« 2022年1月 | トップページ | 2022年3月 »

2022年2月26日 (土)

ロシアがウクライナに軍事侵攻

前回記事「平和や人権問題の組合方針」の冒頭で緊迫化したウクライナの情勢について触れ、大規模な軍事衝突、戦争の危機は絶対避けて欲しい、そのように願っていることを記していました。しかしながら2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻するという最悪なシナリオに至っています。

アメリカをはじめとした各国が協調して制止に動いていましたが、たいへん残念ながら外交交渉によってロシアの横暴を阻止することができませんでした。NATOの東方拡大に対するロシアの懸念など言い分があろうとも力尽づくでの暴挙は現在の国際社会の中で絶対容認できません。

この衝撃的なニュースはテレビや新聞で連日大きく取り上げられています。インターネット上でも同様であり、ブックマークしているサイトから様々な情報や意見に接しています。まずBLOGOS」の『なぜ止められなかった親露派国家承認:米国がキューバ危機以来の情報公開戦術』という記事です。

2月18日、バイデン大統領が「プーチン大統領は(ウクライナ侵攻を)決断したと確信している」と明らかにしました。その記事で「米側は、プーチン大統領の計画をいち早く公開することによって、ロシア側を混乱に陥れたり、プーチン大統領に侵攻計画を再検討させたりする可能性に期待しているようだ」と解説していました。

「リアルタイム」での積極的な情報公開は異例で、1962年のキューバ危機以来のことでした。ただ残念ながら今回の情報公開戦術はロシアに対して効果を発揮しなかったようです。さらにウクライナ危機で「NATOの東方拡大」という問題が注目されたことも、プーチン大統領を強気にさせたという報道があることを記事の最後のほうで伝えています。

次に『ウクライナ侵攻に落とし所はあるか――ロシアに撤退を促せる条件とは』という記事が今回の危機の背景を的確に分析しています。基本的にロシアの目的は「欧米の影響力がウクライナに伸びないようにすること」にあるという前提を語られています。

ウクライナのNATO加盟反対はその中心だが、欧米はこれに言を左右にして明確な返答をしてこなかった。 ロシアが本気であることを欧米に認めさせる手段は多くない。だからその手段としてウクライナ侵攻を開始した、というのが問題の本質である。だとすると、この事態を収拾することは容易ではない。ロシア軍を停止させる手段がほとんどないからだ。

上記のような見方を示した後、経済制裁の限界を指摘し、残る手段は二つ「ウクライナを軍事的に支援するか」「ウクライナをロシアに譲るか」しかないと記しています。ウクライナはNATO加盟国ではないため、NATOにウクライナを防衛しなければならない法的義務はありません。

しかしながら衝突を回避し、ロシアが求めている「ウクライナのNATO加盟が将来にわたってない」と確約することはNATOやアメリカの全面屈服を意味することであり、容易に受け入れられるものではないことを付け加えています。そもそも国際社会の秩序を破ったロシアの暴挙を許容する話になりかねません。

BLOGOS」では『「プーチンさんは信頼できる人情家」安倍晋三氏、鈴木宗男氏の愚かすぎる“お友達アピール”に再注目』という記事も目にしています。「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている。ゴールまで2人の力で駆け抜けよう」と語りかけられるほどの関係であれば安倍元総理は「仲裁役を買って出ては?」という意見が出ていることを紹介しています。

今回のロシアの武力侵攻は中国の今後の動きにも大きな影響を与えることが危惧されています。『「ウクライナ問題から学ぶべき教訓、弱い人は強い人に喧嘩を売るな」中国の薛剣・大阪総領事がツイート』という露骨な考え方の記事に接すると慄然とします。「仮に強い人が後ろに立って応援すると約束してくれてもだ」とも主張し、日本や台湾を念頭に置いたツイートであるようです。

土曜の朝『ウェークアップ』に小野寺元防衛相が出演し、ロシアのウクライナの軍事侵攻に対しての持論を述べていました。『日曜報道 THE PRIM』に出演した時と同じ内容の問題意識でした。『「日本もウクライナと同じことになる」と小野寺元防衛相』というサイトに掲げられた次のような内容です。

小野寺氏は、バイデン米大統領がロシアの軍事侵攻があっても、ウクライナ国内にとどまる米国民の退避のために米軍を派遣する考えのないことを早々に表明したことに触れ、「米国の姿勢が少し心配だ」と述べた。「トランプ大統領なら、米国の軍事アセットを周辺に配備して力を示した。バイデン大統領はそれをしないというのであれば、プーチン大統領からみれば『口先だけだな』と(見透かされる)。お互いが強い立場にあるからこそ交渉ができる」と語った。

小野寺氏はNATO(北大西洋条約機構)がウクライナへの軍事支援に二の足を踏んでいることを受け、「台湾でも自分たちは結局見捨てられるのではないかという話が浸透してくると、やはり中国と仲良くしようという勢力が出てくる。東アジア、台湾ではすでにハイブリッド戦が行われていると考えるべきだ」と指摘した。

また、ウクライナ危機が高まれば、日本近海で核兵器を搭載可能な米原潜とロシア原潜が一触即発になるとの専門家の指摘について、小野寺氏は「米国とロシアの主戦場はいま千島列島付近になっている」と同調。「北方領土が話し合いで返ってくることはあまり大きな期待はできない」と述べた。

なぜロシアはこれほど怒るのか。ナポレオンが攻めてきたとき、ヒトラーが攻めてきたとき、ロシア周辺にバッファーとなる国があったので防げた。これが戦略的な基本だ。そのバッファーの国が次々とNATOに入り、ロシアを攻めるミサイルを配備されることがロシアにとって一番恐れていること。このバッファーをどう保つかが解決策になる。ただ、私は今のアメリカの姿勢が少し心配だ。トランプのときは、米国の軍事アセットを周辺に配備して、力を形で示した。

