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2021年11月13日 (土)

衆院選挙が終えて思うこと

10月15日の東京都人事委員会勧告を踏まえ、私どもの組合は月例給の水準の維持などを求めた自治労都本部統一要求書を10月28日に市当局に提出しました。定年引き上げに向けた統一要求書と単組独自要求書も同時に提出しています。11月2日に市当局から都人勧を基本に改定するという文書回答が示されていました。

11月10日夜に団体交渉を開き、公民格差以外を理由とする引き下げがないことの確認などを求め、早期の決着をはかっています。会計年度任用職員の場合は都人勧の内容の反映を翌年度としていますが、他団体の労使交渉の結果等を見定めた上、翌年度に向けての再協議を求める場合があることも市当局に申し入れています。

本来、労働組合にとって最も重要な賃金交渉について当ブログで掘り下げるべきなのかも知れません。それでも前回記事「定期大会を終えて、2021年秋」の冒頭に「衆院選挙に絡んだ内容は機会を見て次回以降取り上げていくつもりです」と記したとおり総選挙戦の結果を受け、いろいろ思うことを書き進めてみます。

立憲民主党は改選前の110議席を14議席減らし、96議席という結果となっています。敗因について前回「野党優位の状況だったのに…」維新は大躍進を遂げて、立民が惨敗した決定的な違い 』『立憲民主党はなぜ若者の支持を得られなかったのか?』『野党共闘はなぜ失敗したのか 惨敗の立憲民主、政治評論家が指摘した「維新との差」』という記事を紹介しています。

その後も様々なサイトの論評を目にしています。今回、特に目に留まった記事中の一文を紹介し、個人的な見方や感想を添えていく構成を考えています。まずディリー新潮に掲げられた『なぜ君「小川淳也」は野党の“希望の星”になれるか 不安要素は「消費税」と「共産党」』という記事に注目しました。

2016年の参院選、小川氏は民進党香川県連の代表として香川選挙区の野党候補を共産党候補者に一本化する先頭に立ちました。共産党候補への一本化は香川県だけで当時話題となりました。この時小川氏は共産党香川県委員会に歩み寄りを求め、「日本社会に必要なのは社会主義的変革ではなく資本主義の枠内での民主的改革」「日米安保条約の破棄や自衛隊の解消と言う政策は持ち込まない」「天皇制を含めた現行憲法の全条項を守る」などの確認書を交わしました。

私はこの小川氏の前のめりな姿勢を懸念して、議員会館を訪ねました。そして「共産党と組むと民進党がどんどん浸食され、左傾化するんじゃないか」と率直に尋ねました。それに対して小川氏は「僕は変わって行くのは共産党の方だと思う。欧州のような共産党の現実化・中道化は時代の流れでしょう。欧州も入り口は選挙協力でした。今回はその第一歩ですよ」と話していました。

映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』で一躍有名になっている衆院議員の小川淳也さんは立憲民主党の代表選挙への出馬に意欲を示しています。その映画を私も見ていますが、ドキュメンタリーとしての出来映えに感心しながら小川さんにエールを送りたくなる内容だと言えます。いずれにしても2003年10月10日の衆院解散の日からカメラを向け続けている密着ぶりに驚いていました。

欧州ではユーロコミュニズムと言われる共産党がソ連共産党と距離を置くようになり、イタリアでは1990年代に共産党が解党して左翼民主党になり、「オリーブの木」という連立政権に参加しています。このような欧州の動きを受け、小川さんは「変わって行くのは共産党の方だと思う」と語っていました。

ディリー新潮の記事中の「私」は政治ジャーナリストの青山和弘さんです。青山さんは「しかしあの参院選から5年。日本共産党は選挙協力にはさらに積極的に応じるようになりましたが、党名の変更はもちろん、綱領の抜本的な改定には踏み切っていません」と続けています。

さらに「代表選挙では共産党との共闘路線の是非が最大の焦点になります。比例代表で大きく議席を減らした今回の選挙結果を受けても、小川氏は共闘しながら共産党に中道化を求める立場を貫くのか、厳しく問われることになるでしょう」とディリー新潮の記事の中で問題提起しています。

続いて、夕刊フジの記事『立憲民主党は立ち直れるか? 問われる共産党との距離感、立証できない疑惑で騒ぐより政策重視を』を紹介します。内閣参事官だった嘉悦大教授の高橋洋一さんの論評ですが、次のような見方が気になりました。

立民が衆院選で負けた大きな要因は、共産党との選挙協力だった。いくら閣外協力といっても、自衛隊違憲、日米安保条約破棄の共産党とは組めないというのが常識だ。「立憲共産党」と揶揄され、実際、連合やトヨタ系の労働組合はアレルギー反応を示した。その結果、立民は議席を大きく減らした。

