治療と仕事の両立支援
コロナ禍が続いています。新年早々の前回記事「虎口を脱する2022年に」の中で、年賀状に「今年こそコロナ禍から脱し、平穏な日常が戻ることを願っています」と書き添えていたことを伝えていました。残念ながら年明け、日を追うごとに1日あたりの新規感染者の数が急増しています。
2年近く控えている外での会食が再開できることを楽しみにしていましたが、引き続き自重していかなければならない現状に戻りつつあります。必要な感染対策に留意している中、多岐にわたる労使課題や組合要求の前進をめざし、労使協議に関しては精力的に重ねています。
昨年末には市当局と教委当局に「人員確保及び職場改善に関する要求書」を提出しています。増員要求が示されている職場の所属長に対しては要求書の写しを渡し、要求内容の切実さの理解を求めていく行動にも取り組んでいました。今後、よりいっそう当該職場と連携を密にし、年度末まで交渉を重ねていきます。
このブログでは時々、私どもの自治体における労使課題の内容を紹介しています。積極的な情報開示は住民の皆さんとの信頼関係を高める手段だと考えています。自治体行政に限らず、労働組合と住民の皆さんとの関係も同様なことだと考えています。
労使課題において組合の要求や主張が絶対的な誤りであれば再考しなければなりません。そのような意味合いから日常的に発行する組合ニュースの内容は誰が目にしても説明責任を果たせる前提で書かれています。ネット上で不特定多数の方々に発信している当ブログの内容も同様です。
基本的な立場や考え方の違いから批判を受ける場合もありますが、そのことも貴重な機会だととらえています。どのような点が批判されるのか、どのように説明していけばご理解いただけるのか、いろいろな意味で「気付き」の機会につながるからです。
そのため、このブログに組合ニュースの内容をそのまま掲げる場合があります。今回、私どもの組合員の皆さんに対する速報的な意味合いを踏まえ、週明けに発行するニュースの内容の一部を紹介します。
ちなみに年末に投稿した記事「『うつヌケ』を読み終えて」のコメント欄で、ぱわさんに「いろいろなご意見等をお寄せいただき、問題意識を持った課題について執行委員会に諮り、1月の安全衛生委員会の議題の一つとして提起する運びとしています」とお伝えしていました。さらに下記のような思いも、そのコメント欄に記していました。
長年、組合役員を務めてきていますのでメンタル不調の方々のことを「ある程度」知っているつもりでした。しかしながら今回『うつヌケ』等に改めて接したことで、うつ病の苦しさや事例の幅広さなど認識を深める機会になったものと考えています。
例えば、これまでメンタル不調という言葉を多用してきましたが、この言葉もうつ病だった方の深刻さを希薄化しているように感じるようになっています。ただあえてうつ病と明らかにしないほうが望ましく、メンタル不調と称してきたのかも知れないことにも思いを巡らしています。
いずれにしても知識や情報は深く的確に把握できていたほうが、より望ましい「答え」を出すための議論にとって有益であることは間違いありません。そのため、ぱわさんから様々なご意見や情報をお寄せいただき、本当に感謝しています。ぜひ、これからもよろしくお願いします。
このように記したとおり労使協議の中で、いろいろ参考にさせていただいています。なお、組合員の皆さんから様々なご意見や相談が組合に寄せられます。個人的な一人の声だったとしても、その声の後ろには同じ悩みを抱える組合員の皆さんも少なくないのかも知れないという思いを巡らしています。
その上で市側と協議すべき事項なのかどうか組合役員一人ひとりの責任として判断します。さらに執行委員会等に諮り、複数の視点で取扱いを判断するという手順を踏んでいきます。つまり一人の組合員から発せられた意見だったとしても、市側に示した段階で私どもの組合の組織として責任を持つことになります。
発せられた経路が当ブログのコメント欄だったとしても同様です。加えてSNSという場だからこそ、率直なご意見やご要望がお寄せいただけているものと受けとめています。記事タイトルに掲げた本題に入る前の説明が長くなりましたが、このようなブログであることをご理解ご容赦ください。
さて、1月24日に中央の職員安全衛生委員会が予定されています。組合からは議題メモを12月24日に市当局に提出しています。治療と仕事の両立支援に向けた課題、人員要求書に掲げた安全衛生に関連する項目を提示し、委員会での議論を提起しています。今回、議題メモの中の「治療と仕事の両立支援に向けて」の内容全文(青字)を紹介します。
寄せられた組合員の声を受け、組合はメンタル不調の休職者の職場復帰プログラムについて検証し、当事者に過剰な不安を与えないような配慮を求めています。より豊かな社会を築くためにも、治療と仕事の両立に向けた職場環境や支援体制の整備が大切なことを厚生労働省も呼びかけています。今回、治療と仕事の両立支援に向けて、いくつか組合から具体的な要望と議論提起をさせていただきます。
