« 2022年6月 | トップページ | 2022年8月 »

2022年7月30日 (土)

多面的な情報を拡散する場として

このブログを長く続ける中で多面的な情報に接していくことの大切さを強く意識するようになっています。今年2月に「多面的な情報の大切さ」という記事を投稿していますが、これまで多面的な情報の一つとして」「多面的な情報を提供する場として」など同様な趣旨の記事を数多く手がけています。

同じモノを見ていても、見る角度や位置によって得られる内容が極端に違ってきます。一つの角度から得られた情報から判断すれば明らかにクロとされたケースも、異なる角度から得られる情報を加味した時、クロとは言い切れなくなる場合も少なくありません。クロかシロか、真実は一つなのでしょうが、シロをクロと見誤らないためには多面的な情報をもとに判断していくことが非常に重要です。

8月の臨時国会で行なう予定だった安倍元総理の追悼演説が先送りされます。野党からの指摘に対し、岸田総理が「聞く力」を発揮されたものと思っていましたが、自民党内からの反発が主な理由であるようです。『「残した派閥をばかに」 安倍派の猛反発で甘利氏の追悼演説頓挫』という記事が次のように伝えています。

安倍派が反発を強めたのは、甘利氏の20日のメールマガジンがきっかけだ。この中で甘利氏は安倍派について「『当面』というより『当分』集団指導制をとらざるを得ない。誰一人、現状では全体を仕切るだけの力もカリスマ性もない」と指摘した。

これに安倍派最高顧問の衛藤征士郎・元衆院副議長は21日の同派会合で「こんなに侮辱されたことはない」と激しく反発。派内では他にも「甘利氏こそカリスマ性がない」などと批判する声が相次いだ。

上記のような報道、つまり多面的な情報に接することで岸田総理の「聞く力」に対する評価が変わっていきます。幅広い立場からの様々な声を大事にすると言うよりも身内である自民党内の意見に左右されていく「聞く力」にとどまっているという印象を抱くことになります。

より望ましい「答え」を見出していくためには、冒頭に示したとおり多面的な情報や幅広い考え方に触れていくことが重要だろうと考えています。そのような意味合いから私自身がインターネット上で接し、興味深く感じたサイトを当ブログの中で紹介しています。一つの運動としての情報の拡散です。

前回の記事は「『朝日新聞政治部』から思うこと」でした。その記事の最後に元朝日新聞記者の鮫島浩さんが、大手新聞社の報道は横並びで「覚悟を決めて強い者に切りかかっていく」という能動的主体的な記事が皆無に近いことを憂えていることを記していました。つまり新聞だけの情報に頼った場合、多面的な情報に触れられなくなる恐れがあるという現状についての憂慮です。

幸いにもインターネット上からはコストをかけず、手軽に多種多様な情報にアクセスできます。多面的な情報に触れていくことが重要であるということは、より多くの方々が多面的な情報に触れてもらいたいという思いにつながっていきます。このような思いを託し、今回「多面的な情報を拡散する場として」というタイトルを付けて書き進めています。

さて、東京地検特捜部が連日家宅捜索している『電通出向組織委幹部に元理事・高橋氏が働きかけか 五輪のAOKI商品“早く審査を”』『五輪事業の「キーマン」紹介や助言…AOKI専務が高橋氏側への要望をリストアップ』という事件も拡散したい情報ですが、今回の記事では旧統一教会関連の動きに絞って目に留まったサイトの内容を紹介していきます。

まず『福田総務会長 旧統一教会と政治「何が問題か分からない」発言を釈明』『旧統一教会「何が問題かわからない」自民党・福田達夫総務会長の“開き直り”発言に怒りの声が殺到』『宮根誠司「ピントがずれてる」 自民・福田議員の旧統一教会「何が問題なのか」にあ然』という報道です。ここまで客観的な事実関係の出来事であれば大手新聞社も軒並み取り上げています。

ただ読売新聞の場合、政治面の最下段で本文10行の記事として伝えています。いずれにしても自民党の総務会長まで務めている国会議員が「何が問題か分からない」と発言していることに驚きます。発言の意図的な切り取りや誤解というレベルではなく、本当に何が問題になっているのか理解されていないようです。

前々回記事「参院選が終わり、見えてきたこと」の中で、全国霊感商法対策弁護士連絡会が「統一教会にエールを送るような行為はやめていただきたい。どんなに被害者が悲しむのか、苦しむのか、絶望するのか。しかも、新しい被害者がそれによって生み出されかねない」と訴え、政治家として配慮されるよう繰り返しお願いしてきたことを伝えています。

それにも関わらず、今になっても福田総務会長が「分からない」と発言したため、憤りの声が上がって当然だろうと思っています。さらに岸防衛相が驚愕の“居直り” 旧統一教会から「選挙の手伝い受けた」明言の真意と波紋』『ひろゆき氏が岸防衛相の旧統一教会めぐる発言受け「上級国民だと許されるんですかね?」とチクリ』という話にも目が留まっていました。

岸防衛相に限らず、旧統一教会の問題の本質を理解できないのか、理解していても居直っているのか、世間一般の常識的な感覚と乖離した政治家の振る舞いが散見しています。この問題では弁護士の澤藤統一郎さんがブログ『霊視商法は潰され、霊感商法は生き残った。なぜだ?』で次のような事実関係を伝えています。 

霊感商法問題に長く携わってきた友人弁護士は、こう語っている。「統一協会が政界工作を行うのは、そのことよって政治権力の庇護を受ける、お目こぼしを受けるということを目標としており、現実にその成果が獲得されていると考えてよい。安倍内閣は国家公安委員長として、統一教会に近いことで知られる山谷えり子を据えている。これが政権の意思として当然に教会に対する監視は緩くなる。霊感商法や伝道端緒の印鑑商法の摘発などは抑えられる。国税庁が税務調査の対象にしないとか、国外送金の問題を追及しないとか、そういう現実的な効果を獲得している」

国家公安委員長、旧統一教会との関係「事実」と認める という記事のとおり現在の二之湯国家公安委員長も旧統一教会との関係を認めています。2018年、旧統一教会の関連団体が主催したイベント「ピースロード」において、京都府実行委員会委員長を務めていたことを明かしていました。

「中村警察庁長官」が国葬後に辞職へ 逮捕状の握り潰しや元首相秘書・子息への忖度捜査で「官邸の番犬」と呼ばれたスーパー官僚の出世すごろく』という見出しの記事は、旧統一教会の問題を直接的に取り上げている内容ではありません。しかし、政治権力が警察の捜査に強い影響を与えている可能性を示唆している記事だと言えます。

橋下徹氏 旧統一教会の名称変更の資料黒塗りを批判「森友学園問題も黒塗りしたことが発端」』という記事では、文化庁から提出された資料の中で旧統一教会の名称変更理由の部分が黒塗りになっていたことに対し、大阪市長だった橋下さんが「すべて開示して堂々と説明すればいい。政治行政は何も学んでいないのか」と批判していることを伝えていました。

ちなみ当ブログでは「誰が」に重きを置かず、「何が」問題で批判すべきことなのか、具体的な言動や事実関係を指摘しながら論評を加えるようにしています。批判ありき、もしくはポジショントークだと見らないように注意しています。普段は批判しがちな方の発言でも、上記のような拡散したい情報であれば「誰が」に重きを置かずに取り上げるようにしています。

今回も長い記事になっていますが、最後に7月28日に配信されたFLASHの記事『旧統一教会「名称変更」を 止められなかった文科省・前川元次官「辞表を叩きつけてNOと言えなかった悔いはある」』を紹介します。記事内容の全文を掲げることも考えましたが、特に拡散したい事実関係について絞らせていただいています。

