおり政府の動きは鈍いままです。宗教法人法は「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」があった場合などに、裁判所が所轄庁などの請求を受けて宗教法人の解散を命令できると定めています。
「慎重に判断する必要がある」という点はそのとおりですが、宗教法人の解散命令は過去に2例あります。『「河野vs萩生田」バトル勃発寸前!旧統一教会の解散請求命令めぐり“てんでに”思惑渦巻く』の記事の中で、所轄庁である文科省(文化庁宗務課)が1995年にオウム真理教、2002年に明覚寺に対して発出していたことを伝えています。
オウム真理教の反社会性は説明するまでもありませんが、明覚寺は霊感商法等の問題性が理由でした。1999年に和歌山県の明覚寺代表らが霊視商法によって詐欺罪で有罪になっていました。しかしながら旧統一教会は役員が立件されていないため、文化庁宗務課は「請求基準に照らすと難しい」という見解を示しています。
10月4日に開かれた消費者庁の「霊感商法等への対策検討会」の第6回会合では、メンバーから「これまで消極的だった文科省に猛省を促したい」「消費者庁が関与すべきだ」「質問権を行使するなど、まずは調査に乗り出すべきだ」など文科省への厳しい意見が相次いでいました。「宗教法人」というブランドを失うのは旧統一教会にとって大打撃で、税優遇もなくなり、弱体化は必至です。
鈴木エイトさんは「統一教会が最も危惧しているのが解散命令です。国会議員と関係を築いてきたのも、解散命令に至らないように動いてもらうためです。実際、関係の深い萩生田政調会長は、国会召集前日のNHK日曜討論で解散命令に難色を示しています」と解説しています。
日曜討論で萩生田会長は「この20年間、霊感商法について被害がないと認識していた」と釈明する一方で、解散命令については「難しい」と踏み込んだ発言を行なっていました。岸田総理らは「社会的に問題が指摘されている団体である」と認識していながらも、解散命令は信教の自由を持ち出して消極的な姿勢を貫いています。
しかし、解散命令が出ても任意団体として宗教活動は続けられ、信教の自由を奪う訳ではありません。ちなみに鈴木エイトさんは「私は旧統一教会に解散命令が出されるべきだと思っています。被害は数千億円規模に及んでいますから当然、命令の対象になり得ます」と明確に語っています。
7月末に投稿した「多面的な情報を拡散する場として」の中では、下村文科大臣の時に名称変更が認められた経緯についての説明不足の不可解さを取り上げていました。解散命令に二の足を踏む姿勢をはじめ、このような自民党政治家の不可解さに対し、鈴木エイトさんは次のような見方を示しています。
首根っこをつかまれている国会議員が解散命令に前向きな姿勢を示せば、統一教会はその議員が困る情報をリークする可能性があります。各議員が解散命令についてどういう立場に立つのか、注視したい。解散命令に慎重な文科省や政治家は、なぜ統一教会が対象にならないのか、説明する必要があります。
上記のような見方は憶測も混じっているものですが、山際経済再生担当大臣の説明の不誠実さや迷走ぶりを目の当たりにすると鈴木エイトさんの見方の信憑性も増していくように思っています。もともと山際大臣の場合、閣僚としての資質を厳しく問わざるを得ない言動がありました。
参院選挙の応援演説での「野党の人からくる話はわれわれ政府は何一つ聞かない」という発言には心底失望していました。この発言に対して山際大臣は参院代表質問で「趣旨が明確に伝わらず」と釈明しながら野党議員に謝罪したようですが、趣旨云々の話ではないように思っています。
次に紹介する記事にも鈴木エイトさんが登場します。『「ミヤネ屋」世耕氏に反論で「一瞬で論破」と話題 鈴木エイト氏が“一人もいません”発言に鋭い指摘』という記事で「旧統一教会と自民党」というタイトルを付けた関係上、興味深い内容ですので全文をそのまま紹介します。
前日の参院本会議での世耕弘成参院幹事長が「多額の献金等を強いてきたこの団体の教義に賛同する我が党議員は一人もいません」と旧統一教会との関係性を改めて否定した発言を報道。リモート出演していたジャーナリストの鈴木エイト氏が即座に否定し、ネット上で話題になっている。
世耕氏は6日の参院本会議で代表質問に立ち、「(旧統一教会は)『日本人は贖罪を続けよ』として多額の献金等を強いてきた」とし、「この団体の教義に賛同するわが党議員は一人もいません」と断言。
さらに「教団等が主張する一部の政策がたまたまわが党議員の政策と同一だったことはあるかもしれませんが、一宗教団体が政策決定に影響を与えることはありえません」と語っていた。
番組ではMCの宮根誠司が「『一宗教団体が政策決定に影響を与えることはありえません』、これが世耕さんの一番言いたかったことだと思う」と指摘。一方、リモート出演していた鈴木氏に「井上(義行)議員は“賛同会員だ”っておっしゃってましたよね?」と半笑いで話を振った。
教団との関係が最も濃い一人とされている自民党の井上義行参院議員は、8月3日に発表した文書で、「信徒ではなく、私の政策に賛同を得られたことから、一般的に『賛同会員』と呼ばれている」と公表。一方、同月31日に会員を退会したことも発表していた。
宮根の振りに対し鈴木氏は「少なくとも一人は賛同していたわけですよね」と賛同。また、「世耕さんのおっしゃることももっともだと思うんですけど、『その通り』という感想も持てるんですけど」とある種では支持できるとしながらも、「ではなぜそんな教団とこれだけ多くの政治家がコミットしてきたのか、それがポイントですよね」と苦言を呈していた。
