今、政治に対して思うこと
私の勤めている自治体の市議会議員選挙は先週日曜に告示され、明日投票日を迎えます。定数28名に対し、36名が立候補し、今回も激しい選挙戦が展開されています。前回記事「間近に迫った市議選と参院選」の中で「組合員にとってどうなのか」という判断基準をもとに推薦する候補者を決めていることをお伝えしています。
一方で、以前の記事「再び、地公法第36条と政治活動」に記しているとおり違法性が問われかねない活動には細心の注意を払っています。したがって、この場を通して声を大にして訴えるべきことは「貴重な一票をお持ちの有権者の皆さん、明日日曜、まだ投票されていない場合、必ず投票所に足を運びましょう! 」という言葉であることを強調させていただきます。
さて、今回の記事タイトルは「今、政治に対して思うこと」です。前回の記事は気に留めていた報道の紹介を中心にまとめていましたので、私自身の思いが充分伝わっていたのかどうか自信ありません。そのように考えていた矢先、文春オンラインの興味深い記事『「君はアベノミクスを批判するのか?」と怒りの電話 “反論する安倍さん”が沈黙した「不都合な出来事」とは』を目にしていました。
毎日新聞のコラムで与良正男氏は、《安倍氏はアベノミクスを少しでも否定されるのが許せないのだろう。内政も外交も、自分が進めた政策は全く間違っていなかったーーと信じて疑わないのだと思う。》(毎日新聞6月8日)
だから岸田首相の政策に安倍元首相が次々と注文をつけて、岸田氏があっさりと妥協する。そんな政治が繰り返されていると。「いっそのこと、自民党が二つに分かれた方が夏の参院選は投票しやすくなるのに……。そう考えるのは私だけだろうか。」(同前)
あ、この感じ思い出した。昨年の岸田政権発足当初に感じたタブロイド紙の変化と同じだ。今まで政権を擁護していた夕刊フジに岸田批判が多くなったのだ。政権批判の日刊ゲンダイは引き続き岸田批判。
こうなると岸田氏はピンチのようにも思えるが実はそうではない。なぜなら「野党」が埋没しているからである。まるで政党が自民党しかないようなマジックになっていたのだが、今回の「岸田VS安倍」もその続きに思える。
岸田総理には「ハト派」のイメージやリベラルな立場があるため「今まで政権を擁護していた夕刊フジに岸田批判が多くなった」という見方につながっているようです。その一方で『岸田内閣の支持率が高い理由 論争なくマスコミも批判せず…参院選後に「緊縮」の嫌な予感』という夕刊フジの記事も目にしていたため、なかなか興味深い対比を感じていました。
野党も巻き込んだ争点がないので、マスコミは岸田政権を批判しない。もともと左派色のある岸田政権なので、左派系メディアは批判しにくい。一方で、岸田政権に近いメディアも当然、批判しない。首相の個人的なスキャンダルもなく、マスコミの出番はなくなっている。そうしたなかで外遊や各国首脳との会談でメディアへの露出は多いことが、政権の高い支持率につながっている。
これを裏付けるデータもある。安倍政権とその後の菅義偉政権は若者の支持率が高く、マスコミ報道に左右されやすい傾向がある高齢層の支持率が低かった。岸田政権はその逆だ。岸田政権は、マスコミで批判がなく露出度が高いので、高齢層ほど支持率が高いという見方ができる。まさに、政策より人柄のなせるものだろう。
嘉悦大教授の高橋洋一さんは「もともと左派色のある岸田政権なので、左派系メディアは批判しにくい。一方で、岸田政権に近いメディアも当然、批判しない」という見方を示していました。毎日新聞の与良正男さんと高橋さんは同じような背景を認識した上で、岸田総理に対するメディアの評価については、それぞれ異なる見方を示しています。
ただ言えることは、どちらも支持率の高さにつながるという岸田総理からすれば歓迎すべき見方でした。私自身も前回記事の中で触れたとおり安倍元総理、菅前総理に比べれば岸田総理自身の言動を批判する場面が減っています。しかし、安倍元総理の強い影響を受けている現状が否めないため、参院選の争点とすべき事例は数多くあるものと認識しています。
このように考えていくと与良さんの「いっそのこと、自民党が二つに分かれた方が夏の参院選は投票しやすくなるのに」という言葉が、私自身にとって最も共感している見方だと言えます。6月22日公示、7月10日が投開票日に確定した参議院議員選挙は残念ながら非常に争点の分かりづらい選挙戦となりそうな気配です。
上記記事のとおり見た目は右から左まで支持層を広げた岸田総理であるため、リベラルさを重視する野党が戦いづらくなっています。それに対し、野党第一党である立憲民主党は安倍元総理の影響力を断ち切れない岸田総理の弱点を突き、明確な対抗軸を打ち出すべきところだと考えています。
しかしながら今のところ経済政策や安全保障の問題を通し、幅広い支持を得るための説得力ある言葉での情報発信は弱いように感じています。これから様々な場面で党首討論が繰り返されていくはずですが、立憲民主党も数多い野党の一つという見られ方にとどまり、反転攻勢する機会も見出しづらいように思えています。
最新刊の月刊自治研6月号に「政治を動かすために」という特集記事が掲げられています。その中の『参議院選挙で問われるもの ー日本の民主主義を守るために』という一橋大学教授の中北浩爾さんへのインタビュー記事を通読していました。やはり中北さんも岸田総理と野党との関係を次のように見ています。
ある時期以降、立憲民主党の枝野さんも「リベラル保守」、かつての自民党宏池会の立場をとると発言していました。それは国民民主党の玉木さんも同じです。右寄りの安倍政権への対抗軸として、野党側が宏池会の名前を持ち出していたので、本物の宏池会の岸田政権が誕生して、野党としては差別化がはかりにくく、攻めにくいかもしれません。
