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2022年3月26日 (土)

【Will】機関誌に託した思い

水曜の夕方、ウクライナのゼレンスキー大統領による日本の国会での演説をリアルタイムで視聴しました。他の国での演説と異なり、淡々とした訴えが印象的でした。日露戦争、北方領土、安倍元総理がプーチン大統領と親密な関係だったことなどは一言も触れず、ある意味で無難な内容に終始したように受けとめています。

それでもサリンや津波という言葉が取り入れられ、軍事的な支援には制約のある日本の立場を配慮した要請が中心とされていたため、やはり綿密な準備を尽くした上で臨まれていたように見受けられます。そのあたりについてブックマークしているブログ『無難で穏やかだったゼレンスキー演説、私はこう聞いた。』の中で澤藤統一郎さんが興味深く推察されていました。

前回の記事は「問われている平和の築き方 Part2」でした。ウクライナでの惨禍や悲劇は終わりを見出せない中ですが、今回の記事はローカルな話題を取り上げます。毎年3月、私どもの組合の機関誌を発行しています。定年退職される皆さんを紹介した頁の他に特集記事「春闘期、情勢や諸課題について」などを掲げています。2年前には特集記事の内容をもとにした「組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」というブログ記事を投稿していました。

今回「【Will】機関誌に託した思い」というタイトルを付けて書き進めています。初め『鬼滅の刃』の「大正コソコソ話」を意識しながら「【Will】機関誌コソコソ話」というタイトルを考えていました。ネット上に掲げながら「コソコソ話」はないだろうと思い返し、オーソドックスな新規記事のタイトルに落ち着いています。

ここ数年、機関誌全体を通し、私自身が責任編集しています。そのため、火曜日に発行した最新号の誌面上では直接的な言葉で語れなかったことも当ブログの中で解説してみようと考えていました。前述したとおり特に「コソコソ」する必要もない話ですが、誌面上ではストレートに伝えることよりも行間や編集面での意図を感じ取ってもらえたほうが適切だろうと判断していました。

今回の特集記事の見出しは「【Will】組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」です。このことについて特集記事の「おわりに」の中で次のように説明しています。その中では今回のブログ記事のタイトルにも添えている【Will】について触れていました。

私自身、組合役員を長く続けている中で「組合は必要」という思いを強めています。その思いのもとに執行委員長を長く担ってきましたが、ここまで長く務めてきたことの悩ましさや責任を痛感しています。

今回の特集記事の見出しに【Will】という言葉を添えています。未来形としての願いであり、バトンを託す皆さんに向けた言葉だという意味合いを込めさせていただいています。そのため、何としても「ピンチをチャンス」に変え、持続可能な組合組織の確立に向け、残された任期中、よりいっそう努力していくつもりです。

いずれにしても私一人や執行部だけの力で変えられるものではなく、そうすべきものではありません。情勢や問題意識を組合員の皆さんと共有化し、これからの組合の組織や活動のあり方について、ともに考え、ともに力を出し合っていくことが最も重要です。そのような意味で、今回の特集が情勢や問題意識の共有化に少しでも寄与できていたら本当に幸いなことだと考えています。

ストレートな表現を控えたため、上記の言葉からは今年11月の定期大会で執行委員長を退くという表明であることを充分伝えられなかったようです。昨年11月の記事定期大会を終えて、2021年秋」の中でも伝えているとおり今年度はバトンを着実に渡すための一年であるという意識を強めながら臨んでいました。

たいへん長く担ってきていますので定期大会を間近にしての退任の判断では迷惑をかけるものと思い、一年前に予告した上で引き継ぎのための一年という猶予期間に位置付けています。このことは組合役員をはじめ、周囲の皆さんにはお伝えしている話でした。そのため、今回の機関誌の中で婉曲な言い方で触れていたところです。

実は【Willという言葉には「遺言」という意味もあります。その意味合いまで説明するのは適切でないものと考え、上記のように「未来形としての願いであり、バトンを託す皆さんに向けた言葉」という説明にとどめていました。参考までに他愛のない逸話として、このブログの中では触れてみました。

小学生の頃から書くことが好きで、マスコミ関係の仕事に就きたいという将来の夢もありました。したがって、特集記事を綴ることや機関誌の編集作業は集中できる時間さえ取れればあまり苦になりません。来年以降の引き継ぎのことを考えれば以前のように複数名での編集委員会を立ち上げるべきだったという思いもあります。