いまなお「モリカケ」優先では、さすがに国民の関心からずれてしまう。森友学園問題と加計学園問題が発覚したのは2017年2月ごろだ。森友問題では、財務省による文書改竄が明らかになったが、安倍晋三首相の関与は何も出てこなかった。むしろ、財務省による文書改竄の中で、関与していないという事実が明らかになった。加計問題も同様だ。

連合の芳野友子会長は「連合の組合員の票が行き場を失った」と語っています。結果から判断すれば共産党との選挙協力が相乗効果を生み出せなかったことは確かです。ただ小川さんの期待したような関係性や流れを強調できていれば、もう少し異なる展開もあり得たように思っています。

その上で、高橋さんが「モリカケ」の追及を立憲民主党の敗因の一つとして見ている点に関しては違和感を抱いています。少し前の記事「総選挙戦の論点は?」の中に掲げたとおり「李下に冠を正さず」という倫理観をはじめ、政治や行政に対する信頼感を失墜させていく事例として「モリカケ」等の総括が問われていたものと思っています。

NHKは選挙特番の冒頭で「自民212~253」と予想を出した。結果は、自民党が単独で過半数を大きく上回る259だった(後に261)。そして立民党は96。それが枝野代表の責任論になったわけだ。しかし、選挙戦を通じて自民党が強い危機感を持った事実、加えて、選挙を報道の最大の使命としているNHKが出した予測は軽視してはならない。どちらに転ぶかわからない選挙であり、野党共闘は有効だったということだ。

それを喝破したのは自民党で長く選挙を仕切った久米晃氏だった。西日本新聞の取材に「野党共闘は無意味ではなかったが、閣内協力か閣外協力かでもめ過ぎた。まだ政権を取れるわけでもないのにおこがましい。身の程知らずですよ」と語った。これを私がSNSで紹介すると予想通り多くの反発を招いた。しかし、選挙戦を振り返れば共産党の存在が自公からの標的となり、枝野氏も志位氏も防戦に追われた感は否めない。

仮に両者が、「政権奪取は今回は目指さず、まずは野党共闘で1強政治を終わらせて与野党が拮抗する国会を実現する。そのために選挙協力を結んだ」との姿勢を明確にしていたらどうだろうか? 自公の攻撃をかわすことができたのではないか。久米氏の指摘はそう読むべきだ。

上記は日刊ゲンダイの記事『自民党の強さは政治家ではなく党職員にある。立憲民主党は政権交代の土台づくりを』からの抜粋です。「なるほど」と思えた見方でした。自民党に比べ、野党側の土台の弱さは弁護士の郷原信郎さんの『「責任野党」は“見果てぬ夢”か ~15年前の「永田メール問題」から止まった時計』の中でも指摘されています。

野党側の政権の追及では、必ずと言っていいほど「調査チーム」「追及チーム」などが立ち上げられ、マスコミフルオープンで公開ヒアリングが繰り返されてきた。しかし、それらは、単に何人かの議員が集まって、公開の場で関係省庁の官僚や関係機関の幹部を呼び出して詰問しているに過ぎず、私が「責任野党構想」で提案した「政権追及のための調査の組織の構築」とは全く異なるものだ。

立憲民主党の政策が、十分な議論と検討を経て策定されたものであることに疑問が生じた出来事があった。今回の衆院選の投票日の3日前に、立憲民主党の代表代行(経済政策担当)として同党の経済政策を取りまとめた江田憲司氏が、BSフジ「プライムニュース」に出演し、「NISA(少額取引非課税制度)、積立NISAにも金融所得課税を課税する」と発言し、その後、訂正・謝罪に追い込まれた。

番組でのやり取りを見ると、江田氏は、そもそもNISAという制度自体を理解していないようにも見える。欧米と比較して個人の株式保有比率が低く、個人投資家の証券取引が少ない日本で、個人の証券取引を増やすことは重要な政策課題であり、NISA、積立NISAも、個人の証券取引の裾野を広げるために導入されたものだ。高額所得者の金融所得の課税の問題と、中間層への課税、少額投資家への課税、それぞれの在り方をきめ細かに議論していれば、江田氏のような失言はあり得なかったはずだ。

興味深い複数のサイトの内容を紹介しているため、たいへん長い記事になっています。衆院選挙が終えて思うこととして、立憲民主党は準備不足であり、党の土台や地力も自民党に比べれば劣っていたことを率直に認めなければならないという点です。今回の敗北を糧にして立ち直っていくのか、衰退の道をたどるのかどうか正念場だろうと思っています。

国民からの信頼を裏切るような失態が続けば政権の座から下ろされる、このような緊張感があってこそ、より望ましい政治の実現につながっていくものと考えています。そのためにも立憲民主党の奮起を期待しています。雨降って地固まる、そのような時間や機会が得られたと前向きに考えても良いのかも知れません。

