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2022年1月15日 (土)

間近に迫った北京五輪

前回の記事は「治療と仕事の両立支援」でした。一転して話題が変わり、今回、北京五輪について取り上げてみます。その時々に思うことを気ままに書き進めているブログですので落差の大きさについてはご容赦ください。実は年末に投稿した記事「コロナ禍が続く2021年末」の最後のほうで次のように記していました。

残念ながら2021年末、最後に投稿する記事の内容は暗い話題ばかりで締めることになります。 他にも北京冬季五輪などの時事の話題に触れるつもりでしたが、ここまでで相応な長さとなっています。中途半端に触れることは控え、機会があれば年明けの記事で取り上げてみようと考えています。

2月4日に開幕する北京五輪が間近に迫っています。史上初めて夏季大会と冬季大会が同じ都市で開かれます。オミクロン株の感染拡大の影響で無観客とするのかどうか直前まで揺れ動いています。さらに「外交的ボイコット」という言葉について後ほど触れますが、北京五輪は常に中国国内の人権問題が焦点化される引き金となります。

ちなみに1年前の記事「東京五輪の行方と都政の現場」の中で「五輪」とはオリンピックのみを指す言葉で、パラリンピックを含めていない点について説明していました。ただメディアの多くがパラリンピックも含めた意味合いとして「東京五輪」と表記していました。

そのため「本来、東京オリンピック・パラリンピックと記すべきなのかも知れませんが、このブログでも同様な意味合いで表記していくことをご容赦ください」と記していました。北京五輪という表記も同様であり、決してパラリンピックを軽視している訳ではないことを改めて釈明させていただきます。

昨年7月には57年ぶりの東京五輪が開幕」という記事を投稿し、沢木耕太郎さんの著書『オリンピア1936 ナチスの森で』について紹介していました。1940年の第12回東京大会は幻となりましたが、第11回大会はベルリンで予定通り1936年8月に開催されていました。

その年の3月、ヒトラーはロカルノ条約を一方的に破棄し、フランスとの国境に広がる非武装地帯ラインラントに大部隊を送り込んでいました。それでも1936年夏、ヒトラーはベルリン大会の開会を高らかに宣言しています。

ナチスが威信を賭けて演出した異形の大会であり、近代オリンピックの原点となったと言われています。沢木さんは、そのすべてをフィルムに焼きつけて記録映画の傑作『オリンピア』を産み落としたレニ・リーフェンシュタールさんの取材に成功しています。

激しく運命が転回した日本人選手の証言も加えながら著わした『オリンピア1936 ナチスの森で』はベルリン大会を再構築したノンフィクションでした。沢木さんの著書を読み終えた感想を添えながら私自身の五輪に対する思いを昨年7月の記事の中で次のように綴っていました。

確かにナチスの威信を賭けた異形の大会だったのかも知れませんが、非難声明を出していたフランスからも選手団が派遣され、51の国と地域から4千人の選手と2千人の役員が参加する過去最高規模の五輪となっていました。1936年8月の時点では2度目の世界大戦を回避できる可能性も残されていたのかも知れません。

オリンピックは「平和の祭典」と呼ばれています。当たり前なことかも知れませんが、戦争中であれば開催することは困難です。国連にはオリンピック停戦という原則もあり、五輪開催を通し、平和の維持、相互理解、親善という目標の推進をめざしています。いずれにしても平和だからこそ開催できる、このような思いのもとに今後の五輪開催が途絶えずに続くことを切望しています。

北京で夏季大会が開かれた2008年8月には「チベット問題とオリンピック」という記事を投稿しています。今回の新規記事「間近に迫った北京五輪」に向き合っている問題意識と当時の問題意識に変化はありません。

個々人の問題意識が容易には変わらないという当たり前な証しである一方、中国に関わる人権問題が改善されていないという残念な現状であることも省みなければなりません。その時の記事に開会式を見た後の感想を次のように残していました。

中国は56の民族で成り立っています。人口の90%以上が漢民族で、その他55の少数民族の中にチベット族やウイグル族が含まれています。北京オリンピックの開会式では、それぞれの民族衣装をまとった子どもたちが登場しました。

難しく考えずに開会式をライブで見ていましたが、この場面に対しては強い違和感を覚えました。複雑な民族問題を抱えているにもかかわらず、子どもたちの笑顔を利用し、民族の結束をアピールする欺瞞さを感じました。チベットやウイグルの人たちからすれば、最も冷ややかに見つめた映像だったのではないでしょうか。