上記の言葉は与良さんと高橋さんに相通ずる見方です。岸田政権の「攻めにくさ」は確かにありました。トリクルダウンでは格差是正の効果が乏しく、分配を政策的に強化するため岸田政権は「新しい資本主義」という看板を掲げていました。
しかし、金融所得課税の強化という方針は実施が見送られたままで、アベノミクスとの違いが明確ではありません。このあたりを野党側が攻めるべきポイントだろうと思っていますが、中北さんは「野党も分配一辺倒でいいというスタンスではないはずです」と見ています。
その言葉の後に中北さんは「岸田政権と野党の違いは、成長と分配の好循環をどういう形で実現するかではないかと思います。たとえば、大企業・財界と一般の人々のいずれを重視するかの違いです」と続けています。
7月10日の参院選に向け、自治労の組織内候補が所属している立憲民主党には中北さんの語るような立場で、岸田政権との違いを分かりやすい言葉で訴えて欲しいものと願っています。岸田政権が看板倒れになっているのは経済政策だけではありません。「ハト派」の看板も怪しくなっています。
国民の生命を守るための安全保障政策を重視すべきという立場に与党も野党も大きな違いはないはずです。その上で、どのような方向性で進めるのか、具体的な施策をどう考えるべきなのか、個々の選択肢によって各党の理念的な立ち位置が枝分かれしていきます。
防衛費を増大させていくことが不可欠なのか、敵基地攻撃能力を持つことが有益なことなのか、逆に軍拡競争は安全保障のジレンマに陥るため一触即発の危機を招くのではないか、このような視点からの問題提起が必要です。安全保障のあり方は「ハト派の重鎮」を失望させている岸田総理との対抗軸にすべき争点だと考えています。
「官から民へ」の大きな流れのもとに公共サービスの分野は切り刻まれてきました。その結果としてコロナ禍という未曾有の危機に直面し、保健所の機能や公的医療体制の弱さが浮き彫りになっています。このことも立憲民主党が与党側との対抗軸として、これまで以上に強く打ち出していくべき争点だと思っています。
公共サービスの大切さを訴え続けていくためにも自治労組織内候補を国会に送り出す意義があります。インターネット選挙解禁となっても、このブログでは選挙期間中は候補者の固有名詞を控えるなど一定の制約を課しています。6月22日の公示を控え、鬼木まことさんという固有名詞を出せるのも今回が最後となる予定です。
私どもの組合は自治労組織内候補の鬼木さんの推薦を決めています。働く者の立場を重視した国会活動に取り組んできた江崎孝さんの後継者として、鬼木さんは立憲民主党比例代表区の新人候補者として出馬します。参院選比例代表の選挙は政党名か、個人名を記して投票します。鬼木さんの勝利のためには2枚目に配られる投票用紙に個人名を記すことが欠かせません。
私たち公務労働者の働き方は法律や条例によって大きく左右されていきます。直近の一例として、職場署名に取り組んだ会計年度任用職員の勤勉手当支給を実現させるためには法改正を必須としています。このように参院選で推薦する候補者を決めることも、組合員にとって必要なことだと判断しているからです。
鬼木さんは公共サービスの「誠」という旗を掲げ、公助を軸とした社会の実現をめざしています。格差のない持続可能な社会の実現に向けては新自由主義からの脱却を訴えています。さらに平和な国際社会の実現に向け、平和憲法を持つ国としての役割を自覚し、その役割を発揮できる外交を推進することを公約としています。
今回の記事は「今、政治に対して思うこと」というタイトルを付けて書き進めてきました。タイミング的に鬼木さんに関する記述も多くなりましたが、前述した岸田政権との対抗軸を重視した上で、より望ましい政治の実現のためにも鬼木さんの力が必要だと思っています。
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コメント
政治にうつつを抜かす暇があったら自分らの仕事くらいまともにやれよ
今度の選挙公報の遅配トラブルはなんだありゃ
責任取れ
委託した業者に責任なすりつけるのは筋がとおらないぞ
それともなにか?役所ぐるみで選挙結果を操作するために仕組んだ不正なのか
説明しろ
投稿: 市民の声 | 2022年6月21日 (火) 09時09分
市民の声さん、コメントありがとうございました。
選挙公報の遅配トラブルの件につきましては、たいへん申し訳ありません。委託した業務の進捗を逐次確認し、遺漏のない結果を出すことが自治体の責任です。今回のトラブルを教訓化し、再発防止に努めていかなければなりません。
なお、市のホームページにお詫びとトラブルに至った経緯について掲げています。さらに遅配の理由等の詳細が明らかになった際は周知されていくものと考えています。
投稿: OTSU | 2022年6月25日 (土) 04時41分
正職員の高給を維持するため会計年度任用職員やパソナテンプを利用する自治労が、組織内議員を送り込んでさらに儲けようとしているさまは実に見苦しい。さらには低所得者層をさらなる苦境に追いやる消費税の19%への税率アップを経団連と一体化して主張している自治労はまさに悪の公然結社と言えるであろう。
投稿: れなぞ | 2022年7月 1日 (金) 21時04分
れなぞさん、コメントありがとうございました。
批判的なご意見もしっかり耳を貸していかなければなりませんが、事実関係から離れた内容だった場合、誹謗中傷の類いとなりますのでご注意ください。参考までに以前の記事を紹介します。ぜひ、このような点についてよろしくお願いします。
2013年3月23日(土) 批判意見と誹謗中傷の違い
http://otsu.cocolog-nifty.com/tameiki/2013/03/post-468b.html
投稿: OTSU | 2022年7月 2日 (土) 07時59分