ただ組合役員一人一人の抱えているたいへんさを考えると負担の分散化よりも、効率的な任務分担で短期に仕上げることを優先していました。特段のスキルが必要な作業ではないため、来年以降、担ったメンバーが苦労するのかも知れませんが、途切れずに発行していけるものと信じています。

数年前からクロスワードパズルも私自身が手がけ、オリジナルのクイズ作りを楽しんでいます。今回も特集記事に取りかかる前に2時間ほどでパズルを完成させていました。パズルが完成すると一段落した気分で一気に特集記事の原稿を書き進められる流れが定着していました。

2月中旬に完成した時、クロスワードパズルの設問の一つは「緊迫化する情勢のロシアの隣国〇〇〇〇〇」でした。3月に入って機関誌の原稿を入稿した時には「容認できないロシアの隣国〇〇〇〇〇への軍事侵攻」に変えていました。緊迫化した情勢が緩和する方向での変更を願っていましたが、まさか最悪の事態に至ることを予想していませんでした。

懸賞付クロスワードパズルはコロナ禍の組合予算還元策の一つとして、今年も3千円分のクオカードの当選者の数を例年の3倍となる30名としています。中には難しい設問もありますが、答えのヒントは誌面の中にあり、4文字のワードは必ず見つかるはずです。例えば「参院選比例区の組合推薦候補は〇〇〇まことさん」という設問もあります。

今年1月、私どもの組合が結成されてから75年という節目を刻んでいます。機関誌には懐かしい写真で振り返った「フォトヒストリー『組合結成75年』」を掲載しています。その中から3枚の写真を表紙にも掲げ、「どのような場面のものなのか本誌でご確認ください」というキャプションを添えています。

1枚は「毎年ゴールデンウイーク初日に開催する三多摩メーデーには組合員とご家族の皆さんが多く参加しています。2009年には819名もの参加を得ていました。壇上での来賓挨拶の後、いつも市長には私どもの組合参加者に向けたご挨拶もいただいていました」という写真で、私どもの市長がハンドマイクで挨拶されている場面です。

「1986年2月、賃金確定闘争は徹夜で交渉が行なわれました。青婦部の幹事も参加し、あったかい『とん汁闘争』に取り組み、闘争委員を元気づけました。よく知った顔ぶれの皆さんの若かりし頃の姿を拝見できます」という写真には副市長や3月末に退職する教育部長が写っています。

もう1枚「反戦反核フェスティバルは12年間続けました。『天空の城ラピュタ』を上映した1988年7月の時は千人に及ぶ参加を得ています。実行委員会メンバーによる打ち上げの時の記念写真です」からは新教育長や私自身が写っていることを確認できます。

この機関誌は4月以降に入所される皆さんにもお配りします。特集記事を通して組合は必要」という説明を詳述していますが、まず表紙を見た時、市長や若かりし頃の副市長らが写っていることで組合に対する距離感を少しでも縮めてもらえるような思いを託しながら編集しています。

表紙の下のほうには「職場内の働き方やハラスメントなどで困った時は組合☎内線と直通番号)が責任持って対応し、預金・融資や保険(32、法律相談(25、地域でのお困り事(23がありましたら組合を通してご案内できます」という参照先の頁を添えながら組合の役割をアピールしています。

今回の機関誌は管理職や条例によって組合員ではない方々にもお配りし、時間外勤務や人事評価に関わる労使確認事項なども参照願えるようご案内しています。労使で確認した事項の周知は基本的に市当局側の責任であり、そのことを目的に配布することは馴染みませんが、組合結成75年という節目の機会を利用してお配りしています。

3月末に発行する機関誌は毎年、組合未加入者全員に配布しています。特集記事そのものが「組合は必要です。ぜひ、加入してください」という直接的なメッセージを託しています。最後に、未加入者の皆さんに機関誌を配布する際、同封している呼びかけ文を紹介させていただきます。

日頃から職務へのご尽力に敬意を表します。さて、様々な事情で組合加入をされていない方々へ、これまで新年度を節目にした時期に組合加入について呼びかけさせていただいています。このたび、機関誌の特集記事「春闘期、情勢や諸課題について 組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」を通し、組合の役割や直近の交渉結果をまとめました。

今回、冒頭の数頁で組合に加入されていない方々を念頭に置きながら直接的なメッセージを託しています。ぜひ、ご覧いただければ誠に幸いです。7頁には「ここ数年の主な労使交渉の成果」を掲げています。このように組合があり、労使交渉を行なえたからこそ、市職員全体の賃金水準等を抑制する動きに一定の歯止めをかけてきています。