今回バイデン大統領はそれをしないとなれば、プーチン大統領から見れば「あ、口先だけだな」と。ワシントンの専門家は「トランプのあとの世界はSENGOKUJIDAI(戦国時代)になる」と言う。日本語の「戦国時代」という言葉で。なぜかというと「群雄割拠になる」と。実は、こういうことがアフガンでも起きているし、今回ウクライナでも起きている。もし台湾で起きたらどうなのか。私たちそれを心配している。

冷静な語り口で、ある意味で説得力のある主張だろうと思っています。小野寺元防衛相は「(軍縮)交渉はそうだ。お互いが強い立場にあるからこそ交渉ができる」とも述べていますが、そのためにも軍事力の強化、いわゆる「ハードパワー」や「狭義の国防」を重視する立場であることが分かります。

今回のロシアの暴挙によって国際社会が弱肉強食の世界であることを思い知らされ、「人間の安全保障」に重きを置く考え方が否定されかねないことを懸念しています。ブックマークしている「痛いニュース」では『志位和夫「プーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするのが憲法9条」』という記事を目にしました。

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、共産党の志位委員長は24日、「プーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が、憲法9条なのです」とツイッターで訴えた。ツイッターには、「外国が攻めてきた場合はどうするのか」などの批判が寄せられている。

自民党の細野豪志元環境相は自らのツイッターで「志位委員長のロジックでは他国のための憲法9条になってしまう」と指摘し、憲法9条によって、日本への侵攻は止められないと主張した。日本維新の会の松井代表も「志位さん、共産党はこれまで9条で他国から侵略されないと仰ってたのでは?」と投稿した。【読売新聞2022年2月25日

数日後には上記のとおりの読売新聞にも取り上げられていました。今回の問題を受け、憲法9条の効用を絡めた志位委員長のツイートは極めて言葉が不足し、まったく説得力の乏しいものだったと言わざるを得ません。改憲すべきと考えている方々からの絶好の標的にされてしまっていることも残念な話です。

いずれにしてもプーチン大統領に対し、ウクライナへの軍事侵攻は致命的な誤りだったと痛感させる結果を国際社会が協調して突き付けなければならないものと考えています。ただ軍事力に対して軍事力で対抗した場合は全面的な戦争につながり、よりいっそう多くの人命を失い、対立が長期化する恐れもあります。

経済制裁の限界を憂慮する見方もありますが、やはり非軍事のカードを駆使しながらロシアの暴走を食い止めることに各国が足並みを揃えて全力を尽くすことしか考えられません。ロシア国内でも軍事侵攻に反対する声が上がっています。何としても軍事力の行使は国際社会での孤立化を招き、経済的にも政治的にもメリットがないことを刻み付ける結果を見出さなければなりません。

脅威とは「能力と意思の掛け算で決まる」という言葉があるとおり軍事侵攻のデメリットの普遍化は、同じような意図を持った国の指導者の意思に大きな影響を与えていくことになるはずです。もし万が一、ロシアの思惑どおりの結果に終わるようであれば帝国主義の時代に先祖返りしたような危機的な事態だと言えます。

最後に、私自身の問題意識に近いブログを紹介します。それぞれブックマークしているブログで、一つは弁護士の澤藤統一郎さんの『軍事侵攻に踏み切ったプーチンに、最大限の国際世論の非難を。』です。もう一つは朝霞市議の黒川滋さんのブログ「きょうも歩く」から『ロシアによるウクライナ侵攻に反対を申し上げます』です。ぜひ、興味を持たれた方はリンク先をご参照ください。

| | コメント (4)

2022年2月19日 (土)

平和や人権問題の組合方針

前々回「多面的な情報の大切さ」 前回「多面的な情報の大切さ Part2」という記事タイトルを付け、2回にわたって得られる情報の違いによってモノの見方や評価が変化することを綴ってきました。モノの見方や評価から導き出される考え方の違いは対立の火種となりがちです。

お互い自分自身の考えや主張の正しさを絶対視し、一歩も引かない姿勢に固執すれば深刻な事態を招きかねません。相手を力づくで従わせた場合、感情的なしこりは残り、ずっと対立の火種も残り続けるのだろうと思います。

緊迫化したウクライナの情勢を受け、このような思いを改めて強めています。大規模な軍事衝突、戦争の危機は絶対避けて欲しいものと願っています。力づくで攻め入ろうとしているロシアに対し、アメリカをはじめとした各国が協調して制止に動いています。今のところ様々なパイプの外交交渉は途絶えず、一触即発の事態にまで至っていません。

国際社会のルールから逸脱しがちなロシアが厳しく批判を受けることは必然です。ただNATOの東方拡大に対するロシアの懸念も多面的な見方の一つとして留意すべき点だろうと思っています。お互い譲歩する幅があってこそ交渉も成り立つのであり、ぜひとも最悪のシナリオを回避した決着点を見出す努力を尽くして欲しいものです。

いずれにしてもウクライナを巡る歴史的経緯や情勢を素人が生半可に語れるものではありません。参考になるサイト『緊迫のウクライナ情勢、いま何が起こっている?バイデン大統領「ロシアの侵攻、数日以内にも」(解説)』を紹介した後、今回は記事タイトルに掲げた「平和や人権問題の組合方針」というローカルな話をメインとして書き進めていきます。

昨年11月の記事「定期大会を終えて、2021年秋」の中で、組合員から平和や人権に関わる方針案について率直な意見が示されたことをお伝えしていました。このブログを通して培ってきた問題意識であり、質問者から提起された問題は今後、しっかり組合員全体できめ細かい議論が交わせる場を設けていくことを約束しています。

そのような議論の「たたき台」を私自身がまとめることになっています。「たたき台」の完成形に近い内容まで作り上げられないかも知れませんが、今回のブログ記事を通し、どのような論点を提起すべきなのかどうか自分自身の頭の中を整理する機会にしてみようと考えています。