今回の衆院選挙では改めて「新自由主義」という言葉が飛び交うようになっていました。 この言葉を軸に振り返った時、やはり民主党への政権交代も「時期尚早」感が目立っていたようです。その点について労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎さんが『宮本太郎提言は“神聖なる憎税同盟”の壁を打ち破れるか』の中で語っています。最後に、濱口さんのブログの一文を紹介します。

2009年の民主党政権は、小泉政権と同じくらい「磁力としての新自由主義」を撒き散らしていたのではないか。宮本さん自身も詳しく書いていますが、2000年代前半の小泉政権は、確かに小泉・竹中の新自由主義路線でした。しかし第1次安倍政権から、福田、麻生政権と進むにつれ、自公政権は徐々に社会民主主義的な傾向を現してきました。

それが民主党政権になってもっと社民主義になったというふうに、『現代の理論』の読者は考えているかもしれませんが、私の目から見るとむしろ民主党政権で小泉政権に戻ったのです。構造改革だ、事業仕分けだと言って、無駄を全部切ればお金はいくらでも出てくると主張し、それまで自公政権末期3代で少しずつ積み上げられてきた社会民主主義的な方向が、個々の政策ではつまみ食い的に社会民主主義的な政策はあるものの、大きな流れでいうとむしろ断ち切られてしまった。

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コメント

OTSUさんこんばんは。本題とは全く違うことですがこんな提案を人事当局にできないかなと思ったため書かせていただきたいとおもいます。[提案]身体・精神障がい者手帳を持っている人に対する特別休暇制度です。[現状]身体・精神障がい者手帳を持っている人は障害となる疾患を抱えています。その疾患とは本当の意味で闘病となっており、いつ治るのか?など葛藤を抱えながら勤務しています。しかしながら現状では疾患の治療について、有休を取得したり勤務後などを利用し治療を受けていることがほとんどです。有休にも限りがあります。月1回の受診として年12日は有休の使用用途が決まってしまいます。月2回の受診であれば、有休の付与日数をこえてしまいます。このため体調が悪い時も、今後の通院のために有休を使えず、無理して勤務することも多々あります。今後公務員の退職年齢引き上げや多様性を認めていく社会を目指すにあたって、公的に認められた障がい者に対して一定の配慮を考えても良いのではないでしょうか?調べたところ全国の自治体でも導入しているところはほとんどないと思われます。しかし民間ではヤフー株式会社は障がい者の特別休暇を認めていると聞いたことがあります。他の自治体での例がないからと切り捨てるのではなく新たに制度を導入し、先進自治体として制度を取り入れても良いのでしょうか?みなさまいろいろな意見があると思います。組合としてはどのような見解をお持ちかお伺いしたいです。もちろんOTSUさんの個人的な意見でも構いません。一石を投じることになれば幸いです。よろしくお願いいたします。

投稿: ぱわ | 2021年11月19日 (金) 19時18分

ぱわさん、コメントありがとうございました。

ご指摘のような趣旨から特別休暇の必要性について私も認識しています。有給休暇の残日数が10日以下の場合に長期通院休暇が取得できますが、年休繰り越しや昇給判定で不利益が生じます。今後、このような要望があったことを執行委員会に報告し、導入に向けて人事当局と協議していければと考えています。

なお、この場だからこそ、率直なご意見やご要望がお寄せいただけるのかも知れませんので、ぜひ、これからも何かありましたらお気軽に投稿くださるようよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2021年11月20日 (土) 06時35分

ばわさん

過度な配慮は不公平を生みます。
障害者に対する配慮はこれまでも十分に与えられており、これ以上の配慮は健常者への過剰な負担に繋がります。
有給休暇で不足するのであれば、公務員を退職し他の仕事の就く方が良いのではないでしょうか。

投稿: | 2022年1月 9日 (日) 23時44分

2022年1月9日 (日) 23時44分に投稿された方、コメントありがとうございました。

一つだけお願いがあります。もし次回以降、投稿される機会があった場合、名前欄にハンドルネームの記載にご協力ください。

右サイドバーの「最近のコメント」に表示されたハンドルネームをクリックすると投稿されたコメント内容にすぐ飛ぶことができます。ぜひ、ご協力くださるようよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2022年1月15日 (土) 06時09分

2022年1月9日に投稿された方へ
障害者に対する配慮はこれまでも十分に与えられていると書かれておりますが、具体的にどのような配慮でしょうか?お示しいただければと思います。

投稿: ぱわ | 2022年1月15日 (土) 14時05分

ぱわさん、コメントありがとうございました。

管理人の立場からのコメントを「治療と仕事の両立支援」のほうのコメント欄に書き加えさせていただいています。ぜひ、そちらもご覧いただければ幸いです。

投稿: OTSU | 2022年1月16日 (日) 08時24分

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