旧統一教会による被害者がいまもあとをたたないのは、同団体の正式名称が2015年に「世界平和統一家庭連合」に変更されたことが大きいと指摘されている。

1997年から名称変更の申請はおこなわれていたが、宗教法人を所管する文化庁宗務課はこれを受理してこなかった。ところが2015年8月、文化庁は突如、名称変更を認めた。当時、文化庁を外局とする文科省の大臣を務めていたのは、安倍晋三元首相の盟友・下村博文氏だ。

この点で注目を集めるのが、文部科学省の事務次官だった前川喜平氏だ。

《1997年に僕が文化庁宗務課長だったとき、統一教会が名称変更を求めて来た。実体が変わらないのに、名称を変えることはできない、と言って断った》

前川氏は、2020年12月に自身のTwitterでこうつぶやいている。改めて前川氏に話を聞いた。

「私が宗務課長になったのは1997年。前年の1996年に、オウム真理教事件の反省の上に、宗教法人法の改正がありました。それまで野放しだったものを、もう少し注意深く対応しようという姿勢に転じたのです。全国的に展開している宗教法人については、都道府県知事の管轄だったものを文部大臣の管轄に変更して、一定の書類を毎年、出してもらうことになりました。その直後に、私が宗務課長になったわけです。

統一教会の名称変更の要請については、部下が私に報告をしてきたので、その段階で、『実体が変わっていないのに名称だけ変えるという規則変更はできない』という理由で、断ったんです。申請を受けて却下したのではなく、申請そのものを受理しませんでした。我々の気持ちとしては、『ここで認証してしまったら、文部省(当時)が社会的な非難を浴びる』という気持ちがありました。すでに1990年代に、統一教会の問題は知れ渡っていましたからね。

もともと統一教会というのは、正体を隠して活動する性質があり、本体の名前を変えてしまうというのは、究極的な『正体隠し』になってしまう。当時、全国霊感商法対策弁護士連絡会も、文化庁に名称変更を認めないでくれと要望していました」

こうした前川氏の判断により、名称変更は長く認められてこなかった。それが2015年、突然、認められることとなる。前例を踏襲するのが慣例となっている官僚が、それを覆す判断をしたということは、そこに強い動機、つまり政治的な意図が働いたのだろう、と前川氏は感じた。

「2015年のときは、宗務課長が私のところに事前に説明に来ているんです。私は当時、文部科学審議官。どの役所にも、国土交通審議官とか経済産業審議官とか、省の名前の付いた審議官がいるんですが、『省名審議官』は事務次官と同格か、あるいは事務次官に次ぐポストです。

文部科学省では旧文部省出身者と旧科学技術庁出身者が、互い違いに事務次官になっていたわけですが、当時の事務次官は科学技術庁出身者。宗務課長が私のところに説明に来たということは、私が事実上の『文部事務次官』だったからです。

宗務課長が説明に来たときに、私は『NO』と言いました。名称変更は認めるべきではない、と。ただ、裏には何か政治的な圧力があるとは思っていました。私は『NO』と言ったけど、結局、認証されてしまった。私よりも上には、事務次官と大臣しかいないわけです。私は、(認証された理由は)大臣の意向が働いたことは間違いないと思っています。当時の下村博文・文部科学大臣がゴーサインを出しているのは間違いない。これは確信しています。

それに対して『NO』とは言ったけど、『認められません』と言って、辞表を叩きつけるまではやらなかった。私が認めないと言っても、結果は変わらなかったでしょうけどね。まあ、力不足というか……。抵抗しきれなかった悔いは残っていますよ」(前川氏)

一方、当時、文部科学大臣だった下村氏は7月13日、自身のTwitterに、《文化庁に確認したところ》と前置きしたうえで《文化庁によれば『通常、名称変更については、書類が揃い、内容の確認が出来れば、事務的に承認を出す仕組みであり、大臣に伺いを立てることはしていない》《今回の事例も最終決裁は、当時の文化部長であり、これは通常通りの手続きをしていた》などとつづった、7月11日付の書面を投稿した。

ところが2015年当時、民主党参院議員だった有田芳生氏は、旧統一教会の名称変更について疑問を持ち、文化庁に問い合わせていた。そして《文化部長が「専決者」となっていますが、本件については大臣に事前に説明いたしました》という、文化庁の2015年9月30日付の回答を得ていたのだ。

この事実と整合性を合わせるために、7月21日、あらためて名称変更について記者に問われた下村氏は、「文化庁の担当者から、そういう書類が来たということは事前に報告があった」と認めたうえで「(私は)まったく関わっていない」と、名称変更への関与を否定した。

| | コメント (0)

2022年7月23日 (土)

『朝日新聞政治部』から思うこと

このブログの更新は土曜もしくは日曜に限っています。月曜から金曜までに触れるトピックは数多くあり、ブログで取り上げたい題材が見つからずに困ったことは滅多にありません。前回記事「参院選が終わり、見えてきたこと」の中で、他にも紹介したい報道等が多くありました。

山上容疑者はSNSで安倍元首相を擁護…橋下徹、ホリエモンらの“銃撃はアベガーのせい”主張が大崩壊』『「安倍やめろ」ヤジ当事者、「警察が裁判で負けて萎縮した」論に反論「こじつけだ」』『生稲晃子氏にバッシング、テレ東・池上彰氏とのトラブルも…“元タレント候補”への厳しい風当たりに広報担当の川松真一朗都議「事実を知っていただきたい」』という見出しの記事です。

それぞれ掘り下げていくと一つのテーマの新規記事をまとめられるような内容です。そのため前回記事は取り上げるべき論点を絞り、マスメディアの報道の仕方について考察するような切り口としていました。その流れの中で、最近読み終えていた『朝日新聞政治部』について触れるつもりでした。

今回の記事タイトルに掲げましたので書籍の内容等は後ほど詳述しますが、結局、そこまでつなげられないほどの分量となっていたため次回以降に先送りしたところです。今回の記事でも本筋に入る前の伏線として、安倍元総理の国葬に関わる様々な報道や考え方などを紹介させていただきます。

理不尽な死を強いられた安倍元総理に対して哀悼の意を捧げることに反意を示される方は極めて少数だろうと思っています。ただ安倍元総理の国葬に際しては様々な声が上がり、賛否が分かれていることは特に驚くような話ではなく安倍元首相“国葬適切”の自民・茂木幹事長に批判続出!「認識がずれているのはあなただよ」の声』という記事のとおりです。

このブログで普段は批判しがちな日本維新の会の松井代表の「安倍嫌いで反対しているというとらえ方をするのは茂木さん、大間違い。ピントがずれまくっている。疑念を持たれている方の疑念を解消し、理解を深める努力をするべきだ」という言葉は至極真っ当な見方ではないでしょうか。

この問題に限らず、受動的な調査での回答結果と自ら意見を寄せる調査での傾向には大きな違いが出るのだろうと見ています。それでも『森本毅郎がラジオで驚きの声 安倍元首相の葬儀でリスナー「95%が国葬反対」』という極端な結果には私自身も驚いています。

国葬の可否に関しては法的根拠の問題が指摘されていますが、同時に安倍元総理の功績についての評価が取り沙汰されるようになっています。そのような流れの中で安倍元総理を揶揄した川柳が朝日新聞に掲載されたことで『紙面づくりが「昔より過激に」なってしまう“構造”を抱えている』と激しく反発する声が上がっていました。

