不安定雇用の会計年度任用職員
最近の記事「間近に迫った市議選と参院選」の中で、連合三多摩の政策要請書に関わる作業部会に出席していたことを記していました。毎年、市長会や各自治体首長あてに政策要請書を提出しています。その原案に会計年度任用職員に関わる次のような内容がありました。
会計年度任用職員制度の導入にあたっては公務における同一労働同一賃金の趣旨に沿って、当該自治体常勤職員との不合理な待遇の解消に向けより一層、労働条件の改善と必要な財源を確保すること。
この項目の「…確保すること。」の後に次の文章を付け加えたいと私から提起していました。「また、法改正が必要な勤勉手当の支給や任期の定めのない短時間勤務職員制度の導入に向け、その必要性について東京都や国に働きかけること」というものでした。
自治労は総務大臣あての「会計年度任用職員の処遇改善にむけた法改正を求める署名」に取り組んでいます。その署名の要請項目の柱となっている内容だったため、私が出席した作業部会の中で文章の追加を要望していました。
作業部会は3つに分かれています。それぞれの作業部会で検討した内容を政策要請書案としてまとめ、政策プロジェクトと呼ばれている全体会議で最終的に確認する運びとしています。
政策プロジェクトは先週火曜午後に開かれています。その会議の中で「勤勉手当というものが分かりづらい」という意見が民間労組の方から示されました。公務員のボーナスは期末手当と勤勉手当を合わせたものとなっています。一時金や賞与とも呼びますが、正式名称は期末・勤勉手当となります。
会計年度任用職員には勤勉手当が支給されていません。期末手当に限る支給自体「同一労働同一賃金」の考え方に反していることですが、2年続けて人事院や人事委員会は期末手当のみの削減を勧告しています。そのため、会計年度任用職員にとって年間一時金の削減率は常勤職員の倍に相当します。
会計年度任用職員の勤勉手当や生活関連手当(扶養手当や住居手当等)の支給に向けては法改正が必要であり、自治労全体の取り組みとして署名活動などに力を注いでいます。自治労本部と総務省との必要な折衝の橋渡し役としては、自治労組織内の国会議員の皆さんが尽力されています。
ちなみに参院選に向けて、このような役割を担う自治労組織内議員の存在の重要さについては、私どもの組合員の皆さんに繰り返し訴えているアピールポイントです。
話は政策プロジェクトの場面に戻します。勤勉手当という呼称の分かりづらさが指摘された際、私から次のように発言していました。「せっかく入れてもらいながら恐縮ですが、追加した文章すべて取り下げることを改めて提案します」という発言でした。
作業部会で私自身が発案した追記でしたが、「必要性について東京都や国に働きかけること」という一文は自治体当局に逃げ道を与えてしまうような懸念が芽生えていました。勤勉手当や短時間勤務職員制度に関しては法改正が必要かも知れませんが、現行制度のままで雇用継続の問題などは一定の解決策を探れるはずでした。
このように考え始めていたところ民間労組の方の発言が渡りに船のタイミングとなり、「また、法改正が…」以降の取り下げを提案させていただきました。連合三多摩の事務局の皆さんにはいろいろお手間を取らせてしまい、たいへん失礼致しました。
さて、私どもの組合における会計年度任用職員制度を巡る最も大きな課題は雇用継続のあり方です。たいへん重要な課題として認識している中、最近『「国によるパワハラ」3年に1度失職するハローワーク職員の憂うつ』という見出しの記事が目に留まっていました。
公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)は5月2日から全国の公務現場で働く非正規職員に対して行ったアンケートを、6月4日に終了した。今月末に結果が集計される。昨年に続いて2度目の調査では、715件の回答があった。はむねっとは、7月の参議院選挙に向けて非正規公務従事者の仕事と生活の安定を求めている。
コロナ禍で失業状態が長期化する中で、ハローワーク(公共職業安定所)は利用者の生活不安の声に耳を傾けつつ、適性を見極めて就職あっせんする心強い存在だ。各都道府県の労働局の雇用失業情勢に応じた対策をする窓口となり、就職困難者を支援する最後のセーフティーネットともいえる。
だが、利用者に対して失業を解消する立場のハローワークの職員が、実は自らの雇用も守られていない。「国によるパワーハラスメント」とも呼ばれる制度によって、非常勤職員が職を追われ精神的苦痛を強いられている実態があるのだ。