7 平和や人権をまもるたたかい
(1) 武力によって平和は築けないことを普遍的な教訓とし、日本国憲法の平和主義を広める運動を進めます。その流れに逆行するような改憲発議に反対します。
(2) 戦争を前提とした「有事法制」や在日米軍の再編問題などに反対します。また、国民保護計画の策定に対しては慎重な対応をはかります。
(3) 軍事基地に反対し、騒音や墜落の危険がある横田基地や立川基地の撤去をめざします。また、横田基地に配備されているオスプレイの撤去を求めていきます。
(4) 核兵器の廃絶を願い、反核運動を推進し、原水禁大会などに参加します。また、核兵器禁止条約への日本政府の署名・批准を求めていきます。
(5) 沖縄平和行進など、平和フォーラムや自治労が呼びかける行動や集会に参加します。
(6) 砂川闘争の歴史を継承するため、平和資料館の建設などをめざします。当面は学習館内にある地域歴史と文化の資料コーナーの充実を求めます。
(7) 天皇制の政治利用に反対します。
(8) 国民の間で賛否が分かれている「日の丸」「君が代」の強制に反対します。
(9) 戦争を円滑に進める役割を負わされてきた靖国神社へ閣僚などが参拝することに反対します。
(10) 戦時性暴力や強制労働、地元立川などの空襲、沖縄戦における集団自決など、戦争がもたらす被害や悲劇を継承する取り組みを強めます。
(11)人権、思想、信教、言論の自由が尊重される社会の実現をめざします。また、性差別、部落差別、外国人差別など、あらゆる差別に反対します。
(12) 組合が平和運動などに取り組む意義を組合員へ丁寧に周知し、問題意識を共有化した活動に努めます。

上記が議論の対象となっている組合方針です。毎年開催する定期大会前、組合員の皆さん全員に「運動方針(案)」を配布しています。取扱い注意としている訳ではありませんので、部外者の方々がご覧になっても構わない資料だと言えます。したがって、今回SNS上でも内容全文を掲げています。

定期大会での発言者は意見表明として全文の削除を求めていました。理由の一つは、私どもの組合の平和や人権に関わる上記の方針案に拉致問題や新疆ウイグルについて触れていないことを問題視したからです。他にも憲法を守れば平和が維持できるのか、北朝鮮や中国に対する脅威論からの批判意見が加えられていました。

この意見に対し、私からは当ブログを通して培ってきた問題意識であり、そのような考えをお持ちの組合員の方が少数ではないことを認識している点についてお伝えしていました。しかしながら今回、方針案の個々の内容に対して組合の考え方を網羅的に説明した上での議論につなげられないため、この場で全面的に削除すべきどうかの採決はなじまないとお答えしていました。

私の答弁を支持する立場から他にお二人から発言があり、前述したとおり次回の定期大会までに組合員全体できめ細かい議論が交わせる場を設けていくことを約束していました。そのため、さっそく昨年11月には「新疆ウイグルの問題から思うこと」という記事を投稿し、次のような私自身の考え方を示しています。

上記(11)で「人権が尊重される社会の実現をめざす」という方針を掲げていますが、確かに指摘されたような具体的な言葉は記載していません。しかし、だから軽視しているという見方は当てはまりません。あらゆる場面で人権を阻害する行為や非人道的な問題を許さず、強く抗議していく立場を包み込んだ方針だと言えます。

特に「親中派だから」というような見方で切り分けられてしまった場合、ますます本質的な論点から遠ざかってしまうように思っています。どこの国の問題であろうとも「ダメなことはダメ」と指摘し、被害を受けている人たちを救うために力を出し合うことが必要です。

参考までに当ブログでは「避けて通れない拉致問題」「拉致問題を考える」「ルワンダの悲しみ」「チベット問題とオリンピック」など人権に関わる問題を取り上げてきています。発言者が最も強調された問題提起を先に取り上げましたが、ここからは改めて順序を追って整理してみます。

まず総論的な「縦と横」の話です。私どもの組合方針を一個人の責任で白紙から書き直せば上記のような文章にならないものと考えています。「縦」の話は歴史です。これまで組合が結成されてから75年間の歩みの中で、多くの組合役員や組合員の皆さんとの議論を経て上記の文章に至っています。

「横」の話は現在の自治労や平和フォーラムとのつながりです。単位組合ですので独自な判断での方針を持つこともできますが、構成組織の一員として必要な対応がはかれるような明文化は欠かせないものと考えています。

労働組合は職場課題の解決に向けて全力を注ぐべきという意見があることもよく耳にしています。もちろん労働組合が政治課題に力点を置き過ぎて、職場課題がおろそかになるような主客逆転は絶対避けなければなりません。

しかし、「組合員のため」を主目的とした組合活動も、職場内の閉じた活動だけでは結果としてその目的が達成できない恐れもあります。加えて、自分たちの職場だけ働きやすくても、社会全体が平和で豊かでなければ、暮らしやすい生活とは言えません。

そのため、企業内の交渉だけでは到底解決できない社会的・政治的な問題に対し、多くの組合が集まって政府などへ大きな声を上げていくことも昔から重要な組合運動の領域となっています。

このような背景があり、自治労や平和フォーラムに結集し、組合は平和の課題や一定の政治的な活動にも取り組んでいます。総論的な話が長くなっていますが、続いて上記の方針に沿った説明を加えていきます。

上記(1)の「武力によって平和は築けないことを普遍的な教訓とし、日本国憲法の平和主義を広める運動を進めます」に対し、他国の脅威論から批判を浴びることの多さを痛感しています。このブログを始めたことで「日本が平和であり続けられたのは憲法9条があったから」という言葉の不充分さを強く認識するようになっています。