このような批判が高まると『朝日新聞に質問状で直撃! 安倍元首相銃撃めぐり「川柳」大炎上 事件や国葬を揶揄 OB長谷川熙氏「無責任な報道姿勢」と指弾も』という記事が伝えているとおり朝日新聞は「ご批判は重く、真摯に受けとめています。様々な考え方や受けとめがあることを踏まえ、今後に生かしていきたい」と表明しています。

ブックマークしている弁護士の澤藤統一郎さんのブログ『朝日川柳 西木空人選7句我流』 『反論 ー「弔意」を強制して「生前の罪業批判」に蓋をする論調に。』のような受けとめ方があることを踏まえれば、朝日新聞の軸のぶれ方に違和感を抱くことになります。やはり「弔意」と「政治的な評価」は峻別すべきものだろうと思っています。

いつものことですが、記事タイトルに掲げた本筋に入る前の文章だけで相当な長さとなっています。あえて「『朝日新聞政治部』を読み終えて」としなかった訳は、もともと書籍の内容を中心に展開する意図がなかったからです。朝日新聞の最近の動きが書籍からの既視感と重なり合うため、そこから思うことに絞って触れていくつもりです。

地方支局から本社政治部に異動した日、政治部長が言った言葉は「権力と付き合え」だった。経世会、宏池会と清和会の自民党内覇権争い、政権交代などを通して永田町と政治家の裏側を目の当たりにする。東日本大震災と原発事故で、「新聞報道の限界」をつくづく思い知らされた。

2014年、朝日新聞を次々と大トラブルが襲う。「慰安婦報道取り消し」が炎上し、福島原発事故の吉田調書を入手・公開したスクープが大バッシングを浴びる。そして「池上コラム掲載拒否」騒動が勃発。ネット世論に加え、時の安倍政権も「朝日新聞バッシング」に加担し、とどめを刺された。

著者は「吉田調書報道」の担当デスクとして、スクープの栄誉から「捏造の当事者」にまっさかさまに転落する。保身に走った上司や経営陣は、次々に手のひらを返し、著者を責め立てた。そしてすべての責任を押し付けた。

社長の「隠蔽」会見のあと、待っていたのは「現場の記者の処分」。このときに「朝日新聞は死んだ」と、著者は書く。戦後、日本の政治報道やオピニオンを先導し続けてきた朝日新聞政治部。その最後の栄光と滅びゆく日々が、登場人物すべて実名で生々しく描かれる。

上記はリンク先に掲げられた書籍の紹介文です。著者は朝日新聞の記者だった鮫島浩さんですので、紹介文にあるとおり朝日新聞社内の実情が生々しく描かれています。当初は称賛されたスクープ「吉田調書報道」が、大きなバッシングを浴びてしまった綻びを次のように鮫島さんは説明しています。

吉田所長が第一原発での待機命令を出したことや所員の9割が第二原発へ退避したことは事実としても、原発事故の混乱のなかで吉田所長の命令が全所員に届いた保証はなく、命令を聞いていない所員の退避を「命令違反」と報じるのは事実をねじ曲げているーという批判だった。

この綻びを突かれたことによって「吉田調書報道」そのものが強く批判され、朝日新聞のトップが全面的に過ちを認めた上で謝罪します。現場に責任を押し付け、梯子を外された鮫島さんや担当記者らは自社の上層部の保身体質やリスクマネジメントの欠如に深く失望します。今回、川柳を担当した関係者も同じような思いを抱いているのではないでしょうか。

しかるべき組織的な手続きを経ながら責任を持って紙面に掲げた内容に対し、批判を受けるたびに非を認めるような対応が重なっていけば現場の士気は下がるばかりだろうと思っています。一方で批判を受ける前に空気を読み、忖度や顔色を窺うことで現場の判断を規制する動きも目立ち始めているようです。

宮台真司氏「掲載中止よりもマシ、Twitterで捕捉」 朝日新聞がインタビューから削除した「重要なポイント」』という記事では「自民党と教会が2000年代末以降にズブズブの関係になっていたことについて、宮台氏の元の原稿では言及されていた。しかし、 朝日の担当記者がその記述を残そうと奮闘したにもかかわらず、記事公開に当たって、それらの部分が削除された」と伝えています。

最後に『鮫島浩氏「番記者制度は廃止を」元・朝日新聞記者が憂える大メディアの凋落』という記事を紹介します。その中で「吉田調書報道」について鮫島さんは「調査報道ですから、最初から100点満点ではないので、二の矢、三の矢で軌道修正するなり、足りないところがあるなら補うなりしていけば、記事を取り消すという事態にはなりませんでした」と語り、次のような言葉につなげています。

事の本質は第一報の記事の内容ではなく、記事が出てから取り消しに至るまでの4カ月間の会社の危機管理の失敗にあったというのが私の考え。多くの会社が何か失敗を犯した時に、「トカゲの尻尾切り」で下に責任を押し付け、経営者は逃げ切る。一部の官僚に責任を押し付ける政治も同じです。

こんなことをやってきたから日本全体がダメになった。そして、トカゲの尻尾切りを追及してきたジャーナリズムのリーダーみたいな顔をしている朝日新聞も自らそういうことをやった。ジャーナリズムとして失格です。本には、2014年に戻ってもう一度総括し、膿を出して欲しいという思いも込めました。

上記は『朝日新聞政治部』を上梓した鮫島さんの思いです。紹介した記事は鮫島さんのインタビューを中心に綴られています。「政治に対する忖度や萎縮は、組織ジャーナリズムに原因があると?」という問いかけに対し、鮫島さんは次のように答えています。私自身、これからも新聞は読み続けますが、鮫島さんと同様、能動的主体的なメディアの頑張りにも期待しています。

ありますね。出世に響くので、なるべく揉め事を起こさない。無難な記事で済ませる。そのための口実が「客観中立報道」という建前なんです。だから、選挙では突っ込んだ報道をしない。どの政党からも文句を言われたくないので、各党の主張を垂れ流すだけになってしまう。その結果、発信量の多い、声の大きい自民党に有利になるのは分かっているのに、一律に横並びで、分かりやすい解説はせず、踏み込まない。これではどんどん新聞離れが進みますよ。

新聞の政治記事はどこも同じだし、どこからどう出てきたか想像のつくような記事ばかり。むしろ、スポーツ紙や夕刊紙、週刊誌の方が面白い視点や参考になる記事がいっぱいある。日刊ゲンダイのように、立場を鮮明にし、覚悟を決めて強い者に切りかかっていくという記事が読者の共感を得る。これからは、そうした能動的主体的なメディアの時代だと思います。私も「SAMEJIMA TIMES」でそれを目指したい。

| | コメント (0)

2022年7月16日 (土)

参院選が終わり、見えてきたこと

前回の記事は「明日は参院選、今、願うこと」でした。日曜夜8時、各テレビ局の開票速報とともにNHKの「参院選2022開票速報」サイトに注目していました。するとNHKのサイトでは速報と同時に比例代表の自治労組織内候補である鬼木まことさんの「当確」を伝えていました。

組合員のために労働組合があり、組合員のために様々な組合活動があります。その活動の一つに選挙の取り組みがあるため、今回、鬼木さんを自治労の代表として国会に送れるという結果が出たことを安堵しています。早い段階で鬼木さんの「当確」を確認できたため、寝不足とならずに月曜の朝を迎えられています。

昨年10月の衆院選では各テレビ局の議席予想が大きく外れ、翌朝、起きてから驚いたことを思い出しています。「自民261をフジ230、NHK212~253」と自民党がもっと議席を減らし、立憲民主党の大敗をまったく予想していませんでした。今回は各局ともに予想を外すことはなく、自民党の大幅増、立憲民主党の議席減という結果が確定していました。