ハローワークで働く浜名みどりさん(仮名)が相談業務への異動を希望したのは、7年ほど前に対応したある一本の電話がきっかけだった。電話の主は男性で、失業と同時に収入が途絶え、長期に電気代を滞納していた。電気を止められてしまったのでなんとか国に援助してもらえないか、という訴えだった。男性には子どもがいた。
当時、別の部署で勤務していた浜名さんは「市役所などに相談するよう」伝えるだけで電話を切った。そのあと男性がどうなったかはわからない。「何もできず、何も言えなかった」。自分にもどかしさだけが残った。「ずっと心残りでした。話をゆっくり聞いて、その人に合った仕事を見つけて、就職先を紹介できるようになりたかった」
浜名さんは、この一本の電話を契機に相談業務の部署に異動。これまで多くの利用者の相談に乗り、就職に結びつけてきた。時には職業訓練を通して資格を取得するなどして、新たな道を切り拓き、利用者が自分で思い描いていた仕事に就けた姿を見るときに「やりがいを感じる」と浜名さんは言う。「時々、就職の報告に来てくれたりするので、そういうときは嬉しいですね」
浜名さん自身がこの仕事に就いたのもハローワークを通してだった。家から近く、週末が休みで残業はない。子育てが一段落した時期に初めてハローワークを使い、この上ない適職を見つけた。偶然とはいえ、「ライフワークのようにやりがいを感じている」とまで言うほどこの仕事が好きになった。
ところがそこには意外な落とし穴があった。1年契約という短期雇用。契約の更新は毎年あるが、3年が上限と決められているため、それ以降は公募に挑戦しなければならない。就職して13年目のベテランになるが、経験値で特別扱いされることもなく、3年ごとに履歴書を提出して、外からの応募者に混ざって採用の可否を待つ。
浜名さんは別部署からの異動が一度はあったものの、それ以来は「幸い」自分が希望した就職あっせんの部署に戻ることができている。しかし実際、「同僚では、そうでない人が多く、戻れない人もいる。複雑です」
取材の間、浜名さんは「辛い」という言葉を繰り返した。無理もない。着任して3年目に当たる非常勤職員は全員、いったん失職することが避けられないからだ。同じ仕事を続けるには、外からの就職希望者と並んで公募に申し込まなければならない。もう何年も同じ部署で働いてきた浜名さんのような人でも、採用される確証はない。
より適任な人が他にいるかもしれないーー。利用者からの就職相談に対応するハローワークの職員だからこそ、よくわかる。ハローワークの相談業務の一環に、就職先に宛てた紹介状がある。自分が対応する相談者がハローワークの公募に申請すると言えば、その適性も合わせて検討し、希望があればもちろん紹介状を書く。
やりきれないのは、その仕事が3年の契約満了を迎えて職場を追われた同僚や友人の職であるときだ。それでも相談者には、その就職口をあっせんする。さらに、紹介状や推薦状はハローワーク職員であれば誰でもアクセスできるため、公募に並ぶ同僚でさえ目にすることができる。
「見ようと思えば、同僚が別の人を推薦しているのがわかる。自分のところにこんなにたくさん就職希望者を紹介していると見ることができる。今回そういうケースがありましたので、すごく辛いですね」
同僚であればまだましな方かもしれない。中には、自分が職を追われる立場であるにもかかわらず、その自分のポストに就職希望する利用者のために、その人の紹介状を自分で書かざるを得ない人もいるのだ。引き裂かれる思いを抱きつつも、職務を全うせざるを得ない。
ハローワークの仕事は、今も人気職だ。午前9時から午後5時までの勤務に残業はなく、土日はきちんと休むことができる。労働組合の追及で、2年前、非常勤職員も夏休暇を取得できるようになった。しかし、浜名さんは「休みなんていらないから、せめて雇用を安定させてほしい」と言う。
当初、浜名さんがハローワークに就職したときは、たまたまその年の予算組みによって人事枠が増えたため、誰も失職することはなかった。しかし公募を来年に控える今は、緊張状態が続く。今年も1月の前から辛い気持ちを抱え、同僚を横目に来年は自分かーー、という考えを振り払えずにいる。
「これまでは幸いにして、誰かが削られたところに入るという悲しい経験をしたことがない。でも来年は公募なので、わからない。担当部署の予算が減る場合は必然的に私が切られることが想定される」
同じ職場内で、経験値や仕事の能力や人柄といった適性ではなく、時期が来たから順に切っていくーー。それがもっとも堪え難いと浜名さんは言う。
「他の部署に応募することもできるが、そこの予算も削られているかもしれない。誰かを落として私が入ることになるのは耐え難い。生活がなければ去るところですが、生活があるので採用募集が出たら応募はします。やりますけど、いやな気持ちは変わらない」