このような労使交渉の成果を出せるのも大半の職員の皆さんが組合に加入いただけているからです。しかしながら特集記事の中でも触れていますが、組合への加入者が激減するようであれば、組合の存続自体が危うくなります。そして、パワハラや違法な長時間労働を常態化させるような職場は労働組合がない、もしくは組合の存在感が希薄な場合に生じがちです。

それぞれの事情やお考えがあり、現在、組合に加入されていないものと思います。それでも「ワンフォーオール、オールフォーワン」という言葉、つまり昔から「一人は皆のために、皆は一人のために」という組合を語る言葉があるとおり助け合いや支え会いの必要性にご理解いただき、ぜひ、この機会に改めて組合加入についてご検討いただけますようよろしくお願いします。

もし今の組合活動等に疑問や至らない点をお感じであるのでしたら率直なご意見をお寄せいただければ幸いです。力不足な点もあろうかと思いますが、組合をつぶしてはいけません。そのためにも一人でも多くの方に組合加入いただき、ともに考え、ともに力を出し合っていければ本当に心強いことだと願っています。

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2022年3月20日 (日)

問われている平和の築き方 Part2

たいへん残念ながらロシアによるウクライナでの惨劇は止まっていません。プーチン大統領はモスクワで開かれた20万人集会で「軍事作戦の目的は市民を苦難と大量虐殺から救うことだ」と演説していますが、そもそも下記の報道のような事実を認識した上で強弁しているのでしょうか。

ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア軍による民間人への無差別攻撃が相次いでいる。16日には、同軍に包囲されてきた南東部の港湾都市マリウポリへの空爆で、避難所になっていた劇場が大破。1千人近い避難民がいた可能性があり、ロシアへの非難が強まっている。

ウクライナ検察は17日、劇場には約1千人がいて、多くは女性と子どもだったと発表した。劇場の前後の敷地には、白い大きな文字で「子どもたち」とのロシア語が記されていた。ロシア軍に空爆しないよう訴えるメッセージだったとみられる。

避難所は劇場の地下にあり、ウクライナの国会議員セルゲイ・タルタ氏によると、避難所そのものは爆撃に耐えた。一夜明けてがれきが撤去され、救助活動が続いているという。ウクライナ・メディアの「キエフ・インディペンデント」は17日、「130人の生存者が救出された」と伝えた。【朝日新聞2022年3月17日

「130人の生存者が救出された」ということは900人ほどの子どもや女性がロシアの無差別攻撃によって殺戮された事実を刻んでいるのかも知れません。前回記事は「問われている平和の築き方」でした。今回は記事タイトルに「Part2」を付けて、前回記事の中で綴った内容を補いながら話を広げていくつもりです。

水曜の深夜、宮城、福島両県で震度6強の揺れを観測し、首都圏を含む広範囲で安眠を破る地震に見舞われました。前回、大地震と戦争の大きな違いを強調しています。自然の脅威は人間の「意思」で制御することはできません。しかし、戦争は人間の「意思」によって制御できるという違いです。

ロシアによるウクライナ侵攻は、北京冬季オリンピック・パラリンピックに合わせて国連で採択された休戦決議の期間中に引き起こされた。国際オリンピック委員会(IOC)は24日、ロシアが決議に違反したとして「強く非難する」とする声明を発表した。

決議は開催国・中国を中心に、ロシアを含む173の加盟国が共同提案して各国に休戦を求めているが、法的拘束力はない。IOCはトーマス・バッハ会長が20日の北京冬季五輪閉会式のあいさつで、アスリートが示した平和と連帯を政治指導者にも求めたと強調した。

五輪を巡っては、2008年の北京夏季五輪開会式当日にロシアとグルジア(ジョージア)の軍事衝突が始まったほか、14年のソチ冬季パラリンピックの直前にも開催国のロシアによるクリミア半島への軍事介入があった。

五輪期間中の休戦決議は古代オリンピックの故事にちなむもので、昨年12月に採択された北京冬季五輪の決議の期間は五輪開幕7日前の1月28日からパラリンピック閉幕7日後の3月20日まで。中国の人権状況を懸念する日米豪印は加わっていない。【毎日新聞2022年2月24日

北京冬季オリンピックが閉会したタイミングでロシアはウクライナに侵攻し、パラリンピックの開幕までの短期間で「軍事作戦」を終わらせるという中国との関係を配慮した「意図」を感じていました。ただ上記の報道のような決議の内容や過去を振り返るとロシアにとって五輪期間中の休戦決議は紙くず同然だったようです。

