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2022年10月29日 (土)

信頼できる政治のあり方

旧統一教会と自民党」「旧統一教会と自民党 Part2」という記事を通し、2週続けて旧統一教会の問題を取り上げてきました。週明け早々、瀬戸際大臣と揶揄されてきた山際経済再生担当大臣が辞任に至りました。事実上の更迭と見られています。

2回にわたった記事の中で、宗教団体の政治活動自体が問題ではなく、霊感商法などを違法視されてきた団体の広告塔として政治家が関与してきていることの問題性を訴えています。さらに『国家公安委員長、旧統一教会に関わる事件「被害届ない」を「検挙がない」訂正で露呈した「被害届あっても検挙できない」背景』という報道のような歪みがあったのかどうかを危惧しています。

また、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が2018年6月、衆参の国会議員全員にその問題性を訴えた声明文を送っていたことを前回記事の中で取り上げていました。つまり旧統一教会の問題性を認識しながら全国弁連の「忠告」を無視してきた政治家の多さを指摘しています。

このような前提を踏まえた時、旧統一教会との関わりを「記憶にない」と言い続けた山際前大臣は、記憶する力が際立って劣っているのか、誠実な説明責任を放棄しているのか、いずれにしても政治家としての資質が大きく問われたものと理解しています。

昨年8月から9月にかけて信頼できる政治の実現に向けて」というタイトルの記事を Part2 Part3」まで綴っていました。12月には「再び、信頼できる政治の実現に向けて」という記事を投稿しています。12月の記事の冒頭で「信頼できる政治の実現に向けて」というタイトルの記事を「Part3」まで重ねていたことを忘れていたという話を紹介しました。

自分自身の記憶があてにならないことを記していた訳ですが、些細な切っかけさえあれば思い出すことができます。記憶を呼び起こすための記録を毎年廃棄しているという釈明も含め、山際前大臣の言葉には信憑性が疑われるような顛末をたどっていました。政治家の発する言葉一つ一つが疑われるようになってしまっては「信頼できる政治」から程遠くなります。

政党が掲げる政策や選挙協力のあり方について、すべての人からの納得は難しくても、より100%に近い人たちから「なるほど」と思えるような説明責任が政党には求められています。信頼できる政治の実現に向け、欠かせない試みであり、そのような対応が不充分だった場合、国民からの支持は限られてしまうのだろうと思っています。

上記は「再び、信頼できる政治の実現に向けて」の中の一文です。「なるほど」と思えるような説明責任以前の問題として、政治家に限らず信頼を失墜する行為は嘘を重ねることです。前述したとおり自分自身も省みる中で、完璧な記憶力はありません。すべての事象を正確に把握している知識や情報収集能力もありません。そのため、時には誤ったことを言葉にしてしまう場面もあります。

大切な心構えは誤りが分かった場合、すみやかに訂正し、謝罪することだろうと考えています。最悪な振る舞いは自分の誤りを認めず、その誤りを糊塗するため、嘘に嘘を重ねることです。絶対慎まなければなりません。権力者の誤りだった場合、権力者の意思に関わらず、周囲が忖度し、誤りを取り繕い、取り返しのつかない事態まで引き起こすこともあります。

具体的な事例として森友学園の問題を思い浮かべています。近畿財務局職員だった赤木俊夫さんの遺書が示す事実関係を決して忘れてはならないはずです。理不尽な死を強いられた安倍元総理を悼みながらもテレ朝・玉川徹氏「降板報道」で話題再燃 安倍元首相「虚偽答弁118回」なぜお咎めなし?』という事例など問題視すべき点は霧消させず、必要な検証は続けなければならないものと思っています。

今回の記事タイトルは「信頼できる政治のあり方」としています。信頼できる政治なのかどうかはトップリーダーである総理大臣の資質や能力によって大きく左右されていきます。菅前総理に関しては昨年8月の「スガノミクスと枝野ビジョン」などを通し、異なる意見を進言する人たちを遠ざけがちな点について触れています。

より望ましい「答え」を見出すためには幅広い情報や考え方に接していくことが重要であるため、そのような菅前総理の姿勢には懐疑的な見方を示してきました。岸田総理は「聞く力」をアピールし、自民党の総裁選を勝ち抜いてきています。安倍元総理や菅前総理に比べれば個人的には期待したい政治家の一人でした。

残念ながら過去形で語らなくてはならないような事例が相次いでいます。『岸田政権の原発推進方針は「火事場泥棒的」 提言発表の原自連・河合弘之弁護士に聞く』という記事が示すような拙速な政策転換に驚き、失望感が芽生え始めていました。それ以上に驚き、唖然としている政策転換がマイナンバーカードを巡る動きです。

マイナンバーカードに関しては当ブログで過去に社会保障・税番号制度不人気なマイナンバーカード」という記事を投稿し、慎重な考え方を表明してきています。本来、新規記事の題材とすべき重要な問題なのかも知れませんが、取り急ぎ最近、目に留まったマイナンバーカードに関連した報道等を紹介します。

マイナカード普及へ保険証を“人質”に…河野デジタル相のアベコベ突破力で検討会メンツ丸潰れ』『「保険証があるからみんな持たない」と言うけれど…マイナンバーカードが普及しない“本当の理由”《事実上の強制へ》』『ポイントで釣っても駄目なら今度は強制か、マイナカードと健康保険証の一体化』『「保険証廃止は邪道」河野デジタル相の“雑すぎる突破力”…マイナカード推進派からも懸念噴出!』『岸田首相と河野大臣で発言内容がブレる「マイナ保険証」不透明な政府の方針に違和感持つ国民が続出!

マイナ保険証に対応するためのシステムを医療機関の3割しか導入できていない現状です。今後、システムを導入できなければ保険医登録の取り消しがあり得るという一方的で唐突な決定であり、批判の矛先は河野大臣に向かいがちです。

ただ河野大臣は「総理に指示されたことを言っただけなのに、何でこんなに批判されるのか」と愚痴をこぼしているようです。岸田総理と河野大臣の意思疎通の不充分さの問題もありますが、そもそも任意だったマイナンバーカードの取得を事実上、義務化することの政策転換への不信感や反発が広がっています。

今回の「信頼できる政治のあり方」という記事を意識し、『週刊文春』10月27日号を手にしています。『「誰も信用できない」岸田政権「崩壊前夜」』という見出しの特集記事の中で、低下している内閣支持率の反転攻勢に向け、岸田総理は旧統一教会の問題を打ち消すため、やたらとアドバルーンを上げているという実情を伝えています。

国葬の時のように最近の岸田総理は、議論もなしに突然、新たな決断をぶち上げるケースが目立ち、それを「攻める政権運営」と自負していることも記されています。ガス代の負担軽減策も具体的な制度設計が何も決まっていない段階で表明されてしまい、大きな混乱を招いていることなどを『週刊文春』は報じています。