浜名さんはかろうじて精神の安定を保っているが、2021年春、公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)が公表した調査(有効回答1252件)では、こうした制度の下で9割に上る非正規公務員が精神的に不安を抱えていることがわかった。
労働局に勤務する女性は「年度末が近づくにつれ、不安や不満の中、日々ストレスは増すばかり。雇い止めとして簡単に失業者を作り出す労働行政の非常勤職員に対する政策は、国によるパワーハラスメントでしかありません」(全労働省労働組合調査)と語る。
ハローワークの職員を含め、公務職場の人事は各省の予算によって左右され、時勢にもともなって人員が増減する。例えば、コロナ禍の緊急対応が必要な現場では、事業の予算が増額。それに伴い、増員を求められるところも多かった。しかし、コロナが収束に向かえばその部署は人数が減ることが予想され、予算が多くついた別部署が増えるだろう。
どこにどれだけの予算がつくのか、部署の人数が増えるか、減るかは現場レベルでは誰もわからない。それは他の企業でも同様だ。例年、公務職場の予算決定後に人事が決まるのは1月下旬だ。この時期、非常勤職員は極度の不安にさらされる。
明らかに予算や雇用の調整弁という扱いである非常勤職員は現場で大半を占め、業務を中心的に担う。一方、上司にあたる管理職の正職員は2年に1度の転勤があるため、異動先では非常勤職員から仕事を教えてもらうほどだ。
ただ非常勤職員の採用には、上司である現場の正職員の意見が大きく影響するため、当然、正職員に気に入られようと機嫌をとる人は一定数いるという。逆に、安心して働けるよう雇用の安定や賃金アップなど労働者として当然のことを求めたりすれば、たちまち道は閉ざされる。
「何かを言うことによって『気に入らない』と思われたら怖いし、反対にこの人間関係の良し悪しを利用して気に入られようとする人もいるので、『好き嫌いの人事なのか』と思うときもあります。やはり盾をつくことは怖いけれど、私はなかなか気に入られるようなこともできないので、粛々と仕事をするしかないですが」(浜名さん)
失業者が自分に合った仕事を見つけ、希望ある生活を立て直すことができるようあっせんするハローワーク。そこで働く非正規職員こそ、まず安定した仕事と生活を保障されるべきではないだろうか。取材・文:松元千枝【FRIDAY DIGITAL 2022年6月13日】
前回の記事「カスハラに対する考え方」の中でもメディアの記事全文をそのまま紹介しています。いつも長いブログ記事が輪をかけて長くなってしまいますが、多くの方々に拡散したい情報であるため引用元を明らかにしながら記事内容の全文を掲げています。
このブログでは2年前に「雇用継続の課題」という記事を投稿していますが、上記のメディア記事のとおり会計年度任用職員の皆さんの大半は不安定な雇用のあり方に大きな悩みを抱えています。地方公務員法と地方自治法の一部が改正され、2020年4月から会計年度任用職員制度がスタートしました。
法改正時の国会の附帯決議が公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求めていることを踏まえ、非常勤職員である嘱託職員の皆さんの待遇改善の機会として労使交渉を進めてきました。しかしながら私どもの組合にとっては非常に悩ましい事態を強いられています。かえって法改正が逆風となり、雇用継続の問題が後退しかねない局面となっています。
非常勤職員の問題はパート労働法などが適用されない「法の谷間」と言われていました。地方公務員法上の嘱託職員は学校医のような臨時的・一時的な雇用のみを想定していたため、昇給制度や手当支給に異議が差し込まれ、3年や5年で雇い止めされる実態につながっていました。そのような位置付けの中、これまで任用根拠をはじめ、各自治体の独自な判断で非常勤職員の待遇を決めていました。
私どもの組合は嘱託職員の皆さんが以前から直接加入しています。そのため、嘱託組合員の待遇改善が継続的な労使交渉の課題とされてきました。私どもの市の嘱託職員も当初、雇用年限5年という方針が示されていました。それに対し、労使交渉の積み重ねによって、実質的に雇用年限による雇い止めを見送らせることができていました。
高年齢者雇用安定法が改正され、使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められています。このような法改正を追い風とし、嘱託職員の皆さんの雇用継続も65歳まで担保する労使協議結果を得てきました。