前回記事の冒頭では安倍元総理が銃撃された衝撃的な事件について取り上げ、「今後、このような悲惨な事件を未然に防ぐためにも、容疑者の動機や背後関係の有無について徹底的に解明し、詳らかに公表して欲しいものと願っています」と記していました。「詳らかに公表」という願いは次の記事に示されているような違和感につながるものでした。

テレビプロデューサー・ライターの鎮目博道さんが『「宗教団体の名前を伏せる」「各局揃って喪服」……「安倍元首相銃撃事件」テレビ報道への4つの“違和感”』という記事を参院選の投票日前に「現代ビジネス」で発信していました。

山上徹也容疑者は犯行動機として「特定の宗教団体に恨みがあり、その宗教団体と関係がある安倍元総理を狙った」と供述していると報じられていました。鎮目さんの一つ目の違和感は「なぜ、この宗教団体の名前を明らかにしないのか」というものでした。鎮目さんは次のように語っていますが、そのとおりだと思っていました。

事件の犯行動機は「宗教団体への恨み」と報道されているから、この団体の名前を明らかにし、またその宗教団体に取材をしなければ事件の真相解決にはつながらない。そこにもし「配慮や忖度」が働いているとすれば、それは少しおかしいのではないかということになる。

やはり本来であれば宗教団体の名前を明らかにし、宗教団体側の取材もきちんと行ってその内容も併せて報道し、もし安倍元首相とその宗教団体との関係が明らかでなければ、その旨もきちんと報道すれば良いだけのことである。

今回の記事タイトルにしたとおり参院選が終わり、見えてきたことが数多くあります。『安倍元首相の銃撃事件で露呈した、テレビ各局の宗教団体への“トラウマ”』という記事では、メディアが宗教団体に対して及び腰になっているという事情を伝えています。

宗教団体が会見を行なうことを表明したことで、山上容疑者の恨みを抱いていた宗教団体は世界平和統一家庭連合(旧「統一協会)であることを各メディアが大きく報道するようになっています。久しぶりに『週刊文春』を購入しましたが、山上容疑者が「統一教会」を憎悪することになった経緯等について特集記事を通して詳しく知ることができます。

昨年9月に「統一教会」の関連団体「天宙平和連合」(UPF)のオンライン集会に安倍元総理が「UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を高く強調する点を高く評価いたします」というビデオメッセージを送っていました。この動画を見て、山上容疑者は「家庭を破壊した団体にエールを送る安倍元総理を殺害することを決意した」と供述していることを特集記事で伝えていました。

前回記事で強調したとおり「気にくわない相手だから殺してやる」などいう発想は言語道断であり、暴力に訴える行為そのものが絶対許されません。同情すべき背景があったとしても山上容疑者の蛮行は強く批判すべきものであり、理不尽な死を強いられた安倍元総理に対して哀悼の意を捧げるべきことに変わりありません。

このことを改めて強調した上で、今回の事件の背景を伝える報道を紹介していきます。周知の事実として、安倍元総理と「統一教会」との関係は近しいものでした。参院選が終わった後『カードで借金してでも献金しなさい… 元信者の証言「旧統一教会の本性」と「安倍一族との近すぎる関係」』という見出しのような記事を見かけるようになっています。

教団の記者会見後の『旧統一教会被害者弁護士ら会見 「献金の強要ないという説明はうそ」』という記事では、全国霊感商法対策弁護士連絡会が2021年9月に「統一教会」の友好団体のオンライン集会にビデオメッセージを寄せた安倍元首相に対し「お墨付きを与えることになる。安倍先生の名誉のためにも慎重に考えていただきたい」という抗議文を送っていたことを伝えています。

「政治家として配慮いただきたい、ということを繰り返しお願いしてきた」安倍元総理の銃撃事件、旧統一教会の記者会見を受け、全国霊感商法対策弁護士連絡会が声明』という記事の中では、弁護士連絡会の山口広事務局長の次のような生々しい実情を訴えた声も伝えていました。

私どもとしては安倍晋三先生にも、他の政治家に対しても、何回も統一教会の社会悪を考えたら、反社会的団体である統一教会にエールを送るような、そういう行為は止めていただきたいと。どんなに被害者が悲しむのか、苦しむのか、絶望するのか。しかも、新しい被害者がそれによって生み出されかねないということについて、政治家として配慮いただきたい、ということを繰り返しお願いしてきた。

しかし、残念ながら反共ということに共感を持つ議員の方々、あるいは統一教会のお金が最初は目的だったかもしれない。今回の選挙でも、あるいはその前の選挙でも特定の自民党の候補者を組織推薦候補として応援をし、信者組織の動員をかけてやってきたことを私どもは事実として認識している。

指摘されている選挙と「統一教会」との関係は『安倍元首相側近の井上義行氏が大炎上!旧統一教会の「全面支援」で当選していた』『「井上先生はもうすでに信徒になりました」旧統一教会側が参院選で安倍氏元秘書官を支援、宗教と政治の距離とは』という記事などから確認できます。

ちなみに『旧統一教会と「関係アリ」国会議員リスト入手! 安倍政権での重要ポスト経験者が34人も』という記事では「自民党議員が圧倒的に多い。衆院議員78人、参院議員20人が統一教会系の団体等との何らかの関わりが確認された。野党でも立憲民主党6人、日本維新の会5人、国民民主党2人が関わりを持っていた」と伝えています。

石塚元章氏 旧統一教会のトラブル「安倍元総理がご存じなかったはずはない。じゃあ、なぜ広告塔を…」』という記事の中で、CBC特別解説委員の石塚元章さんが「安倍総理を襲撃していいのか、というのはまったく別の話、これは大前提です」と前置きした上で、次のように語っていました。

詐欺グループの会社の宣伝にタレントさんが出てたってなると、問題になってタレントさんがしばらく番組に出られないとか自粛するとか、そういうこともいっぱいあるわけでしょ。それで言ったら、こういう“褒められたことをやってないよね”っていう組織の広告塔をやってしまったという事実は間違いなくあるんじゃないか。

共同通信の全国緊急電話世論調査で「襲撃事件は投票行動に影響があったかどうか」と尋ねたところ「影響があった」は15.1%、「影響はなかった」は62.5%でした。選挙特番「池上彰の参院選ライブ」の視聴者アンケートでは「与えた26%」「与えていない74%」という結果でした。

池上さんの選挙特番で大江麻里子アナウンサーは最初「与えた74%」と間違えて伝えていました。リンク先の記事『安倍元首相の銃撃事件は選挙結果に影響「与えた」が7割超 池上特番でアンケート』では間違えたまま訂正されていません。それほど安倍元総理の急逝は「大きな影響を与える」と思われていた表われだったようです。

全体的な投票行動に大きな影響を与えなかったのかも知れませんが、接戦区にとって20%前後の帰趨は選挙結果を左右します。新潟選挙区では「やっぱり安倍元総理の事件の影響はあったと思いますよ。調査を見る限りそこまではかなりデッドヒートだったのが、そこで一気に離されたっていうのはあるとは思いますね」という声も聞こえています。

鎮目さんは『テレビ局が「選挙前報道」に極度に“及び腰”になるきっかけとなった事件とは?』という記事も発信しています。このような経緯や現状を考えた時、やはり選挙前に「統一教会」という言葉をメディア側は自主規制していたように見てしまいがちです。