ロシア外相の「我々はウクライナを攻撃していない」という発言に驚いたことを前回記事で伝えていました。あくまでもウクライナ国内のロシア系住民を大量虐殺から解放するために必要な「軍事作戦」であり、ウクライナと戦争はしていないという詭弁だと言えます。

そもそも戦争は国際社会の中で認められていません。例外として集団的自衛権を含めた自衛のための戦争があり、国連安全保障理事会で多国籍軍を承認した場合に限って認めています。当事者であるロシアが安保理の常任理事国であり、「国連が機能していない」という声も耳にするようになっています。

このような声に対し、国際法の権威と知られる松井芳郎名古屋大学名誉教授は参院予算委員会の中央公聴会で、決して国連が無力という訳ではないと公述しています。今後の課題として拒否権の問題や総会の役割の強化など国連におけるシステム改革の必要性を松井教授が訴えていたことを前回記事の中で紹介していました。

国際社会のルールを無視するロシア、最高権力者であるプーチン大統領をアメリカのバイデン大統領は「戦争犯罪人だ」と強い言葉で批判しています。国際社会は定められたルールに基づき、横紙破りのロシアに圧力を加え、認められた自衛権のもとに反撃するウクライナを後方から支援しています。

第三次世界大戦を現実化させないためにも、このような枠組みを何としても厳守しながらロシアに実利を与えない決着が一秒でも早く実現できることを心から願っています。ちなみに国際社会のルールとして、核兵器の開発、保有、使用を禁止する条約が昨年1月に発効しています。

残念ながら現段階では日本をはじめ、核保有国や核抑止力に依存する国々は署名・批准していません。それでも核兵器は違法だという流れが国際社会の中で定められたことは紛れもない事実です。したがって、プーチン大統領の核兵器をもって他国を威嚇する発言は極めて悪質で不当なものだと言えます。

このような局面で安倍元総理が核共有に向けた議論を提起するという発想に対し、私自身は危惧していることを伝えていました。また、国益の最適化をめざしながら相手方の主張に耳を貸していく外交交渉の重要さについても支持する立場であることを前回記事で書き添えています。

誤解されなかったと思いますが、その前に「戦争は絶対回避するという目的を最優先事項として」という言葉があるとおり平時における外交交渉の原則です。現在進行形として武力によって領土を侵攻している相手方の主張に耳を貸していくことは外交交渉の延長線上としての戦争を肯定するような話になりかねません。

弱肉強食の世界を否定している国際社会の普遍的な原則を今後も堅持していくためにも、前述したとおりロシアの暴挙を絶対容認しない形での決着が強く求められています。つまり平時であれば相手方の主張にも耳を貸していくという姿勢が一定の範囲で必要とされていくものと思っています。

そのため、安倍元総理がプーチン大統領と個人的な親交を重ねながら北方領土の返還をめざしていたことは評価すべき試みでした。歴史に自分の名を刻むという国内的動機に基づくものだったとしても、具体的な成果が引き出せれば何よりなことでした。

しかしながらプーチンと27回も会談したのに…この重大局面でまったく役に立たない「安倍外交」とは何だったのか』という結果にとどまっています。このような経緯を安倍元総理が省みることなく、核兵器禁止条約の潮流を無視した核共有という危うい議論提起につなげていることに驚きを隠せません。

最後に『ゼレンスキー演説「真珠湾攻撃」言及でウクライナの支持やめる人の勘違い』という記事を紹介します。真珠湾攻撃は軍事目標に限った攻撃であり、9.11同時多発テロと同列に扱われたことに憤る声が上がっています。紹介した記事では民間人も68人犠牲になっている史実などを掲げながら論評を加えています。長い記事ですのでリンク先のサイトの最後のページのみ転載させていただきます。

真珠湾攻撃を「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」にしたいという心情は、拡大すると「あの戦争は正しかったのだ」という史観に結びつきかねない。しかし、結果的に宣戦布告が遅れたがゆえに「卑劣」とされた奇襲攻撃であっても、仮に宣戦布告直後になされた奇襲攻撃であっても、戦争に「紳士的な攻撃」などというものは無い。まして日本軍だけが「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」を徹底したという事はあり得ない。

その証拠に日本軍は、日中戦争では中国各地を爆撃し、とりわけ蒋介石が南京陥落後、重慶に遷都するや否や、執拗に重慶を爆撃して多数の非戦闘員を焼き殺している。戦略爆撃の先駆者は寧ろ日本軍であった。南方作戦が進展すると、日本軍は連合軍の退避地でもあった北部オーストラリアを1943年まで計97回に亘って執拗に空襲した。