官邸「機能不全」で急浮上する「岸田総理」自滅へのカウントダウン 自民党幹部も「非常に危険な状態」』『後藤経済再生担当相めぐり官邸“大チョンボ”…官房正副長官は役立たず、チーム岸田すでに崩壊』という見出しの記事も伝えているとおり岸田総理の「聞く力」は空回りし、側近不信とともにチーム岸田は壊滅同然であるようです。

安全保障の問題も含め、自民党政権の中では信頼を寄せやすい立場の岸田総理でしたが、期待感とは裏腹な政権運営が目立ち始めています。たいへん残念なことです。このところ閣僚等の任命責任の問題も立て続いています。政務官の人事は岸田総理が直接関与していないのかも知れませんが、信頼できない政治のあり方として下記のような問題も指摘しなければなりません。

江川紹子さん、誹謗中傷キャンペーンを「存じ上げません」と発言の杉田水脈総務政務官に皮肉ツイート』『杉田水脈氏の資質問う声 立川団四楼「政界にいる意味ない」松尾貴史「品性の問題」』という記事にあるとおり杉田政務官に対しては政治家としての適格性に大きな疑問符を付けざるを得ません。最後に『杉田水脈発言を咎めぬ政府こそ差別的』という記事内容の全文をそのまま紹介します。

岸田内閣で初入閣した差別主義者、総務政務官・杉田水脈を内閣の一員に任命し、野放しにしていることにあまりにも政府も党も鈍感すぎないか。

杉田は16年7月、産経新聞の連載コラムで「旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンは息を吹き返しつつあります。その活動の温床になっているのが日本であり、彼らの一番のターゲットが日本なのです。これまでも、夫婦別姓、ジェンダーフリー、LGBT支援などの考えを広め、日本の一番コアな部分である『家族』を崩壊させようと仕掛けてきました」と記している。

どこかの宗教団体の主張のようだが、産経もよくこんな陰謀論を掲載したものだ。16年に杉田はツイッターで「統一教会の信者の方にご支援、ご協力いただくのは何の問題もない」と書き込んだことを26日の衆院政治倫理・公選法改正特別委員会(倫選特)で問われると「(政府の一員の政務官だから)見解の表明は差し控える」と答弁拒否。

18年7月には「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」と雑誌で発言している。雑誌は廃刊になった。

杉田はツイッターでジャーナリスト・伊藤詩織を中傷する「枕営業の失敗」などの投稿に「いいね」を押したのは名誉毀損に当たるとして、先週、東京高裁で損害賠償を命じられたが、倫選特で総務省が取り組んでいるSNSの誹謗中傷対策キャンペーンについて問われ総務政務官なのに「存じ上げません」と答弁し、この判決について係争中を理由に答弁拒否。

27日の衆院総務委員会では「生産性がない」と表現した発言の謝罪を求められたが応じなかった。杉田の差別発言を政府も党もとがめず答弁させているのは杉田発言を政府や党が肯定、賛意を示していることに他ならず、反応しないことが既に差別的といわざるを得ない。

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2022年10月22日 (土)

旧統一教会と自民党 Part2

前回記事「旧統一教会と自民党」の最後は「過去は変えられませんので、2世信者だった小川さゆりさんらの切実な声を受けとめた政治が今後実現していくことを強く望んでいます」という言葉で結んでいました。

先週末に前回の記事を投稿してから、この一週間で様々な動きが見られています。まず宗教法人の解散命令、「使用者責任」も不法行為に含まれる…首相が考え示す 』という報道です。

岸田首相は19日の参院予算委員会で、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)を巡り、宗教法人法に基づく解散命令の要件に、民法の不法行為も含まれるとの見解を表明した。18日の国会答弁では、刑法違反のみとの認識を示しており、1日で法解釈を変更した。

首相は「行為の組織性や悪質性、継続性などが明らかとなり、宗教法人法の要件に該当すると認められる場合には、民法の不法行為も入りうる」と語った。不法行為に関し、指揮・監督する立場の人物の責任を問う「使用者責任」も対象に含まれるとの考えも示した。

法解釈を変更した理由について「厳格な法治主義に基づいて法律の適用を考え、政府として考え方を整理した」と説明した。刑事判決が確定するには時間がかかるなどとする野党の主張も踏まえ、刑法違反だけでは解散命令請求の可能性を狭めかねないと判断したとみられる。

解散命令の要件について、宗教法人法は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」などと定めている。判例では、「刑法等」の違反があることを挙げている。これに対し、首相は「『等』には民法も含まれるという判断だ」と述べ、解釈を明確化した。

首相は18日の衆院予算委では、解散命令の要件について「民法の不法行為は入らないという解釈だ」とし、「(判例を踏まえて)刑法等で定める禁止規範や命令規範に違反するものとの考え方を踏襲している」と述べていた。

一方、首相は、宗教法人法に基づき初めてとなる「質問権」の行使に向け、弁護士ら専門家の意見も踏まえ「政府全体の総力を挙げて質問内容を練り上げていく」とも強調した。

政府は年内に調査を開始して解散命令請求の可否を判断する。政策決定の透明性を確保するため、議論の場となる宗教法人審議会などの議事録公開も検討する。【読売新聞2022年10月19日

1日で法解釈を変更したことについて「朝令暮改にも程がある」という批判も受けていましたが、岸田総理の「聞く力」が良い意味で発揮されたという見方もできます。ただ次のような舞台裏の事情が明かされると、やはり決して好意的に評価できるような話ではなかったようです。

政治ジャーナリストの田崎史郎氏が20日、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」に出演。岸田文雄首相が1日で答弁変更し、宗教法人への法令違反要件について「民法の不法行為も入り得る」との見解を示したことに言及した。

岸田首相は、19日の参院予算委員会で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する宗教法人法に基づく調査を巡り、宗教法人への解散命令請求が認められる法令違反の要件について「民法の不法行為も入り得る」との見解を示した。18日の衆院予算委では刑法違反を挙げ、民法は含まないとの認識を示しており、1日で答弁を変更した。

田崎氏は「まず押さえておかないといけないことは、総理の答弁というのは非常に重いんですね。閣議決定や法律に匹敵するくらい重いんです。それを一夜で変えるというのは極めて異例だし、変えてはいけないんですね」と指摘。

変更された経緯について「(18日に)長妻さんが要件を聞いてくると思わなかったと。質問権の話で来ると思ったのに、解散命令の話で来たんで、それでそこにあった紙を総理が読み上げてしまった」とし、「これはやっぱり総理を支える官僚の人たちの準備不足。もっと用意しておかないといけなかったんですよね」と自身の見解を述べた。