加えて、今回紹介したような報道が、参院選前に注目されることを安倍元総理の支持者らが懸念していた事実関係も明らかになっています。さらに「統一教会」の名称変更の問題を伝えている下記のような記事もあります。いずれにしても痛ましい事件を二度と起こさないためにも、事実関係を詳らかに把握していかなければなりません。

最後に、政権批判の立場を鮮明にしている「LITERA」の記事『片山さつきは警察庁長官を使い奈良県警に圧力! 自民党が隠したい安倍元首相と統一教会の深い関係、名称変更をめぐる疑惑』ですが、事実関係は誤りがないものと考え、参考までに伝えたい情報を抜粋して紹介させていただきます。

安倍派入りして先の参院選で当選を果たした片山さつき参議院議員が、なんと警察に情報を出さないよう圧力をかけたことを自慢げに明かしたのだ。

片山議員は13日午前9時半すぎ、極右経済評論家の・渡邉哲也氏の〈片山先生、安倍総理殺害に関して、奈良県警からメディアなどへの不確実な捜査中の情報漏洩が起きているように思われます。過去の国会答弁からも国家公務員法の守秘義務違反に該当すると考えられます。適切な対応をお願いできませんか?〉というツイートに、まず、〈長官は後輩、かつ知人なので、聞いておきます〉と返答。

それから半日後の同日夕方には、こんなツイートを投稿したのだ。〈警察庁長官に「奈良県警の情報の出し方等万般、警察庁本庁でしっかりチェックを」と慎重に要請致しました。これ以上の詳細は申せない点ご理解を。霞ヶ関を肌で理解する者同士の会話です。皆様の感じられた懸念は十分伝わっています。組織に完璧はありませんが、国益を損なう事はあってはなりません。〉

警察庁長官の中村格といえば、官邸の意向を受けて、安倍応援団ジャーナリスト・山口敬之氏の逮捕を圧力をかけて止めたことで知られる人物。片山氏はその中村長官に「霞が関を肌で理解するもの同士」、意図は「十分伝わった」と自慢げに語ったのだ。

統一教会が過去にあれだけ大きな社会問題になったにもかかわらず、いまも被害者があとをたたないのは、同団体の正式名称が2015年に「世界平和統一家庭連合」に名称が変更になったことが大きいと指摘されている。つまり、名称が変わったため、あの統一教会だとは知らずに入信してしまった被害者が多数いる可能性があるというわけだ。

ところが、この名称変更について、安倍政権が行政を歪めた結果ではないかという疑惑が浮上している。じつは、統一教会は1980年代から霊感商法が社会問題となったことから、各国で名称変更を進め、日本においても1997年から名称変更の申請をおこなっていた(しんぶん赤旗2015年9月29日付)。

だが、〈宗教法人を所管する文化庁宗務課は、これを頑として認証してこなかった〉。実際、前川喜平・元文科事務次官は〈1997年に僕が文化庁宗務課長だったとき、統一教会が名称変更を求めて来た。実体が変わらないのに、名称を変えることはできない、と言って断った〉(2020年12月1日)とツイートしていた。

ところが、第二次安倍政権時の2015年になって、文化庁は突如、名称変更の申請を認証したのである。18年間にもわたって申請を突っぱねてきたというのに、認めたのは何故なのか。この不可解な申請認証に対して、宗教関係者の間では「来夏に控える参院選のため、安倍政権の対策ではないか」と話題になり(「週刊朝日」2015年10月23日号/朝日新聞出版)、さらに対策弁護士連絡会が開いた全国集会では「統一協会が、関係の深い政治家を使って圧力をかけたのではないか」という疑いの声が上がっていた(前述・しんぶん赤旗より)。

申請を認証した2015年8月当時、文化庁を外局とする文科省の大臣を務めていたのは、安倍氏の盟友だった下村博文氏だからだ。下村氏は、2012年12月の文科大臣就任以降、統一教会系メディアである世界日報社の月刊誌「ビューポイント」に3回も登場。ちなみに2016年には世界日報社から6万円の献金を受けていたこともわかっている。

安倍政権誕生を境に、政界における統一教会の扱いが変わったという事象は、これだけではない。12日に開かれた対策弁護士連絡会の会見で、山口広弁護士は、第二次安倍政権誕生後の“ある変化”について、会見でこう語った。「これは本当に憂うべき事態だと思ったのは、安倍政権になってから、若手の政治家が統一教会のさまざまなイベントに平気で出席するようになりました。

それまでは政治家が参加しても、名前は出さないとか、あるいは統一教会側のほうも名前を伏せて『政治家が参加しコメントした』というようなことを言っていたが、最近は、若手の政治家がそういうところに大手を振って参加して、コメントするようになってきたんです。

それはなぜかと言うと、そうやって統一教会と近いということを我々さえも知るようになった、その政治家が、安倍政権のなかでは大臣や副大臣、政務官に登用される傾向が顕著になってきたんです。『自分が大臣や政務官に登用されるためには、統一教会と仲良くしたら、協力関係にあったほうが、早く出世できるんだ』という、そういう認識がだんだんだんだん浸透しはじめたんですよ。

| | コメント (0)

2022年7月 9日 (土)

明日は参院選、今、願うこと

金曜の昼、衝撃的なニュースに接することになりました。奈良市で参院選の街頭演説中だった安倍元総理が銃撃され、心肺停止状態で救急搬送されたというニュースです。

その段階でアナウンサーや松野官房長官らが黒い服に身を包んでいましたので、嫌な予感がしていました。残念ながら必死の救命治療も及ばず、午後5時3分、安倍元総理は67年の生涯の幕を閉じました。心からご冥福をお祈り申し上げます。

このブログを通し、安倍元総理の考え方や言動を数多く批判してきました。しかし、あくまでも個々の内容の是非を問題提起する立場からのものでした。当たり前なこととして、人格を否定するような言葉はもちろん、誹謗中傷の類いと見なされるような批判の仕方も慎んできました。

安倍元総理に限りませんが、批判的な意見を投稿する際、ご本人を前にしてもそのまま伝えられるような言葉を意識しています。このような考え方に至っている理由として「批判ありき」の言葉だった場合、安倍元総理を支持されている方々には届きづらくなると思っているからです。

より望ましい「答え」を見出すため、自分自身の考えが正しいと信じているのであれば、異なる立場の方々が「なるほど」と思えるような言葉を駆使しなければなりません。いろいろな「答え」を認め合った上いがみ合わないように努めながら言葉を競い合っていくことが重要です。

まして「気にくわない相手だから殺してやる」などいう発想は言語道断であり、暴力に訴える行為そのものが絶対許されません。言葉の競い合いを具現した選挙戦の最中、そのような蛮行を目の当たりにすることになった事態は様々な意味で残念でなりません。

逮捕された41歳の山上徹也容疑者は海上自衛隊員でした。その時、銃の取り扱いの訓練を受けていました。改憲論議では「自衛隊員の名誉のためにも」という発言を繰り返していた安倍元総理が、元自衛隊員の凶弾に倒されたことは切ない話だろうと思っています。

山上容疑者は「特定の宗教団体とつながりがあると思い込んで犯行に及んだ」と供述しているようです。犯行が報道された後、早い段階で「安倍元総理の政治信条に対する恨みではない」という供述内容が伝えられていました。参院選の投票日を直前にしたタイミングであり、このことが素早く報道された意味は大きいものと考えています。

政治的な思惑や憶測のもと、いわゆる右や左の立場の違いからの論評が飛び交うような事態を抑える効果を与えていたはずです。今後、このような悲惨な事件を未然に防ぐためにも、容疑者の動機や背後関係の有無について徹底的に解明し、詳らかに公表して欲しいものと願っています。

