会計年度任用職員の雇用継続に向けて
前回記事は「多面的な情報を拡散する場として」というタイトルを付け、主に旧統一教会の問題を取り上げていました。今回は私どもの組合が現在、最も力を注いでいる会計年度任用職員の雇用継続の課題を取り上げます。少し前に「不安定雇用の会計年度任用職員」という記事を投稿していました。
その中では『「国によるパワハラ」3年に1度失職するハローワーク職員の憂うつ』というFRIDAYデジタルに掲げられていた記事を紹介しています。前回記事に示したとおり自分自身が目に留めた興味深い情報の拡散です。ハローワークの非常勤職員は「契約の更新は毎年あるが、3年が上限と決められているため、それ以降は公募に挑戦しなければならない」という不安定雇用にさらされています。
私どもの自治体の非常勤職員に位置付けられる会計年度任用職員も同様な不安を抱えています。さらに会計年度任用職員制度が施行される前と後に比べて、明らかに雇用継続の面では後退しているという非常に悩ましく、理不尽な事態を強いられています。
労使交渉の経緯等は後述のとおりですが、何としても組合要求を実現させなければならない局面だと考えています。8月中旬には定年延長に伴う議題での団体交渉が予定されています。その場でも会計年度任用職員の雇用継続に向けて組合の問題意識を改めて訴えたいと考えています。
事務レベルの労使協議課題の枠にとどめず、市長や副市長らにも問題意識の共有化を働きかけ、私どもの市としての自主的な判断に向けた道筋を見出せるよう力を尽くさなければなりません。その際の参考資料として活用するため、下記の内容の「会計年度任用職員の雇用継続に向けた組合の考え方」という文書を執行委員会で確認しています。
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1 これまでの労使交渉の経緯
①2020年4月から会計年度任用職員制度がスタートしました。その前年、12月議会に向けた条例案送付直前まで労使交渉を重ね、10月24日に労使合意に至っています。その時点での情勢を鑑み、雇用継続の問題に関しては「公募によらない再度の任用は原則として連続4回」という東京都の示している基準を受け入れています。ただ組合からは「これまでの労使確認事項も尊重していく」という一文を付け加えることを求め、このことについても労使で確認しています。
②恒常的な業務に携わる当市の嘱託職員の場合、労使交渉の積み重ねによって実質的に雇用年限による雇い止めを見送らせることができていました。高年齢者雇用安定法が改正され、使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められています。このような法改正を追い風とし、嘱託職員の雇用継続も65歳まで担保する労使協議結果を得てきました。
③しかしながら他団体の多くは雇用年限を定めていたため、2019年10月の時点で当市が突出した内容で決着することは困難だと考えました。せめて「これまでの労使確認事項も尊重していく」という一文を入れることで、会計年度任用職員の65歳までの雇用継続が引き続き課題として残っているという問題意識を託していました。
④このような問題意識は残念ながら労使で隔たりがあります。市当局は5年に1回、現職者と新規採用希望者が競合する公募による採用試験を予定し、このことについて組合も合意しているという認識です。確かに改めて労使協議を提起しなければ、その内容で公募試験に進んでいくことを組合も合意しています。しかし、組合は上記のような問題意識を持ちながら合意したという認識であり、5年先の公募試験実施までに「これまでの労使確認事項も尊重した」雇用継続のあり方を改めて協議すべきものと考えています。
⑤そもそも選考において公募を行なうことが法律上必須とされていません。会計年度任用職員制度に移行してから3年度目の中盤を迎えています。数は多くありませんが、狛江市や板橋区など自主的な判断のもと公募によらない再度の任用の上限回数を定めない団体も見受けられています。6月19日の杉並区長選で当選した新区長の公約には「会計年度任用職員の待遇改善」が掲げられ、公募によらない再度の任用の上限回数を見直す動きも新たに見込まれています。
⑥内閣人事局は7月27日に期間業務職員の適切な採用についての考え方を各府省に通知しています。原則上の上限とされる2回、公募によらない採用をされている期間業務職員でも「能力の実証を面接及び期間業務職員としての従前の勤務実績に基づき行なうことができる場合」には公募によらない再度任用が可能であると規定していることを周知しています。
⑦10月からは地方公務員共済組合法の改正により、大半の会計年度任用職員が共済組合の組合員として短期給付・福祉事業を受けられるようになります。正規雇用以外の多様な働き方の拡大に伴い、短時間労働者に対する処遇改善が社会的な流れとなっています。その流れのもとの改正であり、ますます会計年度任用職員の雇用の安定化が欠かせない課題とされています。
⑧以上のような経緯や問題意識を踏まえ、恒常的な業務を担う会計年度任用職員の雇用継続のあり方について組合としての対応案を市当局に提起しています。その対応案の必要性等に関しては次項のとおりです。
2 組合としての対応案