司会の羽鳥慎一アナウンサーの「なんで用意してなかった?」には「想定していなかったって言うんですけど。質問通告がなかったせいもあるんですが、質問を想定しながら答弁をつくらなといけないんです、彼らは。だからそこの想像力の問題だと思いますね」と言い、羽鳥アナの「一昨日は岸田総理のその場の判断であの発言になったということ?」という問いには「そういうことです。そこで手元にあった文化庁のペーパーをそのまま読んでしまった。

その後に、この問題に詳しくて法曹資格、弁護士資格を持つ自民党議員少なくとも2人が、あの総理答弁まずいんじゃないのと。民事も含まれるはずだよということがあったんで、それから慌てて秘書官が法務省などと協議を始めたということですね」と話した。【Sponichi Annex 2022年10月20日

迷走ぶりが見受けられながらも支持率の急落を受け、岸田総理が旧統一教会の問題に真正面から取り組み出したことは歓迎すべき動きだと言えます。『旧統一教会の被害者救済、与野党が初会合 今国会での法案成立を確認』という報道のとおり前回記事を投稿した時には想像できなかったスピード感です。

このような政府の動きに対し、危機感を抱いた旧統一教会側は自らの立場や主張の正しさを広く発信する場を設けていました。『“統一教会”6回目の記者会見 怒りの声も… “家庭崩壊”訴える男性「ここまでやる?」』という見出しのとおり驚くべきパフォーマンスを繰り出してきました。

教会改革推進本部の勅使河原秀行本部長が紹介した後、教区長に昇格させたという2世信者である男性17名が黒系統のスーツに身を包み、ズラリと並んだ場面は異様でした。勅使河原本部長の高揚感とは裏腹にマスク越しでの印象となりますが、誰からも誇らしげな姿は読み取れませんでした。

世信者だった小川さゆりさんは「2世たちに寄り添うという形には、まったく見えなくて、2世たちを昇格させてあげたでしょうと、すごく上から目線にしか聞こえなくて、正直ちょっとあのシーンが一番信じられなかったです。過去一番、最低な会見だったなと私は思いました」と語っています。

それ以上に驚いたのは女性信者の映像が流れた場面です。家庭崩壊に追い込まれ「息子が自殺した」と訴えている橋田達夫さんの元妻が旧統一教会側の立場を優位にするため、橋田さんの主張が虚偽であると証言している映像でした。

元妻の言葉を完全に否定できる事実関係を把握している訳ではありませんが、極めて慎重さを要する映像を記者会見の場で流す教団側の感覚や姿勢に大きな疑問を抱かざるを得ません。橋田さんの「ここまでやる?家族を。勅使河原ここまでやる?」という言葉が耳に残ります。

前回記事を投稿した後、通勤帰りに立ち寄った書店で鈴木エイトさんの『自民党の統一教会汚染 追跡の3000日』を見かけ、すぐ手にしていました。数日のうちに読み終え、次に投稿するブログの内容も旧統一教会と自民党との関係を取り上げようと考えていました。そして今回、記事タイトルに「Part2」を付けて書き進めています。

第2次安倍政権発足後、9年間、3000日以上にわたって自民党と旧統一教会との関係性を追ってきた鈴木エイトさんだからこそ、ここまで濃密な内容の書籍を刊行できたものと思っています。安倍元総理が凶弾の犠牲となった事件以降、緊急刊行となったことについて編集担当は次のように紹介しています。

事件以降、次々と明るみになる自民党と旧統一教会の関係を、その何年も前から追い続けていたのが鈴木エイト氏です。鈴木氏は、刊行の当てもないままこの本の元となった原稿を以前から書きためていました。テレビ出演など大忙しのなかその原稿に大幅加筆し、この緊急刊行にこぎ着けることができました。圧力に屈せず真実をひたすらに追い続けたジャーナリストの、覚悟と執念の集大成です。

前回記事で「旧統一教会と自民党政治家が歪な関係性を築き、政治的な意思決定が歪められてきたのかどうか決め付けることはできません。隠し続けなければならない実態が白日のもとにさらされることを警戒し、解散命令に及び腰なのではないかという見方も憶測でしかありません」と記していました。

しかし、9年間取材してきた鈴木エイトさんの見方に対して「憶測でしかありません」と記したことをお詫びしなければなりません。鈴木エイトさんが断定調に語っていることは、しっかりとした裏付けの取れた事実関係の数々であることに間違いないようです。そのような点について前置きした上、書籍を読み終えて特に印象深かった箇所を紹介していきます。

前回記事の中で、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が政治家に対し、反社会的団体である旧統一教会にエールを送るような行為は止めるよう繰り返し要請してきたことを伝えていました。書籍を通し、2018年6月に全国弁連が衆参の国会議員全員に声明文を送っていたことを知りました。

このような「忠告」にも関わらず、直後の教団イベントに来賓出席する議員が続出していたことを書籍の中で伝えています。いずれにしても萩生田政調会長らの「この20年間、霊感商法について被害がないと認識していた」などという釈明は真っ赤な嘘だったのか、全国弁連からの要請に対する不誠実ぶりを明らかにしています。

書籍の中で「政教分離については国会議員が統一教会と付き合いがあるというだけで即アウトとも言い切れない」という記述があり、宗教団体が政治活動を行なうこと自体も否定していません。「霊感商法などで社会的に問題視されている宗教団体に政治家が関わること自体に問題がある」と鈴木エイトさんは訴えています。

書籍の前半にはユナイトについて触れられています。安倍政権が推進した安保法制に反対する学生組織シールズが脚光を浴びていました。その流れに対抗し、2016年1月に「国際勝共連合大学生遊説隊ユナイト」が結成されました。メンバー全員が旧統一教会の2世信者でした。

ユナイトに対する取材を通し、鈴木エイトさんはユナイトの「誕生」は安倍政権の意向を反映したものだったとの推論が必然的に導かれるという見解を示しています。仮に政権側が2世信者たちを使って印象操作し、世論を誘導しようとしていたとすると、道義的な側面だけでなく、政教分離の観点からも問題であることを訴えています。

安倍政権の約8年。目先の国政選挙や憲法改正に向けた世論誘導のため、この歴代最長政権は最も手を組んではいけない相手とギブアンドテイクの関係を続けた。国のトップが自らの政治的野心のために「反社会的」団体と取引したことは「桜を見る会」問題をも凌駕する深刻な事態だ。

第2次安倍政権発足以降の約8年間、政権首脳が率先して問題教団との関係を構築した。その姿勢を見た国会議員・地方議員は、罪悪感を抱くことなく教団や関連組織と“付き合い”を続けた。

これらの政治家は表向きには教団の問題性を認めておきながら、裏では関係を持ってきた。これは国民への裏切り行為に他ならず、清廉さが求められる政治の世界にこのような政治家が跋扈する素地を作ったことは安倍政権の弊害の一つだ。