参考までに今回の事件後、ネット上で目に留めた「犯人は在日」などSNSでヘイトデマ拡散 「投稿前に再考を」』『「嫌悪感情の容認がテロ行為へ」 ジャーナリスト・安田浩一氏』『「安倍政権の検証は今後も必要」元経産官僚・古賀茂明さん』という記事を紹介します。

さて、明日は参院選の投票日です。各党とも「暴力に屈しない」という姿勢を示すためにも、選挙戦の最終日となる土曜日は幹部の遊説など選挙活動を予定通りに進めることを明らかにしています。このような判断を強く支持し、私たち有権者も卑劣な事件の影響に左右されず、冷静な判断のもとに貴重な一票を投じていかなければなりません。

このブログではカスハラに対する考え方」「不安定雇用の会計年度任用職員」という職場課題を中心にした記事を2週続けていました。今週末に投稿する記事は市議選と参院選に向けて間近に迫った市議選と参院選今、政治に対して思うこと」に連なる内容となります。

昨年10月「明日は衆院選、雑談放談」というタイトルの記事を投稿しています。当初、今回も「明日は参院選、雑談放談」というタイトルを考えていました。安倍元総理の訃報に接し、「雑談放談」は馴染まず「今、願うこと」に変えていました。さらに次のような内容が書き出しの文章になるはずでした。

新型コロナウイルスの新規感染者数が急増しています。社会経済に過度な影響を与えず、国民の納得感や安心感を高められる感染対策が求められています。岸田政権の正念場だろうと思っていますが、私自身の考えは今年1月の記事「再び東京に蔓延防止等重点措置」の中で綴っていたとおりです。

パンデミックの終息が宣言されるまで必要な感染対策は緩められないものと考えています。新型コロナは2類感染症とされていますが、季節性インフルエンザは5類です。この段階で新型コロナをインフルエンザと同じ分類にすることは大半の人が違和感を抱くかも知れません。しかし、国民にとって最も望ましいことは医療崩壊を防ぎ「守れる命、守るべき命」を守ることです。

類相当を支持する医療関係者からは「メリットだけを増やし、デメリットは防げるよう特例を整備すべき」という意見も示されています。新型コロナを2類から5類に改めることで、医療的にも社会経済的にも大きなメリットが探れるのであれば、それこそ「決断と実行」が迫られているはずです。

参院選を明日に控え、新型コロナとの向き合い方など改めて政治的な論点の数々を提起するつもりでした。インターネット選挙解禁となっても「再び、地公法第36条と政治活動」という記事に示しているとおり選挙期間中は推薦候補者の固有名詞を控えるなど一定の制約を課しています。

そのような点を踏まえた上、メディアが選挙期間中でも政治的な話題を取り上げていることと同じ立場で、これまで当ブログでも政治評論のような内容を綴っています。同時に投票行動の参考とすべき情報を提供する場の一つとして、目に留めていたサイトの紹介にも努めています。

今回の記事に向け、いろいろなサイトの紹介を考えていました。ここまでで相当な長さの新規記事になっていますので、あまり論点は広げず、サイトの紹介にあたっての注釈等も必要最低限にとどめます。それぞれのサイトの見出しを紹介し、興味を持たれた方はクリックし、リンク先に飛べるようにしています。

まず『反骨のコラムニスト小田嶋隆さんの発言を振り返る  東京五輪の矛盾や安倍政権の罪を指摘』です。安倍元総理は理不尽な死を強いられたことで功績のみが語られがちになるのかも知れませんが、反省すべき点が多かったことも忘れてはならないはずです。

続いて『「弱い子がいじめられる」=自民・麻生氏』です。短い記事であり、下記の通り全文を紹介します。いじめ自体の認識も疑問ですが、現在の国際社会の中での安全保障の方向性の是非を大きく問うような発想です。自民党の重鎮である元総理の発言として注目していました。

自民党の麻生太郎副総裁は4日、千葉県市川市で街頭演説し、ロシアによるウクライナ侵攻に触れた上で「子どもの時にいじめられた子はどんな子だった。弱い子がいじめられる。強いやつはいじめられない」と語った。その上で「国も同じ。強そうな国には仕掛けてこない。弱そうな国がやられる」と述べ、安全保障関連法などを整備してきた意義を強調した。【時事通信社2022年7月4日

麻生副総裁のような自民党を代表する立場ではありませんが『生稲晃子氏「富裕層への課税強化」に「反対」「賛成」と真逆の回答 あまりの矛盾にツッコミ殺到』『山際大臣「誤解を招いた」も撤回はせず 「野党の話聞かない」発言で』『【参院選】自民党、失言・暴言・迷言祭り…麻生太郎「弱い子がいじめられる」桜田元五輪相「女性は男に寛大に」』など自民党関係者に関わる報道が目立っています。

参院選 自民党・松山三四六候補が不倫の末、中絶同意書に偽名で署名していた』『自民・松山三四六氏の不倫報道謝罪がプチ炎上!「選挙後に説明」の摩訶不思議』という過去の不祥事が暴露された問題もあります。候補者の資質を問う情報として「選挙後」ではないタイミングでの報道こそメディアの貴重な役割だと受けとめています。

政党自体を評価する情報として『参院選候補者アンケートで維新の極右ぶりが露呈! 防衛費倍増、敵基地攻撃、改憲に賛同する候補者が自民党より多かった』というサイトの記事にも目を留めていました。各党に所属している政治家の皆さん一人一人の資質や力量は異なり、一括りに評価してはいけないものと思っていますが、投票先を決める際の貴重な情報であることも確かです。

最後に、選挙啓発に務める自治体職員の立場から「貴重な一票をお持ちの有権者の皆さん、明日日曜、まだ投票されていない場合、必ず投票所に足を運びましょう 」という言葉を今回の記事でも強調させていただきます。さらに組合役員の立場からは一般論として、一人でも多くの自治労組合員の皆さんから組織内議員の存在の大切さにご理解いただけることを強く願っています。

| | コメント (0)

2022年7月 2日 (土)

不安定雇用の会計年度任用職員

最近の記事「間近に迫った市議選と参院選」の中で、連合三多摩の政策要請書に関わる作業部会に出席していたことを記していました。毎年、市長会や各自治体首長あてに政策要請書を提出しています。その原案に会計年度任用職員に関わる次のような内容がありました。

会計年度任用職員制度の導入にあたっては公務における同一労働同一賃金の趣旨に沿って、当該自治体常勤職員との不合理な待遇の解消に向けより一層、労働条件の改善と必要な財源を確保すること。

この項目の「…確保すること。」の後に次の文章を付け加えたいと私から提起していました。「また、法改正が必要な勤勉手当の支給や任期の定めのない短時間勤務職員制度の導入に向け、その必要性について東京都や国に働きかけること」というものでした。

自治労は総務大臣あての「会計年度任用職員の処遇改善にむけた法改正を求める署名」に取り組んでいます。その署名の要請項目の柱となっている内容だったため、私が出席した作業部会の中で文章の追加を要望していました。

作業部会は3つに分かれています。それぞれの作業部会で検討した内容を政策要請書案としてまとめ、政策プロジェクトと呼ばれている全体会議で最終的に確認する運びとしています。

政策プロジェクトは先週火曜午後に開かれています。その会議の中で「勤勉手当というものが分かりづらい」という意見が民間労組の方から示されました。公務員のボーナスは期末手当と勤勉手当を合わせたものとなっています。一時金や賞与とも呼びますが、正式名称は期末・勤勉手当となります。