【組合の対応案】
人事評価による再度の任用は原則として連続4回とする。現職者の培ってきた業務に対する知識や経験を重視し、5回目に際しては引き続き任用を希望する現職者を対象とした選考試験を実施する。選考方法は面接試験とする。欠員が生じる場合などは新規採用希望者を別途募る。その際は広報等を通じて募集する。
①言うまでもありませんが、法的に問題があるようであれば要求すること自体控えなければなりません。法的に問題がなかったとしても住民の皆さんから理解を得られず、社会通念上、問題があるような要求も自制していかなければなりません。しかし、他団体の事例や国の通知等が示しているとおり一切問題のない組合要求だと言えます。
②法改正時の国会の附帯決議が公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求めています。この趣旨を尊重するのであれば、新規採用された常勤職員は65歳までの雇用が保障されているのにも関わらず、会計年度任用職員は5年に1回、公募試験を強いられる不合理さは解消すべきものと考えています。
③国会の附帯決議では「会計年度任用職員への移行に当たっては、不利益が生じることなく適正な勤務条件の確保」も求めています。この趣旨に照らした時も、著しく不安定な雇用に移行した問題は附帯決議から大きく逸脱した現状だと言わざるを得ません。
④市当局側も培ってきた知識と経験を重視しているため現職者には「アドバンテージがある」という見方を示しています。いずれにしても業務に熟知した職員が継続的安定的に携わっていくことは住民サービスの維持向上に直結していきます。さらに新規採用者に仕事を教えていく負担が軽減されていく利点もあります。
⑤このような経緯や利点を踏まえた際、5年に1回、現職者と新規採用希望者を競合させることが適切なのかどうか組合は疑問視しています。新規採用希望者と現職者が同じスタートラインに着いていないという見られ方もされかねません。
⑥大規模な競争試験を実施するコストや職員の負担等も考慮すべき点だろうと考えています。二度手間になるという見方もあるのかも知れませんが、所属長を中心にした面接を中心に実施するのであればそのような懸念は拭えるものと考えています。
⑦このまま不安定な雇用だった場合、有為な人材の流失を懸念しなければなりません。万が一、当該職場の職員全員が入れ替わるという事態に至るようであれば、その混乱の大きさははかり知れません。その一方で、65歳までの安定した雇用のあり方が確立できれば人材確保の面で他団体に比べて優位に立てることになります。当事者である会計年度任用職員の皆さんからは市政に対する信頼感が高まり、一人一人の士気も高まる英断となるはずです。
⑧仮に業務遂行上、指摘すべき点があった場合は常勤職員との向き合い方と同様、人材育成の面から補うことが雇用主の責務であるはずです。ぜひ、行政が率先して雇用の重さや大切さをアピールする機会にすべきものと考えています。
⑨このようにメリットしか考えられない運用の見直しに対し、住民の皆さんから批判を受けるとは考えられません。かえって当市の雇用に対する誠実な姿勢や合理的な判断は高く評価されるのではないでしょうか。
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少し前の記事「市議選と参院選に向けて」 「間近に迫った市議選と参院選」でお伝えしたとおり6月に市議会議員選挙が行なわれました。私どもの組合の元委員長が市議を7期務めた後、4年前に勇退されています。 今回、新たに推薦関係を結ばせていただいた候補者が当選されたことで、4年ぶりに市議の方と緊密な連携をはかれるようになっています。
組合員の皆さんに対し、このような推薦関係が日常の組合活動に寄与していくことを『組合ニュース』等を通して機会あるごとに伝えていかなければなりません。先日発行した『組合ニュース』で会計年度任用職員の雇用継続の課題解決に向け、組合執行部が推薦市議の方と情報交換していることを報告しています。
5年ごとに競争試験を強いられる不合理さなどを共通認識し、積み重ねてきた労使交渉の成果である65歳までの安定した雇用の確保を実現できるよう市議会の場での奮闘に期待していることを『組合ニュース』に掲げています。今回のブログ記事で取り上げている組合の動きも推薦市議の方に伝えた上、よりいっそう連携を強めています。
紹介した参考資料の最後に「メリットしか考えられない運用の見直しに対し、住民の皆さんから批判を受けるとは考えられません。かえって当市の雇用に対する誠実な姿勢や合理的な判断は高く評価されるのではないでしょうか」と記しています。だからこそ推薦市議の方には声を大にして会計年度任用職員の雇用継続の問題を訴えていただければと願っています。
最後に、3年前に労使合意した内容を全面的に破棄するような要求は自制しているため、5年に1回の選考試験を受け入れた対応案としています。しかしながら常勤職員との均等待遇を重視し、よりいっそう安定した雇用継続を実現するためには5年に1回の選考試験という枠組みも取り外すほうが望ましいものと考えていることを付け加えさせていただきます。
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