上記は書籍の中に掲げられた文章をそのまま転載しています。山上徹也容疑者の起こした事件が決して正当化されることでないことを鈴木エイトさんは強調しています。そのことを前提としながらも政治家がカルト被害者の家族、特に子どもの被害実態を軽視し、放置してきたことの責任を問いかけています。

今回も長いブログ記事となっています。あまり個人的な思いを添えず、後段は鈴木エイトさんの書籍の内容の紹介を中心に書き進めてきました。まだまだ紹介したい興味深い情報が詰まった重い内容の書籍です。最後に、鈴木エイトさんの自戒を込めた言葉を紹介し、今回の記事を終わらせていただきます。

自戒を込めて書くが、本来であればこのような事件が起こる前に、「統一教会の悪質さ」「被害の深刻さ」「家庭崩壊や2次被害者の存在、2世問題」「政治家との関係」等を可視化し提示しなければならなかった責任は、メディアを含む我々社会の側にもある。

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2022年10月16日 (日)

旧統一教会と自民党

ウクライナでの戦争が続いています。日常が一転して生命の危機を脅かす非日常に追いやられたウクライナの人々の恐怖と絶望は想像を絶するものだろうと思います。最近『ウクライナにいたら戦争が始まった』を読み終え、そのような恐怖をわずかでも追体験しています。機会を見て「『ウクライナにいたら戦争が始まった』を読み終えて」という記事を投稿できればと考えています。

前回記事「時事の話題から思うこと、2022年秋」の中で、軍事進攻したロシアの言い分には耳を貸すことが難しくなっていると記していました。『「国連総会、ロシアの「併合」非難決議を採択 賛成は143カ国に』という報道のとおりロシアの暴挙は国際社会の中で大きな批判に包まれています。

それでもロシアの他にベラルーシ、北朝鮮、ニカラグア、シリアが反対し、中国やインドなど35カ国が棄権しています。残念ながら軍事力による領土の変更は絶対容認しないという国際社会の図式になり得ていませんが、2014年3月のクリミア半島の併合を認めない決議の賛成は100か国だったため、当時よりもロシアの孤立化が顕著になっていることも確かなようです。

私どもの組合の話に引き付ければ火曜日に役員選挙が告示され、来週中には立候補する新執行部体制の顔ぶれが決まります。昨年の今頃には「組合役員の改選期、インデックスⅢ」という記事を投稿していました。私自身、長年務めた組合役員を退任するタイミングであり、関連した内容の新規記事は必ずまとめてみるつもりです。

今週末に投稿するブログの記事は「旧統一教会と自民党」というタイトルを付けています。こちらの話もタイミングを見て掘り下げてみようと考えていた題材です。いつものことですが、ネット上で目にした興味深い報道等を紹介しながら私自身の問題意識を書き添えていきます。

まず『旧統一教会修練会でセクハラ「宗教名乗るカルト」元信者告発 教団施設に精神崩壊した信者多数』という見出しの記事です。2世信者だった方の苦しかった生い立ちが語られ、旧統一教会の問題性を切実に訴えた記事内容であり、全文をそのまま紹介します。

立憲民主党は23日、国会内で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題について元信者からヒアリングを行った。脱会した小川さゆり氏(仮名)は、夫と子どもとともに出席した。小川氏の両親は現在も熱心な信者で父は元教会長を務め、2世信者として生まれ育った。

小川氏は特定の支持政党がないことを重ねて強調した上で「母は婦人部長などを請け負い、政治の面でも選挙活動を手伝ったり、ウグイス嬢をしたりしていた」と選挙で支援を行っていたとした。両親が高額な献金をしたせいで貧しい家庭環境で、それが原因でいじめを受け、高校生からアルバイトを始めるが、200万円あまりの給与は献金のため、すべて両親に没収されたという。

小川氏は結婚前に参加が義務付けられている修練会で公職者からセクハラを受け、韓国内の教団施設では精神が崩壊した信者たちを数多く目の当たりにするなどし、2016年ごろに脱会したという。献金の実態について「日本人というのは完全に罪の国だと教え込まれている。韓国の本部から指示が来て、毎月のノルマが発表され、この教会では何百万頑張って下さい、と指示がある」などと告発した。

小川氏は「統一教会は宗教を名乗ったカルトであり、信者家庭を崩壊に追い込む、反社会的団体。被害者を救い、新しい被害者が出ない法律や制度を作っていただきたい」と、早急な法規制の必要性を訴えた。

小川さゆりさん(仮名)は10月8日、日本外国人特派員協会で行なわれた会見にも出席して「生まれた頃から自分の意思に関係なく礼拝参加や教義本訓読の強制、恋愛禁止などを教えられ、それらを破った場合、“地獄に落ちる”などと脅す教育を受けてきました」と語っていました。

すると会見中に旧統一教会側から「彼女は精神に異常をきたしており、安倍元首相の銃撃事件以降、その症状がひどくなってしまっていて、多くの嘘を言ってしまうようになっている」というファックスが送られてきました。『元2世信者、旧統一教会の会見中止要求に耐えて涙の訴え「どちらが悪なのか分かって」』のとおり衝撃的な場面でした。

小川さんは心身の症状について「4年前に治っている」と反論し、少し動揺した様子を見せながらも「大丈夫です」と会見を続けていました。「お金を返さず自分たちの主張を続けるのと、私とどちらが悪なのか。これを見てくださる多くの方は分かってくれると信じています。私を正しいと思ってくれるなら、この教団を解散させてください」と涙を流しながら訴えています。

旧統一教会による元2世信者会見の中止要求に憤り「親御さんにしろ教団側にしろ論外」』という記事では、読売テレビの高岡達之解説委員長の「親御さんが書かれたにしろ、教団側が書かれたにしろ、論外だと思います」という憤りを伝えています。

「いかなるお立場であっても、ご自分が抱えている心身のことについて、人様に話す権利はご本人だけだと思う。そこに思いが至らない時点で、私はお目にかかったこともないけど、彼女のご両親にも“本当にお嬢さんのことを思っていらっしゃいますか?”と申し上げたい」と両親や教団側の配慮のなさに疑問を呈しています。

旧統一教会の問題を20年以上取材を続けているジャーナリストの鈴木エイトさんが「ミヤネ屋」に出演した時、『鈴木エイト氏 旧統一教会への解散命令めぐる岸田首相の慎重論に疑問「今の姿勢で本当に救えるのか」』という記事のとおり宗教法人法を巡る岸田総理の見解に疑問を示していました。

岸田総理は10月6日の参院本会議で、教団の問題について宗教法人法に基づく解散命令請求について問われ、「信教の自由を保障する観点から、判例も踏まえて慎重に判断する必要がある」とし、「宗教団体に法令からの逸脱行為があれば厳正に対処する」と述べています。