「憲法9条があったから」ベトナムやイラクに派兵せず、直接的な戦争に関与しない国であり続けられたことは確かです。しかし、「憲法9条があったから」攻め入られることがなかったかどうかで言えば、そのような短絡的な話ではありません。憲法9条を守ること、イコール平和を守り続けられることではない点について認識していかなければなりません。

このあたりは「憲法9条の論点について」「平和を考える夏、いろいろ思うこと」「平和を考える夏、いろいろ思うこと Part2」など数多くのブログ記事を通して私なりの考え方を示してきています。 外交関係や経済交流を活発化させるソフトパワー、攻められない限り戦争はしないという専守防衛の原則のもと「安心供与」という「広義の国防」を重視すべきという考えです。 

憲法9条の「特別さ」を持つ日本は外務省のホームページにも掲げている人間の安全保障」という取り組みに全集中すべきものと考えています。防衛審議官だった柳沢協二さんの「脅威とは能力と意思の掛け算で決まる」という言葉が印象深く、友好的で有益な関係を築いていれば攻撃されるリスクは最小化されるはずです。

このような問題意識を上記(1)の日本国憲法の平和主義」という言葉に託し、上記(2)以降の方針内容につなげているつもりです。さらに上記(3)は「騒音や墜落の危険がある」という普遍的なリスクにも言及しています。

上記(7)(8)(9)は個々人の価値判断が大きく分かれている問題だろうと受けとめています。そのような現状を踏まえ「政治利用」や「強制」、「閣僚などの参拝」に反対するという記述につなげています。

以上のような説明で概ね了解を得られるようであれば全文削除や白紙から書き直すような手順は避けたいと考えています。もちろん結論の押し付けは望ましいことではありませんので、幅広いご意見を伺った結果、大幅な見直しを判断することも想定しています。

「たたき台」のための「たたき台」のような内容にとどまって恐縮でしたが、 最後に、上記(12)の「組合が平和運動などに取り組む意義を組合員へ丁寧に周知し、問題意識を共有化した活動に努めます」が最も重要な方針であることを強調させていただきます。

| | コメント (0)

2022年2月12日 (土)

多面的な情報の大切さ Part2

前回記事「多面的な情報の大切さ」を読み返してみると紹介したメディアの記事内容の分量も多く、たいへん散漫な印象を与えていたものと思っています。特に記事タイトルにした論点がうまく伝わらず、単に時事の話題を並べていたような構成だったと言えます。

それはそれで「雑談放談」をサブタイトルにしたブログであり、気ままな書きぶりになっている点はご理解ご容赦ください。実は前回記事の中で、いくつか他のニュースのことも取り上げるつもりでした。インターネット上から多種多様な話題に触れるため、数多くのサイトをブックマークしています。

その一つが「痛いニュース」で、自分が居合わせていたら止めに入れたかどうか取り沙汰されたニュースの『タバコ暴行男の動画見つかる 高校生が土下座するも殴り続ける』の動画を確認していました。すると数日後に『電車内で殴られ土下座した高校生、グラサンかけて自分から大声で威嚇していた。しかも野球部』という記事が掲げられていました。

その記事は「Smart FLASH」の『宇都宮線暴行事件「向こうが先に手を出した」容疑者は面会取材に反省ゼロ…報道されない「怒声の現場」』をニュースソースとしていました。暴行事件の容疑者が責められるべき対象であることに変わりありませんが、二つのニュースから得られる情報の違いによって思い描いていた場面の印象が少し変化していました。

同じ頃のニュースとして『《沖縄警察署破壊》生卵にロケット花火、壁には「しね」のラクガキも…暴徒と化した500人の少年たちが警察署を包囲 理由は「暴行“隠ぺい”疑惑」と「眼球破裂動画」』も衝撃的でした。このニュースに関しても『【沖縄暴動】息子の右眼を返して!「何が原因だったか」原因究明求めるバイク高校生の母』という記事などに触れていくと事件に対する見方が少し変化します。

もちろん暴力や暴動を容認するような思いは一切ありません。ただ得られる情報によってモノの見方や評価が変化する事例として上記のニュースを受けとめていたため、久しぶりに前回「多面的な情報」をタイトルに掲げた新規記事に取りかかっていました。

それにも関わらず北京五輪や「佐渡金山」の話題に絡む内容が大半を占め、切っかけとなった上記のニュースに一切触れないまま前回記事は終えていました。このような経緯があったため、改めて今回「多面的な情報の大切さ Part2」として上記のニュースの事例を紹介しながら書き進めています。

このブログでは「誰が」に重きを置かず、「何が」問題で批判すべきことなのか、具体的な言動や事実関係を指摘しながら論評を加えるようにしています。批判ありき、もしくはポジショントークだと見らないように注意しています。例えば安倍元総理を支持されている方々からも「なるほど」と思っていただけるような記事内容の投稿に心がけています。

一昨年7月の記事「政治の現場での危機管理」の中で、全戸への布マスク2枚配布は首相官邸周辺が発案し、安倍元総理自身も「いいと思った」という顛末を伝えていました。つまり莫大な国家予算を必要とする対策が、側近の一人からの思いつきのような助言によって進められていた問題性を指摘していました。

旬外れの布マスクは「アベノマスク」と揶揄されていましたが、最近『「アベノマスク」希望者へ配送「親切すぎる」“送料10億円”否定も野党が問題視、活用法めぐる議論も』という報道も目にしています。税金の使い方としての問題もありますが、安倍元総理の最近の言動にはもっと驚かされていました。

抗議殺到!「アベノマスク配送料」に10億円の血税って…着払いにしなかった岸田首相の思惑』という見出しの記事の中で、安倍元総理は派閥の会合で「2億8千万枚の希望があった」「もっと早くやっておけばよかった」と笑いを取りながら誇らしげに語っていたようです。自分自身の失策をまったく反省していない姿勢には批判が殺到しても仕方ないものと思っています。