中でも最大規模であった1942年2月のダーウィン空襲では、オーストラリアの民間人を含む243名を焼き殺している。2018年11月16日、安倍晋三首相(当時)は、ダーウィンを訪問し慰霊碑に献花している。「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」など、古今東西、如何なる戦争に於いてもありえないのである。

よってゼレンスキー大統領が米議会で「9.11」と「真珠湾攻撃」を同列に扱うのは、日本人の心情としては神経質になる部分はあるとしても、「一方的に攻撃された側」の心情としてはやはり同列に扱われても抗弁しようがないのではないか。

真珠湾攻撃全体で死んだ米兵は約2,300名(正確には2,334名)である。そもそも軍人なら奇襲して殺してもよいのか、という視点が真珠湾攻撃正当化の理屈には決定的に欠落している。もし、中国や北朝鮮の先制奇襲攻撃により、小松基地や朝霞の駐屯地が攻撃され、自衛隊員(自衛隊員=軍人か否かの議論はさておき)が2,300名焼き殺され、付随して68名の民間人が死んだとする。

それを以て保守派は中国や北朝鮮の先制奇襲攻撃を「軍事目標に的を絞った紳士的な攻撃」と見做すのだろうか。保守派に限らず、日本人全体が烈火のごとく怒り狂うだろう。それでも全然怒らない、という者だけがゼレンスキー大統領に石を投げたらよい。

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2022年3月13日 (日)

問われている平和の築き方

連日リアルタイムで届くウクライナの悲惨な現状は目を覆うばかりです。小児病院への攻撃で妊婦や子どもたちを殺戮していながら「病院はすでに兵士によって使われていて小児病院ではなかった。フェイクニュースはこうやって生まれる」とうそぶくロシア側の非道な態度には強い憤りを覚えます。

さらにロシア外相の「我々はウクライナを攻撃していない」という詭弁には開いた口が塞がりません。このブログではロシアがウクライナに軍事侵攻ロシア大使館あてに抗議文」と2回続けてロシアのウクライナへの侵攻について取り上げてきました。

組合の日常的な活動は職場課題の解決に向けたものが専らで、その分量と比べれば平和に関わる取り組みはわずかです。組合を身近に感じていただくための一つのツールとして開設した「公務員のためいき」ですが、取り上げる題材の比率は実際の活動内容と反比例して平和の築き方に関わる話が多くなっています。

「なぜ、組合が平和に関わる課題にも取り組むのか?」という恒常的に示される疑問に答える場として位置付けていることが理由の一つです。加えて、自分自身の思うことを不特定多数の方々に発信できる当ブログは自分なりの一つの運動として位置付けています。

そのため今回も最近の記事「平和や人権問題の組合方針」に連なる話として、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を巡る内容について書き進めています。これまで「平和の築き方、それぞれの思い」という記事などを投稿してきていますが、今回のウクライナの危機は平和の築き方の方向性を真正面から問われている局面だと考えています。

この一週間、忘れてはならない祈りの日が続いていました。3月10日は東京大空襲の日でした。一夜にして非戦闘員である10万人もの住民が無差別爆撃によって殺戮されていました。原子爆弾の投下をはじめ、本来、厳しく戦争犯罪として追及しなければならない事案が不問に付されてきています。

3月11日は東日本大震災から11年を刻んだ日です。昨年「東日本大震災から10年」という節目の記事を投稿していました。その中で福島第一原子力発電所の吉田所長の「俺たちは自然の力をなめていたんだ。10メートル以上の津波は来ないとずっと思い込んでいた」という言葉を紹介していました。

大地震や感染症など自然界の脅威は人間の想像を遙かに超える場合があります。しかし、戦争を引き起こすのは人間の「意思」であり、とりわけ権力者の「意思」によって膨大な悲劇が繰り返されています。言葉を変えれば戦争は自然災害などと異なり、人間の「意思」によって抑えることができるはずです。

しかしながら現在のウクライナにおける惨状はプーチン大統領の「意思」によって引き起こされています。アメリカのバーンズCIA長官の分析が『「プーチンは怒り、苛立っている」CIA長官が語ったウクライナ危機の最新分析』という記事から確認できます。

プーチンは、ウクライナを支配し、思いのままに操ろうと決意しています。これは彼にとって深い個人的な信念の問題です」とバーンズ長官は語った後、次のように現状を分析しています。

