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2022年3月20日 (日)

問われている平和の築き方 Part2

たいへん残念ながらロシアによるウクライナでの惨劇は止まっていません。プーチン大統領はモスクワで開かれた20万人集会で「軍事作戦の目的は市民を苦難と大量虐殺から救うことだ」と演説していますが、そもそも下記の報道のような事実を認識した上で強弁しているのでしょうか。

ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア軍による民間人への無差別攻撃が相次いでいる。16日には、同軍に包囲されてきた南東部の港湾都市マリウポリへの空爆で、避難所になっていた劇場が大破。1千人近い避難民がいた可能性があり、ロシアへの非難が強まっている。

ウクライナ検察は17日、劇場には約1千人がいて、多くは女性と子どもだったと発表した。劇場の前後の敷地には、白い大きな文字で「子どもたち」とのロシア語が記されていた。ロシア軍に空爆しないよう訴えるメッセージだったとみられる。

避難所は劇場の地下にあり、ウクライナの国会議員セルゲイ・タルタ氏によると、避難所そのものは爆撃に耐えた。一夜明けてがれきが撤去され、救助活動が続いているという。ウクライナ・メディアの「キエフ・インディペンデント」は17日、「130人の生存者が救出された」と伝えた。【朝日新聞2022年3月17日

「130人の生存者が救出された」ということは900人ほどの子どもや女性がロシアの無差別攻撃によって殺戮された事実を刻んでいるのかも知れません。前回記事は「問われている平和の築き方」でした。今回は記事タイトルに「Part2」を付けて、前回記事の中で綴った内容を補いながら話を広げていくつもりです。

水曜の深夜、宮城、福島両県で震度6強の揺れを観測し、首都圏を含む広範囲で安眠を破る地震に見舞われました。前回、大地震と戦争の大きな違いを強調しています。自然の脅威は人間の「意思」で制御することはできません。しかし、戦争は人間の「意思」によって制御できるという違いです。

ロシアによるウクライナ侵攻は、北京冬季オリンピック・パラリンピックに合わせて国連で採択された休戦決議の期間中に引き起こされた。国際オリンピック委員会(IOC)は24日、ロシアが決議に違反したとして「強く非難する」とする声明を発表した。

決議は開催国・中国を中心に、ロシアを含む173の加盟国が共同提案して各国に休戦を求めているが、法的拘束力はない。IOCはトーマス・バッハ会長が20日の北京冬季五輪閉会式のあいさつで、アスリートが示した平和と連帯を政治指導者にも求めたと強調した。

五輪を巡っては、2008年の北京夏季五輪開会式当日にロシアとグルジア(ジョージア)の軍事衝突が始まったほか、14年のソチ冬季パラリンピックの直前にも開催国のロシアによるクリミア半島への軍事介入があった。

五輪期間中の休戦決議は古代オリンピックの故事にちなむもので、昨年12月に採択された北京冬季五輪の決議の期間は五輪開幕7日前の1月28日からパラリンピック閉幕7日後の3月20日まで。中国の人権状況を懸念する日米豪印は加わっていない。【毎日新聞2022年2月24日

北京冬季オリンピックが閉会したタイミングでロシアはウクライナに侵攻し、パラリンピックの開幕までの短期間で「軍事作戦」を終わらせるという中国との関係を配慮した「意図」を感じていました。ただ上記の報道のような決議の内容や過去を振り返るとロシアにとって五輪期間中の休戦決議は紙くず同然だったようです。

ロシア外相の「我々はウクライナを攻撃していない」という発言に驚いたことを前回記事で伝えていました。あくまでもウクライナ国内のロシア系住民を大量虐殺から解放するために必要な「軍事作戦」であり、ウクライナと戦争はしていないという詭弁だと言えます。

そもそも戦争は国際社会の中で認められていません。例外として集団的自衛権を含めた自衛のための戦争があり、国連安全保障理事会で多国籍軍を承認した場合に限って認めています。当事者であるロシアが安保理の常任理事国であり、「国連が機能していない」という声も耳にするようになっています。

このような声に対し、国際法の権威と知られる松井芳郎名古屋大学名誉教授は参院予算委員会の中央公聴会で、決して国連が無力という訳ではないと公述しています。今後の課題として拒否権の問題や総会の役割の強化など国連におけるシステム改革の必要性を松井教授が訴えていたことを前回記事の中で紹介していました。

国際社会のルールを無視するロシア、最高権力者であるプーチン大統領をアメリカのバイデン大統領は「戦争犯罪人だ」と強い言葉で批判しています。国際社会は定められたルールに基づき、横紙破りのロシアに圧力を加え、認められた自衛権のもとに反撃するウクライナを後方から支援しています。