昨年8月の記事「スガノミクスと枝野ビジョン」「信頼できる政治の実現に向けて」 などで取り上げていましたが、菅前総理は周囲の声に耳を貸さない「裸の王様」であり、自ら「官邸ひとりぼっち」の状況を作り出していました。菅前総理に寄せられる情報は偏在し、重要な政策判断に向けて支障をきたすほどだったかも知れません。

ワクチン接種に関しては独断的な強いリーダーシップを発揮し、結果的に目標を達成させた尽力には率直に敬意を表しています。ただ前回記事の中で触れたとおり菅前総理の「ワクチンは走りながら考えるしかない」という無茶ぶりに各自治体や職域接種の協力要請に応じた企業が振り回されたことも指摘しなければなりません。

「多面的な情報の大切さ」という主旨に沿って考えた時、安倍元総理と菅前総理の政治手法に私自身は懐疑的な立場でした。一方で「聞く力」をアピールしている岸田総理は前任者お二人と真逆なタイプと見受けられ、幅広い情報を踏まえながら穏健な政策判断が重ねられていくことを期待していました。

しかし、残念ながら安倍元総理らの意向などを忖度したような方針転換が目立つようになっています。オミクロン対策に関しても、国民の多くから共感を得られるような動きが見られていません。蔓延防止等重点措置の延長を決めていますが、少し前の記事「再び東京に蔓延防止等重点措置」に綴ったような問題意識は拭えそうにありません。

報道特集』内でのインタビューで、飲食に制限をかける対策の是非について問われた仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長は「為政者としては一番楽なやり方ですよね」と否定的な見方を示し、「エアロゾルを一杯出す行為は大声とかそういう行為ですので、人数が多くても大声を出さなければいい」と説明を加えています。

長時間アルコールを飲むと酔っ払い、大声を出しがちとなりますので飲食時間等の制限が、まったく無意味とは言い切れませんが、納得感の薄い対策で国民生活や経済を疲弊させているような気がしてなりません。『13都県まん延防止措置延長で経済損失は合計2.7兆円規模に』という記事で失業は10.6万人増という試算も示しています。

ちなみに2022春闘への影響について「重点措置の延長や適用拡大で労使が交渉に慎重になれば、来年度の賃金も下押しされて景気への影響は長期化する」という分析も示されています。読売新聞の囲み記事でしたが、労働組合の役員の一人として取りわけ目に留まった箇所でした。

岸田首相のコロナ対策は本当に「科学的」なのか? ついに厚労省関係者も疑念を持ち始めた』という記事では「岸田政権に交代してから、尾身氏と首相官邸のすり合わせがほとんどなくなった」と伝えています。さらに厚労省関係者が次のように苦言を呈していることも伝えていました。

コロナ感染者の家族が7日目で隔離から解放される方針になりましたが、最悪の一手です。そもそも発症前の無症状の状態で他人に感染させてしまうのがコロナの特徴です。7日目以降に発症するケースは多い。厚労省の立場としては、患者が増えれば社会が回らなくなるのですから、まずはウィルスの封じ込めを目指すべきです。隔離が7日間ではダメです。

ただし、コロナを『普通の風邪』と定義する人がいて、今、世論もその意見になびきつつあるように思います。この意見を採用するのであれば、そもそも隔離は必要ありません。岸田政権は、水と油の意見を足して2で割っただけのものです。科学的根拠が見当たりません。

記事タイトルの主旨から話が広がっていますが、多面的な情報を提供する場としてご理解ください。最後に本当に意味あるの? “まん延防止”延長決定で空虚と化す「岸田4本柱」』という見出しの記事も多面的な情報の一つとして紹介し、岸田総理の「聞く力」が有効に働くことを願いながら苦言となる箇所をそのまま掲げます。

岸田首相は10日、菅前首相の事務所を訪ね、菅氏からワクチン3回目接種について助言されると、「そうですね」などと答えていたというが、菅政権に対して「現状認識が楽観的過ぎた」と指摘していたのではなかったのか。「そうですね」ではないだろう。

政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。「コロナ対策に失敗した人の事務所に首相がわざわざ出向き、アドバイスをもらっているのだから呆れてしまいます。要するにいまだに、コロナ対策についてどうするべきかを理解していない。分からないのでしょう」

| | コメント (0)

2022年2月 5日 (土)

多面的な情報の大切さ

金曜の夜、冬季五輪北京大会の開会式が行なわれました。いくつかの競技は木曜から始まっているため、開会式イコール開幕という言葉が使いづらくなっています。最近の記事間近に迫った北京五輪」の中で2008年に北京で開かれた夏季大会の開会式で抱いた違和感について触れていました。

複雑な民族問題を抱えているにもかかわらず、子どもたちの笑顔を利用し、民族の結束をアピールする欺瞞さを感じました。チベットやウイグルの人たちからすれば、最も冷ややかに見つめた映像だったのではないでしょうか。

当時も中国国内の人権問題が取り沙汰されていたため、そのような演出に力を注いでいたはずです。今回、ことさら中国国内の「民族の結束」をアピールする場面は見当たらなかったものと思っていました

聖火最終走者にウイグル族、「民族融和」演出し米欧の批判に反論』という場面もあったようですが、私自身、リアルタイムで視聴していた際、選手の一人を起用した流れの中で前回のような違和感は抱いていませんでした。ただ下記のような記者のルポに触れると、また異なる印象が上書きされていくことになります。

北京冬季オリンピックは4日夜、北京市の国家体育場(通称「鳥の巣」)で開会式があり、幕を開けた。政治色の強い演出が際立った異質な式典をスタンドで取材した記者が、中国の思惑を探った。