会計年度任用職員には勤勉手当が支給されていません。期末手当に限る支給自体「同一労働同一賃金」の考え方に反していることですが、2年続けて人事院や人事委員会は期末手当のみの削減を勧告しています。そのため、会計年度任用職員にとって年間一時金の削減率は常勤職員の倍に相当します。

会計年度任用職員の勤勉手当や生活関連手当(扶養手当や住居手当等)の支給に向けては法改正が必要であり、自治労全体の取り組みとして署名活動などに力を注いでいます。自治労本部と総務省との必要な折衝の橋渡し役としては、自治労組織内の国会議員の皆さんが尽力されています。

ちなみに参院選に向けて、このような役割を担う自治労組織内議員の存在の重要さについては、私どもの組合員の皆さんに繰り返し訴えているアピールポイントです。

話は政策プロジェクトの場面に戻します。勤勉手当という呼称の分かりづらさが指摘された際、私から次のように発言していました。「せっかく入れてもらいながら恐縮ですが、追加した文章すべて取り下げることを改めて提案します」という発言でした。

作業部会で私自身が発案した追記でしたが、「必要性について東京都や国に働きかけること」という一文は自治体当局に逃げ道を与えてしまうような懸念が芽生えていました。勤勉手当や短時間勤務職員制度に関しては法改正が必要かも知れませんが、現行制度のままで雇用継続の問題などは一定の解決策を探れるはずでした。

このように考え始めていたところ民間労組の方の発言が渡りに船のタイミングとなり、「また、法改正が…」以降の取り下げを提案させていただきました。連合三多摩の事務局の皆さんにはいろいろお手間を取らせてしまい、たいへん失礼致しました。

さて、私どもの組合における会計年度任用職員制度を巡る最も大きな課題は雇用継続のあり方です。たいへん重要な課題として認識している中、最近『「国によるパワハラ」3年に1度失職するハローワーク職員の憂うつ』という見出しの記事が目に留まっていました。

公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)は5月2日から全国の公務現場で働く非正規職員に対して行ったアンケートを、6月4日に終了した。今月末に結果が集計される。昨年に続いて2度目の調査では、715件の回答があった。はむねっとは、7月の参議院選挙に向けて非正規公務従事者の仕事と生活の安定を求めている。

コロナ禍で失業状態が長期化する中で、ハローワーク(公共職業安定所)は利用者の生活不安の声に耳を傾けつつ、適性を見極めて就職あっせんする心強い存在だ。各都道府県の労働局の雇用失業情勢に応じた対策をする窓口となり、就職困難者を支援する最後のセーフティーネットともいえる。

だが、利用者に対して失業を解消する立場のハローワークの職員が、実は自らの雇用も守られていない。「国によるパワーハラスメント」とも呼ばれる制度によって、非常勤職員が職を追われ精神的苦痛を強いられている実態があるのだ。

ハローワークで働く浜名みどりさん(仮名)が相談業務への異動を希望したのは、7年ほど前に対応したある一本の電話がきっかけだった。電話の主は男性で、失業と同時に収入が途絶え、長期に電気代を滞納していた。電気を止められてしまったのでなんとか国に援助してもらえないか、という訴えだった。男性には子どもがいた。

当時、別の部署で勤務していた浜名さんは「市役所などに相談するよう」伝えるだけで電話を切った。そのあと男性がどうなったかはわからない。「何もできず、何も言えなかった」。自分にもどかしさだけが残った。「ずっと心残りでした。話をゆっくり聞いて、その人に合った仕事を見つけて、就職先を紹介できるようになりたかった」

浜名さんは、この一本の電話を契機に相談業務の部署に異動。これまで多くの利用者の相談に乗り、就職に結びつけてきた。時には職業訓練を通して資格を取得するなどして、新たな道を切り拓き、利用者が自分で思い描いていた仕事に就けた姿を見るときに「やりがいを感じる」と浜名さんは言う。「時々、就職の報告に来てくれたりするので、そういうときは嬉しいですね」

浜名さん自身がこの仕事に就いたのもハローワークを通してだった。家から近く、週末が休みで残業はない。子育てが一段落した時期に初めてハローワークを使い、この上ない適職を見つけた。偶然とはいえ、「ライフワークのようにやりがいを感じている」とまで言うほどこの仕事が好きになった。

ところがそこには意外な落とし穴があった。1年契約という短期雇用。契約の更新は毎年あるが、3年が上限と決められているため、それ以降は公募に挑戦しなければならない。就職して13年目のベテランになるが、経験値で特別扱いされることもなく、3年ごとに履歴書を提出して、外からの応募者に混ざって採用の可否を待つ。

浜名さんは別部署からの異動が一度はあったものの、それ以来は「幸い」自分が希望した就職あっせんの部署に戻ることができている。しかし実際、「同僚では、そうでない人が多く、戻れない人もいる。複雑です」

取材の間、浜名さんは「辛い」という言葉を繰り返した。無理もない。着任して3年目に当たる非常勤職員は全員、いったん失職することが避けられないからだ。同じ仕事を続けるには、外からの就職希望者と並んで公募に申し込まなければならない。もう何年も同じ部署で働いてきた浜名さんのような人でも、採用される確証はない。

より適任な人が他にいるかもしれないーー。利用者からの就職相談に対応するハローワークの職員だからこそ、よくわかる。ハローワークの相談業務の一環に、就職先に宛てた紹介状がある。自分が対応する相談者がハローワークの公募に申請すると言えば、その適性も合わせて検討し、希望があればもちろん紹介状を書く。

やりきれないのは、その仕事が3年の契約満了を迎えて職場を追われた同僚や友人の職であるときだ。それでも相談者には、その就職口をあっせんする。さらに、紹介状や推薦状はハローワーク職員であれば誰でもアクセスできるため、公募に並ぶ同僚でさえ目にすることができる。

「見ようと思えば、同僚が別の人を推薦しているのがわかる。自分のところにこんなにたくさん就職希望者を紹介していると見ることができる。今回そういうケースがありましたので、すごく辛いですね」

同僚であればまだましな方かもしれない。中には、自分が職を追われる立場であるにもかかわらず、その自分のポストに就職希望する利用者のために、その人の紹介状を自分で書かざるを得ない人もいるのだ。引き裂かれる思いを抱きつつも、職務を全うせざるを得ない。

ハローワークの仕事は、今も人気職だ。午前9時から午後5時までの勤務に残業はなく、土日はきちんと休むことができる。労働組合の追及で、2年前、非常勤職員も夏休暇を取得できるようになった。しかし、浜名さんは「休みなんていらないから、せめて雇用を安定させてほしい」と言う。

当初、浜名さんがハローワークに就職したときは、たまたまその年の予算組みによって人事枠が増えたため、誰も失職することはなかった。しかし公募を来年に控える今は、緊張状態が続く。今年も1月の前から辛い気持ちを抱え、同僚を横目に来年は自分かーー、という考えを振り払えずにいる。

「これまでは幸いにして、誰かが削られたところに入るという悲しい経験をしたことがない。でも来年は公募なので、わからない。担当部署の予算が減る場合は必然的に私が切られることが想定される」

同じ職場内で、経験値や仕事の能力や人柄といった適性ではなく、時期が来たから順に切っていくーー。それがもっとも堪え難いと浜名さんは言う。

「他の部署に応募することもできるが、そこの予算も削られているかもしれない。誰かを落として私が入ることになるのは耐え難い。生活がなければ去るところですが、生活があるので採用募集が出たら応募はします。やりますけど、いやな気持ちは変わらない」

