平和への思い、2022年夏 Part2
前回「平和への思い、2022年夏」は記事タイトルと内容とのミスマッチ感があったろうと思っています。そのため最後に次回「Part2」として、この続きを書き進めたいものと予告していました。その際「自分史」的な内容から入る長文となるのか、9月7日の意見交換会を意識した簡潔な内容になるのか分かりませんが…、とも書き添えていました。
昨年11月の定期大会での質疑応答を受け、このブログで「平和や人権問題の組合方針」「平和や人権問題の議論提起」という記事を投稿しています。5月に「議論のたたき台」を職場回覧し、9月7日には組合員全体に呼びかけた意見交換会を開きます。「議論のたたき台」に対し、定期大会で質問された方とやり取りを続けていました。
このやり取りを踏まえ、意見交換会前の8月下旬に論点等を整理した参考資料を職場回覧します。参考資料の取りまとめを私が引き受け、その内容の広げ方について少し迷っていました。結局のところ水曜の夜、執行委員会に示した参考資料に添える私自身の記名原稿は、どらかと言えば簡潔な内容にまとめていました。
職場回覧するタイミングより先になりますが、今回のブログ記事でその内容を掲げさせていただきます。投稿後、明らかな誤りが分かれば補正することも考えています。8月30日付で回覧する資料には「平和や人権に関わる組合方針の確立に向けて(参考資料)」というタイトルを付けています。結局【卒論】という言葉は添えませんでした。
関連資料として、三多摩平和運動センター総会時に提出した『議論の「たたき台」の情報提供について』、機関誌の特集記事『戦後七十年、平和憲法の曲がり角』、フォトストーリー3作、清水雅彦教授(日本体育大学/憲法学)の 『どう考える?「ウクライナ侵攻」「憲法改正」』を添えています。
意見交換会に向け、新たにまとめた資料には「平和や人権に関わる組合方針の確立に向けて ~参考資料の回覧にあたり~」という見出しを付け、私自身の記名原稿としています。今週末の新規記事はその内容の転載が中心となりますので、いろいろ悩んだ前回記事に比べてブログを更新するために費やす作業時間は格段に緩和されています。
加えて今回も「平和への思い、2022年夏 Part2」という記事タイトルとのミスマッチ感があるため、もう少し個人的な思いを書き足すことも考えました。8月15日のNHKスペシャル『ビルマ 絶望の戦場』などを見て「大東亜共栄圏」という言葉の空疎さや不条理さを改めて認識する機会となっています。
他にも平和の築き方に向け、いろいろな思いが頭の中に浮かんでいます。ただ当ブログは毎週1回、これからも週末に更新していきます。そのため、今回は転載資料から話を広げず、あまり労力もかけずに一区切り付けることとします。いろいろな思いについては機会を見て次回以降の新規記事に託せればと考えています。
1 はじめに、組合員の皆さんへ
いつも組合活動へのご理解ご協力ありがとうございます。「平和や人権に関わる組合方針の確立に向けて」という参考資料が職場回覧され、戸惑われたかも知れません。一方で、昨年11月の定期大会以降、この問題に関心を持たれている方も少数ではないものと思っています。
定期大会での質疑応答の際、出席者から平和や人権に関わる方針案について全面的な削除を求める質問が示されていました。その場での採決はなじまなかったため、質問者から提起された問題は今後、しっかり組合員全体できめ細かい議論を交わしていくことを約束していました。
平和に関わる取り組みは日常の組合活動の中に占める割合は多くありません。それでも組合方針として掲げるのであれば、組合員の皆さんから充分な理解や賛同を得られるものでなければなりません。
かえって、そのような方針を掲げていることで組合への結集力の妨げになるようであれば本末転倒な話だろうと思っています。したがって、定期大会での質問を契機に今回、このような議論を重ねられることを貴重な機会だととらえています。
2 フォトストーリーを紹介した理由について
今年3月に発行した機関誌には懐かしい写真で振り返った「フォトヒストリー『組合結成75年』」を掲載していました。よく知った顔ぶれの皆さんの若かりし頃の姿が拝見できる古い写真の数々は好評でした。今回の参考資料には青年婦人部の機関誌「いぶき」に掲載したフォトストーリー3作を添えています。
原爆について取り上げた1983年の『38年後の落とし物』、砂川闘争を背景にした1985年の『明日の風に…』、石坂啓さんの漫画『戦争ってそういうモンじゃない?』をヒントにした1986年の『白い夏が過ぎる頃』というタイトルの3作です。1988年に掲載した『フォトストーリー メモワール』の中では次のような解説を残していました。