彼は長年、不満と野心という燃えやすい組み合わせで煮詰まっています。その個人的な信念は、ロシアの体制では重要な意味を持つことになります。助言の輪がどんどん狭くなるシステムを作り上げ、新型コロナはそれをさらに狭めました。

そして、彼の判断に誰も疑問を持ったり、異議を唱えたりできなくなったのです。その中で彼が戦争に突入したのは、いくつかの仮定に基づいた判断だと思います。ウクライナに対する武力行使に有利な局面が開かれたと信じたのでしょう。

第一に、ウクライナは弱く、簡単に威嚇できると思っていました。第二に、ヨーロッパ諸国、特にフランスは選挙に気を取られ、ドイツでは指導者の継承に気を取られてリスクを避けると見ていました。第三に、外貨準備で多額の軍資金を作ることで、自国経済が制裁に耐えられると信じていました。

第四に、彼は軍を近代化し自信を持っていました。最小限のコストで迅速かつ決定的な勝利が可能だと確信していたのです。しかし、どの点においても彼は間違っていました。この12日間の侵攻で、その前提に重大な欠陥があることが証明されました。

バーンズ長官の分析はいみじくもロシアの最高権力者であるプーチン大統領の「意思」によって引き起こされた戦争であることを伝えています。四つの仮定の重大な欠陥を突き付けられ、プーチン大統領はウクライナからの撤退に向けた「意思」を示すことが本来であれば懸命な判断であるはずです。

しかしながら情報統制されたロシア国内では「プーチン大統領の支持率が71%に」ロシア国民がウクライナ侵攻に賛成する深刻な理由』という現実があり、自らの判断ミスを認めるような幕引きをプーチン大統領が受け入れる可能性は低いと見なければなりません。やはり国際社会の様々な働きかけによって71%という支持率を激減させていくことが欠かせない局面であることも確かです。

戦火による犠牲者が増える中で『鈴木宗男氏「ウクライナも大事だが日本の国益はどうなのかも最重要」ロ報道官の発言引用』『「プーチンのポチと言われたが…」鈴木宗男氏が非難決議に賛成』『橋下徹氏、ウクライナ側のNATO入り断念示唆発言に「非戦闘員の思いをくみ取るのが政治指導」』という声も耳にしています。

戦争は絶対回避するという目的を最優先事項として、国益の最適化をめざしながら相手方の主張に耳を貸していく外交交渉の重要さは私自身も強く支持する立場です。さらに自分や家族の生命を守ることを最優先事項として、戦わずに逃げることが許容されていくべきという主張なども支持する立場だと言えます。

たいへん悩ましい話ですが、ロシア側の要求を丸呑みすることが即時停戦につながり、戦火による犠牲者の数を最小化できるという理屈も頭から否定できません。一方でウクライナの人々がロシアの属国化につながる無条件降伏を拒み、徹底抗戦している中『橋下徹や玉川徹には理解不能…ウクライナ人が無条件降伏は絶対しない理由』という見方があることも理解しています。

停戦交渉の進め方として実利さえ与えなければ、プーチン大統領の面子だけは糊塗した幕引きもあり得るのかも知れません。 しかし、ロシアの狙ったとおりの決着点だけは何としても阻み、ウクライナへの軍事侵攻は間違った判断だったとプーチン大統領に認識させることが不可欠です。

いずれにしても今回の事態はロシア一国に対する問題にとどまりません。武力によって他国の領土を侵すことは国際社会の中で孤立化し、自国にとって大きな不利益しか残らないという事実を刻み付けることが最も重要な着地点であるものと考えています。

万が一、少しでもロシアにとってプラスとなる結果を残した場合、他の地域でも同じような事態を招く恐れがあります。現代の国際社会の中で軍事力を背景にした他国への侵攻は取り返しのつかない悪手だと認識させ、権力者の「意思」判断に大きな影響を与えていく決着点が求められています。

攻めようという思惑のある側にとどまらず、守る側にとっても今回の事態を試金石として、これからの平和の築き方の方向性が問われている局面だと言えます。安倍元総理の核共有に向けた議論提起に対し、岸田総理は「非核三原則の堅持という我が国の立場から考えて認められるものではない」と明確に否定しています。

このような岸田総理の姿勢はプーチンが喜び、バイデンが迷惑し、安倍は激怒する「岸田首相の平和主義外交」のゆくえ』という記事で真っ向から批判されています。私自身は岸田総理の考え方を支持する立場であり、安倍元総理のような発想を危惧しています。