しかしながら会計年度任用職員制度に関わる法改正後、総務省から「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」が示され、その中には「他団体との均衡をはかること」という一文が盛り込まれました。そのため、他団体との均衡という理不尽な動きが強まり、前述したとおり雇用継続の問題に関しては積み重ねてきた成果が後退しかねない事態に直面しています。
国家公務員の職場における現状を追認したものと思われますが、総務省の示したマニュアルでは公募によらない再度の任用を2回としています。上記のメディア記事の中で伝えているとおりハローワークの非常勤職員は「契約の更新は毎年あるが、3年が上限と決められているため、それ以降は公募に挑戦しなければならない」という不安定雇用にさらされています。
都内の自治体の大半は東京都のルールの横並びを強いられ、公募によらない再度の任用は原則として連続4回としています。私どもの組合も同様な内容で労使合意していますが、これまでの労使確認事項も尊重していくことを付け加えていました。
この「尊重」という趣旨について労使で認識に隔たりがあり、市当局は5年に1回、現職者と新規採用希望者が競合する公募による採用試験を予定しています。しかし、組合は下記のような考え方のもと対応案を市当局に提起しています。
【組合の考え方】
* これまでも年度単位の雇用ですが、恒常的な業務に従事する嘱託組合員はその勤務経験を尊重しながら65歳までの雇用を確保してきました。
* 市当局側も培ってきた知識と経験を重視しているため現職者には「アドバンテージがある」という見方を示しています。このような経緯を踏まえた際、5年に1回、現職者と新規採用希望者が競合することについて適切なのかどうか組合は疑問視しています。加えて、大規模な競争試験を実施するコストや職員の負担等も考慮すべき点だろうと考えています。
* 選考において公募を行なうことが法律上必須とされていません。そのため、狛江市や板橋区などは自主的な判断のもと公募によらない再度の任用の上限回数を定めていません。
* 高齢者雇用促進法では使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められています。今後、70歳までの雇用確保を「努力義務」とする動きがあり、公務員の定年は65歳まで延長されていきます。それにも関わらず、会計年度任用職員だけが不安定な雇用を強いられることは、ますます法改正時の国会附帯決議の「公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応」から離れていく考え方だと言わざるを得ません。
【組合の対応案】
人事評価による再度の任用は原則として連続4回とする。現職者の培ってきた業務に対する知識や経験を重視し、5回目に際しては引き続き任用を希望する現職者を対象とした選考試験を実施する。選考方法は面接試験とする。欠員が生じる場合などは新規採用希望者を別途募る。その際は広報等を通じて募集する。
今回紹介したメディア記事の中で示されているような非常勤職員の皆さんの不安感を取り除き、安定した雇用継続のあり方を探ることこそ、労働組合に課せられた重要な役割です。会計年度任用職員制度がスタートし、3年度目に入っています。組合の問題意識に沿った解決をはかるためには今年度が正念場です。
私自身の組合役員としての任期は残り半年を切っています。会計年度任用職員の雇用継続のあり方に関しては、ぜひとも望ましい道筋を見出した上で引き継ぐことができるように精一杯頑張っていきます。また、組合が推薦した市議の方とも4年ぶりに連携をはかれるため、この問題においては一般質問等に向けて相談させていただければとも考えています。
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コメント
会計年度任用職員の待遇の是正は大いに結構。
でも自治労は口先とスローガンだけで、非正規公務員に対する目に見える成果をこれまでに何一つ出してないよね。ポーズだけなら誰でもできるんだよ、結果を出せよ! DO IT IMMIDIATELY!!!!
投稿: れなぞ | 2022年7月 2日 (土) 20時47分
れなぞさん、コメントありがとうございました。
ご指摘のとおり「口先とスローガン」や「ポーズ」だけでは不充分な問題が数多くあります。この問題も同様であり、何としても充分な「結果」が出せるよう力を尽くしていかなければなりません。
投稿: OTSU | 2022年7月 3日 (日) 06時35分