この答弁について鈴木さんは、元2世信者の小川さんの理路整然とした訴えと比較しながら「岸田総理は信教の自由は保障すると。実際、解散命令が出てたとしても、信教の自由は侵害されないんですよ。そのあたりも含めて、岸田さんの答弁がかなり煮え切らない感じで。困っている人、現在苦しんでいる人を岸田さんの今の姿勢で本当に救えるのかな?というのは、国民みんなが思っていると思います」と指摘しています。

旧統一教会の解散請求 全国弁連の要請への対応は明言避ける 文科相』の報道のとおり政府の動きは鈍いままです。宗教法人法は「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」があった場合などに、裁判所が所轄庁などの請求を受けて宗教法人の解散を命令できると定めています。

「慎重に判断する必要がある」という点はそのとおりですが、宗教法人の解散命令は過去に2例あります。『「河野vs萩生田」バトル勃発寸前!旧統一教会の解散請求命令めぐり“てんでに”思惑渦巻く』の記事の中で、所轄庁である文科省(文化庁宗務課)が1995年にオウム真理教、2002年に明覚寺に対して発出していたことを伝えています。

オウム真理教の反社会性は説明するまでもありませんが、明覚寺は霊感商法等の問題性が理由でした。1999年に和歌山県の明覚寺代表らが霊視商法によって詐欺罪で有罪になっていました。しかしながら旧統一教会は役員が立件されていないため、文化庁宗務課は「請求基準に照らすと難しい」という見解を示しています。

10月4日に開かれた消費者庁の「霊感商法等への対策検討会」の第6回会合では、メンバーから「これまで消極的だった文科省に猛省を促したい」「消費者庁が関与すべきだ」「質問権を行使するなど、まずは調査に乗り出すべきだ」など文科省への厳しい意見が相次いでいました。「宗教法人」というブランドを失うのは旧統一教会にとって大打撃で、税優遇もなくなり、弱体化は必至です。

鈴木エイトさんは「統一教会が最も危惧しているのが解散命令です。国会議員と関係を築いてきたのも、解散命令に至らないように動いてもらうためです。実際、関係の深い萩生田政調会長は、国会召集前日のNHK日曜討論で解散命令に難色を示しています」と解説しています。

日曜討論で萩生田会長は「この20年間、霊感商法について被害がないと認識していた」と釈明する一方で、解散命令については「難しい」と踏み込んだ発言を行なっていました。岸田総理らは「社会的に問題が指摘されている団体である」と認識していながらも、解散命令は信教の自由を持ち出して消極的な姿勢を貫いています。

しかし、解散命令が出ても任意団体として宗教活動は続けられ、信教の自由を奪う訳ではありません。ちなみに鈴木エイトさんは「私は旧統一教会に解散命令が出されるべきだと思っています。被害は数千億円規模に及んでいますから当然、命令の対象になり得ます」と明確に語っています。

7月末に投稿した多面的な情報を拡散する場として」の中では、下村文科大臣の時に名称変更が認められた経緯についての説明不足の不可解さを取り上げていました。解散命令に二の足を踏む姿勢をはじめ、このような自民党政治家の不可解さに対し、鈴木エイトさんは次のような見方を示しています。

首根っこをつかまれている国会議員が解散命令に前向きな姿勢を示せば、統一教会はその議員が困る情報をリークする可能性があります。各議員が解散命令についてどういう立場に立つのか、注視したい。解散命令に慎重な文科省や政治家は、なぜ統一教会が対象にならないのか、説明する必要があります。

上記のような見方は憶測も混じっているものですが、山際経済再生担当大臣の説明の不誠実さや迷走ぶりを目の当たりにすると鈴木エイトさんの見方の信憑性も増していくように思っています。もともと山際大臣の場合、閣僚としての資質を厳しく問わざるを得ない言動がありました。

参院選挙の応援演説での「野党の人からくる話はわれわれ政府は何一つ聞かない」という発言には心底失望していました。この発言に対して山際大臣は参院代表質問で「趣旨が明確に伝わらず」と釈明しながら野党議員に謝罪したようですが、趣旨云々の話ではないように思っています。

次に紹介する記事にも鈴木エイトさんが登場します。「ミヤネ屋」世耕氏に反論で「一瞬で論破」と話題 鈴木エイト氏が“一人もいません”発言に鋭い指摘』という記事で「旧統一教会と自民党」というタイトルを付けた関係上、興味深い内容ですので全文をそのまま紹介します。

前日の参院本会議での世耕弘成参院幹事長が「多額の献金等を強いてきたこの団体の教義に賛同する我が党議員は一人もいません」と旧統一教会との関係性を改めて否定した発言を報道。リモート出演していたジャーナリストの鈴木エイト氏が即座に否定し、ネット上で話題になっている。

世耕氏は6日の参院本会議で代表質問に立ち、「(旧統一教会は)『日本人は贖罪を続けよ』として多額の献金等を強いてきた」とし、「この団体の教義に賛同するわが党議員は一人もいません」と断言。

さらに「教団等が主張する一部の政策がたまたまわが党議員の政策と同一だったことはあるかもしれませんが、一宗教団体が政策決定に影響を与えることはありえません」と語っていた。

番組ではMCの宮根誠司が「『一宗教団体が政策決定に影響を与えることはありえません』、これが世耕さんの一番言いたかったことだと思う」と指摘。一方、リモート出演していた鈴木氏に「井上(義行)議員は“賛同会員だ”っておっしゃってましたよね?」と半笑いで話を振った。

教団との関係が最も濃い一人とされている自民党の井上義行参院議員は、8月3日に発表した文書で、「信徒ではなく、私の政策に賛同を得られたことから、一般的に『賛同会員』と呼ばれている」と公表。一方、同月31日に会員を退会したことも発表していた。

宮根の振りに対し鈴木氏は「少なくとも一人は賛同していたわけですよね」と賛同。また、「世耕さんのおっしゃることももっともだと思うんですけど、『その通り』という感想も持てるんですけど」とある種では支持できるとしながらも、「ではなぜそんな教団とこれだけ多くの政治家がコミットしてきたのか、それがポイントですよね」と苦言を呈していた。

たいへん長いブログ記事となっていますので全文は紹介できませんが、塚田穂高氏が語る 政治と宗教の関わり方「大票田は誤解。政策の浸透は甘く見てはいけない」』という記事も興味深い内容を伝えています。政教問題やカルト問題などの研究に取り組む上越教育大大学院准教授の塚田穂高さんが次のような見方を示しています。

大なり小なりはありますが、共通するのは教義を広めたい、教えに立脚して理想世界を実現したいというモチベーションです。並行して、社会的に認められた証しとしてのステータスを求める。目に見える成果を欲する。信徒獲得や施設拡充といった教勢拡大もそうですが、一環として政治家との付き合いや選挙活動が使われてきた。