反戦反核などの教宣活動に際し、様々な工夫を凝らし分かりやすくニュースを書いたとしても、興味のない人は目も通してくれない現実…。その現実を打ち破る一つの手段として、こちらの言いたいことをストーリーに盛り込み伝える。小説を読む感覚、気軽さで固い教宣課題に接してもらう。
さらに文字ばかりでは取っ付きにくいので、さし絵として写真を入れていく。その写真も幅広い人にキャストとして登場してもらって「あれ、あの人が出ているけど何かな?」と興味を持たせ文章を読んでもらう。そのような効果を狙い写真とストーリーを合体させたフォトストーリー『38年後の落とし物』が誕生したのであった。
幸いにも好意的な声で迎えられ、その後、年1回発行する「いぶき」の恒例企画として続きました。40年近く時が流れ「フォトヒストリー『組合結成75年』」と同様の懐かしさや興味深さとともに回覧する参考資料を手にしてもらえたら幸いだと考えています。やはり堅苦しさだけが前面に出た資料だった場合、まったく見向きもされない現実があることは40年近く前から大きく変わっていないように受けとめています。
なお、現在であればルッキズムと批判されそうな表現も見受けられます。職場での女性職員のお茶くみなど時代の移ろいを感じ取る箇所も散見しています。今回、そのまま転写していますが、当時はそのような時代だったことをご理解ご容赦ください。
ちなみに3作とも私が脚本を担当していました。読み返してみると当時と現在での変化に気付きます。当時は、いわゆる左と右の立ち位置からの二項対立的な図式のもとの表現が目立っていたように感じているところです。今は、誰もが戦争は避けたいと願っている中で、戦争を防ぐための考え方に相違が生じがちな現状であるという認識を強めています。
その上で関連資料の特集記事にあるとおり例えば集団的自衛権を行使できるようになることが日本にとって平和に寄与することなのかどうか、具体的な事例等を示しながら「何が正しいのか、どの選択肢が正しいのか」という論点の提起に心がけています。現在に比べて当時は、そのような認識が薄かったことを思い出しています。
3 議論の「たたき台」の情報提供について
産別単組を問わず、組合員の政治意識の多様化は年々進んでいます。このような問題意識を踏まえ、5月27日の三多摩平和運動センター第24回定期総会の開催にあたり、参考までに私どもの組合員の皆さんに周知した議論の「たたき台」資料をそのまま情報提供していました。他の組合役員の皆さんに対し、これまで通りの方針や活動のあり方で良いのかどうか改めて考える機会にしてほしいものと願いながらの情報提供でした。
このような対応の報告とともに5月に回覧した「第4回職場委員会(延期)参考資料」の中に掲げた議論の「たたき台」は今回の参考資料に添付しています。なお、この「たたき台」をもとに定期大会で質問された方とやり取りを続けてきています。
すでに『組合ニュース』で案内しているとおり組合員の皆さん全体に呼びかけた「平和や人権に関わる組合方針」意見交換会を9月7日に開ききます。昨年の定期大会で示された質疑を踏まえた議論の場です。この意見交換会に向け、今回「平和や人権に関わる組合方針の確立に向けて」という参考資料を職場回覧しています。意見交換会に参加できない方もご意見等がありましたらお気軽に組合までお寄せください。
4 意見交換会に向けた論点の提起について
今回の参考資料には2015年8月に発行した機関誌の特集記事「戦後七十年、平和憲法の曲がり角」も添えています。最終頁には「ウクライナ侵攻」と「憲法改正」について憲法学を専門とされている日本体育大学の清水雅彦教授の考え方も掲げています。それぞれ関連資料の頁は縮小しているため読みづらくて恐縮ですが、お時間等が許される際は全体を通してご覧いただければ幸いです。
ここからは意見交換会に向け、さらに11月11日の第77回定期大会に向けた議案を意識し、「平和や人権に関わる組合方針」議論のための論点を提起します。本来、この提起を通しても、歴史的な背景をはじめ、より詳細な説明を尽くしたいところですが、なるべく簡潔な内容にとどめています。定期大会で質問された方とのやり取りを踏まえ、執行委員会でも確認した内容を中心にお示しします。
★昨年11月の定期大会で確認している現在の組合方針「平和や人権をまもるたたかい」
(1) 武力によって平和は築けないことを普遍的な教訓とし、日本国憲法の平和主義を広める運動を進めます。その流れに逆行するような改憲発議に反対します。
(2) 戦争を前提とした「有事法制」や在日米軍の再編問題などに反対します。また、国民保護計画の策定に対しては慎重な対応をはかります。