ロシアによるウクライナ軍事侵攻を巡り、国際法の権威と知られる松井芳郎名古屋大学名誉教授が参院予算委員会の中央公聴会で公述しました。「国連が機能していないもとで核には核で対抗する核抑止が必要だ」という議論などに対し、松井教授は次のように語っていました。

核抑止というと現代的な概念のように思われるが、歴史的には、19世紀の国際社会を支配していた勢力均衡の考え方と基本的に同じだ。その勢力均衡がうまくいかなかったからこそ国際連盟で集団安全保障がつくられた。「核抑止論でいこう」という議論は、実は19世紀的な古い古い国際関係に戻るべきだという主張だ。これはとてもとることはできない。

抑止力ということで日本が同盟を強化し、あるいは自衛隊を強化することは、裏を返せば相手方もそれが脅威だと感じることがあり得るわけで、日本が中国を脅威だと感じるのと同じに、中国も日本が軍備を増強すれば日本を脅威だと感じる可能性はたいへん大きい。

結局、軍備競争が拡大することになりかねない。外交交渉で軍縮なり両国間の了解をどのように取り付けるかという議論をするべきで、抑止力を掲げて軍備を強化し同盟を強めることはかえってマイナスだ。

長期的には、国際法の執行の力とは、諸国民の連帯、国際世論だ。ロシアが国際社会で圧倒的に孤立しているという事実は否定できない。これを生かしてどのような具体的方策をとるか知恵を出していく必要がある。

松井教授は決して国連が無力という訳ではなく、今後の課題として拒否権の問題や総会の役割の強化など国連におけるシステム改革の必要性を訴えています。一定の抑止力は必要ですが、疑心暗鬼につながる際限のない軍拡競争が世界大戦を引き起こしてきたという歴史的な教訓を決して忘れてはならないものと考えています。

5年前「長島昭久さんが民進党を離党」という記事があるとおり衆院議員の長島さんと直接お話する機会はなくなっています。それでも安保関連法の問題などを率直に意見を交わせた貴重なつながりもあり、今でも長島さんのFacebookなどは拝見しています。

最近『〈インタビュー〉外交・安全保障通の長島昭久氏がウクライナ問題が東アジアにもたらす影響を解説』というサイトを閲覧しています。「プーチン氏の戦争を絶対に成功させてはいけない」という認識を一致できる内容をはじめ、軍拡を煽るような主張もなく、冷静で具体的な解説に安堵しながら興味深く読ませていただきました。

最後に、このブログをご存じのエファジャパンの理事である組合の先輩から最近伺った『明日を生きる力向上プロジェクト!カンボジア障害児とお母さんに教育を』というクラウドファンディングについて紹介させていただきます。呼びかけ文は下記のとおりですが、このような地道な取り組みが「人間の安全保障」の一つとして平和の築き方に寄与していくものと信じています。

心を支え、未来を育む エファジャパンは、これまで、アジアの国々で行政や大規模NGOの支援が届かない人々や子どもたちに支援を届けてきました。障害児がおかれる状況に基づき、一人ひとりの生きる力を伸ばし、経済的な自立や自分らしく心豊かに生きていくことのできる社会の実現、さらに地域の人々が共に生き合う地域づくりをサポートするために―。

今回は、カンボジア農村部カンポット州ドントン郡の30人の障害児とその母親に、尊厳のある生活と経済的自立のためのライフスキル教育を届けるためにクラウドファンディングに挑戦します。どうか温かいご支援をよろしくお願いいたします。

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2022年3月 5日 (土)

ロシア大使館あてに抗議文

金曜の夜、深夜まで労使交渉を重ねました。自治労都本部統一の春闘要求と長年の懸案課題だった新学校給食共同調理場の問題に関しては一定の労使合意に至っていました。しかし、来年度に向けた人員の課題で労使の見方に大きく隔たった職場が残り、最終的な決着がはかれていません。週明け、引き続き対応していくことになっています。

さて、前回記事「ロシアがウクライナに軍事侵攻」でした。たいへん残念ながら戦火は拡大し、犠牲者が日々増えています。原子力発電所まで攻撃対象とされ、取り返しのつかない大惨事につながる恐れまで生じています。

私どもの組合は3月2日の執行委員会で下記内容の抗議文を確認し、在日ロシア連邦大使館あてにFAX送信しています。もしかしたらFAX回線は閉鎖されているかも知れないという情報もありましたが、何の問題もなく送信することができました。