第三次世界大戦を現実化させないためにも、このような枠組みを何としても厳守しながらロシアに実利を与えない決着が一秒でも早く実現できることを心から願っています。ちなみに国際社会のルールとして、核兵器の開発、保有、使用を禁止する条約が昨年1月に発効しています。

残念ながら現段階では日本をはじめ、核保有国や核抑止力に依存する国々は署名・批准していません。それでも核兵器は違法だという流れが国際社会の中で定められたことは紛れもない事実です。したがって、プーチン大統領の核兵器をもって他国を威嚇する発言は極めて悪質で不当なものだと言えます。

このような局面で安倍元総理が核共有に向けた議論を提起するという発想に対し、私自身は危惧していることを伝えていました。また、国益の最適化をめざしながら相手方の主張に耳を貸していく外交交渉の重要さについても支持する立場であることを前回記事で書き添えています。

誤解されなかったと思いますが、その前に「戦争は絶対回避するという目的を最優先事項として」という言葉があるとおり平時における外交交渉の原則です。現在進行形として武力によって領土を侵攻している相手方の主張に耳を貸していくことは外交交渉の延長線上としての戦争を肯定するような話になりかねません。

弱肉強食の世界を否定している国際社会の普遍的な原則を今後も堅持していくためにも、前述したとおりロシアの暴挙を絶対容認しない形での決着が強く求められています。つまり平時であれば相手方の主張にも耳を貸していくという姿勢が一定の範囲で必要とされていくものと思っています。

そのため、安倍元総理がプーチン大統領と個人的な親交を重ねながら北方領土の返還をめざしていたことは評価すべき試みでした。歴史に自分の名を刻むという国内的動機に基づくものだったとしても、具体的な成果が引き出せれば何よりなことでした。

しかしながらプーチンと27回も会談したのに…この重大局面でまったく役に立たない「安倍外交」とは何だったのか』という結果にとどまっています。このような経緯を安倍元総理が省みることなく、核兵器禁止条約の潮流を無視した核共有という危うい議論提起につなげていることに驚きを隠せません。

最後に『ゼレンスキー演説「真珠湾攻撃」言及でウクライナの支持やめる人の勘違い』という記事を紹介します。真珠湾攻撃は軍事目標に限った攻撃であり、9.11同時多発テロと同列に扱われたことに憤る声が上がっています。紹介した記事では民間人も68人犠牲になっている史実などを掲げながら論評を加えています。長い記事ですのでリンク先のサイトの最後のページのみ転載させていただきます。

真珠湾攻撃を「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」にしたいという心情は、拡大すると「あの戦争は正しかったのだ」という史観に結びつきかねない。しかし、結果的に宣戦布告が遅れたがゆえに「卑劣」とされた奇襲攻撃であっても、仮に宣戦布告直後になされた奇襲攻撃であっても、戦争に「紳士的な攻撃」などというものは無い。まして日本軍だけが「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」を徹底したという事はあり得ない。

その証拠に日本軍は、日中戦争では中国各地を爆撃し、とりわけ蒋介石が南京陥落後、重慶に遷都するや否や、執拗に重慶を爆撃して多数の非戦闘員を焼き殺している。戦略爆撃の先駆者は寧ろ日本軍であった。南方作戦が進展すると、日本軍は連合軍の退避地でもあった北部オーストラリアを1943年まで計97回に亘って執拗に空襲した。

中でも最大規模であった1942年2月のダーウィン空襲では、オーストラリアの民間人を含む243名を焼き殺している。2018年11月16日、安倍晋三首相(当時)は、ダーウィンを訪問し慰霊碑に献花している。「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」など、古今東西、如何なる戦争に於いてもありえないのである。

よってゼレンスキー大統領が米議会で「9.11」と「真珠湾攻撃」を同列に扱うのは、日本人の心情としては神経質になる部分はあるとしても、「一方的に攻撃された側」の心情としてはやはり同列に扱われても抗弁しようがないのではないか。

真珠湾攻撃全体で死んだ米兵は約2,300名(正確には2,334名)である。そもそも軍人なら奇襲して殺してもよいのか、という視点が真珠湾攻撃正当化の理屈には決定的に欠落している。もし、中国や北朝鮮の先制奇襲攻撃により、小松基地や朝霞の駐屯地が攻撃され、自衛隊員(自衛隊員=軍人か否かの議論はさておき)が2,300名焼き殺され、付随して68名の民間人が死んだとする。

それを以て保守派は中国や北朝鮮の先制奇襲攻撃を「軍事目標に的を絞った紳士的な攻撃」と見做すのだろうか。保守派に限らず、日本人全体が烈火のごとく怒り狂うだろう。それでも全然怒らない、という者だけがゼレンスキー大統領に石を投げたらよい。

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