信頼できる政治のあり方
「旧統一教会と自民党」「旧統一教会と自民党 Part2」という記事を通し、2週続けて旧統一教会の問題を取り上げてきました。週明け早々、瀬戸際大臣と揶揄されてきた山際経済再生担当大臣が辞任に至りました。事実上の更迭と見られています。
2回にわたった記事の中で、宗教団体の政治活動自体が問題ではなく、霊感商法などを違法視されてきた団体の広告塔として政治家が関与してきていることの問題性を訴えています。さらに『国家公安委員長、旧統一教会に関わる事件「被害届ない」を「検挙がない」訂正で露呈した「被害届あっても検挙できない」背景』という報道のような歪みがあったのかどうかを危惧しています。
また、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が2018年6月、衆参の国会議員全員にその問題性を訴えた声明文を送っていたことを前回記事の中で取り上げていました。つまり旧統一教会の問題性を認識しながら全国弁連の「忠告」を無視してきた政治家の多さを指摘しています。
このような前提を踏まえた時、旧統一教会との関わりを「記憶にない」と言い続けた山際前大臣は、記憶する力が際立って劣っているのか、誠実な説明責任を放棄しているのか、いずれにしても政治家としての資質が大きく問われたものと理解しています。
昨年8月から9月にかけて「信頼できる政治の実現に向けて」というタイトルの記事を 「Part2」 「Part3」まで綴っていました。12月には「再び、信頼できる政治の実現に向けて」という記事を投稿しています。12月の記事の冒頭で「信頼できる政治の実現に向けて」というタイトルの記事を「Part3」まで重ねていたことを忘れていたという話を紹介しました。
自分自身の記憶があてにならないことを記していた訳ですが、些細な切っかけさえあれば思い出すことができます。記憶を呼び起こすための記録を毎年廃棄しているという釈明も含め、山際前大臣の言葉には信憑性が疑われるような顛末をたどっていました。政治家の発する言葉一つ一つが疑われるようになってしまっては「信頼できる政治」から程遠くなります。
政党が掲げる政策や選挙協力のあり方について、すべての人からの納得は難しくても、より100%に近い人たちから「なるほど」と思えるような説明責任が政党には求められています。信頼できる政治の実現に向け、欠かせない試みであり、そのような対応が不充分だった場合、国民からの支持は限られてしまうのだろうと思っています。
上記は「再び、信頼できる政治の実現に向けて」の中の一文です。「なるほど」と思えるような説明責任以前の問題として、政治家に限らず信頼を失墜する行為は嘘を重ねることです。前述したとおり自分自身も省みる中で、完璧な記憶力はありません。すべての事象を正確に把握している知識や情報収集能力もありません。そのため、時には誤ったことを言葉にしてしまう場面もあります。
大切な心構えは誤りが分かった場合、すみやかに訂正し、謝罪することだろうと考えています。最悪な振る舞いは自分の誤りを認めず、その誤りを糊塗するため、嘘に嘘を重ねることです。絶対慎まなければなりません。権力者の誤りだった場合、権力者の意思に関わらず、周囲が忖度し、誤りを取り繕い、取り返しのつかない事態まで引き起こすこともあります。
具体的な事例として森友学園の問題を思い浮かべています。近畿財務局職員だった赤木俊夫さんの遺書が示す事実関係を決して忘れてはならないはずです。理不尽な死を強いられた安倍元総理を悼みながらも『テレ朝・玉川徹氏「降板報道」で話題再燃 安倍元首相「虚偽答弁118回」なぜお咎めなし?』という事例など問題視すべき点は霧消させず、必要な検証は続けなければならないものと思っています。
今回の記事タイトルは「信頼できる政治のあり方」としています。信頼できる政治なのかどうかはトップリーダーである総理大臣の資質や能力によって大きく左右されていきます。菅前総理に関しては昨年8月の「スガノミクスと枝野ビジョン」などを通し、異なる意見を進言する人たちを遠ざけがちな点について触れています。
より望ましい「答え」を見出すためには幅広い情報や考え方に接していくことが重要であるため、そのような菅前総理の姿勢には懐疑的な見方を示してきました。岸田総理は「聞く力」をアピールし、自民党の総裁選を勝ち抜いてきています。安倍元総理や菅前総理に比べれば個人的には期待したい政治家の一人でした。
残念ながら過去形で語らなくてはならないような事例が相次いでいます。『岸田政権の原発推進方針は「火事場泥棒的」 提言発表の原自連・河合弘之弁護士に聞く』という記事が示すような拙速な政策転換に驚き、失望感が芽生え始めていました。それ以上に驚き、唖然としている政策転換がマイナンバーカードを巡る動きです。
マイナンバーカードに関しては当ブログで過去に「社会保障・税番号制度」「不人気なマイナンバーカード」という記事を投稿し、慎重な考え方を表明してきています。本来、新規記事の題材とすべき重要な問題なのかも知れませんが、取り急ぎ最近、目に留まったマイナンバーカードに関連した報道等を紹介します。