メンタル不調者の中には、うつ病と診断されている職員が多いはずです。うつ病は誰でもかかる可能性があるため「心の風邪」と称されています。しかし、すぐに治るような病気ではなく、うつ病に苦しむ方々の悩みの深さは風邪と比べられるようなものではありません。さらに治ったと思った後に突然ぶり返しがあり、一進一退を繰り返しながら徐々に良くなる病気だと言われています。
また、がんに対する治療法が以前に比べて進歩しています。抗がん剤の投与や放射線による治療など退院後に継続的な通院を必要とするケースが増えています。このような現状を踏まえ、次の点について提案させていただきます。
① 医師の診断や障害者手帳の所持等を前提に現行の長期通院休暇を特別休暇として確立できないか、せめて有給休暇残日数10日という条件や取得単位等を見直せないか、改善を要望します。
② かつて当市の職員が同一疾病で病休等に入る場合、一度復職していれば新たな取得として扱われていました。現在、取得期間の通算を不要とするためには1年間の勤務実績が必要とされています。クーリング期間としてとらえた場合、国の20日間に対し、非常に大きな差となっています。このような現状を踏まえ、復職後の同一疾病での再取得のあり方について議論提起させていただきます。
③ メンタル不調者が休職中に主治医から治療の一つとして気分転換のための外出等を勧められる場合もあります。また、親戚の葬儀等の用件で遠隔地に出向かなければならないケースもあり得ます。それぞれ安全衛生係に報告することが前提となるのでしょうが、どのあたりまで許容範囲となるのかどうか目安があれば望ましいという声も寄せられています。線引きは難しいと思われますが、可能であれば議論すべき事項の一つとさせていただきます。
いくつか補足させていただきます。寄せられた組合員の声とは主に「新疆ウイグルの問題から思うこと」のコメント欄で交わされた内容であり、前述したような手順のもとに執行委員会での確認を経ています。上記②③は議論提起としていますが、①は明確な要望とし、具体的な見直しがはかれるよう求めていきます。
今回の記事タイトルに掲げた「治療と仕事の両立支援」はあまり耳慣れていない言葉かも知れません。ワーク・ライフ・バランスという言葉は有名で、内閣府によると「仕事と生活の調和」と定義しています。
一人ひとりの事情に合わせて仕事とプライベートを両立させた働き方を実現するワーク・ライフ・バランスへの取り組みは、労働力が減少している現状の中で欠かせない課題となっています。人材確保の観点からも重要な取り組みだと言えます。
そのため「働き方改革」の議論の中でも「病気の治療と仕事の両立」が検討項目の一つとされていました。厚生労働省のサイト「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」の冒頭には次のように記されています。
それまで健康だった人が病気にかかり治療が必要になると、以前の通りには働けなくなるケースが出てきます。その場合、治療に専念することになるか、あるいは、治療しながら働くことができるのかはケースバイケースですが、治療しながら働くことを希望する人にとっては、治療と仕事を両立させることができるのかは大きな問題です。
一方で、働く人の職場、とりわけ、人事労務担当者や産業保健スタッフ、そして、共に働く上司や同僚にとっても、治療と仕事の両立支援は重要な課題です。治療をしながら働きたいという思いがあり、主治医によってそれが可能だと判断された人が働けるような環境の整備が求められています。
かなり前に同じ疾病での病休や休職期間の通算のあり方などを見直していました。以前、休職期間の上限が間近になった段階で復職し、また同じ疾病(主にメンタル疾患)で仕事から離れざるを得ない方々が少なくありませんでした。
結果的に10年以上休まれ、そのまま定年退職を迎えられる場合も決して稀ではありませんでした。懸命に職場復帰をめざされている方々に対して厚く配慮した制度だったものと思われます。
そのような制度や運用を見直しした際、組合にも示され、やむを得ないものと了承しています。産業医の先生との相談をもとに見直していましたが 「『うつヌケ』を読み終えて」の中で取り上げたとおり暗いトンネルを抜け出すための転機として、本人のためにつながるという判断があったようにも聞いています。
ただ「公務員は恵まれすぎている」という社会的な背景があったことも記憶しています。このような社会的背景は変遷し、今「治療と仕事の両立支援」という流れが高まりつつあります。冒頭で述べたような趣旨のもと組合からの上記の要望や議論提起が不特定多数の方々からもご理解を得られることを願いながら今回の記事を綴らせていただいています。