(3) 軍事基地に反対し、騒音や墜落の危険がある横田基地や立川基地の撤去をめざします。また、横田基地に配備されているオスプレイの撤去を求めていきます。
(4) 核兵器の廃絶を願い、反核運動を推進し、原水禁大会などに参加します。また、核兵器禁止条約への日本政府の署名・批准を求めていきます。
(5) 沖縄平和行進など、平和フォーラムや自治労が呼びかける行動や集会に参加します。
(6) 砂川闘争の歴史を継承するため、平和資料館の建設などをめざします。当面は学習館内にある地域歴史と文化の資料コーナーの充実を求めます。
(7) 天皇制の政治利用に反対します。
(8) 国民の間で賛否が分かれている「日の丸」「君が代」の強制に反対します。
(9) 戦争を円滑に進める役割を負わされてきた靖国神社へ閣僚などが参拝することに反対します。
(10) 戦時性暴力や強制労働、地元立川などの空襲、沖縄戦における集団自決など、戦争がもたらす被害や悲劇を継承する取り組みを強めます。
(11)人権、思想、信教、言論の自由が尊重される社会の実現をめざします。また、性差別、部落差別、外国人差別など、あらゆる差別に反対します。
(12) 組合が平和運動などに取り組む意義を組合員へ丁寧に周知し、問題意識を共有化した活動に努めます。
上記の組合方針「平和や人権をまもるたたかい」の箇条書きに沿った論点整理ではなく、具体的な事項に対し、組合執行部の考え方を総括的に提起していきます。すでに「たたき台」等で示している見解と重なっているかも知れませんが、重要な点については改めて説明を繰り返させていただいています。
①組合が平和や人権に関わる方針を掲げることについて
労働組合の本務が「労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図る」ことであることは間違いありません。一方で、「たたき台」等にも掲げているとおり次のような立場で政治的な活動にも関わっています。
「組合員のため」を主目的とした組合活動も、職場内の閉じた活動だけでは結果としてその目的が達成できない恐れもあります。加えて、自分たちの職場だけ働きやすくても、社会全体が平和で豊かでなければ、暮らしやすい生活とは言えません。
そのため、企業内の交渉だけでは到底解決できない社会的・政治的な問題に対し、多くの組合が集まって政府などへ大きな声を上げていくことも昔から重要な組合運動の領域となっています。このような背景があり、自治労や平和フォーラムに結集し、組合は平和の課題や一定の政治的な活動にも取り組んでいます。
労働組合が政治課題に力点を置き過ぎて、職場課題をおろそかにするようであれば論外な話です。労働組合法等に位置付けられた労働組合の活動が主客逆転しているような現状であれば違法性について懸念しなければなりません。しかし、私どもの組合は職場課題を最優先に注力し、そのような懸念からは程遠いことを強調させていただきます。
②憲法9条を守れば平和が築けるのか?
憲法9条さえ守れば平和が続くという短絡的な考えではありません。守るべきものは日本国憲法の平和主義の効用です。組合は抑止力そのものを否定していません。しかしながら安全保障のジレンマという言葉があるとおり武力一辺倒によって平和は築けないことを普遍的な教訓とすべきものと考えています。厳しい情勢だからこそ国連憲章の前文に相通じる日本国憲法の平和主義を理想として掲げ続けることを重視しています。
日本国憲法の平和主義の大きな柱は専守防衛です。大地震や感染症など自然界の脅威は人間の「意思」で抑え込めません。しかし、戦争は権力者の「意思」や国民の熱狂によって引き起こされるため、人間の「意思」によって抑えることができるはずです。
さらに脅威とは「能力」と「意思」の掛け算で決まると言われています。したがって、安全保障は抑止と安心供与の両輪によって成立させることが重要です。戦争を未然に防ぐためには「攻めたら反撃される」という抑止効果とともに「先に攻めるつもりがない」という相手方を安心させるメッセージとのバランスが求められています。
日本国憲法の平和主義の考え方は、外交関係や経済交流を活発化させるソフトパワー、攻められない限り戦争はしないという専守防衛の原則のもと安心供与という広義の国防を重視すべきというものです。
なお、憲法96条に定められた改憲発議そのものを反対していません。その中味や国民への問いかけ方が重要であり、平和主義を逸脱するような改憲発議であれば反対していく立場です。
組合方針(1)は、このような平和主義を重視するものであり、文言を大きく見直す機会とは考えていません。その上で「国際協調と国や民族同士の相互理解を深め」という一文を「普遍的な教訓とし、」の後に挿入することを考えています。
③ウクライナのように攻め入られたらどうするのか?