2008年当時も北京五輪の開催に反対している人たちは少なくありませんでした。チベットやウイグルの皆さんが祖国の地で平和に暮らせることを願う私自身の気持ちは、五輪の開催を反対する人たちと大きな隔たりはないものと思っています。その上で昨年11月の記事「新疆ウイグルの問題から思うこと」に託したような問題意識を抱え続けています。

以前の記事内容をそのまま紹介していくと長い記事になりがちで恐縮です。それでも「チベット問題とオリンピック」という記事の最後に紹介したダライ・ラマ14世の印象深い言葉は改めて掲げさせていただきます。

怒りは、怒りによって克服することはできません。もし人があなたに怒りを示し、あなたも怒りでこたえたなら、最悪の結果となってしまいます。それとは逆に、あなたが怒りを抑えて、反対の態度―相手を思いやり、じっと耐え、寛容になる―を示すと、あなた自身穏やかでいられるばかりか、相手の怒りも徐々に収まっていくでしょう。

新年早々の前々回記事「虎口を脱する2022年に」の中では参院議員だった政治評論家の筆坂秀世さんの論評『なぜか支持率上昇の岸田内閣、菅内閣とどこが違うのか』を紹介しました。その論評の中で筆坂さんは次のように語っています。

12月24日、岸田内閣は、来年2月に開催される北京オリンピック・パラリンピックについて、閣僚や政府関係者の派遣を見送ると発表した。自民党内からは「遅すぎる」という批判も出ているようだが、そんなことはない。慌てる必要などもともとなかった。あえて「外交的ボイコット」という名前をつけることもしかったが、それで良い。「外交的ボイコット」など、所詮、中途半端な対応だ。やるなら選手派遣もしないくらいの強い姿勢を見せるべきだ。

あえて「外交的ボイコット」という言葉を使わなかったことを私自身も肯定的にとらえていました。欧米との足並みを意識しながら中国との距離感も見計らうバランスを重視した判断だったものと受けとめています。ただ「やるなら選手派遣もしないくらいの強い姿勢を見せるべきだ」という意見には首肯していません。

大事な目的は中国当局による香港やウイグルなどでの人権侵害行為を止めさせることです。国際社会が足並みを揃えて圧力を加え、中国を強く非難していくことで問題が解決するのであれば最適な選択肢だと言えます。しかしながら中国が反発を強めるだけで、対立が激化していくのであれば非常に悩ましい話となります。

このような悩ましさを踏まえた時、岸田政権の「対中外交の選択肢をより多く残しておく」という考え方は評価すべき一つの判断だろうと思っています。いずれにしても圧力一辺倒ではなく、相手側の言い分にも耳を傾けながら相手側の意思を変えていくためには率直な対話の場が欠かせないはずです。

対話の場を一切放棄するようであれば武力衝突の危機に近付きかねません。先週土曜に放映された『報道特集』の中で中国大使だった丹羽宇一郎さんが習近平主席の次のような言葉を紹介していました。習主席は「住所変更できないから我々は」と語り、会うたびに「隣国として良い関係を続けるべきだ」と強調していたとのことです。

このような話は「中国に籠絡されている」「綺麗事にすぎない」と見られ、「親中派」「媚中派」というレッテルを貼られてしまうのかも知れません。明らかに問題視すべき中国政府の行為を許容するようであれば批判の対象とすべきだろうと思っています。そのような点を違えないのであれば習主席と率直に話し合える場を持てるほうが望ましいはずです。

年末年始の休みに読むつもりで、いろいろな書籍をブックオフで買い込んでいました。そのうちの一冊が蓮池薫さんの『拉致と決断』でした。たいへん長い新規記事になっていますので書籍の内容を詳しく紹介できませんが、蓮池さんの拉致された24年間の辛苦は想像を絶するものです。

拉致という犯罪は絶対許せません。しかし、国家間で対話するパイプがあったからこそ蓮池さんらが帰国できたことも確かです。強い言葉で相手を批判しているだけでは事態を一歩も動かせていないという事実を直視しなければなりません。

安倍政権の末期から金正恩総書記と「条件を付けずに向き合う」という言葉が繰り返されるようになっています。その言葉の不充分さについて蓮池さんは「無条件で会うと言うのではなく、北朝鮮側に提案できるものを作り上げないといけない」と語っているようです。

自然災害や感染症は人間の手によってコントロールできません。そのため最悪な事態を想定し、普段から必要な備えを怠らず、リスクを緩和していく心構えが欠かせません。しかし、国家間の争いは「人間の意思」によって防げるはずです。

対話が途絶え、疑心暗鬼のもとに対立が激化し、武力衝突という最悪な事態に至ることを絶対避けなければなりません。最後に、間近に迫った「平和の祭典」であるべき北京五輪が国家間の争いを高める引き金にならないよう心から願っています。

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