最新鋭の映像技術を駆使して開催国・中国の文化とスポーツの魅力を描いた演出に、現地で取材しながら徐々に引き込まれた。一方で国内の少数民族の人権問題に厳しい視線が注がれる五輪の幕開けで、中国側が込めた政治的なメッセージも浮かび上がった。

中国が誇る国際的な映画監督、張芸謀氏が練り上げたのは冬らしい青色と白色を基調にしたシンプルな演出だった。二十四節気の一つ「雨水」の映像から開会のカウントダウンが始まり、最後に開幕日である「立春」を迎えると会場中央に集まった人々が持った緑色に光る棒が草原のように揺れて春を告げる。季節感を大事にする中国らしい演出に周辺の欧米人記者からは拍手が聞こえた。精緻なプロジェクションマッピングを駆使した演目が次々に繰り出され、中国の技術力の高さを印象づけた。

大会の「特殊さ」を改めて思い知らされたのは、開会式のハイライトである聖火リレーの場面だ。午後10時(日本時間同11時)過ぎ、リレーは大詰めを迎え、最後に聖火を託された2人の男女の名前が会場のスクリーンに映し出された。このうちスキー距離の女子選手の名前を見て、思わず息をのんだ。新疆ウイグル自治区出身のウイグル族、ジニゲル・イラムジャン選手(20)だった。

彼女に聖火を託した五輪メダリストらと違い、決して有名な存在ではない。周囲の中国人記者に聞くとスマートフォンで名前を検索した後、「知らない」と肩をすくめた。多くのウイグル族が再教育施設に強制的に収容されているとして、欧米の国々は人権侵害を理由に外交的ボイコットを表明し、開会式に政府高官を派遣しなかった。そうした中、渦中の民族をあえて起用した中国に「ウイグル族への人権侵害など存在しない」と世界へ「民族の融和」をアピールする意図があるのは明らかだと感じた。

中国を統治する共産党は人口の9割を占める漢族と55の少数民族は一体の「中華民族」だとうたう。開会式では民族衣装などに身を包んだ人たちが国旗「五星紅旗」を一緒に掲げる場面もあった。

だが、そうした演出を目の当たりにするうちに、かつて上海に駐在し、取材で訪れた新疆で何度も見た光景がよみがえってきた。「すべての民族は家族だ」。そう書かれた街角の看板近くに設けられた検問所では、ウイグル族の人たちがスマートフォンを差し出していた。当局が「テロ」につながるとみるデータがないかチェックするためだ。その横を漢族とみられる人が通り過ぎていく。「なぜ自分たちだけが常に疑われるのか」。あるウイグル族の男性は、そう打ち明けた。

世界が注目する聖火リレーの最終走者にウイグル族の選手を起用した姿勢は、大国となった自信、そして米国などに対して人権問題で介入を許さない強烈な意思表示に映る。開会式ではジョン・レノンの「イマジン」が流れた。「想像してごらん、国境のない世界を」。ちぐはぐさを漂わせて「平和の祭典」は始まった。【毎日新聞2022年2月5日 北京・林哲平

「イマジン」がちぐはぐさを漂わせてというシニカルな見方もあろうかと思いますが、全体を通して「民族の結束」よりも「国際強調」を願う演出が目立っていたように受けとめています。したがって、一触即発な緊迫化するウクライナ情勢を打開する糸口を見出すためにも、できれば北京五輪が対立する国家間での首脳外交を展開する場になって欲しかったものです。

前回記事「個人的な失敗談から省みること」の最後に岸田総理には危険予知能力を存分に発揮して欲しいと願い、最近の記事の中で国家間の争いは「人間の意思」によって防げることを重ねて訴えてきています。このような思いに照らした時、岸田総理が「外交的ボイコット」という言葉を使わず、過度な批判や圧力一辺倒になっていない姿勢を率直に評価しています。

今回、記事タイトルを「多面的な情報の大切さ」としています。これまで「多面的な情報への思い」「再び、多面的な情報への思い」「多面的な情報への思い、2012年春」「多面的な情報の一つとして」 「多面的な情報を提供する場としてという記事などを投稿してきました。意外にも過去の記事タイトルとの重複はありませんでした。

同じモノを見ていても、見る角度や位置によって得られる内容が極端に違ってきます。一つの角度から得られた情報から判断すれば明らかにクロとされたケースも、異なる角度から得られる情報を加味した時、クロとは言い切れなくなる場合も少なくありません。クロかシロか、真実は一つなのでしょうが、シロをクロと見誤らないためには多面的な情報をもとに判断していくことが非常に重要です。

上記のような問題意識を一貫して持ち続け、このブログを長年運営しています。幅広い情報や意見に触れていくという意味で「聞く力の大切さ」というタイトルもあり得ました。ただ岸田総理の「聞く力」が注目されているため、今回の記事内容そのものの印象を左右しかねませんので、いつも使っている「多面的な情報」という言葉に落ち着いています。

先日『news23』の中で3回目のワクチン接種の遅れについて「官僚主導が弊害」と指摘し、菅前総理のリーダーシップを評価する論調での解説を耳にしました。官僚や担当大臣の意見に耳を貸さず、桁外れの目標を掲げた菅総理と対比し、現実的な対応や判断を重視している岸田総理の姿勢を批判していることに強い違和感を覚えました。

菅前総理の「ワクチンは走りながら考えるしかない」という無茶ぶりにどれほど各自治体や職域接種の協力要請に応じた企業が振り回されたのか、結果的に目標以上の接種回数でのペースとなっていましたが、あまりにも偏った見方や一方的な評価に驚きを隠せませんでした。

多面的な情報や意見を踏まえ、一つの「答え」を決めた岸田総理ですが、強い批判にさらされると一転して方針を変える事例も目立っています。そのことも岸田総理の「聞く力」という好意的な評価がある一方、やはり朝令暮改の多さは調整力や指導力の不足が批判されつつあります。