宗教に限らず、社会運動というものは何かしらの結果を出し続けなければ継続できません。創価学会2代目の戸田城聖会長は選挙について「信心をしめるために使える」と言っていました。統一教会の場合は組織防衛の目的も重なり、与党の国会議員を手なずけ、権力に食い込み、政治力を手にしようとした。その点が特徴的と言えます。

繰り返し強調しなければなりませんが、旧統一教会と自民党政治家が歪な関係性を築き、政治的な意思決定が歪められてきたのかどうか決め付けることはできません。隠し続けなければならない実態が白日のもとにさらされることを警戒し、解散命令に及び腰なのではないかという見方も憶測でしかありません。

しかし、次のような経緯は明白な事実であり、長く政権与党を担っている自民党が率先して真摯に反省すべき点だろうと思っています。7月に投稿した記事参院選が終わり、見えてきたこと」の中で記していましたが、全国霊感商法対策弁護士連絡会が安倍元総理をはじめとする自民党の政治家に旧統一教会との親密な関係に警鐘を鳴らしていました。

「政治家として配慮いただきたい、ということを繰り返しお願いしてきた」安倍元総理の銃撃事件、旧統一教会の記者会見を受け、全国霊感商法対策弁護士連絡会が声明』という記事の中で、弁護士連絡会の山口広事務局長が自民党側に次のような実情の問題性について繰り返し訴えてきたことを伝えています。

私どもとしては安倍晋三先生にも、他の政治家に対しても、何回も統一教会の社会悪を考えたら、反社会的団体である統一教会にエールを送るような、そういう行為は止めていただきたいと。どんなに被害者が悲しむのか、苦しむのか、絶望するのか。しかも、新しい被害者がそれによって生み出されかねないということについて、政治家として配慮いただきたい、ということを繰り返しお願いしてきた。

しかし、残念ながら反共ということに共感を持つ議員の方々、あるいは統一教会のお金が最初は目的だったかもしれない。今回の選挙でも、あるいはその前の選挙でも特定の自民党の候補者を組織推薦候補として応援をし、信者組織の動員をかけてやってきたことを私どもは事実として認識している。

それにも関わらず、明確な峻別をはかっていなかったことの政治責任は極めて重かったものと考えています。このような抗議があること、旧統一教会との関係性の問題などを党内で周知や注意喚起をはかれていなかったことは自民党という組織のガバナンスも欠けていたものと思っています。

与野党問わず、多くの政治家が旧統一教会の現状に対する認識や問題意識を欠落させていたようです。民意を背にした政治家という重責を担う立場であれば旧統一教会の問題に対して敏感であって欲しかったものと思っています。いずれにしても過去は変えられませんので、2世信者だった小川さゆりさんらの切実な声を受けとめた政治が今後実現していくことを強く望んでいます。

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2022年10月 9日 (日)

時事の話題から思うこと、2022年秋

前回記事「安倍元総理の国葬 Part2」の中で、いろいろな「答え」を認め合いいがみ合わないことの大切さを当ブログを通して訴え続けている点について記していました。自分自身の「答え」が正解であり、相手の「答え」が間違いだと考えると、交わす言葉も激しくなりがちです。

自分自身の「答え」が正しいと信じるのであれば、異なる「答え」を持つ方々にも届く言葉を探していかなければなりません。対立の果てに生じかねない物理的な力による応酬は絶対避けるべきものであり、言葉を競い合っていくことが不可欠です。

対立の果ての絶対許されない行為として殺人、テロ、戦争という非日常の事態につながる恐れがあることも絵空事ではありません。そのためにも立場や考え方を異にする方々に対しても敬意を忘れないことが肝要なのではないでしょうか。

このような点について前回記事の中で記していましたが、少し補足する必要があることを思い起こしています。今回の記事では様々な時事の話題を紹介しながら前回記事の補足につながる内容として、私自身が思うことを書き進めさせていただきます。

まず「怒ってる…真剣な表情初めて見た」炎上続く太田光の旧統一教会発言、デーブ・スペクターの追及に賞賛相次ぐ』という見出しの記事です。爆笑問題の太田さんの発言は旧統一教会を結果的に擁護しているという批判に対し、太田さん本人の言い分や批判されている理由が綴られています。

太田さんの言い分は旧統一教会側の意見を代弁している訳ではなく、旧統一教会側の主張も含めて「両方報道するべきだって僕は思ってて」というものです。番組に出演していたデーブ・スペクターさんは太田さんの言い分に対して次のように反論しています。

でも太田さん。もう毎週同じことを言って恐縮なんですけど、やっぱり公平も白黒もないんですよ、この場合は。50年前も有田さん言ってるように、説得するための大変さとか、現場は知ってる人と違うんです。太田さん忙しいからあんまりテレビとかみんなのツイートとか読んでないかもしれないけど、昨日の報道特集見ました?

TBSの報道特集で取り上げられていた息子を脱会させようとする父親の姿を語りながら「このつらいもの見れば、太田さんが少しでも今までのような言い方しないんですよ」と声を荒らげ、デーブさんは旧統一教会の問題を生半可な知識で「両方報道するべき」と語る太田さんの軽率さをたしなめていました。

番組では、2ちゃんねる開設者の「ひろゆき」こと西村博之氏が「『ひるおび!』と『ミヤネ屋』(日本テレビ系)が統一教会に訴えられて、なんで『サンジャポ』が訴えられてないの? それは統一教会にとって、そのまま続けてほしいからだと思うんですね、太田さんが今のやり方をずっと続けてくれるのは、統一教会にとってはすごくラッキーなんだと思う」と指摘した。

上記は『爆笑問題・太田光、改めて「旧統一教会寄り」を否定も…教団が「信頼できる人」として信者に紹介』の中で伝えている話です。太田さん本人が関係性を否定しても、旧統一教会側は太田さんに歓迎すべき「広告塔」の役割を負わしているようです。『爆笑問題・太田が統一教会の御用芸人になった理由が判明。有田芳生氏も困惑、サンジャポで自白した「ウソと屁理屈の発信源」とは?』の中では次のような記述があります。

「テレビは白か黒かにしたがる」「統一教会問題は白か黒かでは語れない」といった発言と恐ろしいほどに一致する。部分的に見れば、善悪二元論に危険性が潜んでいるのは事実だ。この世界は白か黒か、善か悪かで推し量れるほど単純なものではないだろう。だが米本氏も、それに心酔する太田も、統一教会の教義こそ危険な二元論の典型であるという根本の問題から目を逸らしているようでは片手落ちだ。

カルト宗教問題を扱うジャーナリストの米本和広さんは、ある時点から旧統一教会側に取り込まれて「統一教会の御用ライター」に成り下がっていると見られている人物です。ちなみに「片手落ち」は差別用語でありませんが、なるべく使わないほうが望ましい言葉であることについては留意しています。