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コメント
OTSUさま。組合ニュースを拝見させていただきました。コメントさせていただいた要望が記載されとてもうれしく思っています。②については議論提起となっていますが国家公務員との差が大きい点については比較検討したのかどうか確認できれば良いなと思います。
たびたびのことで大変申し訳ありませんが今回は短期の介護休暇についてどのように思われるかお伺いします。短期の介護休暇があることは大変すばらしいことだと思います。現状では1人の要介護者に対して取得できる日数は5日です。大体が親の介護が必要で取得する場合が多いと思います。高齢者は慢性疾患を抱えていることが多く、通院するにあたり介護が必要で休暇を取得することがあると思います。慢性疾患であるため毎月の通院が必要なことが多いと思いますが短期の介護休暇の付与日数は5日です。差は有休で対応するしかありません。付与日数の見直し提案は可能でしょうか?ご意見いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: ぱわ | 2022年1月14日 (金) 22時24分
ぱわさん、コメントありがとうございました。
組合が提起した議題について、安全衛生委員会の後、どのような議論となっているのか組合ニュース等で適宜報告させていただく予定です。
短期の介護休暇の日数増についても実現できれば利用されている方々にとって望ましいことです。ただ恐縮ながら労使協議における優先順位としては今のところ喫緊の課題だと認識していません。
なお、ご覧になっているかも知れませんが、「衆院選挙が終えて思うこと」のコメント覧で、ぱわさんあてのコメントが投稿されています。念のため、ご案内させていただきました。
投稿: OTSU | 2022年1月15日 (土) 06時21分
OTSUさま。コメントの件、気づいていませんでした。教えていただきありがとうございます。コメントでは障害者はすでに配慮されていると書かれています。OTSUさまの市では障害者に対して特別に配慮されていることはありますでしょうか?障害の種類により人事上の配慮や就業環境の配慮はあると思いますがそれ以外では思いつきません。私が知らないだけかもしれません。ご存知のことがありましたら教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
投稿: ぱわ | 2022年1月15日 (土) 15時06分
ぱわさん、コメントありがとうございました。
病気休暇等が特に障害者に特化したものではありませんので休暇制度において特別な配慮は特段思い浮かびません。その上で、せっかくの機会ですので次のような説明も加えさせていただきます。
2016月1月に障害者差別解消法(正式名称・障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が施行されています。以前、そのことについて当ブログで下記に紹介する記事を投稿していました。
2016年4月10日(日) 障害者差別解消法が施行
http://otsu.cocolog-nifty.com/tameiki/2016/04/post-e214.html
その法律に基づき障害者の日常生活に対する「合理的配慮」が必要とされ、不充分さが見られた場合、組合は市当局に改善を適宜申し入れています。この法律の趣旨や目的を広く理解を求めていくことも改めて必要だろうと思っています。
また、必要な休暇制度の拡充は障害者かどうかに関わらず、できれば実現したいものが多々あります。ただ実現できた際、取得する職員の休暇時の代替のあり方が不明確なままであると「これ以上必要ない」という声にもつながりがちです。
代替のあり方についても組合は留意していますが、必ずしも充分な手立てを講じることは困難な現状です。このような現状を受けとめ、組合は権利関係の拡充に向けた労使協議に臨んでいます。
今回の記事の中で説明したような複数の視点での議論を踏まえ、具体的な要求に進むという手順です。いろいろ余計な説明を加えてしまったかも知れませんが、このような現状であることも改めてご理解くださるようよろしくお願いします。
さらに当ブログのコメント欄は下記記事のとおり「出入り自由な場として」としています。今回、ご指摘された方が単発な投稿だったとしてもご容赦くださるようお願いします。
2013年4月14日(日) 出入り自由な場として
http://otsu.cocolog-nifty.com/tameiki/2013/04/post-2dce.html
投稿: OTSU | 2022年1月16日 (日) 08時10分