たいへん長いブログ記事となっていますので全文は紹介できませんが、『塚田穂高氏が語る 政治と宗教の関わり方「大票田は誤解。政策の浸透は甘く見てはいけない」』という記事も興味深い内容を伝えています。政教問題やカルト問題などの研究に取り組む上越教育大大学院准教授の塚田穂高さんが次のような見方を示しています。
大なり小なりはありますが、共通するのは教義を広めたい、教えに立脚して理想世界を実現したいというモチベーションです。並行して、社会的に認められた証しとしてのステータスを求める。目に見える成果を欲する。信徒獲得や施設拡充といった教勢拡大もそうですが、一環として政治家との付き合いや選挙活動が使われてきた。
宗教に限らず、社会運動というものは何かしらの結果を出し続けなければ継続できません。創価学会2代目の戸田城聖会長は選挙について「信心をしめるために使える」と言っていました。統一教会の場合は組織防衛の目的も重なり、与党の国会議員を手なずけ、権力に食い込み、政治力を手にしようとした。その点が特徴的と言えます。
繰り返し強調しなければなりませんが、旧統一教会と自民党政治家が歪な関係性を築き、政治的な意思決定が歪められてきたのかどうか決め付けることはできません。隠し続けなければならない実態が白日のもとにさらされることを警戒し、解散命令に及び腰なのではないかという見方も憶測でしかありません。
しかし、次のような経緯は明白な事実であり、長く政権与党を担っている自民党が率先して真摯に反省すべき点だろうと思っています。7月に投稿した記事「参院選が終わり、見えてきたこと」の中で記していましたが、全国霊感商法対策弁護士連絡会が安倍元総理をはじめとする自民党の政治家に旧統一教会との親密な関係に警鐘を鳴らしていました。
『「政治家として配慮いただきたい、ということを繰り返しお願いしてきた」安倍元総理の銃撃事件、旧統一教会の記者会見を受け、全国霊感商法対策弁護士連絡会が声明』という記事の中で、弁護士連絡会の山口広事務局長が自民党側に次のような実情の問題性について繰り返し訴えてきたことを伝えています。
私どもとしては安倍晋三先生にも、他の政治家に対しても、何回も統一教会の社会悪を考えたら、反社会的団体である統一教会にエールを送るような、そういう行為は止めていただきたいと。どんなに被害者が悲しむのか、苦しむのか、絶望するのか。しかも、新しい被害者がそれによって生み出されかねないということについて、政治家として配慮いただきたい、ということを繰り返しお願いしてきた。
しかし、残念ながら反共ということに共感を持つ議員の方々、あるいは統一教会のお金が最初は目的だったかもしれない。今回の選挙でも、あるいはその前の選挙でも特定の自民党の候補者を組織推薦候補として応援をし、信者組織の動員をかけてやってきたことを私どもは事実として認識している。
それにも関わらず、明確な峻別をはかっていなかったことの政治責任は極めて重かったものと考えています。このような抗議があること、旧統一教会との関係性の問題などを党内で周知や注意喚起をはかれていなかったことは自民党という組織のガバナンスも欠けていたものと思っています。
与野党問わず、多くの政治家が旧統一教会の現状に対する認識や問題意識を欠落させていたようです。民意を背にした政治家という重責を担う立場であれば旧統一教会の問題に対して敏感であって欲しかったものと思っています。いずれにしても過去は変えられませんので、2世信者だった小川さゆりさんらの切実な声を受けとめた政治が今後実現していくことを強く望んでいます。
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コメント
ハンドルネームの通り、わが市はとても住みよい街なんてすが、昔から違和感を持ってたのは何故これほど新興宗教団体の拠点が集中して活発に活動してるのか?ということです
行政にも責任があるんではないでしょうか
それを踏まえて質問です。
公明党が自民党と並ぶ市議会の最大会派となっております。言うまでもなく創価学会を母体とする政党が市政に大きな影響力を持つまでに至った現状に大きな懸念を持たずにはいられません
ご意見を伺いたいです
そして真如苑の問題です。市内に総本部を構えておられますが、地域活動に参加するのに熱心なようで、社協に寄付したり、地域の体育協会や小中学校のスポーツ大会などに当団体所有の施設を貸し出したり、式典に市長が参加した事例があるようです
地方行政や教育と宗教団体との関わりは社会通念上不適切だとおもわれますが、ご感想をお聞かせください
投稿: T川良いところ | 2022年10月18日 (火) 08時44分
T川良いところさん、コメントありがとうございました。
新規記事でも旧統一教会の問題を取り上げる予定です。鈴木エイトさんの『自民党の統一教会汚染 追跡の3000日』を読み終え、改めて「何が問題なのか」という論点を掘り下げてみるつもりです。
宗教団体の政治活動や社会活動自体が問題ではなく、霊感商法などを問題視されてきた団体の広告塔として政治家が関与してきていることの問題性を鈴木エイトさんは訴えています。このような前提を踏まえた際、ご指摘の団体に対し、私自身は特段問題視すべき点を感じていません。
もちろん宗教団体の不当な圧力によって行政を歪めている事例があるような場合、深刻な問題として是正していかなければなりません。そのような具体的な事例が見受けられた場合、ご指摘いただければ行政として即座に対応すべきものと考えています。
冒頭で申し上げた内容の新規記事は本日中に投稿するつもりです。ぜひ、これからも当ブログをご注目いただければ幸いですのでよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2022年10月22日 (土) 07時51分