2月24日、貴国の軍隊がウクライナに侵攻し、戦争状態に至っています。すでに何の罪のない子どもたちも含め、多くの死傷者を出しています。NATOの東方拡大に対する懸念など言い分があろうとも今回の武力での侵攻を絶対容認できるものではありません。国家主権と領土を武力で侵す蛮行に対し、厳しく抗議するとともに即時に撤兵するよう強く求めます。

このような暴挙は国際社会の中で孤立し、貴国の利益を大きく損ねていくはずです。ウクライナの人々とともに自国の兵士の命も失い続け、残された家族の方々を悲嘆させていくことになります。また、訓練だと偽り、派兵されている貴国の兵士からは「大義のなさ」に失望している声も漏れ聞こえています。

今後、経済制裁の影響等は自国民の生活を直撃し、政権の足元も揺るがしていくはずです。今回の軍事進攻は明らかに誤った判断であり、国際秩序のもとの外交交渉のテーブルに着くことが急務であることを貴国のプーチン大統領に対して早急に意見具申されることを重ねて抗議の意を込めながら強く申し入れます。

さらにプーチン大統領の核兵器をもって他国を威嚇する発言は戦争被爆国である日本として到底看過できるものではありません。国連で核兵器禁止条約が発効する中、完全に国際社会の趨勢に逆行するものであり、このような発言に関しても厳重に抗議します。

在日大使館員の方々であれば日本語でも問題ないはずです。きっと大量に送られている中の一つに過ぎず、まったく目を通してもらえず廃棄されてしまうのかも知れません。それでも実際に大使館員の方が手にされることを願いながら言葉を選んでいます。

世界各国のロシア大使館で、このような切実な思いを託した数多くの抗議文が届き、プーチン大統領の「意思」に変化を与える動きにつながることを切に願っています。様々な回路でロシアの暴挙を批判する一つ一つの行動は「微力」であっても決して「無力」ではないものと思っています。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対し、平和フォーラムは抗議打電や緊急街宣行動に取り組んでいます。土曜午後に開かれた自治労都本部の定期大会では特別決議を採択しています。今回、多くの自治体が首長名で抗議文を送っていることにも注目しています。

来週発行する組合ニュースの裏面に上記の抗議文の内容を掲げます。その補足説明として別途『Youth paper』を職場回覧し、「ロシアによるウクライナ侵攻について」の記事を掲げていることも案内しています。

重要な職場課題の報告が多いタイミングでしたが、ウクライナの問題も大きく取り上げた組合ニュースの最新号となっています。今回のブログ記事を通し、抗議文の中で触れている『「母さん、僕はウクライナにいるんだ」ロシア兵、母と最後の会話』という報道を紹介します。

ロシアによるウクライナ侵攻をめぐって2月28日に開かれた国連の緊急特別会合で、ウクライナのキスリツァ国連大使は、死亡したロシア兵の携帯電話に残された母親とのメッセージのやり取りだとする内容をロシア語で読み上げた。

国連大使が読み上げ 母親「本当に訓練中なの?」 兵士「母さん、僕はもうクリミアにはいないんだ。訓練じゃない」(略) 母親「何を言っているの? 何が起きてるの?」 

兵士「母さん、僕はウクライナにいるんだ。本当の戦争が始まっているんだ。怖いよ。一般市民もターゲットにして攻撃している。人々は僕らを歓迎してくれると聞かされていたんだ。でも、彼らは僕らの装甲車の下に身を投げて、先に行かせないようにしている。僕らをファシストだと呼んで。母さん、とてもつらいよ」

演説の本題に入る前に内容を明らかにしたキスリツァ氏は、このロシア兵はメッセージを送った直後に死亡したと説明。双方で多数の人が既に亡くなっていると指摘し「死亡した人々があなた方の横にいると想像しながら、私の演説を聴いてほしい」と訴えた。

キスリツァ氏は携帯電話のやり取りの画面だとする写真を示したが、どのような状況で死亡したのかは明らかにしなかった。ロシアのネベンジャ国連大使は「虚偽だ」と反発した。【毎日新聞2022年3月1日

上記の報道内容の他にも最近、目に留まった記事が多くあります。多面的な情報を提供する場として、いくつか興味深い記事を紹介していきます。それらの記事内容の要旨を紹介しながら私自身の感想なども添えようと考えていましたが、今回は他のサイトの見出しを並べるだけにとどめます。

それぞれの見出しを紹介し、クリックすると当該サイトに飛べるようにしていますので、関心を持たれた記事があった場合、リンク先をご参照くださるようお願いします。最後に、個々人の受けとめ方に差異が生じるのだろうと思っていますが、私自身の見方に近い内容の記事があることを申し添えさせていただきます。

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