安倍氏&高市氏に屈し「佐渡金山」世界遺産推薦 日本が払わされる“代償”を元外交官が危惧』という記事にあるような動きも気になっていました。これまでの経緯や現実的な対応を重視する立場であれば岸田総理らの当初の判断が妥当だったように思っています。

それにも関わらず、安倍元総理らの「歴史戦」などという勇ましい言葉によって方針を転換してしまったことは岸田総理の「聞く力」の失敗例だと言えるのではないでしょうか。

多面的な情報を提供する場として、最後に『佐渡金山、歴史的価値はそっちのけ 世界遺産推薦の舞台裏にただよう政局と外交の思惑』という記事内容全文を紹介します。たいへん長い記事ですが、なかなか生々しい政治的な思惑を巡る動きなどが伝えられています。私自身、特に留意しなければならないと思った経緯は参考までに赤字としています。

日本政府は1日、佐渡金山遺跡(新潟県)の世界文化遺産登録を目指し、ユネスコ(国連教育科学文化機関)に推薦することを閣議了解した。当初は推薦を見送るとしていた方針が変わったのはなぜか。関係者の証言をたどると、佐渡金山の価値などそっちのけで、政局や日韓関係を巡る思惑が優先された状況が浮かび上がる。(牧野愛博)

文化審議会は昨年12月28日、佐渡金山遺跡を推薦候補に選んだ。この時点では、文部科学省や外務省は「推薦見送りの流れ」(関係者)とみていた。推薦する場合、推薦書類を日本時間2月2日未明までにユネスコ世界遺産センターへ提出する必要がある。提出までにユネスコとの間で詳細な調整が必要になるため、「本気で推薦するときは、前年の秋までに選ぶのが通例」(同)だったからだ。

実際、文化審議会世界文化遺産部会の答申には「推薦書の提出までに、読み手にとってわかりやすい表現となるよう推薦書案の記述内容について一部修正すべきという課題はある」というただし書きもついていた。外務、文科両省は「議論を尽くすため、結果的に今回は推薦見送りになっても仕方がないという意味だ」と受け止めたという。

ユネスコへの推薦は各国年1件に限られる。新潟県や県選出国会議員らは2015年度から佐渡金山の推薦を目指していたが、ずっと選ばれない状態が続いていた。佐渡金山が推薦を得られなかった理由は幾つかある。最大の理由は、日本政府がユネスコの審査制度の変更を働きかけていた問題だった。2015年、中国が「世界の記憶」(旧・記憶遺産)に申請した「南京大虐殺の記録」が登録されると、日本政府は「政治利用だ」と反発。ユネスコの分担金支払いを一時延期した。

さらに、外務省を中心に「ユネスコが政治的対立をあおる場になってはならない」として、「関係国間で政治対立がある案件の申請は受け付けるべきではない」などと求めていた。外務省は首相官邸などに「韓国が反発する佐渡金山の登録を目指せば、国際社会から、日本は二枚舌だと批判される。日本の国際社会での信用に傷がつきかねない」と説明していた。

2015年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」(23施設)に端を発した問題も影響していた。当時、韓国は、長崎市の端島炭坑(軍艦島)などを挙げ、日本統治時代に朝鮮半島の出身者が労働を強いられた施設が含まれていると主張した。日本は同年7月の世界遺産委員会で「意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者」がいたとし、当時の徴用政策を理解できるような措置を講じると説明。説明戦略の策定に際し「真摯に対応する」と約束した。

2020年6月、東京都新宿区の政府施設内に設けられた「産業遺産情報センター」が「明治日本の産業革命遺産」を説明する資料の一般公開を始めた。韓国側は「差別を否定する証言を紹介している」「強制連行について説明していない」などと猛反発した。結局、ユネスコの世界遺産委員会は21年7月、「明治日本の産業革命遺産」を巡る日本の対応に「強い遺憾」を表明する決議を採択。同時に、日本政府に2022年12月1日までに取り組みを報告するよう要請した。

韓国政府は「佐渡金山でも端島炭鉱と同じように、朝鮮半島出身の労働者が働かされていた」と主張していた。政府内では「佐渡金山を推薦すれば、もめている端島の問題に更に火がつきかねない」という危機感が漂っていた。政府は、産業遺産情報センターの加藤康子センター長も同じ懸念を持っているという情報を入手していた。関係者の一人は「加藤さんは安倍晋三元首相らと親しい。いざとなれば、佐渡の推薦見送りで歩調を合わせてくれるのではないかという期待感があった」と語る。

そして、ユネスコの状況を考えれば、たとえ推薦しても、佐渡金山が登録される可能性はほとんどないという見方が、政府内の大勢を占めていた。佐渡金山の登録を巡っては、世界遺産条約締約国から地域別に選ばれた世界遺産委員会で審査した後、2023年夏ごろまでに登録の可否を決める。登録には21カ国で構成する遺産委で3分の2以上の賛成が必要とされるが、実質的にはコンセンサス方式を取っている。

実際、「明治日本の産業革命遺産」の登録を巡り、2015年にドイツ・ボンで開かれた世界遺産委員会でも、議長役のドイツは水面下で日韓両国に事前合意を促していた。当時、日本は「日韓併合条約は合法だった」との立場から、ILO条約(国際労働条約)が違法と位置づける「forced labor(強制労働)」の文言を使うことを拒否。「force to work」の文言を使うよう働きかけるなど、ギリギリの調整を行った。

交渉の途中、韓国側が「forced labor」という言葉の使用にこだわったため、日本側は態度を硬化させた。このとき、一時は「投票やむなし」として、票読み作業を指揮したのが当時の岸田文雄外相だった。ただ、当時は慰安婦問題に固執していた朴槿恵政権が日韓関係の改善に向けて動き出していた時期だった。最終的に安倍晋三首相の判断で、投票に持ち込まれた場合に日韓関係に重大な影響が出るとして、妥協して合意に至った経緯があった。