軍事進攻された時は現行憲法で認められた個別的自衛権のもとに対処することを想定しています。現在の国際社会の中で武力による領土や主権の侵害は認められません。戦争が長引く場合などは現在のウクライナと同じように専守防衛に徹しながら国際社会と連携し、そのような無法な国と対処していくことになります。
国際社会は二度の世界大戦を経験し、そこから得た教訓をもとに現在の国際秩序やルールを定めています。国際社会における「法の支配」であり、国連憲章を守るという申し合わせです。その一つが前述したとおり武力によって他国の領土や主権を侵してはならないというものであり、自衛以外の戦争を禁止しています。
このような国際的な規範が蔑ろにされ、帝国主義の時代に後戻りしてしまうのかどうか、ウクライナでの戦争は国際社会に突き付けられている試金石だと言えます。戦争が一刻も早く終わることを願いながら多くの国々が結束し、ロシアに圧力を加え、ウクライナを支援している構図は非常に重要な関係性です。
国際社会の結束は、ロシアと同じように軍事力で「自国の正義」を押し通そうと考えていた権力者の「意思」に大きな牽制効果を与えるはずです。国際社会の定められたルールは絶対守らなければならない、守らなければ甚大な不利益を被る、このことをロシアのプーチン大統領に思い知らせるためにもウクライナでの戦争の帰趨が極めて重大です。
仮に日本がウクライナと同じように他国から侵略された時、まずは日米安全保障条約のもとに対処していくことになります。ただ軍事同盟のみに依存し、過度に強化した場合、他国に無用な脅威を与える可能性も否めません。そのような慎重姿勢からの組合方針につながっていますが、組合方針(2)は必要に応じて現状認識に沿った文言の整理を検討する機会とします。
④核兵器禁止条約の批准をめざす方針について
核兵器禁止条約は昨年2021年1月に発効しています。現段階では日本をはじめ、核保有国や核抑止力に依存する国々は署名・批准していません。しかしながら核兵器は違法だという流れが国際社会の中で定められたことは紛れもない事実です。国際社会が過去の教訓や未来への希望を託しながら定めているルールは最大限尊重していくべきものです。まして唯一の戦争被爆国である日本こそ、核兵器の非人道性や地球規模で及ぼす影響を広く国際社会に発信し、率先して禁止条約の実効性を高めることに全力を尽くさなければならないものと考えています。
⑤「日の丸」「君が代」などの方針は現状を踏まえた文言整理の検討も
1999年に「日の丸」「君が代」を国旗国歌とする法律が成立しました。その際、当時の野中広務官房長官は「国として強制や義務化するものでなく、国民生活に何ら変化や影響を与えるものではない」と国会で答弁しています。「日の丸」「君が代」を巡っては歴史的な経緯の中で、その評価に対して賛否が分かれているものと見ています。卒業式や入学式での「日の丸」「君が代」への対応をめぐり、いくつかの裁判も続いています。このように「日の丸」「君が代」に対する評価は人によって温度差があることを前提に組合方針(8)は、あくまでも強制には反対という方針です。
靖国神社は軍人の士気を高め、より円滑に戦争を進める役割を負わされていたという歴史的な経緯があります。戦没者を慰霊することは大切なことですが、軍人以外にも数多くの民間人が戦争で亡くなっていることも忘れてはなりません。さらに様々な見方や評価はありますが、歴代首相や日本政府の判断として「総理大臣は靖国参拝しない」と決めてきたことも確かです。国際問題になりかねない現状が続く限り、一定の制約があるべきだと考えています。
ただ一方で、天皇制のとらえ方をはじめ、組合方針(7) (8) (9)は現在の組合員大半の認識や具体的な取り組みの現状を踏まえ、文言の整理を検討する機会とします。
⑥ 人権や差別に関わる組合方針について
組合方針(11)の「外国人差別など、あらゆる差別に反対します」の文章の中で義務について追記することには違和感があります。基本的に現行のままとすることを考えていますが、新たな文言として「北朝鮮による拉致問題、新疆ウイグルでの人権抑圧、香港における民主派への弾圧、ロヒンギャの難民問題など、あらゆる場面で人権を阻害する行為や非人道的な問題を許さず、強く抗議していきます。」という内容を追加することを考えています。
5 おわりに、ともに考える組合方針へ
「たたき台」資料に掲げたとおり組合方針(12)「組合が平和運動などに取り組む意義を組合員へ丁寧に周知し、問題意識を共有化した活動に努めます」が最も重要な方針だと考えています。今回、そのような意味で意義深い機会であることを受けとめ、組合員全体で力強く確認できる方針が確立できるように努めています。
私どもの組合は一つの単位組合です。今後も自治労や平和フォーラムとの関係性は重視していきますが、現在の組合員の皆さんの意思を丁寧に受けとめながら平和や人権に関わる方針について、必要な見直しを進める機会にすべきものと考えています。このような考え方をもとに9月7日の意見交換会、11月11日の第77回定期大会に向け、組合員全体で意思一致できる方針案の確立をめざしていきます。
今年3月に発行した機関誌の特集記事の見出し「【Will】組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」のような組合活動が進められていくことを心から願っています。
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