浜名さんはかろうじて精神の安定を保っているが、2021年春、公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)が公表した調査(有効回答1252件)では、こうした制度の下で9割に上る非正規公務員が精神的に不安を抱えていることがわかった。

労働局に勤務する女性は「年度末が近づくにつれ、不安や不満の中、日々ストレスは増すばかり。雇い止めとして簡単に失業者を作り出す労働行政の非常勤職員に対する政策は、国によるパワーハラスメントでしかありません」(全労働省労働組合調査)と語る。

ハローワークの職員を含め、公務職場の人事は各省の予算によって左右され、時勢にもともなって人員が増減する。例えば、コロナ禍の緊急対応が必要な現場では、事業の予算が増額。それに伴い、増員を求められるところも多かった。しかし、コロナが収束に向かえばその部署は人数が減ることが予想され、予算が多くついた別部署が増えるだろう。

どこにどれだけの予算がつくのか、部署の人数が増えるか、減るかは現場レベルでは誰もわからない。それは他の企業でも同様だ。例年、公務職場の予算決定後に人事が決まるのは1月下旬だ。この時期、非常勤職員は極度の不安にさらされる。

明らかに予算や雇用の調整弁という扱いである非常勤職員は現場で大半を占め、業務を中心的に担う。一方、上司にあたる管理職の正職員は2年に1度の転勤があるため、異動先では非常勤職員から仕事を教えてもらうほどだ。

ただ非常勤職員の採用には、上司である現場の正職員の意見が大きく影響するため、当然、正職員に気に入られようと機嫌をとる人は一定数いるという。逆に、安心して働けるよう雇用の安定や賃金アップなど労働者として当然のことを求めたりすれば、たちまち道は閉ざされる。

「何かを言うことによって『気に入らない』と思われたら怖いし、反対にこの人間関係の良し悪しを利用して気に入られようとする人もいるので、『好き嫌いの人事なのか』と思うときもあります。やはり盾をつくことは怖いけれど、私はなかなか気に入られるようなこともできないので、粛々と仕事をするしかないですが」(浜名さん)

失業者が自分に合った仕事を見つけ、希望ある生活を立て直すことができるようあっせんするハローワーク。そこで働く非正規職員こそ、まず安定した仕事と生活を保障されるべきではないだろうか。取材・文:松元千枝【FRIDAY DIGITAL 2022年6月13日

前回の記事「カスハラに対する考え方」の中でもメディアの記事全文をそのまま紹介しています。いつも長いブログ記事が輪をかけて長くなってしまいますが、多くの方々に拡散したい情報であるため引用元を明らかにしながら記事内容の全文を掲げています。

このブログでは2年前に「雇用継続の課題」という記事を投稿していますが、上記のメディア記事のとおり会計年度任用職員の皆さんの大半は不安定な雇用のあり方に大きな悩みを抱えています。地方公務員法と地方自治法の一部が改正され、2020年4月から会計年度任用職員制度がスタートしました。

法改正時の国会の附帯決議が公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求めていることを踏まえ、非常勤職員である嘱託職員の皆さんの待遇改善の機会として労使交渉を進めてきました。しかしながら私どもの組合にとっては非常に悩ましい事態を強いられています。かえって法改正が逆風となり、雇用継続の問題が後退しかねない局面となっています。

非常勤職員の問題はパート労働法などが適用されない「法の谷間」と言われていました。地方公務員法上の嘱託職員は学校医のような臨時的・一時的な雇用のみを想定していたため、昇給制度や手当支給に異議が差し込まれ、3年や5年で雇い止めされる実態につながっていました。そのような位置付けの中、これまで任用根拠をはじめ、各自治体の独自な判断で非常勤職員の待遇を決めていました。

私どもの組合は嘱託職員の皆さんが以前から直接加入しています。そのため、嘱託組合員の待遇改善が継続的な労使交渉の課題とされてきました。私どもの市の嘱託職員も当初、雇用年限5年という方針が示されていました。それに対し、労使交渉の積み重ねによって、実質的に雇用年限による雇い止めを見送らせることができていました。

高年齢者雇用安定法が改正され、使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められています。このような法改正を追い風とし、嘱託職員の皆さんの雇用継続も65歳まで担保する労使協議結果を得てきました。

しかしながら会計年度任用職員制度に関わる法改正後、総務省から「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」が示され、その中には「他団体との均衡をはかること」という一文が盛り込まれました。そのため、他団体との均衡という理不尽な動きが強まり、前述したとおり雇用継続の問題に関しては積み重ねてきた成果が後退しかねない事態に直面しています。

国家公務員の職場における現状を追認したものと思われますが、総務省の示したマニュアルでは公募によらない再度の任用を2回としています。上記のメディア記事の中で伝えているとおりハローワークの非常勤職員は「契約の更新は毎年あるが、3年が上限と決められているため、それ以降は公募に挑戦しなければならない」という不安定雇用にさらされています。

都内の自治体の大半は東京都のルールの横並びを強いられ、公募によらない再度の任用は原則として連続4回としています。私どもの組合も同様な内容で労使合意していますが、これまでの労使確認事項も尊重していくことを付け加えていました。

この「尊重」という趣旨について労使で認識に隔たりがあり、市当局は5年に1回、現職者と新規採用希望者が競合する公募による採用試験を予定しています。しかし、組合は下記のような考え方のもと対応案を市当局に提起しています。

【組合の考え方】

* これまでも年度単位の雇用ですが、恒常的な業務に従事する嘱託組合員はその勤務経験を尊重しながら65歳までの雇用を確保してきました。

* 市当局側も培ってきた知識と経験を重視しているため現職者には「アドバンテージがある」という見方を示しています。このような経緯を踏まえた際、5年に1回、現職者と新規採用希望者が競合することについて適切なのかどうか組合は疑問視しています。加えて、大規模な競争試験を実施するコストや職員の負担等も考慮すべき点だろうと考えています。

* 選考において公募を行なうことが法律上必須とされていません。そのため、狛江市や板橋区などは自主的な判断のもと公募によらない再度の任用の上限回数を定めていません。

* 高齢者雇用促進法では使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められています。今後、70歳までの雇用確保を「努力義務」とする動きがあり、公務員の定年は65歳まで延長されていきます。それにも関わらず、会計年度任用職員だけが不安定な雇用を強いられることは、ますます法改正時の国会附帯決議の「公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応」から離れていく考え方だと言わざるを得ません。

【組合の対応案】

人事評価による再度の任用は原則として連続4回とする。現職者の培ってきた業務に対する知識や経験を重視し、5回目に際しては引き続き任用を希望する現職者を対象とした選考試験を実施する。選考方法は面接試験とする。欠員が生じる場合などは新規採用希望者を別途募る。その際は広報等を通じて募集する。

今回紹介したメディア記事の中で示されているような非常勤職員の皆さんの不安感を取り除き、安定した雇用継続のあり方を探ることこそ、労働組合に課せられた重要な役割です。会計年度任用職員制度がスタートし、3年度目に入っています。組合の問題意識に沿った解決をはかるためには今年度が正念場です。

私自身の組合役員としての任期は残り半年を切っています。会計年度任用職員の雇用継続のあり方に関しては、ぜひとも望ましい道筋を見出した上で引き継ぐことができるように精一杯頑張っていきます。また、組合が推薦した市議の方とも4年ぶりに連携をはかれるため、この問題においては一般質問等に向けて相談させていただければとも考えています。

| | コメント (2)

« 2022年6月 | トップページ | 2022年8月 »