こうした経緯を踏まえ、外務省は「佐渡金山を推薦しても、韓国が阻止に動くだろう。ただでさえ、端島を巡る日本の対応に強い遺憾を示したユネスコで、日本の主張が全面的に支持される可能性は低い。今年5月には韓国で新政権が誕生する。状況を見ながら、改めて推薦した方が得策だ」と政府与党内で説明していたという。

これに対し、文化審議会の答申が出るまで、佐渡金山を巡る自民党内の動きは鈍かった。政府関係者の一人は「強硬に推薦を働きかけていたのは、新潟県選出の国会議員程度だった。結果的に見通しが甘かったことになるが、当時は、これなら推薦見送りになるだろうと考えていた」と証言する。雰囲気を変えたのは、韓国外交省が文化審議会の答申を受けて昨年12月28日に出した報道官論評だった。

論評は、佐渡金山の推薦候補選定について「非常に嘆かわしく、直ちに撤回を求める」と訴えた。韓国政府関係者によれば、韓国では従来、「強制連行された朝鮮人労働者が佐渡金山で働かされていた」という主張が社会的に大きく取り上げられたことはなかった。この関係者は「軍艦島(端島)を巡る韓日合意が守られないうちに、同じような案件を進める日本の姿勢が問題視された」と語る。

韓国も2015年当時、「明治日本の産業革命遺産」の登録を巡る日韓対立の際、端島の朝鮮人労働者の実態を詳しく調査して臨んだわけではなかった。韓国の市民団体の突き上げを受け、真相究明よりも、日本の登録を阻止することが重視された。日本も登録が最優先課題だった。このため、外交上の妥結が優先され、真相究明が後回しにされた。日韓が15年当時、お互いに納得しないまま合意したことが、佐渡金山の推薦で再び、日韓対立が再現される結果を招いた。

それまで、佐渡金山に大きな関心を示さなかった自民党保守派からも、韓国の反応を契機に、強硬な意見が上がり始めた。安倍晋三元首相が顧問を務め、自民党の保守系議員らがつくる「保守団結の会」は1月18日、政府に早期推薦を求める決議をまとめた。安倍氏は20日、自らの派閥で「論戦を避ける形で登録を申請しないというのは間違っている」と語った。高市早苗党政調会長も19日の記者会見で「日本国の名誉に関わる問題だ」と主張した。

こうした主張の背景には、韓国に対する不満以外の事情もあった。高市氏は24日の衆院予算委員会で佐渡金山問題を取り上げたが、林芳正外相に答弁を求める場面が目立った。自民党のベテラン議員は「高市と林は次のリーダーを争うライバル関係にある。高市にしてみれば、佐渡金山を取り上げれば、保守派の支持が増えるし、林の人気も下がるから一石二鳥だ」と話す。

政府関係者も「佐渡金山で閣議了解を求める担当は文部科学省。でも、高市さんが何度も林さんの答弁を求めるところに、政局のにおいがする。末松信介文科相は安倍派だから、いじめないということだろう」と語る。予算委を注視していた外務省内では「自民党がまるで野党みたいな質問をしている」という声が上がった。

別の関係者は、佐渡金山を巡る保守派の動きについて「北京五輪で外交ボイコットを政府に求めた時と同じ、ポジショントークだ」と語る。尖閣諸島や徴用工判決などを巡り、世論の中韓両国に対する反発は根深く、中韓に対する強硬論は支持を得やすい。同時に保守派を結集する軸にもなりうる。

先の自民党ベテラン議員は「安倍さんは、岸田さんの安全保障政策は評価しているが、リベラルな外交を警戒している。閣僚人事への不満もあって、岸田さんや林さんへの批判的な主張につながっている」と語る。別の議員は「安倍派は所属議員が100人近い。あれだけの大所帯をまとめるためには、常に発信して求心力を保つ必要があるんだろう」と話す。

自民党保守派からの突き上げは激しかった。佐渡金山の推薦を強く働きかけていた新潟県選出議員ですら、政府関係者に「保守派が騒ぎ出して、手がつけられなくなった」と漏らすほどだった。首相官邸の空気も「もう面倒だから、推薦しよう」という雰囲気に傾いた。

そんななか、最後まで悩んでいたのが岸田文雄首相だった。岸田首相は2015年以降のユネスコを巡る経緯が十分頭に入っていた。「登録を実現することは何よりも大事。何が最も効果的なのか、しっかり検討していきたい」という国会答弁も、「今、無理に推薦しても登録は難しい」という外務省の説明を受けたものだった。

岸田氏は安倍氏に電話するなど、散々悩んだ末、1月28日夜、佐渡金山を推薦する考えを表明した。「申請を行うことを決定した。変わったとか転換したとの指摘は当たらない」とも語った。記者団とのやり取りを聞いていた政府関係者の一人は「総理の頭の中は、夏の参院選まで、どうやって政権を持たせるかでいっぱいだ。ここで政局になれば、予算案審議などを巡って自民党保守派が野党化しかねないと危惧したのだろう」と語る。

韓国政府は岸田首相が自ら推薦決定を表明したことで、「ただちに抗議する必要がある」と判断。その夜のうちに相星孝一駐韓大使を呼び、厳重に抗議した。韓国政府は関係部署による対策チームを作り、佐渡金山の登録を阻止する方針も決めた。

外務省関係者は「日本が圧倒的に不利な状況。結局、外務省がババを引いたということだ。今後、結果が出なければ、責められるのは外務省と林大臣だから。保守系の政治家やメディアからは、中国や韓国の意見が通るユネスコなんて脱退しろという声も聞く」と語る。この騒動の間、佐渡金山の価値について真剣に考えた政治家は一体、何人いたのだろうか。朝日新聞2022年2月3日

| | コメント (0)

« 2022年1月 | トップページ | 2022年3月 »