他のサイトの紹介が長くなりましたが、より望ましい「答え」を見出すためには多面的な情報に接していくことが重要であり、いろいろな「答え」を認め合っていくことが欠かせないという考え方は大きく変わりません。ただ明らかに問題がある「答え」に対しても、正しさが含まれているかも知れないと認め合う考え方ではありません。

主張や意見が対立した際、立場性や評価の相違によって生じている場合などは「そのような見方もあるのか」という視点の切り替えが必要だと思っています。しかし、相手側には相手側の理屈があったとしても、明らかに正しさが認められない「答え」に対しては毅然と相手側の誤りを指摘していかなければなりません。

したがって、相手側の主張も含めて「両方報道するべき」という太田さんの言い分は一般論として大切な発想ですが、今回のような旧統一教会の問題に照らした場合は出演者から強く批判されても仕方ない言動だったものと思っています。

明らかに問題がある事例として、違法行為はもちろん、誹謗中傷もその一つだと考えています。以前「批判意見と誹謗中傷の違い」という記事を投稿していました。いくつか他の記事でも取り上げていましたが、事実誤認のまま断定調の批判だった場合、誹謗中傷に当たるものと考えています。

玉川徹氏、菅前首相の弔辞に「電通」発言で全面謝罪も止まぬ批判、テレビ朝日内もザワつく“玉川発言”が犯した「3つの過ち」』という記事のとおり菅前総理の弔辞に対し、玉川さんの電通の関与を決め付けた批判が物議を醸していました。前回記事の中でも記したとおり玉川さん自身が自分の勇み足や思慮不足を猛省しなければなりません。

断定調ではなく、もう少し婉曲な言い方であれば、ここまで叩かれなかったかも知れません。ただ『玉川徹が処分されるなら貴方たちは? 玉川を攻撃する橋下徹、三浦瑠麗、ほんこんのもっと悪質なデマを垂れ流した過去』『玉川徹氏〝舌禍〟を国会追及の動き 江川紹子氏は苦言「BPOに申し立てればよい」』というような見方があることも紹介します。

権力者にとって都合の良い事実誤認の発言は大きな問題に至らず、権力者や政治家を批判した時に事実誤認があった場合、謝罪しても許されず、過度な処分が下されるようでは問題です。当たり前なこととして誹謗中傷は認められませんが、今後、権力側を批判する時の舌鋒が鈍くなる転機にならないよう願っています。

いろいろな「答え」を認め合い、立場の違いを乗り越えていく必要性は外交の場でこそ発揮していくことが求められています。最近のトピックとして、朝日新聞の記者だった鮫島浩さんの『宇宙空間を飛んでいく北朝鮮ミサイルに大騒ぎする日本政府とマスコミへの既視感』という記事に目を留めています。

その記事からも読み取れる安全保障に関わる考え方ですが、脅威とは「能力」と「意思」の掛け算で決まると言われています。核ミサイルが日本国内に落とされた時の備えよりも、撃たせないための外交努力に力を注ぎ、相手側の「意思」を取り除くことが脅威を解消していくための最も重要な道筋だろうと思っています。そのためには相手側の言い分に耳を貸すという姿勢も欠かせないはずです。

しかし、ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、いかにロシア側にはロシア側の言い分があろうとも明らかな誤りであり、戦争状態に至っている中で耳を貸すことが難しくなっています。侵略戦争の結果を受け入れるような外交交渉は、これまで培ってきた国際社会の規範が蔑ろにされる既成事実化につながりかねません。軍事侵攻前と後では局面が大きく変わっています。

このような意味合いを考えた時、『鈴木宗男氏、広島・長崎例にウクライナに停戦求める ネット「攻めてるのはロシア」』『鈴木宗男氏 マスク氏の“ロシア寄り”和平案に「世界中から停戦に向けた動きが出ていることを歓迎」』という報道を目にすると、日本維新の会の鈴木宗男参院議員のロシア寄りの姿勢にはいつも驚かされます。

最後に、冒頭で「対立の果ての絶対許されない行為として殺人、テロ、戦争という非日常の事態につながる恐れがあることも絵空事ではありません」と記しています。このような悲劇に至る前の段階で、いろいろな「答え」を認め合い、いがみ合わない関係性を重視しながら言葉を競い合っていくことが極めて大切なことだろうと思っています。

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2022年10月 1日 (土)

安倍元総理の国葬 Part2

火曜日、安倍元総理の国葬が執り行なわれた日の夜、自治労都本部の中央委員会が開かれていました。中央委員会の議長は各単組の委員長が持ち回りで務めています。今回、私が依頼され、最後の役目としてその任を引き受けていました。

議事は滞りなく進み、執行部の提案した議案はすべて承認を得ています。議長退任の挨拶の際、11月11日の定期大会をもって、青年婦人部の幹事時代から数えると40年ほど務めてきた組合役員を退任することも申し添えています。

自治労運動を通し、たいへん貴重な経験や交流をはかれてきたことの感謝の言葉とともに時節柄、率直に思うことを一言付け加えています。安倍元総理の国葬にあたり、岸田総理は「丁寧な説明をする」と表明してきましたが、言葉だけ丁寧に同じ内容を繰り返すことが丁寧な説明ではありません。

組合の活動も同様です。組合員の皆さん、さらに組合に加入されていない皆さんに向け、結論の押し付けではない「なぜ、この取り組みが必要なのか」という共感を得られるための丁寧な説明を常に意識していかなければ自治労運動の広がりも難しくなります。

私自身、組合役員を退任しますが、これからも一組合員として、OBの一人として自治労運動を下支えしていければと考えています。今回、多くの皆さんに挨拶できる貴重な機会を得られていましたので、このような言葉を中央委員会議長退任時の挨拶に添えさせていただきました。

中央委員会が終わった後、名刺交換した自治労都本部の副委員長から熱い言葉で「ブログをずっと見ています」とお声かけいただきました。最近のアクセス数は以前に比べると減っていますが、このような言葉に触れられることがブログを続けていくことの大きな励みにつながっています。

さて、前回記事が「安倍元総理の国葬」でした。今回の記事タイトルは少し迷いましたが、結局のところ「Part2」として書き進めています。安倍元総理の国葬後、様々な報道や論評を目にしています。興味深い記事を紹介しながら私自身の思うことを書き添えていきますが、前回記事でも触れた「社会の分断」という言葉を軸にした内容となります。

まず『国葬じゃなかった? 後継者争いのアピール? 専門家2人どう見た』という見出しの記事です。日本武道館近くの一般向けの献花台には2万人以上が訪れた一方、反対する集会が各地で開かれ、会場周辺でデモ行進があったことを伝えた上、日本近代史を専攻している中央大学の宮間純一教授の言葉を紹介しています。