『マイナカード普及へ保険証を“人質”に…河野デジタル相のアベコベ突破力で検討会メンツ丸潰れ』『「保険証があるからみんな持たない」と言うけれど…マイナンバーカードが普及しない“本当の理由”《事実上の強制へ》』『ポイントで釣っても駄目なら今度は強制か、マイナカードと健康保険証の一体化』『「保険証廃止は邪道」河野デジタル相の“雑すぎる突破力”…マイナカード推進派からも懸念噴出!』『岸田首相と河野大臣で発言内容がブレる「マイナ保険証」不透明な政府の方針に違和感持つ国民が続出!』
マイナ保険証に対応するためのシステムを医療機関の3割しか導入できていない現状です。今後、システムを導入できなければ保険医登録の取り消しがあり得るという一方的で唐突な決定であり、批判の矛先は河野大臣に向かいがちです。
ただ河野大臣は「総理に指示されたことを言っただけなのに、何でこんなに批判されるのか」と愚痴をこぼしているようです。岸田総理と河野大臣の意思疎通の不充分さの問題もありますが、そもそも任意だったマイナンバーカードの取得を事実上、義務化することの政策転換への不信感や反発が広がっています。
今回の「信頼できる政治のあり方」という記事を意識し、『週刊文春』10月27日号を手にしています。『「誰も信用できない」岸田政権「崩壊前夜」』という見出しの特集記事の中で、低下している内閣支持率の反転攻勢に向け、岸田総理は旧統一教会の問題を打ち消すため、やたらとアドバルーンを上げているという実情を伝えています。
国葬の時のように最近の岸田総理は、議論もなしに突然、新たな決断をぶち上げるケースが目立ち、それを「攻める政権運営」と自負していることも記されています。ガス代の負担軽減策も具体的な制度設計が何も決まっていない段階で表明されてしまい、大きな混乱を招いていることなどを『週刊文春』は報じています。
『官邸「機能不全」で急浮上する「岸田総理」自滅へのカウントダウン 自民党幹部も「非常に危険な状態」』『後藤経済再生担当相めぐり官邸“大チョンボ”…官房正副長官は役立たず、チーム岸田すでに崩壊』という見出しの記事も伝えているとおり岸田総理の「聞く力」は空回りし、側近不信とともにチーム岸田は壊滅同然であるようです。
安全保障の問題も含め、自民党政権の中では信頼を寄せやすい立場の岸田総理でしたが、期待感とは裏腹な政権運営が目立ち始めています。たいへん残念なことです。このところ閣僚等の任命責任の問題も立て続いています。政務官の人事は岸田総理が直接関与していないのかも知れませんが、信頼できない政治のあり方として下記のような問題も指摘しなければなりません。
『江川紹子さん、誹謗中傷キャンペーンを「存じ上げません」と発言の杉田水脈総務政務官に皮肉ツイート』『杉田水脈氏の資質問う声 立川団四楼「政界にいる意味ない」松尾貴史「品性の問題」』という記事にあるとおり杉田政務官に対しては政治家としての適格性に大きな疑問符を付けざるを得ません。最後に『杉田水脈発言を咎めぬ政府こそ差別的』という記事内容の全文をそのまま紹介します。
岸田内閣で初入閣した差別主義者、総務政務官・杉田水脈を内閣の一員に任命し、野放しにしていることにあまりにも政府も党も鈍感すぎないか。
杉田は16年7月、産経新聞の連載コラムで「旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンは息を吹き返しつつあります。その活動の温床になっているのが日本であり、彼らの一番のターゲットが日本なのです。これまでも、夫婦別姓、ジェンダーフリー、LGBT支援などの考えを広め、日本の一番コアな部分である『家族』を崩壊させようと仕掛けてきました」と記している。
どこかの宗教団体の主張のようだが、産経もよくこんな陰謀論を掲載したものだ。16年に杉田はツイッターで「統一教会の信者の方にご支援、ご協力いただくのは何の問題もない」と書き込んだことを26日の衆院政治倫理・公選法改正特別委員会(倫選特)で問われると「(政府の一員の政務官だから)見解の表明は差し控える」と答弁拒否。
18年7月には「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」と雑誌で発言している。雑誌は廃刊になった。
杉田はツイッターでジャーナリスト・伊藤詩織を中傷する「枕営業の失敗」などの投稿に「いいね」を押したのは名誉毀損に当たるとして、先週、東京高裁で損害賠償を命じられたが、倫選特で総務省が取り組んでいるSNSの誹謗中傷対策キャンペーンについて問われ総務政務官なのに「存じ上げません」と答弁し、この判決について係争中を理由に答弁拒否。
27日の衆院総務委員会では「生産性がない」と表現した発言の謝罪を求められたが応じなかった。杉田の差別発言を政府も党もとがめず答弁させているのは杉田発言を政府や党が肯定、賛意を示していることに他ならず、反応しないことが既に差別的といわざるを得ない。
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