国民が分断している状況が目に見えるような形で表現されたのは、日本の国葬の歴史では初めてでした。国葬は本来、国民を一つにまとめようとする性格を持っているのに、逆に分断を招いてしまいました。

政府は判断の責任を負いたくないから、あいまいにした。その結果、国葬の体裁をなさなくなった。国民に丸投げ状態で、踏み絵を踏まされるような自己責任の催しとなりました。

「一つの価値観を押し付けないでくれ」という考えを持つ人がたくさん出てきた。自由主義が尊重されている健全な社会だということを皮肉にもあらわした。全体主義の国家や戦前の日本のような天皇制国家だと国葬は機能しますが、今の日本で、ただ対立を生んだだけのイベントでした。

開催を巡り国論が二分される中、宮間教授は「今回のは国葬じゃなかったと思います。自由参加にしかできない中で断行した結果、ただの内輪で集まっているお別れ会のようだった」と評していました。

この男はまだ枯れていない…菅義前首相の大絶賛の「弔辞」に見え隠れした「言外のアピール」』という記事のとおり菅前総理の弔辞も注目を集めました。『「電通発言」で全面謝罪の玉川徹氏  政治記者は「これまでの失言よりはるかに問題」』という一件は、玉川さん自身が自分の勇み足や思慮不足を猛省しなければなりません。

ただ『ウーマン村本大輔、菅義偉前首相の国葬のスピーチに「原爆の日のスピーチは読み飛ばししたよね」』という記事もあるとおり菅前総理のそれまでの発言の数々を思い浮かべると、他者の関与を決め付けてしまった玉川さんの見方も分かる気がします。ちなみに村本さんは次のようにツイッターで語っていました。

あなたの安倍さんへのスピーチは素晴らしい。でもね。広島の原爆の日のスピーチは読み飛ばししたよね? あなたは自分が好きな人には心込める。だけど広島への想いは読み飛ばしする。大好きな安倍さんへのスピーチは心がある。あなたは政治家、この国に住んでるみんなに心を持ってほしい。

国葬めぐる「サイレント・マジョリティー議論」の空虚、「賛成か反対か」本当の静かなる多数派は誰なのか』という報道もあり、前述した「社会の分断」という傾向を懸念しています。3年前のブログ記事「最近の安倍首相の言動から思うこと」などを通して記してきたことですが、安倍元総理ほど極端に評価の分かれる政治家は稀だったように思っています。

改めて言葉の重さ」という記事の中では、人によってドレスの色が変わる話を紹介していました。ドレスの色が白と金に見えるのか、黒と青に見えるのか、人によって変わるという例示は、安倍元総理の評価や見方が人によって本当に大きく変わりがちな傾向と重ね合わせていました。

【“安倍政治”の功と罪】ジャーナリスト斎藤貴男「日本社会を根底から腐らせた」』『私が安倍元総理の国葬に反対する理由…「嘘が通る社会」をつくったのは誰か(三枝成彰)』という記事内容からは安倍元総理に関わる問題点が伝わり、まったく国葬に値しない政治家だったものと考えがちです。

一方で『【激論】高橋洋一VS古賀茂明 「安倍国葬問題」は岸田政権に“とどめ”を刺してしまうのか?』『【国葬前日・緊急続編】国葬賛成の月刊『Hanada』編集長の論理を、リベラル派ジャーナリストが問う【花田×斎藤 左右ガチンコ対談】』という記事からは、国葬を推奨する立場の方々の考え方に触れていくことができます。

より望ましい「答え」を見出すためには、多面的な情報に接していくことの重要さを訴え続けています。それでもお互いの主張が真っ向から対立したまま歩み寄れない場面も数多く生じていくはずです。自分自身の「答え」が正解であり、相手の「答え」が間違いだと考えると、交わす言葉も激しくなりがちです。

しかし、いろいろな「答え」を認め合いいがみ合わないことの大切さも当ブログを通して訴え続けている点です。完璧に実践できているかどうか分かりませんが、自分自身が綴る文章に関しては、基本的な考え方や視点の異なる立場の方々から感情的な反発を招かないように言葉や記述の仕方にいつも注意しています。

安倍元総理の言動を批判する時も、「批判ありき」や「批判のための批判」だと見なされるような書き方にはならないように心がけてきました。コメント投稿の際、皆さんにお願いしている関係上、私自身が率先垂範するためにも誹謗中傷の類いとなる言葉を使わないように注意してきました。

例えば「精神的自由と経済的自由」という記事の中で、安倍元総理の言動について次のように論評しています。ちなみに蛇足ですが、このブログの中で以前は総理でなく、首相という呼称を使っていました。

安倍首相は「(出演した報道番組の中で)私の考えをそこで述べるのは、まさに言論の自由だ」と言い切っています。この件で国会質問を受けた際、安倍首相は「番組の人たちは、それぐらいで萎縮してしまう。そんな人たちなんですか? 情けないですね」という反論を加えています。

表現の自由や言論の自由は国民に与えられている権利であり、権力者である安倍首相はそれらの権利を保障させていかなければならない立場です。安倍首相も国民の一人ですから「私にも言論の自由がある」という主張も分からない訳ではありませんが、自分自身が権力者であるという理解不足を露呈させているように見受けられてしまいます。

自分自身の「答え」が正しいと信じるのであれば、異なる「答え」を持つ方々にも届く言葉を探していかなければなりません。対立の果てに生じかねない物理的な力による応酬は絶対避けるべきものであり、言葉を競い合っていくことが不可欠です。そのためにも立場や考え方を異にする方々に対しても敬意を忘れないことが肝要なのではないでしょうか。

このようなことを考えていくと「社会の分断」が対立を招きがちな傾向を非常に憂慮しています。安倍元総理の国葬に対して賛否が大きく割れたことは確かであり、将来的な国葬のあり方について一つの「答え」を見出していく機会としなければならないのかも知れません。

しかし、そのような議論が「社会の分断」をさらに加速させるようなことだけは避けなければならないはずです。自民党の中でも穏健な派閥を継ぐ岸田総理には今回の問題を教訓化し、くれぐれも「社会の分断」を広げるような政治手法には自制的であって欲しいものと願っています。

最後に国葬反対派と対話したい」と呼びかけに応じて…花田紀凱、小川栄太郎両氏と対談した』という記事を紹介します。その中で、次のような言葉が印象深く、今回の記事を通して綴ってきた私自身の問題意識につながる考え方だと思っています。

歩み寄りなんかできなくたっていい。無理に妥協点を見いだす必要もない。一度でも会って話をすれば、そう簡単には相手を罵倒したり、せせら笑ったりしにくくなる。今の世の中、それだけでも素晴らしくはないか。切り裂かれてしまった社会が、一歩ずつでも包摂されていくような気がしてくる。そうならなければ嘘だ。

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